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2017-11-18 (Sat)
11 月 11 ~12 日に、滋賀県立琵琶湖博物館で開催された、2017 年度日本トンボ学会大会(滋賀大会)に参加してきました。

以下、その時の感想(矢印以下)を研究発表&シンポジウムのプログラムに沿ってご紹介します(文中、敬称略)。


研究発表:
一般講演:
北山 拓:「2017 年のオナガアカネマーキング調査および飛来ルートの推定」
 → 気象データの詳細な分析による飛来ルートの推定。マーキングは移動先では未発見。今後、地元マスコミや小中学生を巻き込んだ移動調査が期待される。

喜多章仁・中原正登・大石寛貴:「佐賀県における近年のトンボ動態―多布施川流域における2000 年と近年の調査を例に」
 → 中期スパンでの広域的再調査でトンボ群集の変遷がとらえられている。幼虫・羽化殻の定量化も課題にしているとのことで、大変な労力を要する研究だが、成果が期待される。

大石寛貴・喜多章仁・徳田誠:「佐賀平野の止水域におけるトンボ相の地点間比較」
 → トンボの種数・個体数減少に及ぼす農薬類の影響を定量的に評価しようという意欲的研究である。

生方秀紀:「トンボを含む絶滅危惧昆虫の個体群絶滅に及ぼす採集圧の影響についての一考察」
 → これについては、当ブログの次回以降の記事で少し詳しく紹介する予定。

苅部治紀:「2017 年の大干ばつが小笠原の固有トンボに与えた影響」
 → 固有種昆虫の強力な天敵となったグリーンアノールの拡散防止や止水性トンボの繁殖槽設置など、現地でのトンボ保全に精力的に取り組んでいる演者による、小笠原のトンボの切実な生息状況の報告。

村木明雄:「Macromia flavocolorata Fraser, 1922 とM. calliope Ris, 1916 の比較」
 → コヤマトンボ属のこの両種について、これまでの知見や標本の形態の詳細な比較検討によって明らかになった相違を報告

片谷直治:「ハッチョウトンボの学名について」
 → 日本産ハッチョウトンボの学名は、私を含めてトンボ研究者・愛好家はNannophya pygmaea Rambur, 1842と信じて疑っていなかったが、形態の詳細な比較検討およびDNA分析の結果から、同属の別種に該当し、そちらの学名を充てるべきであるという提案である。

ポスター発表:
清 拓哉・片谷直治:「ベトナムおよびミャンマーからのヤンマ科の1 新属2 新種について」
 → ヤンマ科の現存属に属さない東南アジア産2新種の形態的特徴をまとめて、新しい属を立てるべきとしている。

森野光太郎・池野英利:「兵庫県南部の2 地域におけるギンヤンマ属幼虫の分布と生活史」
 → 3地点のため池でギンヤンマとクロスジギンヤンマの幼虫生活史を追跡し、それぞれの羽化時期、幼虫の年級群の成長を定量的に明らかにしている。

久松定智・武智礼央・村上裕・黒河由佳・松井宏光:「愛媛県におけるオオキトンボの生活史について」
 → 羽化殻、成虫個体数の定期・定量調査の結果を報告している。成虫は十分に観察されたにもかかわらず、羽化が見られない生息地の例もあることから、一般に行われている成虫だけの調査への警告にもなっている。

福井順治:「静岡のルリボシヤンマとオオルリボシヤンマ」
 → 県内の垂直・水平分布、シベリア・極東ロシアのタイリクオオルリボシヤンマの形態・生態との比較。

白神慶太・白神大輝:「琵琶湖の絶滅危惧種トンボの研究 2012~2017<タイトル一部省略>
 → サナエトンボ科同属2種の羽化パターンの違い、うち1種は翅の反射光の性質が残り1種と明確に異なっていることを明らかにし、これが繁殖行動の際の種識別に役立っていると考察している。中学3年生、小学6年生の発表。末恐ろしい、いや、大変楽しみである。

井野勝行:<タイトル省略>
 → 絶滅危惧種のトンボ生息地に公共工事の計画があることから、希少野生生物保護の立場から行政に対して発言している事例の報告。


シンポジウム:
「2010 年代の滋賀県のトンボ ~1990 年代からの変遷と未来~」

【講演1】
 河瀬直幹:「2010 年代の滋賀県のトンボ ~1990 年代からの変遷~」
 → 過去20年の間のトンボ生息状況の変化を、県内を碁盤目状に区切った各マス目を調査して、それぞれのトンボの種の存否を確認した結果の総括である。水田地帯でのトンボの減少ぶりが印象的であった。琵琶湖の対岸にある山間部に遠路回り込んでの調査や、すでにトンボに不適になった環境にもゼロデータを押さえるために調査にいくなどの苦労が伺えた。トンボ関係者が高齢化する中で、今回の調査グループを立ち上げたことは、他の都道府県でも参考になろう。

【講演2】
牛島釈広:「意外な所にトンボが生き残っている!?~企業におけるトンボ調査と保全活動~」
 → 21世紀に入り、企業にも会社の利益追求だけでなく社会的責任Corporate social responsibility(CSR) を果たす自覚がもとめられるようになっていることから、トンボの棲めるビオトープなどの造成の事例が増加している。トンボ研究者もこのような社会の動きと連携することの必要性、メリットがあることが提案された。

【パネルディスカッション】
「滋賀県のトンボの未来 (滋賀トンボ調査グループの成果から)」
 司会進行:河瀬直幹
 パネラー:牛島釈広、苅部治紀、白神慶太、白神宏恵、八尋克郎
 → パネラーからそれぞれの立場・見識に基づいて、今回の調査成果の評価や今後の保全の在り方について感想や提言が述べられた。また、フロアからもいくつか重要なコメントが提出された。今後の都道府県単位でのトンボ調査・保全活動の参考になる、有意義なシンポジウムであった。


全体の印象

昆虫学関連学会の会員構成の高齢化が指摘されるようになって久しいですが、今回の研究発表13件のうち5件ほどが10歳台から30歳前後と、若手の会員(新会員含む)が主たる発表者となっていて、大変フレッシュな印象でした。

かくいう私は、発表者の中では最年長となっていましたが、まだまだ老け込む年ではありません。

というのも、私よりも2回り以上も年長の井上清・元会長は今回、『トンボのすべて―増補・世界のトンボ(外部リンク:目次が掲載されているので採用)』(新装改訂版:井上清・谷幸三著:2017年 6月 1日 トンボ出版 刊)をひっさげて大会に参加されているからです。目次はこちら(外部リンク)。

老いも若きも隔てなく、切磋琢磨し、刺激しあうことで、とりわけ、フィールド系の学問は進歩していくに違いありません。


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2017-10-19 (Thu)

トンボ自然史研究所のツイッターを始めました。

https://twitter.com/dranathis

フェイスブック同様、当ブログ更新情報ならびに、私(生方秀紀:当研究所代表)の動向の発信が中心になります。

当ブログに興味をお持ちのツイッター・ユーザーの皆様、フォローを歓迎いたします、


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2016-01-28 (Thu)
フェイスブック(FB)を始めて足掛け2年目に突入。

海外のトンボ仲間数人のFBともリンクしているので、ときどき海外のトンボ情報もはいってきます。

年明けからマダガスカルからのトンボ画像のラッシュに遭遇。
とりわけ、下記URLの1シーンに目は釘づけ。

https://www.flickr.com/photos/23985726@N05/24092758639/

Erland Refling Nielsen さんが撮影された、トンボ科のThermorthemis madagascariensisの産卵行動です。

Nielsen さん撮影の動画を拝見したところ、次のような興味深い産卵行動をしていることがわかりました。
ホバリングしている♀が腹をゴルフのクラブのようにスイングして腹端で水面の水をかすめるように掬うと同時に岸方向に放り投げます。
これをすばらしい速度で繰りかえすことで、水につつまれた卵が岸辺の草むらにばらまかれます。

これにより、卵が流れさったり、他の動物に食われたりするのを防ぐことができるのでしょう。
もちろん、岸辺の草むらにも捕食者はいるでしょうが、相対的な危険度が低い(低かった)ことから進化した行動と思われます。

これ以外にも、固有種率の高いマダガスカルのトンボの記録種のうちの半数が、Nielsenさんの参加されたこのマダガスカル・トンボ・ツアーで観察されたのだそうです。

このツアーはスゥエーデン在住の旅行業Phil Bensteadさんが企画・催行した2週間のトンボ三昧
http://odonatours.com/tours/madagascar%202016.html
で、なんとアフリカのトンボ相研究の若き大家Klaas-Douwe B. Dijkstraさんが解説者として同行されたとのこと。

また、参加者の中には北中米のトンボ相研究の大家Dennis Paulsonさん
https://www.facebook.com/dennis.paulson.10/posts/874390012678268?pnref=story
もはいっておられて、場所といい、解説陣といい、超豪華なトンボツアーなのでした。

私も事前に催行を知っていたら、参加しようかと考えあぐねるところでしたが、費用をチェックしたとたんにあきらめたに違いありません。
なにせ、往復の航空券代のほかに現地参加費だけで60万円はかかりますので。


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2014-11-21 (Fri)
11月15日~16日に、兵庫県三田市の兵庫県立人と自然の博物館で開催された、2014年度日本トンボ学会大会に参加してきました。

9件の口頭発表、2件のポスター発表があり、その中にはトンボの遺伝子解析の新たな手法の紹介(二橋亮氏)や、アメリカザリガニの個体群爆発によるベッコウトンボ個体群の絶滅事例の紹介(苅部治紀氏ほか)などもあり、大変刺激的でした。

私も、トンボ群集のモニタリングを持続可能にするためのプロトコールについて(倉内洋平氏と共同で)発表しました。

次回以降の記事で、強く印象に残った発表および私自身の発表の要点をご紹介したいと思います。

※大会実行委員会の皆様、会場のスタッフの方々にはお世話になりました。


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