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2019-08-21 (Wed)
私が以前住んでいた北海道ではサナエトンボ科の種数が5種と大変少なかったため、私が多少なりとも野外観察できた種はコサナエ、モイワサナエ、ホンサナエ、コオニヤンマの4種に留まっていました。

6年前に現在の埼玉県に転居してからは、関東地方だけでも17~18種と多様なサナエトンボ科の種が分布することから、これらの個性的なサナエトンボたちと遭遇できるかもしれない、春から初夏にかけてのフィールド・トリップは心浮き浮きするところがありました。

こうして観察できたものは、なるべく生息地の雰囲気をも伝えながら、ブログ記事にしてきました。

それが積もり積もって、サナエトンボ科の種の観察記録についての記事は、前回記事までで丁度20本となりました。

出会っているトンボの種の数はまだまだ少ないので、私にとっても今後の楽しみが多く残されていることになります。

次回記事では、その残された種の一つであるオジロサナエの観察記を掲げる予定です。

以下に、関連記事一覧を掲げます。


サナエトンボ科の種の観察記録の過去記事リスト:



以上は、2019年8月21日現在の、関連過去記事リストです。


随時更新されるサナエトンボ関連記事リスト

今後の追加記事を含めた、当ブログのサナエトンボ科の記事は下記の検索語をクリックするとリストが表示されます。

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2019-08-15 (Thu)
この夏(8月上旬;猛暑日)、トンボ研究家の夏目英隆さんにご案内いただき、マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys, 1897) の黄昏飛翔や、私にとって未知のコシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys, 1883) が観察できる生息地2箇所を訪れました。

その際に観察されたヤンマ類については前回記事で報告しました。

今回記事では、それら生息地で観察されたヤンマ以外のトンボ、すなわちコオニヤンマ Sieboldius albardae Selys, 1886 、ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum (Müller, 1766) 写真1、ナツアカネ Sympetrum darwinianum Selys, 1883 、シオカラトンボ Orthetrum albistylum (Selys, 1848) 、オオシオカラトンボ Orthetrum melania (Selys, 1883) と、蝶2種(オオムラサキ Sasakia charonda (Hewitson,1863)、ミスジチョウ Neptis philyra (Ménétriès,1858))の横顔をご紹介します。

ミヤマアカネ♂
写真1 ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum (写真はクリックで拡大します)


目 次:
◆丘陵地の小河川には、やはり川好きのトンボ達が
◆里山の水際にオオシオカラトンボ
◆谷戸に華やぐオオムラサキとミスジチョウ
◆里地に戻ればナツアカネ
◆小規模な枝沢にトンボを探る
◆里山沿いの細流付近のトンボ
◆夕刻はやはりヤンマ・タイム?
◆シリーズ記事「ヤンマの舞う里」のまとめ
◆謝 辞
◆ハッシュタグ


丘陵地の小河川には、やはり川好きのトンボ達が

その日に夏目さんと最初に訪れた場所(12時50分~13時30分)は、樹林に沿ってゆったりと流れる丘陵地の小河川(写真2)でした。

コシボソヤンマが生息する小河川
写真2 コシボソヤンマが生息する小河川(動画静止画面のスクリーンショット)

樹林におおわれた川沿いの細道は、猛暑日とはいえ思いの他しのぎやすく、夏目さんの一帯での観察経験を伺いながら、トンボの姿を追い求めました。

前回記事にも書いたように、この日のこの小河川ではコシボソヤンマは観察できませんでしたが、樹の陰になった川岸の幼木の葉にとまるミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853 ♂が見られました(13時00分)。

夏目さんの話では、猛暑日の炎天を避けて日陰でなわばり静止しているのだろうということでした。

このミヤマカワトンボを私が動画で撮影している最中に、私の背後の岸沿いに、流れの上をオニヤンマ Anotogaster sieboldii (Selys, 1854)が通り過ぎていくのを夏目さんが目撃していました。

その前後には、流畔に生える高木の枯れた枝先には、コオニヤンマが、ぶら下がり気味にとまる様子も観察できました(写真3)。

コオニヤンマ♂
写真3 コオニヤンマ Sieboldius albardae ♂


里山の水際にオオシオカラトンボ

この日14時50分に到着した第二の観察場所は、農家が点在する里山地帯でした(写真4)。

猛暑日の里山と細流畔
写真4 猛暑日の里山と細流畔(一部ボカシ)

この里山の麓に沿った細流沿いを、夏目さんから各種トンボによる利用状況の説明を聞きながら歩いていると、ロープにオオシオカラトンボ♂がとまっていました(写真5)(14時53分)。

IMG_7840 okokオオシオカラ♂
オオシオカラトンボ♂
写真5 オオシオカラトンボ Orthetrum melania 


谷戸に華やぐオオムラサキとミスジチョウ

この後、谷戸(写真6)となっている枝沢沿いの小径に歩み入り、夏目さんとのトンボ談義に花をさかせながら進んでいくと、広葉樹の高いところの枝先をオオムラサキらしき大型の蝶が飛んでいました(15時36分)。

マルタンヤンマの黄昏飛翔が見られた谷戸
写真6 オオムラサキ、ミスジチョウも見られた谷戸(一部ボカシ)

夏目さんの長柄のネットで一時的に捕獲したところ、やはりオオムラサキで、帰宅後図鑑やネット情報から確認したところ♀であることがわかりました(写真7)。

オオムラサキ♀
写真7 オオムラサキ Sasakia charonda (この後、リリース)

まあ、腹の膨れ具合からお母さん蝶であることは素人にもわかりましたが(笑)。

そのあとも、なかなかトンボは現れず、目に留まったのはミスジチョウくらいでした(真8)(15時38分)。

ミスジチョウ♀
写真8 ミスジチョウ Neptis philyra 

レンズを向けていると、3本の白線が綺麗に平行になるように4枚の翅を開いてくれました。


里地に戻ればナツアカネ

この谷戸でのトンボ探訪をいったん終わり、そこから下りて、里山との細流と廃田に挟まれた農道を歩きはじめました。

すると、その廃田の中の枯草の茎の先に、ナツアカネ♂がとまりました(写真9)(15時45分)。

ナツアカネ♂
写真9 ナツアカネ Sympetrum darwinianum 

この個体を夏目さんがネットインして撮影に供してくれたことで(写真10)、ナツアカネの特徴の一つである翅胸側面の黒斑(第一側縫線黒条)の特徴(上端が直角にカットされること)がはっきりと確認できました。

ナツアカネ♂
写真10 ナツアカネ Sympetrum darwinianum ♂ 同一個体(この後、リリース)


小規模な枝沢にトンボを探る

このナツアカネをリリースしたあと少ししてから、小規模な枝沢の奥の池を見に行きましたが、近年でも観察されているヤブヤンマやタカネトンボの姿はありませんでした(前回記事参照)。

里地に戻る少し手前の水がチョロチョロ流れる沢斜面沿いの溝では、草木にとまるハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853) ♂も目撃できました。


里山沿いの細流付近のトンボ

そしてまた里地に戻ってからは、里山沿いの細流の水面上を飛ぶコシボソヤンマを目撃しています(前回記事参照)。

その後、この里山の細流と廃田の間の農道を歩くことで、シオカラトンボ♂写真11)(16時42分)とシオカラトンボ♀写真12)(17時17分)をそれぞれ撮影しました。

シオカラトンボ♂
写真11 シオカラトンボ Orthetrum albistylum 

シオカラトンボ♀
写真12 シオカラトンボ Orthetrum albistylum 

そのすぐ後には、ミヤマアカネ♂が道端の枯れ枝の先にとまっているのを見つけました(写真1、再掲)(17時18分)。 

ミヤマアカネ♂
写真1(再掲)ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum ♂

この♂の腹の色は、成熟した真っ赤な色には程遠いですが、若干赤くなり始めているようです。


夕刻はやはりヤンマ・タイム?

この後、少しずつ夕空に変わってきたので、オオムラサキやミスジチョウを見た谷戸に再度移動してマルタンヤンマの黄昏飛翔を観察・撮影しました(前回記事参照)。

この日の観察を終える直前の18時52分には、里地の細流のすぐ脇の農道でミルンヤンマを観察しました(前回記事参照)。


シリーズ記事「ヤンマの舞う里」のまとめ

コシボソヤンマ、マルタンヤンマ、ヤブヤンマなどのヤンマ類を求めてこの里山地帯を猛暑の中訪れたわけですが、終わってみればヤブヤンマを除く2種はたとえ短時間でも観察することができ、私が予期していなかったミルンヤンマにも会うことができましたし、脇役とはいえ、アカネ属 Sympetrum シオカラトンボ属 Orthetrum の種が各2種と存在感のある蝶2種の姿を楽しむこともできました。

謝 辞:
遠路にも拘わらず現地にご案内いただき、各種トンボの生息状況について詳細なご教示を賜った夏目英隆さんに心より感謝いたします。

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2019-08-14 (Wed)
本州の真夏はヤンマ類が大手を振って飛び交う季節でもあります。

ただし、カンカン照りの猛暑日が続くことも多く、彼らの行動時間は日照や気温が低下する薄暮時*が中心となることが知られています。


とりわけ、マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys, 1897) 写真1:別の地域で日中に撮影)やヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera (Selys, 1883) 黄昏飛翔はこの時期のトンボ愛好家にとっては風物詩のひとつです。

マルタンヤンマ♂
写真1 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♂(前回記事から再掲)(写真はクリックで拡大します)

この夏(8月上旬;猛暑日)、トンボ研究家の夏目英隆さんにご案内いただき、この両種ヤンマの黄昏飛翔や、私にとって未知のコシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys, 1883) の川面飛行の観察が期待できる生息地2箇所を訪れました。

目 次:
◆丘陵地の小河川でコシボソヤンマ探訪
◆昼下がりの里山、谷戸にはトンボがチラホラ
◆コシボソヤンマと瞬時の初対面
◆ヤンマの黄昏飛翔に心を奪われる
◆ミルンヤンマは低い所を採餌飛行
◆謝 辞
◆ハッシュタグ


丘陵地の小河川でコシボソヤンマ探訪

その日に夏目さんと最初に訪れた場所(12時50分~13時30分)は、樹林に沿ってゆったりと流れる丘陵地の小河川(次回記事参照)でした。

樹林に覆われた川沿いの細道は、猛暑日とはいえ思いの他しのぎやすく、夏目さんが川岸や枝先を指さしながらお話される、コシボソヤンマを中心としたトンボ数種のこの一帯での活動の観察経験を伺いながら、楽しい一時を過ごしました。

コシボソヤンマの良い生息場所となっている川なので、通りかかるのを期待しながらその姿を追い求めましたが、今回はこの川沿いの一帯では目撃することはできませんでした。

夏目さんによれば、まだ時期が少し早いというのがその理由でした。

その代わりというわけではありませんが、ミヤマカワトンボ、コオニヤンマを観察・撮影し、夏目さんがオニヤンマを目撃するなど、トンボに好かれた環境であることの一端を垣間見ることができました(次回記事で報告予定)。


昼下がりの里山、谷戸にはトンボがチラホラ

この日14時50分に到着した第二の観察場所は、農家が点在する里山・里地でした(写真2)。

猛暑日の里山と細流畔
写真2 猛暑日の里山と細流畔(一部ボカシ)

この里山の麓に沿った細流にはコシボソヤンマが、その枝沢沿いの谷戸にはマルタンヤンマが私達を待ち受けていることが、夏目さんの経験から予測されていました。

その細流沿いに、夏目さんから各種トンボによる利用状況の説明を聞きながら歩き、その後、谷戸となっている枝沢沿いの小径に案内され、夏目さんとのトンボ談義に花を咲かせながら、トンボの姿を探しました。

この間、細流沿いではオオシオカラトンボを、谷戸では樹冠を飛ぶオオムラサキや草の葉にとまるミスジチョウを観察・撮影しました(次回記事で報告予定)。

この谷戸をいったん下って里地に戻るとナツアカネの姿がありました(次回記事で報告予定)。

里山の麓に沿った細流から、別の小規模な枝沢に入り藪をこぎながら辿っていくと、樹林に囲まれた浅い池(地滑りでできたと思われる)に行き着きました。

そこは夏目さんのお話では、ヤブヤンマやタカネトンボが見られたことがあり、古くはオオルリボシヤンマもいたそうです。

しかし今回はトンボの姿はありませんでした。


コシボソヤンマと瞬時の初対面

その枝沢から里地の細流に戻り、里山の細流付近で観察を続けていたところ、コシボソヤンマ(たぶん♀)が上流方向から細流沿いに水面上0.5~1.5mを飛んできて、折り返して上流方向に消えました(16時27分)。 

やや大型で黄色が目立つことと、飛んだ場所が本種の産卵場所をかすめていることから、夏目さんもコシボソヤンマに間違いないと太鼓判を押しました。

この日のコシボソヤンマ目撃はその1回だけで、カメラを向けるチャンスはありませんでした。

とはいえ、脳裏にそのイメージを焼き付けることができたので、次回単独で訪れた時に発見しやすくなったのは収穫といえます。

その後、この里山の細流と廃田の間の農道を歩くことで、シオカラトンボ、ミヤマアカネを観察・撮影しました(次回記事で報告予定)。


ヤンマの黄昏飛翔に心を奪われる

この後、少しずつ夕空に変わってきたので、夏目さんのお勧めにしたがって、ヤンマの黄昏飛翔が強く期待される谷戸(写真3:日中、オオムラサキやミスジチョウが見られたところ)に入り込み、谷沿いをゆっくり行き来したり、立ち止まったりしながら、上空に目をやりました。

ヤンマの黄昏飛翔が見られた谷戸
写真3 ヤンマの黄昏飛翔が見られた谷戸(一部ボカシ)

粘り強く空を見続けた結果、17時30分を過ぎたあたりから、谷戸の上空高く(約10~20m)谷沿いに飛ぶヤンマの黄昏飛翔がちらほら見られるようになりました。

18時10分からは、翅の斑紋から明らかにマルタンヤンマ♀とわかる個体の黄昏飛翔が確認できました。

写真4Aは18時25分に撮影したマルタンヤンマ♀写真4Bはその1分後に撮影したもので、こちらもおそらくマルタンヤンマ♀です。

黄昏飛翔をするマルタンヤンマたち
写真4A,B 黄昏飛翔をするマルタンヤンマ Anaciaeschna martini たち。(いずれもトリミングで、拡大率は異なる)

空は更にうす暗くなり、舞うヤンマの通過頻度もやや低下してきたところで、私達はこの谷古を下って、里地に戻りました。


ミルンヤンマは低い所を採餌飛行

里山沿いの細流のすぐ脇の農道を歩いて、この地域での観察スタート地点に戻る途中、その前を横切るかたちで行ったり来たりする小型ヤンマがいました(18時50分)。

高さ0.5~1.5mを自在に向きや高さを変えながら飛び、道端の草木のまわりに群がる小さい虫を探し回って採食している様子でした。

このヤンマがそのサイズ、形、色模様からミルンヤンマ Planaeschna milnei (Selys, 1883) だろうということは、夏目さんはもとより、私も容易に見当を付けることができました。

夏目さんにネットインしてもらうと、それはやはり、ミルンヤンマの♂でした(写真5)。

ミルンヤンマ♂
写真5 ミルンヤンマ Planaeschna milnei ♂(この後、リリース)

このヤンマの手持ち撮影そしてリリースをもって、この日のトンボ観察は無事終了しました。


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2019-08-07 (Wed)
マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys, 1897)写真1)は、♂の複眼の吸い込まれるような青さから、トンボ好きの昆虫少年たちの憧れの一つだったとの懐旧談をよく聞きます。

マルタンヤンマ♂
写真1 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♂(写真はクリックで拡大します)

目 次
◆青い眼への憧れ
◆その時が来た!
◆マルタン♀の装い
◆虫友との出会い
◆なんとマルタン♂も!
◆マルタン♂の装い
◆マルタン♂と♀の色彩パターンの違いはなぜ?
◆♂は婚姻色で、♀はハチへの擬態?
◆マルタンヤンマのぶら下がり場所
◆引用文献・サイト
◆ハッシュタグ


青い眼への憧れ

私も大学院入学時に研究材料としてトンボ目を選択し、北海道でカラカネトンボやオオルリボシヤンマ、ムカシトンボ、ニホンカワトンボ(当時はヒガシカワトンボ)などの観察に明け暮れた、「遅れてきた昆虫青年」でしたが、マルタンヤンマはいつかは私の見たいトンボの一つとなっていきました。

数年前に定年退職を機に北海道釧路から埼玉県に住居を移したことで、マルタンヤンマと対面するチャンスが広がりました。

それ以来、数回にわたって、マルタンヤンマの観察・撮影にチャレンジしましたが、夕刻の黄昏飛翔の観察・撮影と、産卵場所(抽水植物群落)に1頭の♀が飛び込んだのを目撃しただけで、その青い眼を近くでじっくり観察する機会はありませんでした。

今年の梅雨が明けた後の猛暑日が続く中で、生息地の池の周辺の木の枝にぶら下がって休むマルタンヤンマの姿が、SNSへの投稿写真で目に付くようになりました。

そんな中、私も居ても立ってもいられなくなり、8月上旬の猛暑日となったある日、本種成虫を遠くから目撃したことのある池に、カメラとスポーツドリンクをぶら下げて出かけました。

午前11時半頃、池に到着。

太陽が雲に覆われたりまた顔を出したりの天気で猛暑なのですが、池の周りの木立の陰にはいると、かなり凌ぎやすくなります。

例によって木の枝の先や裏側(下面)をチラチラと眺めながら、ゆっくりと池の周りを歩き、ぶら下がった類はいないか探しました。

池の水面上にはオオヤマトンボやコシアキトンボが飛び回る姿もありましたが、ゴメンナサイ、無視(虫)しました(笑)。


その時が来た!

今年も空振りかと、半ばあきらめかけた頃の12時20分、カメラを首に掛けた自然観察者お2人が、池畔の林縁(写真5)の根本近くのブッシュを覗き込む位置でカメラを操作していました。

「何かいましたか?」と私。

「ヤンマです。」とその方。

「あ、マルタンの♀ですね。初めて(近くで)見ました。」と私。

「きれいでしょう?!」

「あ、はい。」と私。

その後、そのお二方が私にも撮影の機会を与えてくれたので、愛用のカメラの設定をいじくりながら、シャッターを押しまくりました。

写真2~4はそれらの中からの私なりのベストショットです。

マルタンヤンマ♀
写真2 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♀

マルタンヤンマ♀
写真3 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♀(同一個体)

写真2,3は、EOS7Dでストロボ撮影したもので、色彩の特徴が強調されています。

一方、写真4は、TG-5で自然光撮影したもので、肉眼で見た時の雰囲気に近いです。

マルタンヤンマ♀
写真4 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♀(同一個体)

マルタンヤンマ♂の目の色に憧れて、猛暑を押してこの生息地を再訪したのですが、最初に対面することになったのは、♂とは大きく色合いの異なるマルタンヤンマ♀でした。


マルタン♀の装い

しかし、却ってそれが私には♀を新鮮かつ魅力的なものにしたようです。

まず、腹部背面の赤茶色と黒の横縞パターンが斬新。

翅の基部の黒褐色斑のグラデーションもユニーク。

複眼の色は緑色と茶色の混じったまさに渋い色合い。

この眼の色は、腹部や翅の色模様と相まって、逆に♂を惹き付けるものになっていることでしょう。

この♀は、15分間ほどの観察の間その場にじっと動かずにぶら下がったままで、撮影者がカメラを向けて1mくらいの距離まで近づいても、身じろぎ一つしませんでした。

快く観察・撮影の機会を与えてくれた発見者のお二方に感謝の意を伝えた後、私はその場から離れ
ました。


虫友との出会い

これでこの日の運を使い果たした気分になり、「猛暑だし、池をもう一回りしたら帰途につこう」と心にきめました。

それでも樹枝や藪の中に視線を送りながら歩いていると、私のものよりも一回り長尺の望遠レンズを装着したカメラを首にかけた男性に、声をかけられました。

簡単に苗字を名乗り合っただけで、トンボの写真や観察メモをSNSで交流している虫友同士であることがわかりました。

ネットで溌剌としたトンボの姿態の映像をアップしておられるその虫友からは、一緒に池をもう一回りする間中、マルタンヤンマやヤブヤンマの習性についての貴重な経験談を聞かせていただきました。

こうして、虫友と私は、また先ほどのマルタンヤンマ♀のぶら下がりのポイント付近にさしかかりました。

すると、また先ほどの自然観察者のお二方が林縁の根本付近を眺めながら立ち止まっています。


なんとマルタン♂も!

「何かいましたか?」と私はそのお二方に尋ねました。

「お待ちしてました。ほら、あそこ。」とその方。

「おーっと!マルタン♂じゃないですか。出来すぎですよ。ラッキー!」と私。

今回もまた、撮影の機会を私にも回していただき、被写体の虜になりました。

この時のベストショットが写真1(再掲)です(13時08分;ストロボ使用)。

マルタンヤンマ♂
写真1、再掲 マルタンヤンマ Anaciaeschna martini ♂

ぶら下がっている場所が薄暗いのと、あまり近づき過ぎて飛び去っても困るので、この解像度が私にとっての限界でした。

もっとも、より短焦点の交換マクロレンズを携帯していたとしたら、もう少し接近して複眼の網目が解像出来る写真が撮れていたかもしれませんし、逃げられていたかもしれません(笑)。


マルタン♂の装い

マルタンヤンマ♂の複眼は、言わずと知れたコバルトブルーですが、複眼下面は頭部前面(前額・頭楯)同様に水色となっています。

胸部側面や腹部の淡色部も青白色で、濃黒褐色の地色とのコントラストが鮮やかです。

そして翅は基部の小さな黒褐色斑を除き透明で、♀にくらべて全般的にスマートな感じです。


マルタン♂と♀の色彩パターンの違いはなぜ?

♂と♀のこの大きな違いは、♂の婚姻色(成熟したことと、♂間の着飾り競争における勝利者の色)の発現が大きく影響していると思われます。


♂は婚姻色で、♀はハチへの擬態?

一方、♀の手の込んだ色彩パターンは隠蔽色(背景と合わせた迷彩などで捕食者に対して目立たなくする色彩・形態)、あるいは警告色(なんらかの有毒、有棘の動物が捕食者に警戒させ近づかせないために目立つ色彩・形態を進化させたもの)への擬態のいずれかが考えられます。

隠蔽色としては、緑の背景の中の赤茶色と黒の繰りかえしパターンはやや目立ちますので、あまり成功しないように思います。

一方、長い腹の先3分の1を黒くして背景の暗がりに溶け込ませ、短く見せかけた腹部を赤茶と黒の横縞パターンとすることに加え、翅の基部だけ褐色に染めることで短い翅の昆虫に見せることで(捕食者に針で立ち向かいかねない)ハチ目の昆虫に擬態した、というのはどうでしょう?

実際に、マルタンヤンマ♀の色彩パターンは、ハチ目の中のオナガバチなどの♂(外部リンク画像「公園昆虫記「オナガバチたち」はこちら)に、腹の長さ、腹部背面の茶褐色と黒色の横縞パターンにおいて、似ていなくはありません。

ところで、オナガバチの♀は、長い産卵管を持ちますが毒針は持ちませんし(高桑、2004)、(毒蝶のカバマダラやジャコウアゲハのように)食べたら毒になるようにも見えません。

つまり、オナガバチは擬態におけるモデルではなく、アブやハナアブと同じように、ハチ目の中で攻撃性があり、腹部背面の黄褐色と黒色の横縞パターンをアシナガバチ類やスズメバチ類などをモデルとしてそれに変装するかたちで(べイツ型で)、擬態していると考えられます。

モデルであるアシナガバチ類やスズメバチ類などは、腹部背面の黄褐色と黒色の横縞パターンを、互助的機能を結果的にもたらす共用ユニフォーム的に(ミュラー式擬態として)採用しているとされます(べイツ、ミュラー型については、参考:Wikipedia)。

となると、もしマルタンヤンマ♀が同様の擬態だったとすると、そのモデルはオナガバチを通り越して、アシナガバチ類やスズメバチ類などが該当することになります。


マルタンヤンマのぶら下がり場所

マルタンヤンマがどのような場所にぶら下がって休憩するか、ですが、今回私が撮影した個体は♂、♀とも、池を取り囲む林の林縁部(写真5)の根本近くの、低木の枝(写真6)の高さ数十cmの位置でした。

マルタンヤンマの休憩(ぶら下がり)が見られた池畔
写真5 マルタンヤンマの休憩(ぶら下がり)が見られた池畔(2015年8月中旬に撮影)

マルタンヤンマ、休憩ポイントの例
写真6 マルタンヤンマの休憩(ぶら下がり)位置(黄色の円の中心部)

私がこれまでマルタンヤンマのぶら下がりを探していた時は、地上3~5mほどのところを見上げながらでしたが、このように低いところを、むしろよく利用しているというのは意外でした。

マルタンヤンマ♂の観察・撮影を終えた時点で、その場に居残られた虫友に再会を約し、満足感に浸りながら帰途に就きました。


引用文献・サイト

公園昆虫記(2010)「オナガバチたち」https://parkinsect.exblog.jp/11632466/

高桑正敏(2004)擬蜂虫~ハチを見たらハチでないと思え(4)。自然科学のとびら、Vol.10, No.1

Wikipedia(2019 アクセス)擬態


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2019-08-01 (Thu)
ご愛読いただいている当ブログ「トンボ自然史研究所」が、FC2ブログランキング「自然科学ランキング」で、7月の月間首位を獲得し、これで3カ月連続となりました(7月31日午後11時現在)(画像1)!

FC2ブログランキング(自然科学)月間首位2019年7月
画像1 FC2ブログランキング自然科学2019年7月31日、午後11時現在 (画像はクリックすると拡大します)

ランキング自然科学で、2019年7月31日、午後11時現在の月間IN」のデータは以下のようになっています。

1位 トンボ自然史研究所 280

2位 にわとりおかんの極上日和 256

3位 とね日記 220

4位 レーザー加工機を動かそう - レーザー加工機基礎知識 190

今回も僅差ですが、月末の午後11時が月間INデータの最終集計となっており、これが確定データです。

いつも申し上げている通り、このランキングは単純なアクセス数ではなく、記事を閲覧し、ランキングのタグをクリックされた方の人数の総計によるものです。

皆様の応援にあらためて感謝いたします。

今後も、読者のご期待に添えるよう、良質の記事の作成を目指したいと思います。


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