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2018-06-09 (Sat)
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2018-04-11 (Wed)
前々回記事「四国トンボ巡礼(8): タイワンウチワヤンマ、トラフトンボなどヤゴ3種」の中で、「タイワンウチワヤンマ幼虫に不思議な穴!」との見出しをつけ、タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax (Hagen in Selys, 1854)幼虫写真4)の腹端近くの腹節に大きな穴(写真6、7)があるが、どうやって開いた穴だろうかと問題提起をしました。


目 次
◆昆虫エキスパートの眼力は、「穴」を「コミズムシ類」へ、更に「マルミズムシ」へと進化させる
◆ヒメマルミズムシに似ているけれど
◆小さな虫だからといって侮るべからず
◆マルミズムシ類の、タイコウチ下目の中での系統的位置
◆引用ウェブ頁
◆謝辞


タイワンウチワヤンマ幼虫 
写真4(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫

タイワンウチワヤンマ幼虫の腹端部(穴が開いている) 
写真6(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(写真4の部分拡大)

タイワンウチワヤンマ幼虫の腹端部(穴が開いている) 
写真7(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(別個体ではなく同一個体の部分拡大)


昆虫エキスパートの眼力は、「穴」を「コミズムシ類」へ、更に「マルミズムシ」へと進化させる

そのブログ記事をフェイスブックで告知したところ、その日のうちに、松山探虫団の飯田貢さんから、
「タイワンウチワヤンマの腹部の穴ですが、拡大してみるとコミズムシ類の頭部に見えますね。写真6では脚が見えています。」
とのコメントがありました。

飯田さんと私との間の、コメント欄でのその後のやりとりの要点を、以下に紹介します。

私:「何かが付着しているという線もブログ記事作成中に念頭にありましたが、写真5、写真7では穴の向こうにたも網の繊維が見えているようにも解釈できたのですが。写真6では、ヤゴの表皮(クチクラ)の穴の縁が修復によって丸く縁取りされているようにも見えます。」

飯田さん:「『穴の縁』がどの部分を指すのか分かりません。コミズムシの複眼に白い反射(キャッチ光)があるのは、球面体でヤゴの背中面より手前にあるからだと思います。そして撮影角度での光の移動からも立体物にしか見えません。」

私:「問題のタイワンウチワヤンマ幼虫(写真4写真6))で、穴の縁と思われるところ(コミズムシで隠れている斜め左下の部分にも)に、青い点線を引いてみました(写真A)。いかがでしょう?」

タイワンウチワヤンマ幼虫の穴?それとも 
写真A タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(写真6の部分拡大)

飯田さん:「私の眼には穴が開いてるようには見えません。ただ何度もみてるうちに複眼の形や色からマルミズムシではないかと思い始めました。水生植物が多い開けた池という生息環境も一致します。」

私:「青い点線に囲まれた卵円形(白っぽい)の部分(写真A、左)は飯田さんから見ると何になりますか?ミズムシの体部?、水滴?、それとも。。」

飯田さん:「マルミズムシの右側面に見えます、右斜め上を向いていて赤茶色委部分が複眼、左下側にオールのような後脚がみえています。」

私:「マルミズムシでしたか! 確かに下記リンクを見ると腹面は白くて丸いし、縁もそれらしいです。貴重なご指摘を有難うございました。

私:「マルミズムシで画像を検索してみました。ヒメマルミズムシ Paraplea indistinguenda(体長:1.5~1.8mm)が一番似ているでしょうか?」

私:「下のリンク(ヒメマルミズムシ Paraplea indistinguenda についての韓国語の解説記事)の上から7番目の写真と、私のブログのタイワンウチワヤンマ幼虫の『穴』を見比べると、見れば見るほど穴には見えなくなり、この小さなマルミズムシの眼と口器と脚が生き生きと浮き上がりました。

私「他にも、以下のようなヒメマルミズムシ関連リンクがありました。




フェイスブックでの飯田さんと私との間の、本件についてのコメントのやりとりは以上です。


ヒメマルミズムシに似ているけれど

その後、私の方で、改めてリンク1~5のマルミズムシ類の画像と、タイワンウチワヤンマに付着した小昆虫の像とを見比べてみたところ、以下のことが確認できました。

リンク2(ヒメマルミズムシ)の、横から見た個体で、右複眼、口器、頭部が乳白色であること、および後脚の形状が、写真6の付着小昆虫のそれらと一致する。

・ただし、写真6の小昆虫では、肩から後方の腹面、側面も柔らかそうな乳白色だが、リンク2(ヒメマルミズムシ)では硬化した茶褐色である。

・この違いの原因は、写真6の小昆虫では、このマルミズムシが捕食を受けて肉質部が露出しているためかもしれない。

リンク3(ヒメマルミズムシ)は、背面全体(翅の背面を含む)も灰白色であり、写真6、7の小昆虫と一致する。

リンク4(ヒメマルミズムシ)は背、面全体(翅の背面を含む)も灰白色であること、および体が非常に小さいことも、写真6、7の小昆虫と一致する。

以上のように、ヒメマルミズムシに似ていますので、それだと断定したいところですが、同属の別種マルミズムシ Paraplea japonica の特徴との、あるいは同じ科の別の種があったとしてその種の特徴との照合がほとんどできていませんので、ここでは、タイワンウチワヤンマに付着していた水生カメムシマルミズムシ属の1種 Paraplea sp.であった、とするに留めておきます。


小さな虫だからといって侮るべからず

マルミズムシは体長1.5~1.8mm、マルミズムシは体長2.3~2.6mmといずれも小さく(レッドデータブックとちぎのウエブサイト)、といずれも非常に小型で、ミズムシ科のミズムシHesperocorixa distanti(体長11mm前後)を見慣れた私にとって見破るのは至難の業といいたいところです。

今回の私の判定ミスからの教訓は、「先入観、思い込みによって、観察がゆがめられることが大いにある。」ということです。

この教訓は、「ある現象や出来事の原因を、自分がこだわっている何か一つの特定の考えだけに求めるのではなく、同じような現象や出来事を生じうる、あらゆる可能な原因をしらみつぶしするように調べ、事実や実験結果で検証する姿勢が大切である」という科学者の基本姿勢にも共通しているように思います。


マルミズムシ類の、タイコウチ下目の中での系統的位置

以上の結論が得られたところで、コミズムシ類マルミズムシ、更にミズムシは、水生カメムシ目の中でどのような系統的位置(=分岐分類における位置)を占めているのかが気になりましたので、ネット検索により調べてみました。


それによれば、マルミズムシ類ミズムシ科 Corixidae ではなくマルミズムシ科 Pleidae (下の写真)に属していました。

Plea minutissima photo by Didier Descouens 
マルミズムシ科Pleidaeに属する、Plea minutissima (再掲)(Photo by Didier Decouens; Source, Wikipedia)

マルミズムシ科は、タイコウチ科 Nepidae やコオイムシ科 Belostomatidae よりはミズムシ科に近縁(時代的により後に系統ば分岐した)ですが、マツモムシ科 Notonectidae により近縁であるという意外な系統関係があることを知りました。

それ以外に、扁平な、コバンムシ科 Naucoridae  やナベプタムシ科 Aphelocheiridae なども、ミズムシ科よりはマルミズムシ科に近縁とされているのも、意外性があります。


引用ウェブ頁:

源五郎:辺の生き物彩々
http://gengoroh.seesaa.net/article/379954673.html 【リンク1

ヒメマルミズムシ、韓国語WebPage 
https://m.blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=nstdaily&logNo=150046483138&proxyReferer=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2F 【リンク2

イッケー:日本産淡水魚の世界へようこそ:ヒメマルミズムシ
http://www.geocities.jp/tansuigyo_ofi_kke/KonntyuuHimemarumizumusi.html【リンク3

魚部@西表島本おもろそう!:ヒメマルミズムシ(左・福岡県産)とホシマルミズムシ(右・沖縄県産)
https://twitter.com/gyoburou1998/status/911949503518740485 【リンク4

レッドデータブックとちぎ:ヒメマルミズムシ
http://www.pref.tochigi.lg.jp/shizen/sonota/rdb/detail/18/0154.html

uni2:淡路島の生き物たち3:池・川 昆虫(2)
 http://uni2008.web.fc2.com/htm/ike.kontyuu2.html 【リンク5


謝辞

タイワンウチワヤンマの表皮に見られた異質な部分はマルミズムシ類であるということをご指摘いただいた飯田貢さんに、謝意を表したいと思います。


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2018-04-04 (Wed)
夏日が予想された今日の昼前、快晴のもと、さいたま市内の公園2カ所を回りトンボ探しをしました(トンボ撮影時点でのアメダス気温は24℃前後(この日の最高気温は15~16時台に26℃越え)。

比較的広い園地内のいくつかの池を一通り巡り、終点にしていた真夏にはガマ属の植物が生い茂る浅い池(写真1)を半分回り、「まだトンボは出ていないか・・・」と半ばあきらめかけた時、足元から小さなイトトンボがフルフルと舞い上がりました。

アジアイトトンボを観察した公園の池 
写真1 今シーズン最初のトンボが観察された池(さいたま市の公園内)(写真はクリックで拡大します)

羽化してまだ日が浅いテネラル成虫独特の飛び方です。

見失うことなく、岸にほど近い枯草にとまるところを確認することができました。

カメラを構えそーっと近づきました。

そこにいたのは、私にはすっかりお馴染みの種となった、アジアイトトンボ Ischnura asiatica (Brauer, 1865) の♂です(写真2)。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真2 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂

上の写真が、焦点リングを微妙に動かしながら50回シャッターを押した中の、ベストショットです(ISO=640、1/200、f=13、FL=250mm)。

下の写真は、同じ個体を少し前方から撮ったものです(撮影時点はこちらが先)。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真3 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂、同一個体

黒い鼻の下に黒いチョビ髭の顔と、対面です。

おや、足もとに何か、小さな虫が・・・・。

拡大すると。。

アジアイトトンボ♂未熟個体とゾウムシ 
写真4 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂(同一個体)の足下のゾウムシ

どうやらゾウムシの一種のようです。

このトンボを、もっと接近して短焦点マクロで撮影しようと近づいたところ、飛び立って空高く舞い上がってしまいました。


成熟に伴う色彩変化(異なる時期間の比較)

さて、一見して未成熟な色彩や硬化度を見せていたこの個体ですが、成熟個体とどう違うのでしょうか?

トンボ図鑑やトンボ専門ブログには、成熟に伴う色彩変化が述べられていることが多いですが、この際、自分がこれまでに撮影した写真同士を比較して、その違いをこの眼で確かめたくなりました。

まずは、今回撮影したアジアイトトンボ♂(羽化後、日の浅い個体)の写真2を下に再掲します。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真2 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂(再掲)さいたま市、4

比較対象は今回の個体に加えて、以下の2個体です。

(1)埼玉県上尾市で6月に撮影したアジアイトトンボ♂(ある程度成熟が進んだ個体)(写真5)(登場ブログ記事はこちら

アジアイトトンボ ♂
写真5 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂ (再掲) 上尾市、6月 

(2)関東北部で9月に撮影したアジアイトトンボ♂(かなり成熟が進んだ個体)(写真6)(登場ブログ記事はこちら

アジアイトトンボ♂
写真6 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂ (再掲) 関東北部、9月

複眼の色彩:
複眼の背面は、さいたま市4月の個体では、乳濁した茶紫色;上尾市6月の個体では、透明感茶紫色;関東北部9月の個体では、焦げ茶色。

複眼の側面は、さいたま市4月の個体では、乳濁した紫;上尾市6月の個体では、やや透明な白っぽい薄紫;関東北部9月の個体では、薄い黄緑色。

胸部の色彩:
胸部淡色部の地色は、さいたま市4月の個体では、紫がかった水色;上尾市6月の個体では、薄い水色;関東北部9月の個体では、薄い黄緑色。

脚の腿節背面の黒斑は、さいたま市4月の個体では、まだ薄い;上尾市6月の個体では、はっきり黒化、ただし小斑(地理変異?);関東北部9月の個体では、はっきりとした黒色。

翅の色彩:
翅脈は、さいたま市4月の個体では、淡褐色;上尾市6月の個体では、黒色;関東北部9月の個体では、黒色、ただし前縁脈などは淡褐色。

縁紋は、さいたま市4月の個体では、灰色;上尾市6月の個体では、黒色だが周辺が少し灰色、ただし後翅の縁紋は灰色で中央が黒い;関東北部9月の個体では、黒色。

腹部の色彩:
腹部第9節背面は、さいたま市4月の個体では、灰色がっかった薄青紫;上尾市6月の個体では、ややくすんんだ薄紫味のある白色;関東北部9月の個体では、澄んだ水色。


成熟に伴う色彩変化のまとめ

以上の比較結果をまとめる前に、押さえておくことがあります。

アジアイトトンボは年に2化以上することが分かっていますので(尾園ほか、2012)、4月、6月、9月の出現順は、必ずしも羽化後の経過日数が短い順とは限りません。

また、同じ関東地方とはいえ、撮影場所が異なりますので、体色に関して地域変異が存在する可能性があります。

更に同じ撮影場所、つまり同一個体群内に、色彩の異なる遺伝子型が複数存在することがありえます。

実際、黄緑色が普通のアジアイトトンボ♂の中に、青色型も存在することが知られています(杉村ほか、1999)

カメラは同じカメラを用いましたが、撮影条件、現像条件、パソコン画面の性能の差などによっても、色彩は微妙に異なりえます。

さて、本論に戻ります。

複眼の色彩を見ると、どの種でも未成熟個体に見られる傾向である、乳濁感が4月→6月→9月の順に消失していきますので、この順に成熟度が進んでいることが強く示唆されます。

したがって、複眼背面の濃褐色、側面の黄緑色は、成熟が進むことによって発現してくるようです。

胸部淡色部の地色は、薄い水色だったものが、成熟が進むことによって薄い黄緑色へと変化するようです。

翅脈は、淡褐色だったものが、成熟が進むことによって黒色になっていきます(これは多くのトンボの種に共通)

縁紋は、灰色だったものが、成熟が進むことによって黒色になっていきます(これも多くのトンボの種に共通)

腹部第9節背面は、灰色がっかった薄青紫ったものが、成熟が進むことによって、澄んだ水色になっていくようです。

このことは、アジアイトトンボ♂が成熟すると、複眼側面や胸部側面が黄緑色になるのに対し、腹部第9節背面は澄んだ水色になるという、目立つ色をコーディネートさせる形で「変身」することがわかります。


引用文献

尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012) 『日本のトンボ』 文一総合出版。

杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司 (1999) 『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』。北海道大学図書刊行会。


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2018-03-28 (Wed)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征では、初対面の種を含む多くのトンボとの出会いがありました(関連記事はこちら)。

最初に訪れた生息地(溜池A写真13)で観察されたトンボのキャスト紹介もいよいよ大詰め、第七報の今回は、ムスジイトトンボ Paracercion melanotum (Selys, 1876) と、同じイトトンボ科の混住者アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis (Rambur, 1842) アジアイトトンボ Ischnura asiatica (Brauer, 1865) を取り上げます。


目 次:
 ◆ムスジイトトンボとの出会い
 ◆ムスジイトトンボの交尾カップル
 ◆アオモンイトトンボ、大石にとまる
 ◆花を抱くアジアイトトンボ
 ◆アジアイトトンボ♀の身づくろい
 ◆最初の訪問地で見られた均翅亜目のまとめ
 ◆ムスジイトトンボの、類似種との区別点
 ◆謝辞
 ◆引用文献


ムスジイトトンボとの出会い

午前10時の少し前、岸近くの浮葉・沈水植物帯では、オオキトンボ連結ペアの、産卵するでもなく、交尾するでもない動きがありました(こちらの過去記事の写真4,5を参照)。

その現場から視線を少し左にずらしたところ、スラリとしたボディーを鮮やかなブルーと黒でコーディネートしたイトトンボが目に入りました(午前9時58分)。

ムスジイトトンボと私との初めての出会いです(写真1)。

ムスジイトトンボ♂ 
写真1 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum ♂(写真はクリックで拡大します)

そのムスジイトトンボの♂は、ヒルムシロ属 Potamogeton の水に半分以上浸かった花穂にとまっていました。

このあたりの水草に産卵しにやってくる♀を、待ち受けているに違いありません。

ムスジイトトンボの、類似種(四国地方で分布が重なるクロイトトンボ属 Paracercion アオモンイトトンボ属 Ischnura の種)との区別点については、この記事の末尾の「ムスジイトトンボの類似種との区別点」の項で一括記述します。

他にもこのトンボはいないかと、沈水植物帯上で視線をスライドさせると、案の定、いました(写真2)。

ムスジイトトンボ♂ 
写真2 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum  (別個体)

こちらは沈水植物(タヌキモ属 Utricularia?)の、水面ひたひたの葉にとまっています。

つま先から踵(かかと)あたりまで水びたしですが、へっちゃらのようです。

拡大して見ると、顔面や翅胸前面などに長毛が生えていて、少々驚かされます。

右中脚基部と右後脚基部の中間に、ミズダニと思われる茶色の半球状の物が付着しています。

おや、後脚を延ばして、体全体を前傾させました(写真3)。

ムスジイトトンボ♂ 
写真3 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum ♂ (写真2と同一個体)

何かに反応したのでしょう、すぐにでも飛び立てるかのような姿勢です。

しかし、すぐに体を水平に戻しました。

そして、水に浸った水草の上を横方向に少し歩いて、体軸をやや左向きに変えました(写真4)。

ムスジイトトンボ♂ 
写真4 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum ♂(同一個体)

こちらのほうが足場がよりしっかりしていそうです。

写真5は、他のトンボを観察した後の11時37分頃、沈水植物(タヌキモ属 Utricularia?)の花茎の先端にとまっていたムスジイトトンボ♂です。

ムシジイトトンボ♂ 
写真5 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum ♂ 別個体

花にはピントが合っていますが、顔や複眼がぼやけて撮れたのは少々残念です。

それでも、種の同定に援用できる前頭部の黒斑はしっかり写っていました(詳細は文末の「ムスジイトトンボの類似種との区別点」の項で)。


ムスジイトトンボの交尾カップル

10時34分頃、岸上の草にとまって交尾していたオオキトンボの観察を切り上げて、浮葉・沈水植物体に目を向けると、少し離れたヒシ属 Trapa の浮葉の上で、ムスジイトトンボが交尾しています(写真6)。

ムスジイトトンボ交尾 
写真6 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum 交尾ペアと単独♂

同じ株から広がった別の浮葉上には、2頭の同種♂がとまっていて、更にもう1♂がやって来てとまろうとしています。

しかし、交尾中のカップルを邪魔するでもなく、じっとしています。

このカップルが離別するのを待っているのでしょうか(笑)?

カップルのほうは、落ち着かないのでしょうか、何度か軽く飛び上がってはとまり替えています(写真7)。

ムスジイトトンボ交尾 
写真7 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum 交尾ペア(同一)と単独♂

隣の独身者が少々気になりますが、交尾は続きます(写真8)。

ムスジイトトンボ交尾 
写真8 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum 交尾ペア(同一)と単独♂

おっと、今度はパートナー♂が♀を吊り上げています(写真9)。

ムスジイトトンボ交尾 
写真9 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum 交尾ペア(同一)と単独♂(同一)

しばらくすると、また少し飛び上がりました(写真10)。

ムスジイトトンボ交尾 
写真10 ムスジイトトンボ Paracercion melanotum 交尾ペア(同一)と単独♂

この溜池には次から次へといろいろなトンボが現れるので、ムスジイトトンボの観察はこのくらいにして、堤体側の岸上に視線を向けました。

※シリーズ記事の第四報で取り上げた、リスアカネの打空産卵(関連過去記事はこちら)を観察したのは、このタイミングでした。


アオモンイトトンボ、大石にとまる

更に岸上で視線を降ると、大きな石の上に、低木の影に隠れるようにイトトンボがとまっています(写真11)。

アオモンイトトンボ♂ 
写真11 アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis 

アオモンイトトンボ♂です。

このトンボが石の上というのは、ちょっと珍しい。

※アオモンイトトンボについての過去記事一覧はこちらです。


花を抱くアジアイトトンボ

ふたたび沈水植物体に視線を向けると、おや、また別のイトトンボがいます(写真12)。

アジアイトトンボ♂ 
写真12 アジアイトトンボ Ischnura asiatica

今度は、アジアイトトンボの♂です。

沈水植物(タヌキモ属 Utricularia?)の水面上に突き出した花茎の先端にとまっています。


アジアイトトンボ♀の身づくろい

振り返って、岸上を見渡すと、大石をバックに、横倒しの草の茎に水平にイトトンボがとまっています(写真13)。

アジアイトトンボ♀ 
写真13 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♀

こちらも、アジアイトトンボ、ただしです。

腹部上下運動(abdominal bobbing)をしています。

翅や腹部についた塵などをこすり落とす機能をもつ動作です。

このシーンでは、前後翅を大きく前後(上下)にずらし、腹部を2枚の後翅ではさんでこすっています。

同じ個体を、少し後でズームインして写したのが、写真14です。

アジアイトトンボ♀ 
写真14 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♀ (同一個体)

青と黒のコントラストを売りにしている成熟♂に比べて、成熟♀は目立たない色合いです。

写真15も同じ個体です。

アジアイトトンボ♀ 
写真15 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♀ (同一個体)

この写真の前後2,3枚も同様の姿勢だったことから、腹部上下運動は終っていて、通常の静止状態であることがわかります。

腹が少し曲がったままのところからは、リラックスした感じが伝わって来ます。

※アジアイトトンボについての過去記事一覧はこちらです。


最初の訪問地で見られた均翅亜目のまとめ

最初の訪問地である溜池A写真16)で見られたイトトンボ科は、ムスジイトトンボ、アオモンイトトンボ、アジアイトトンボの3種です。

均翅亜目のカウントには、前回記事(こちら)で取り上げたアオイトトンボ Lestes sponsa (Hansemann, 1823)が加わり、4種となりました。

溜池その1 
写真16 最初の観察地(溜池A)(再掲)。

溜池Aのトンボ生息地としての特徴については、本シリーズ第一報で簡単に紹介しています。

本シリーズ、次回記事では、カトリヤンマとオニヤンマを取り上げる予定です。


ムスジイトトンボの、類似種との区別点

ムスジイトトンボは、宮城県以西の低地で分布が重なる、同属(クロイトトンボ属 Paracercion)のオオイトトンボセスジイトトンボクロイトトンボと形態がよく似ていますし、見る角度によっては別属(アオモンイトトンボ属Ischnura)のアオモンイトトンボアジアイトトンボと紛らわしい場合もありますので、慎重に同定する必要があります。

以下、浜田・井上(1985)、杉村ほか(1999)および尾園ほか(2012)を参考に、成熟♂における、本種と上記の類似種との区別点を整理しておきます。

文中で、各トンボの和名をクリックすると、当ブログのアルバムから選ばれた成熟成虫写真表示されます。

頭部:
オオイトトンボセスジイトトンボ複眼が若干緑がかった青色、クロイトトンボの複眼が背面が黒色、下(腹)面が緑がかった灰褐色なのに対し、ムスジイトトンボの複眼は緑味のない青色です。

オオイトトンボセスジイトトンボ眼後紋(後頭部に左右1対ある淡色斑)は大きな太めの三角形ですが、ムスジイトトンボの眼後紋は細くて横長、あるいはクロイトトンボのように小さくなっています。

オオイトトンボセスジイトトンボには後頭条(後頭部後縁にあり、左右の眼後紋をつなぐ淡色紋)がありますが、ムスジイトトンボクロイトトンボにはないのが普通です。

写真5のムスジイトトンボを拡大して見ると、青色の頭頂部の前縁中央に横長の小黒斑が見えます。この小黒斑は、同属のセスジイトトンボやオオセスジイトトンボには存在しますが、クロイトトンボやオオイトトンボには見られません。

胸部など:
クロイトトンボのでは胸部や腹基部、脚などに青白い粉が吹きますが、ムスジイトトンボオオイトトンボセスジイトトンボでは、そのようなことはありません。

腹部:
クロイトトンボでは腹部第10節が黒く、青色の第8、9節背面に目立つ黒斑があるのに対し、ムスジイトトンボでは腹部第8、9、10節は青一色です(ただし、10節背面に小黒斑が見られる個体もあり)。

オオイトトンボでは腹部8、10節背面に小黒斑があり、セスジイトトンボでも8、10節背面に小黒斑があったりなかったりですが、いずれも第9節に黒斑はありません。

アオモンイトトンボ属の類似種とムスジイトトンボとは、腹部第8、9、10節の黒斑の現れ方で容易に区別できます。

すなわち、アオモンイトトンボでは腹部第9、10節背面に大きな黒斑があるため第8節背面のみが青く見え、アジアイトトンボでは腹部第8、10節背面が黒色のため、第9節背面のみが青く見えます。

以上、いずれも成熟♂についての区別点ですので、♀や未成熟の♂には、当てはまりません。


謝辞:
現地で案内して下さった飯田貢さん、高橋士朗さん、他の皆さんに謝意を表したいと思います。


引用文献:

浜田 康・井上 清 (1985) 日本産トンボ大図鑑。講談社。

尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012) 『日本のトンボ』 文一総合出版。

杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司 (1999) 『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』。北海道大学図書刊行会。


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2015-11-01 (Sun)
もう11月、早いものですね。

新着記事までもう少々おまちください。

以上、広告対策でした。

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