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2018-12-26 (Wed)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征*の2日目は、地元の昆虫研究家、飯田貢さんらのご案内のもと、4カ所を順に訪れ、南国のトンボ、ベニトンボを含む多様な虫達との出会いを経験することができました。

(* この四国でのトンボ探訪記は、シリーズ物として、これまでに21編の記事にしています[記事一覧はこちら])。

第22報の今回は、この日4番目(最後)の訪問地と、そこに行く途中の昼食休憩地で観察した、トンボ以外の昆虫たちを取り上げます。


目 次
◆エンマコオロギ
◆トノサマバッタ
◆カシワスカシバ 
◆オオカマキリ
◆次回記事予告
◆謝辞
◆引用文献


エンマコオロギ

まずは、4番目の訪問地で撮影した、エンマコオロギ Teleogryllus emmaです(写真1)。

エンマコオロギ♀ 
写真1 エンマコオロギ Teleogryllus emma ♀ (写真はクリックで拡大します)

前回記事のマユタテアカネを撮影した直後に、道端のちょっとした斜面をチョコチョコ歩くコオロギを発見しました。

私のカメラの接近に気づいたのか、枯れ草の隙間にしがみついて、少なくとも8秒間そのまま動かないでいました。

※ 同じコオロギ科に属するマダラスズについては、私も共著者の一人として論文(Masaki et al. 2017)を発表したことがあり、当ブログでも数回過去記事に登場していますが、和名にコオロギとつくものは今回が初登場となりました。

数枚写真を撮った後、渓流畔に下りて、ヤゴを漁る飯田さんの姿にレンズを向けたのを皮切りに、飯田さん採集のヤゴの観察・撮影に専念しました(こちらの過去記事参照)。

帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にし、写真1の個体をエンマコオロギの♀と同定しました。

※ 同定の参考にした主なサイト:
 昆虫エクスプローラ
:コオロギ・マツムシ図鑑
(11種類)
 http://www.insects.jp/konbuntykkoor.htm


トノサマバッタ

この日、第三の訪問地から第四の訪問地に車で移動の途中、飯田さんらに山村の風景に溶け込んだ蕎麦屋に案内され、こだわりの味の一膳を3人の仲間と一緒にしばし味わいました。

食後の麦茶をすすったあと店を出て、駐車した場所に戻る途中、同行の高橋賢悟さんが何かを見付けて立ち止まりました。

そして「跳ねないで~」といいながらカメラを向けています。

それは、舗装された路上にたたずむ、やや大き目のバッタでした(写真2)。

トノサマバッタ 
写真2 トノサマバッタ Locusta migratoria

「トノサマバッタですね~」と飯田さん。

帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にして検討した結果、やはりトノサマバッタ Locusta migratoriaであることがわかりました。

※ バッタといえば、私が大学教員をしていた時に、卒業研究でバッタ類(バッタ目[直翅目])の生態をテーマにしたいという学生がいて、調査方法や調査地の設定、標本の同定、データの分析方法などを私が指導したことがありました(山本・生方 2009)。ただし、そのデータにはトノサマバッタは含まれていません。

※ 写真2の個体の同定で参考にした主なサイト:
昆虫エクスプローラ:バッタ図鑑|トノサマバッタ亜科(9種類)
http://www.insects.jp/konbuntykbatta.htm

※ トノサマバッタ♂♀判別の参考サイト:
The Australian Government Department of Agriculture and Water Resources: About locusts.
http://www.agriculture.gov.au/pests-diseases-weeds/locusts/about/about_locusts


カシワスカシバ 

バッタの写真を撮っていると、同行の山本桂子さんから「ほらほら、これ見てー!」と声がかかりました。

振り返ると、道端の草の葉にスズメバチそっくりな虫(写真3)がとまっています。

カシワスカシバ♀ 
カシワスカシバ Scasiba rhynchioides

ほんとうにスズメバチによく似ています。

スズメバチと区別つかないように見えたのは最初だけで、近くでよく見ると、頭部・胸部がふさふさとした毛で覆われています。

私もその場で、蛾の仲間にスズメバチに擬態するのがいるという豆知識のはいった記憶の抽斗(ひきだし)が開きました。

「スズメバチそっくりだけれど、蛾の仲間でしょ、これ?」、と私。

「スカシバの1種ですね。」と飯田さん。

※ さすがに、昆虫観察者にポイントを押さえた観方をされたのでは、擬態者の化けの皮がはがれるというものです。

それでも、蛾類をメニューに加えている、鳥などの天敵の眼を欺くには十分でしょう。

循環論法になりますが、それだからこそこのような目立つ色彩をしながらも、敵だらけの生態系の中で生き長らえているというものでしょう。

探虫団が取り囲んだのを察知したのか、この虫は飛び立ち、路面に下りて、車道の車の下に入り込みました。

飯田さんは路面に腹ばいになって、車の下のこの虫をレンズで追いかけています(さすがセミプロ!)。

まもなくすると、飛び立ち、道端の丸太の断面にとまりました(写真3)。

これも、帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にし、カシワスカシバ Scasiba rhynchioides の♀と同定しました。

※ 同定の参考にした主なサイト:
みんなで作る日本産蛾類図鑑:49.スカシバガ科 スカシバガ亜科 成虫縮小画像一覧
http://www.jpmoth.org/Sesiidae/Sesiinae/F0000Thumb.html


オオカマキリ

このスカシバの観察を終えて車に乗り込もうとする私達に、「僕もいるんだけど~」とつぶやいているかのように視線を送る昆虫がいました。

カマキリです。

オオカマキリ♂ 
オオカマキリ Tenodera sinensis 

「僕もいるんだけど~」は、「日本むしむし話」風の表現。

より生物学的に意味のある比喩に置き換えるなら、「僕に手をだすんじゃないだろうな?そしたら、ただじゃおかないぞ」とつぶやくかのような眼でこちらを睨んでる、といったところでしょう。

「何もしないよ~」となだめながら、カメラのオートフォーカスを合わせる私。

さて、カマキリといっても何種類もいます。

何カマキリでしょう?

写真を何枚か撮っておけば帰宅後のネット検索で種名はわかるだろうと、高を括っていたのですが、このカマキリの同定には、思いのほか難儀しました。

その概形からオオカマキリ Tenodera sinensis チョウセンカマキリ Tenodera angustipennis のいずれか、というところまでは割合早くわかったのですが(下記参考サイトA)、その後が微妙です。

胴体を手でつかんで持ち上げて、腹側を写しておけば、脚の基部の色から両種の区別は簡単につくことを知ったのですが、それは後の祭り。

そこでネット検索でヒットした、カマキリとチョウセンカマキリの見分け方(下記参考サイトB,C)を参考にして検討した結果、どうやらオオカマキリらしいという結論となりました。

前頭部中央濃色ラインは細く一様で、チョウセンカマキリのように中央部で太くなく、両側の濃色ラインに匹敵するほどでもない(下記参考サイトB)、というオオカマキリの特徴にほぼ一致しました。

また、頭楯・上唇中央の淡色ラインは広く、チョウセンカマキリのように頭楯部分で細くはならないという点(下記参考サイトB)、でもオオカマキリの特徴にほぼ一致しました。

「胸部」(前胸)の長さの、「胴部」(中胸以降、腹端と翅端の長い方)の長さに対する比率の平均は、♂の場合、オオカマキリで0.41、チョウセンカマキリで0.51なのだそうです(下記参考サイトC)。

今回撮影したカマキリでは、0.43と、オオカマキリに近い値となりました。

ただし、「胸部」(前胸)の前方が少し持ち上がっているために、上方から撮影したこの写真では、「胸部」(前胸)が相対的に短く写っている可能性が高く、実際の比率はもう少し高いかもしれません。

※ 同定の参考にした主なサイト(A)
昆虫エクスプローラ:カマキリ目(蟷螂目)[カマキリ図鑑](7種類)
http://www.insects.jp/konbunkama.htm

※ オオカマキリ vs. チョウセンカマキリの比較検討の参考サイト(B):
蝶鳥ウォッチング:類似☆ オオカマキリ × チョウセンカマキリ 比較図Ⅰver.1.1 
https://yoda1.exblog.jp/14108584/

※ オオカマキリ vs. チョウセンカマキリの比較検討の参考サイト(C):
蝶鳥ウォッチング:類似2☆ オオカマキリ×チョウセンカマキリ Ⅱ Ver.1.1
https://yoda1.exblog.jp/18729016/


次回記事予告

以上で、四国トンボ巡礼の現場での観察記録はすべて報告し終えました。

次回記事では、この四国トンボ巡礼中に観察された昆虫やクモのうち、擬態している種(カシワスカシバ、アカスジキンカメムシ、ヤマトシリアゲ、トリノフンダマシ)に再登場してもらい、擬態とは何かについて簡単にまとめてみたいと思います。


謝 辞

現地に案内して下さった飯田貢さん、楽しい昆虫観察を共有させて下さった山本桂子さん、高橋賢悟さんに謝意を表したいと思います。


引用文献

Sinzo Masaki, Masayuki Soma, Hidenori Ubukata, Haruo Katakura, Rie Ichihashi, Zhuqing He, Nobuaki Ichijo, Norio Kobayashi & Makio Takeda,(2017)Ground crickets singing in volcanic warm “islets” in snowy winter: Their seasonal life cycles, photoperiodic responses and origin.
Entomological Science, 19(4), 416-431.

山本冬人・生方秀紀(2009)釧路湿原周辺部における直翅目昆虫10種の環境選好性. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第41号: 97-104.
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/1133/1/kusiroron-41-08.pdf


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2018-08-20 (Mon)
今年6月上旬に栃木県の農村部の溜池群を訪れ、私とは初対面となるトラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883) を始め、数種類のトンボを観察することができました。

今回は、その溜池群のトンボについてのシリーズ記事第6報として、残りのトンボ科4種[コシアキトンボ Pseudothemis zonata (Burmeister, 1839) 、ハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra (Selys, 1878) 、シオヤトンボ Orthetrum japonicum (Uhler, 1858)、オオシオカラトンボ Orthetrum melania (Selys, 1883)]をとりあげます(シリーズ記事一覧はこちら)。

今回は1種1シーンずつの撮影でしたので、ストーリー性はありません。
代わりにといっては、なんですが、当該種の過去記事へのリンクを付記することにします。

目 次
 ◆数種のトンボ科が見られた池
 ◆コシアキトンボ
 ◆ハラビロトンボ
 ◆シオヤトンボ
 ◆オオシオカラトンボ
 ◆謝辞


種のトンボ科が見られた池

写真1は、前回記事のショウジョウトンボに加えて、今回記事のシオヤトンボとオオシオカラトンボが観察された溜池です(シリーズ第2回記事および第5回記事の池と同じ)。

トラフトンボなどが見られた溜池 
写真1 ショウジョウトンボが見られた溜池。(写真はクリックで拡大します) 

このほか、シリーズ初回記事で紹介した池ではショウジョウトンボの他にコシアキトンボとハラビロトンボが観察できました。


コシアキトンボ

まずはコシアキトンボ♂です(写真2)。

コシアキトンボ♂ 
写真2 コシアキトンボ Pseudothemis zonata  

初回記事で紹介した池で、オオヤマトンボ♂のパトロール飛行(第4報記事参照)の撮影直後に同じ岸の低木の小枝の先にとまっていました(観察2日目、‏‎11時05分)。

写真では、手前に別の虫が写り込んでいますが、昆虫なのかクモなのか、ぼやけていてわかりません。

※コシアキトンボについては、いくつかの過去記事で取り上げています:


ハラビロトンボ

次はハラビロトンボ♂です(写真3)。

ハラビロトンボ♂ 
写真3 ハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra 

初回記事で紹介した池の岸辺の草の先にとまっていました(2日目、10時18分)。

シリーズ第5-B報で取り上げた、市松模様のショウジョウトンボ♂の撮影とほぼ同時刻に同じ池で写したものです。

この個体も腹部が完全黒化する少し前の状態なのでしょう、ところどころにオレンジ色~赤色の斑点が残っています。

※ハラビロトンボの♂の黒化したものとその後の青白い白粉が吹いた個体とを並べて比較した過去記事はこちら → ハラビロトンボ:お色直しは花婿Only


シオヤトンボ

シオヤトンボ♂もいました(写真4)。

シオヤトンボ♂ 
写真4 シオヤトンボ Orthetrum japonicum 

写真1の溜池に接する林内の草地の枯草にとまっていました(観察2日目の午後1時48分)。

腹部、胸部ともしっかりと白粉が吹いています。

※シオヤトンボが主役の過去記事はこちら → シオヤトンボ:男たちの厚化粧


オオシオカラトンボ

最後は、オオシオカラトンボ♂です(写真5、6)。

オオシオカラトンボ♂ 
写真5 オオシオカラトンボ Orthetrum melania  

オオシオカラトンボ♂、上を見る 
写真6 オオシオカラトンボ Orthetrum melania ♂、上を見る (同一個体)

写真5、6とも、写真1の溜池の岸辺で、クロスジギンヤンマを撮影した少し後に撮影しました(観察初日、午後2時13分)。

写真6は、写真5と同じ個体が少し上を向いたところです。
少しユーモラスに感じたので掲げます。
当の本人(オオシオカラトンボ♂)はいたって真面目なのには違いないとは思いますが。

※オオシオカラトンボについては、いくつかの過去記事で取り上げています:

以上で、この溜池群で今回観察されたトンボ科の紹介をすべて終えます。

次回以降の本シリーズ最終記事では、この溜池群で見られた残りのトンボの種(サナエトンボ科、イトトンボ科、アオイトトンボ科、モノサシトンボ科)について、レポートします。


謝 辞
現地をご案内くださった月井栄三郎さんに、心よりの感謝の意を表します。


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2018-05-23 (Wed)
「渓流の春」シリーズ第1報では、アサヒナカワトンボを取り上げましたが、第2報の今回はヒメクロサナエ Lanthus fujiacus (Fraser, 1936)の独身♂のご紹介です。

なお、春の渓流の主役であるムカシトンボ Epiophlebia superstes (Selys, 1889)は、特別扱いの別シリーズにすでに登場済みです。

今年5月上旬、第1報で取り上げた、アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys 1853の観察を終えた私は、ムカシトンボの産卵の観察が期待される別の水系の沢の源流部に向いました。

そこで、幸運にもアジサイ属の低木の若枝・葉柄に産卵するムカシトンボの撮影に成功しました(こちらの過去記事に詳細)。

その沢の源流部に到着し、渓流沿いの歩行観察を開始してしばらく後の12時50分、1頭の小型のサナエトンボ♂が上流方向から飛んできて、低木の葉の上にとまりました。

ヒメクロサナエです(写真1)。

ヒメクロサナエ♂ 
写真1 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂(写真はクリックで拡大します)

この個体に6分間モデルになってもらい、約30回シャッターを押しました。
その中から2,3点、コメントつきでご紹介します。

写真2は、3ショット後のものをトリミングしています。

ヒメクロサナエ♂ 
写真2 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂ 

写真2からは、サナエトンボ科の類似種とのよい区別点となる、翅胸前面の黄斑、尾部付属器の形態を確認することができます。

この個体に限っていえば、左前翅の縁紋から先端にかけて翅の膜面が翅脈も巻き込んでクシャクシャに変形していることが見てとれます。

おそらく、羽化直後の柔らかい時期に何かにぶつかって変形したか、あるいは伸びきらなかったかの、いずれかでしょう。

それとは別に、左前脚が、左の複眼を抱きかかえるようなか位置取りとなっています。

写真3は、とくに変わった動きはしていませんが、背面から撮っているので、翅胸前面や腹部背面の黄斑パターンの特徴を確認できます。

ヒメクロサナエ♂ 
写真3 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂ 

最後の写真4は、右前足の脛節の先端付近で右複眼をこすっている様子が見てとれます。

ヒメクロサナエ♂ 
写真4 ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus ♂

写真4からは、明らかにこの個体が複眼を含む体部の清掃行動を行っていたことが分かります。

同様に、写真2の左足の動きも、左複眼の清掃行動の一端であったと見るのが妥当でしょう。

このヒメクロサナエの観察はこのくらいにして、私は、当日の私の主目的であったムカシトンボの連続的観察へと、渓流沿いの道を再び歩き出しました(その日のムカシトンボについてはこちらこちらで報告済みです)。

当ブログでは過去にもヒメクロサナエを取り上げています(クリックで開きます)。
 「ヒメクロサナエとの出会い」(羽化直後)

最後に、今回ヒメクロサナエを観察することができた、渓流の一角の景観写真を掲げておきます(写真5)。

ヒメクロサナエ撮影地点 
写真5 ヒメクロサナエが観察された地点(沢の源流部)


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2018-03-15 (Thu)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征では、初対面の種を含む多くのトンボとの出会いがありました(関連記事はこちら)。

第五報の今回は、最初に訪れた生息地(溜池A:写真15)で観察された、ハネビロトンボ Tramea virginia (Rambur, 1842)ギンヤンマ Anax parthenope (Selys, 1839) をとりあげます。

どちらも、成熟♂が水面上を勇壮に飛び回る種ですので、見応えがあります。

それを裏返せば、くっきりとした写真を撮るのが困難で、初心者泣かせな種でもあります。

今回はISO感度5000、シャッター速度1/2000 sec、手動焦点でチャレンジしてみました。


ハネビロトンボ

11時25分、ハネビロトンボ♂が池の水面上をパトロールしはじめました。
それから30分間、私はカメラレンズをこのトンボに向け続けました。

なんとか見られる写真(写真1)が撮れたのは、約70回シャッターを押した後で、20分が経過していました。

ハネビロトンボ♂ 
写真1 ハネビロトンボ Tramea virginia (写真はクリックで拡大します)

高ISOでの撮影の上に、大幅にトリミングしていますので、ざらついた画になっています。

この♂は、沈水植物の花穂が突き出た水面上を、体を少し左に傾けながら飛んでいます。
そのため、しっかり折り畳んだ両後脚、左前翅下面が覗いています。

それにもかかわらず、頭部は左傾せず、トンボにとって左右が水平の視界を維持しているように見えます。

以下、時系列を乱さずに、写真をいつくかピックアップして掲げます。

写真2では、体が左右に傾いていませんので、前方に向って直進していることがわかります。

ハネビロトンボ♂ 
写真2 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ハネビロトンボの特徴である、幅が広がった後翅基部の赤褐色斑紋や、腹端部の黒斑を確認することができます。

写真3は、極度に体を右傾していて、急速に右ターンしようとしていることが伺えます。

ハネビロトンボ♂ 
写真3 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ピントが甘く、見えにくいのですが、頭部は水平位を保っています。

このように、飛行中ターンをする際に、頭部は水平位のままl胸部・腹部を回転方向に大きく傾ける動作は、ヤンマの類でよく見られる行動です。
同じ動作が、トンボ科のハネビロトンボで確認できるとは思っていませんでした。

写真4では、逆回りに水面上をパトロールしているギンヤンマ♂とすれ違っています。

ハネビロトンボ♂&ギンヤンマ♂ 
写真4 ハネビロトンボ Tramea virginia ♂ とギンヤンマ Anax parthenope 

どちらも、相手を意に介していないように見えます。

恋敵と誤認するには、色彩もサイズも大きく違いすぎるからでしょうか。

写真5では、体が前傾していますので、少し下向きに飛行しているのでしょう。

ハネビロトンボ♂ 
写真5 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

写真6は、斜め後ろからの姿です。

ハネビロトンボ♂ 
写真6 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

写真7では、かなり水面に近い低空を飛んでいます。

ハネビロトンボ♂ 
写真7 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ライバル♂を遠ざけるとともに、交尾相手となる同種♀の姿を探すのが目的のこのパトロール飛行です。

浮揚植物や沈水植物の豊富な水面では期待感が高まり、より丁寧に水面を複眼でスキャンしているのかもしれません。

写真8では、高度を下げる飛行中に、右ターンをしようとしている様子が伺えます。

ハネビロトンボ♂ 
写真8 ハネビロトンボ Tramea virginia ♂ 同一個体

頭部が水平位であることも見てとれます。

写真1から写真8までいずれも同一個体、経過時間は7分間でした。

この♂は、この後、♀と出会うことなく、池から飛び去りました。


ギンヤンマ

ギンヤンマはどこにでもいる種ですので、カメラレンズで追い回すモチベーションは低かったのですが、それでも眼の前を通り過ぎると、半ば反射的にシャッターを押してしまいます。

午前10時を少し過ぎた頃、水面上を悠然とパトロールするギンヤンマ♂が目の前を通過しました。

たくさんシャッターを押した中で、最初にピントが会った写真は、なんと、真後ろからの姿となりました(写真9)

ギンヤンマ♂ 
写真9 ギンヤンマ Anax parthenope

前翅と後翅の振り上げの角度が大きく異なるのは、前後翅で位相をずらして羽ばたいているからです。

また、右前翅の後縁と右後翅の後縁に、強い歪みがあります。
おそらく、羽化直後の翅の柔らかい時期に、何か硬いものに接触したために損傷したのでしょう。


写真10は、1時間半ほど後に現れた、別個体のギンヤンマ♂です。

ギンヤンマ♂ 
写真10 ギンヤンマ Anax parthenope ♂ 別個体

おやおや、後足の脛節以下が垂れています。

この時だけ、脚を動かしていたのでしょうか?

写真11は、8分後に同一個体が、斜め前方からのよい角度でカメラに収まってくれたものです。

ギンヤンマ♂ 
写真11 ギンヤンマ Anax parthenope ♂ 写真10と同一個体

私のこれまでのギンヤンマ写真の中ではベストショットになりました。

写真11写真10のいずれの場合も、右後脚の脛節以下が垂れ下がっています。
したがって、この脚の仕草は一時的なものではなく、筋肉の損傷か何かの理由により折り畳むことができないことによるものかもしれません。

11時半には、ギンヤンマの連結産卵が見られました(写真12,13)。

ギンヤンマ連結産卵 
写真12 ギンヤンマ Anax parthenope ♂連結産卵

ギンヤンマ連結産卵 
写真13 ギンヤンマ  Anax parthenope 連結産卵。同一ペア

写真14は、産卵途中の連結ペアが場所移動をしているところです。

ギンヤンマ連結ペア 
写真14 ギンヤンマ  Anax parthenope 連結飛翔。

写真13の28分後の撮影ですから、別のペアかもしれません。

最後になりましたが、毎回掲載している生息地(溜池A)の写真を、今回も文末に掲げます(写真15)。

溜池その1 
写真15 最初の観察地(溜池A)(再掲)。

溜池Aのトンボ生息地としての特徴については、本シリーズ第一報で簡単に紹介しています。

本シリーズ、次回記事では、タイワンウチワヤンマを取り上げる予定です。


謝辞:
現地で案内して下さった飯田貢さん、高橋士朗さん、他の皆さんに謝意を表したいと思います。


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2018-03-12 (Mon)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征では、初対面の種を含む多くのトンボとの出会いがありました(関連記事はこちら)。

第四報の今回は、最初に訪れた生息地(溜池A:写真7)の「赤とんぼシリーズ」の締めくくりとして、アカネ属2種と、別属の赤とんぼであるショウジョウトンボをとりあげます。

溜池Aのトンボ生息地としての特徴については、本シリーズ第一報で簡単に紹介しています。

本シリーズ、これまでに、ナニワトンボオオキトンボノシメトンボアカネ属 Sympetrum のトンボが続きました。

アカネ属、顔見世興行。しんがりに控えしは、、、。

リスアカネ Sympetrum risi Bartenev, 1914 です。

といって、もこの1枚だけですが(写真1)。

リスアカネ連結産卵 
写真1 リスアカネ Sympetrum risi 連結ペア。(写真はクリックで拡大します)
 
岸の草間を縫うように飛びながらの打空産卵です。

2,3回シャッターを押した中のベストショットがこの写真。
残念ながら、トンボの翅の先は尾部が枠をはみ出しています。

今回、1カ所(一つの池の岸辺)で、ナニワトンボ、ノシメトンボ、リスアカネの3種の連結打空産卵のシーンをゲットできたことになります。
かなりラッキー!

当ブログ、リスアカネについての過去記事としては、「リスアカネ♂」があります。

そして、しんがりにはもう1人、役者が控えていました。
それも上から目線のところに。

低木の枯れ枝の先端にとまるネキトンボ Sympetrum speciosum Oguma, 1915 ♂です(写真2)。

ネキトンボ♂ 
写真2 ネキトンボ Sympetrum speciosum 

よく似たショウジョウトンボとの区別点として、前胸背面に長毛があること、翅基部がオレンジ色でより広域であること、尾部付属器がより短いこと、脚が黒いこと、腹部に扁平感がないことなどが確認できます。

おやおや、しばらく別のトンボを観ていて、再び枯れ枝の先に目をやると、このネキトンボ♂がオベリスク姿勢をとっています(写真3)。

ネキトンボ♂オベリスク 
写真3 ネキトンボ Sympetrum speciosum ♂(同一個体)

この時間帯(正午前後)の直近のアメダス気温は25℃前後で、それほど暑くはありませんでした。
とはいえ、よく晴れていたので直射日光で体温が上がったのだろうと思います。

オベリスク姿勢をとることで、体が受ける受光量を大幅カットすることができるので、これはよい体温調節効果をもたらします。

ネキトンボについての過去記事「赤とんぼ探訪記(3):溜池群、秋のトンボ達」では、連結打水産卵および♂の静止シーンを紹介しています。

溜池Aの赤とんぼ、最後は別属のショウジョウトンボ Crocothemis servilia (Drury, 1773)です(写真4~6)。

ショウジョウトンボ♂ 
写真4 ショウジョウトンボ Crocothemis servilia ♂

写真4は堤体沿いの岸の大きな白い石の上にとまるショウジョウトンボ♂です。

私が以前住んでいた北海道東部にはショウジョウトンボは生息していなかったので、5年前に関東に移住してから近くの公園の池でショウジョウトンボを見た時には、その体全体を覆う焼けるような色調に南国の匂いを感じたことでした。

そのショウジョウトンボが、北海道ではどんどん分布域を北東方向に広げていることが、北海道トンボ研究会の最近の会報記事から伺えます。

分布の拡大でトンボ相が豊かになることを素直に喜びたいところですが、この拡大の主要因が地球温暖化であり、その裏側で北方系の種の衰退も引き起こしている(生方 1997)ことを考えると、立ち止まって考える必要がありそうです。

写真4は別のタイミングに撮影した、堤のたもとのヨシ原の傾いた枯れヨシの先にとまるショウジョウトンボ♂です。

ショウジョウトンボ♂ 
写真5 ショウジョウトンボ Crocothemis servilia ♂(別個体)

「あれ?、どこかで見たような、、、」と思った方がおられるかもしれません。

それもそのはず、このショウジョウトンボ♂は本シリーズ第一報にナニワトンボの引き立て役として登場していました(写真6に再掲)。

ショウジョウトンボ♂とナニワトンボ♂ 
写真6 右、ショウジョウトンボ Crocothemis servilia ♂(写真5と同一個体)。左はナニワトンボ♂。(再掲)

この写真の同じ茎にはトンボの羽化殻も写っています。

ヤンマ科のものには間違いないのですが、この殻も現場にありのままに残してきましたので、種の判定はできません。

最後になりましたが、毎回掲載している生息地の写真を今回は文末に掲げます(写真7)。


溜池その1 
写真7 最初の観察地(溜池A)(再掲)。

本シリーズ、次回記事ではハネビロトンボを取り上げる予定です。


謝辞:
現地に案内して下さった飯田貢さん、生息地の解説をされた高橋士朗さんに謝意を表したいと思います。


引用文献:
生方秀紀(1997)「地球温暖化の昆虫へのインパクト」。堂本暁子・岩槻邦男共編『温暖化に追われる生き物たち-生物多様性の視点から』築地書館、p.273-307。


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