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2019-04-06 (Sat)
関東地方南部では、満開のソメイヨシノが本格的な春の到来を告げています。

花の便りのラッシュと合わせるように、オツネントンボを始めとした虫達は越冬を終え、第二の人生(というより虫生)をリスタートしていることでしょう。

そんな中、いささか出遅れ気味ですが、「ブログに山のことばかり書いていてはいかん」と、一昨日(4月4日)、快晴のもと埼玉県西部の低山地に虫探しに出かけ、テングチョウ Libythea celtis (Laicharting, 1782)写真1)、ビロードツリアブ Bombylius major Linnaeus, 1858 ほかの虫達を観察することができました。

テングチョウ 
写真1 テングチョウ Libythea celtis ♂ (写真はクリックで拡大します)

オツネントンボとの対面を期待していた最初の訪問地(溜池A;過去に観察例あり)には午前9時過ぎに到着しましたが、ハエ目やチョウ目の虫達が活発に飛び回っていたにもかかわらず、1頭のトンボの姿もありません。

というわけで、次の目的地(山地渓流C)に向かいました。

写真2は、ヒノキが植林された山地渓流Cの景観です。

関東山地の渓流(背景はヒノキ林) 
写真2 関東山地の渓流(背景はヒノキ林)

この渓流に下りる前の草むら(写真2の右)に、活発に飛んだり、とまったりしている中型の蝶がいました(午前11時)。

それが写真1テングチョウ♂です。

テングチョウ 
写真1(再掲) テングチョウ Libythea celtis 

チョウも写真から性別を判定しやすい仲間です。「yoda-1」 さん(2012)の記事を参考にし、以下の点で写真1の蝶がであると判定できました。

(1)前翅端および(3)後翅肛角の角度が鈍角よりも直角であること、(2)後翅外縁の直線部のが長いこと、(4)前翅表の第三翅脈上の橙色斑紋が小さく、外縁までの距離が斑紋サイズ比で大きいこと。

テングチョウという和名は、顔の前方に突き出した長い鼻のような突起(下唇髭:パルピ)に由来しています。

その鼻を出し抜くようにスーッと前方に真っ直ぐ伸びた触角も印象的です。

写真1を撮る数秒前に、この個体は写真3a,bのような面白い仕草を見せました。

テングチョウ触角清掃(多分) 
写真3a(左),写真3b(右) テングチョウ Libythea celtis の体清掃

このとき、直前まで真っ直ぐ前に伸ばしていた触角(写真4a)が、写真3aでは少し開き気味に下方に倒れていて、頭部はお辞儀をするように下方に曲げられているだけでなく、頭部の右が下で左が上になるように少し首を捻っています。

写真3aでは、左右の下唇髭の隙間が少し拡がり、その隙間に割り込むように左右の触角と頭部の右半分が下方に倒れ込んでいます。

写真3bは、(ほんの1秒程度で)上記の動作が終り、元の真っ直ぐの姿勢に戻る途中です。

写真3bで、左右の触角はもう少しで真っ直ぐ前方というところまで戻りかけていますが、左右の下唇髭の開きはまだほぼそのままです。

つまり、少し遅れて戻す(左右の隙間を狭くする)ことがわかります。

そして右前脚と思われる付属肢が右斜め前方に持ち上げられていますが、これはもっと高く持ち上げられていた脚が下方に戻る途中と考えられます。

写真3aでは、この脚の跗節が右下唇髭の陰(向こう側)で頭部(右複眼)の側面・背面をこすって、そこに付着した微小なゴミを払っている(つまり体清掃をしている)ものと想像されます。

写真4a、bは、図3a,bの直前と直後におけるこの個体の頭部付近の拡大です。

テングチョウ触角清掃(多分)の前後 
写真4a(左)テングチョウ Libythea celtis ♂の体清掃の直前;写真4b(右)その直後

写真3bから1秒も経過していない写真4bでは、頭部の下方への傾きや捻りはほとんどなくなっています。
触角は更に前方真っ直ぐに近づき、もう少しで元にもどります。
また、下唇髭の開きの角度もより小さくなっています。

写真3aより2秒前(体清掃動作開始直前)の写真4aでは、頭部は真っ直ぐ前を剥き、触角ほぼピッタリと閉じて、これも真っ直ぐ前方に向いています。
だだし、下唇髭の左右の隙間は拡がり始めています。

写真3a、bで頭部が下方に少し傾いていますが、下唇髭はそれほど下がっていません。
これは、とりわけ下唇髭を基部のジョイント部で強く折り曲げて、右に強く開きながら、上方に精一杯振り上げていると考えられます。

それにしても、さすが天狗さん、烏帽子(頭頂部)を手(前脚)でこするのに鼻(下唇髭)が邪魔になるので、鼻を真っ二つに左右に割って烏帽子を下に垂らすとは!

トンボも、よく前脚で大きな複眼や触角のブラッシングをしますが、テングチョウの場合はブラッシングの様子が分かりにくすぎます(笑)。


ビロードツリアブ

この渓流の畔の湿った土や落葉枝の1~3cm上空をせわしなく小刻みに移動しながら、ホバリングを繰り返しているツリアブの仲間がいました(写真5、6)。

帰宅後、画像検索等により、ビロードツリアブであることがわかりました。

ビロードツリアブ 
写真5 ビロードツリアブ Bombylius major の飛ぶ流畔

ビロードツリアブ 
写真6 ビロードツリアブ Bombylius major ♀(トリミング)

左右の複眼がくっついているのが♂、離れているのが♀なのだそうです(参考:生き物たちの物語、2019 アクセス)。

非常に♂♀の区別がしやすいグループです。

トンボ(不均翅亜目)では左右の複眼がくっつくか、そうでないかは科(つまり、より上位分類群)の区別点の一つなのでちょっとした驚きです。

ビロードツリアブの幼虫は、ヒメハナバチ科 Andrenidae の昆虫の巣に寄生して、このハチの幼虫捕食することが知られています。

以下、藤井さん(広島市森林公園こんちゅう館)(2018)の記事から抜粋・引用します。

「<前略>ヒメハナバチたちが子育てのため土を掘って作った縦穴の中に、ビロウドツリアブのメスはホバリングしながら爆撃機のように卵を産み落とします。」

「うまく穴の中に入った卵からふ化した幼虫は、ヒメハナバチが用意した安全な地下トンネルの中で、彼らの幼虫を食べて育つのです。」

「彼らの卵の爆撃はあまり命中率が高くないので、子孫を残すために何度も何度も爆撃をくり返さなくてはいけません。<後略>」

写真5でわかるように渓流の水辺なので、土は水びたしであることから、ヒメハナバチの巣を見つけてホバリングしているのではなく、この時は、小さな水たまりに口吻をつけて水分補給をしようとしていたのかもしれません。

ヒメハナバチは、私の大学院時代の恩師である坂上昭一先生(故人)の研究対象の一群ですので、先生あるいは共同研究者の論文を読めば、この、にっくきビロードツリアブによるハチ家族の被害の様子や、その被害を最小限にするためのハチの適応行動のことが書かれているかもしれません。機会があったら読んでみたいと思います。


引用文献:

藤井(広島市森林公園こんちゅう館)(2018)昆虫の話:ふわふわ飛行体。緑化だより、No. 137:3.
https://ryokka-c.jp/info3/wp-content/uploads/2018/11/137H30.4.pdf

生き物たちの物語 ほくせつのいきもの(2019 アクセス)ビロードツリアブ
(ビロウドツリアブ).

http://www.hokusetsu-ikimono.com/iki-h/biroudoturiabu/index.htm
yoda-1(2012):蝶鳥ウォッチング:テングチョウ 雌雄比較図 Ver.1.1  https://yoda1.exblog.jp/14932522/


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2016-04-27 (Wed)
春ですね。

自宅の庭のプランターに去年植えたホメリア(南アフリカ原産)たちもスラリと首を伸ばし、陽気に花を咲かせています。

朝、食事をしているとベランダの窓越しに、そのホメリアの花から花へとせわしなく飛び回る黒色系の蝶が目にはいりました。
たいていの蝶は、まもなくするとどこかへ飛び去ってしまうのですが、今回のこの蝶はなかなか離れません。
それならと、食事を中断し、一眼レフを首にかけて玄関をくぐり、現場へ直行。

間に合いました。
例によってISO感度やシャッター速度を調整しながら、バシャバシャとシャッターを押します。
そのうちの、比較的よくとれた2枚をまず、ご覧いただきます(写真1,2)。

Papilio protenor_160426_1
 写真1.ホメリアから吸蜜するクロアゲハPapilio protenor春型雌、その1
    (クリックで拡大します。以下同様)

Papilio protenor_160426_2
 写真2.ホメリアから吸蜜するクロアゲハPapilio protenor春型雌、その2

そうこうするうちに、この花が8株程度生えそろっているプランターでのとまり替えをやめ、1,2メートル離れたバラの枝葉にとまり、翅を拡げました(写真3)。

Papilio protenor160426_3
 写真3.バラの枝葉上で休息するクロアゲハPapilio protenor春型雌、その2

吸蜜を繰り返している間は翅をバタバタさせていて、両翅の表面が同時に写った写真はとれませんでしたが、バラの葉の上では、どうぞご覧くださいとばかりに、ポーズを決めてくれました。

図鑑とフェイスブック上の友人に相談した結果、クロアゲハPapilio protenor春型の雌でまちがいないことがわかりました。

雌だけに、腹部がレモンの実のように膨れていて、中に卵またはその前段階の細胞がたっぷりあることを思わせます。

写真をじっくり見直すと、写真をとっているときには気づかなかったことが見えてきます。

写真1では右前脚がホメリアの雄蕊に添えられています。
ムチのようにしなやかに曲がりながら一番深いところの蜜をさぐる口吻が挿入しやすいように、雄蕊をかきわけているかのようです。
しかし、よく見ると雄蕊は互いに癒合して太い管のようになっていて、簡単にまがるような代物ではなさそうです。
結局、蝶がぱっととまりかえたときに、たまたま爪がかかったのがこの蝶の右前脚の場合は雄蕊だったということのようです。

写真2では、口吻の先がいとも簡単に一番深い蜜腺のあたりに届いている様子がわかります。

写真3を拡大すると、左触角の中ほどに黄色い小さな粒がついているのが見えます(ブログ写真では厳しいかもしれません)。
触角も雄蕊に触れることがありますので、これは花粉でしょう。

他の写真の拡大では脚にも花粉らしきものがついていました。

蜜をもらい、お返しに花粉を運んであげる-いい関係ですね。

神がつくったかのような麗しい関係ですが、これも互いに騙し騙されの繰りかえしの中で進化的に安定なかたちにおさまっただけというのが進化学に立脚した生態学からの観方です。


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