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2017-01-07 (Sat)
正月7日、最高気温10度超え予想の好天無風に誘われて、久しぶりにカメラをぶら下げて外出しました(※追記あり)

といっても、歩いて10分程度の、近くの公園です。
そうそう、マダラスズ君のいた公園。

10度超えといっても、1月です。
やはり、公園内外の日の当たる植え込みや立ち木の枝葉をしげしげと見ても、虫たちの姿はありません。セミの抜け殻がしぶとく残っているのは見つけましたが。

しかし、とうとういました。
少し流れのある小さな池の水面にアメンボが1匹。

そばを歩きすぎる人の視線もものかは、マニュアルフォーカスリングをあれこれ動かしながら、シャッターを連写しました。
丁度100枚くらい写した中から選んだ1枚がこれです(下の写真)。

ナミアメンボ170107 
写真:ナミアメンボ(アメンボ)Aquarius paludum (Motsclsky, 1866)(クリックで拡大します)

アメンボはまったくの専門外ですので、書斎から宮本正一氏(1961)の『日本昆虫分類図説 第1集第3部 半翅目・アメンボ科』を引っ張り出し、不足のところはネット検索などもしながら、これがナミアメンボ(アメンボ)Aquarius paludum (Motsclsky, 1866)であることを確認しました。

観察したときの様子は次回記事に譲るとして、以下に、ナミアメンボと同定した際に利用した検索表(抜粋)を添えておきます。


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

アメンボ科アメンボ亜科検索表(抜粋) 
 ~撮影した個体をナミアメンボと同定する際に参照した部分を、宮本(1961)から抜粋(一部表現を変更・追加)~

1a。体の背面の光沢が強い。  →  セスジアメンボ属Limnogonus参考画像a[外部リンク])> セスジアメンボLimnogonus fossarum (Fabricius,1775)ほか

1b。体の背面の光沢が強くない(参考画像b[外部リンク])。 → 


2a。腹部末端(第7腹板側板の後側角部)が棘状でない(参考画像c[外部リンク])。触角第1節が第2+3節より短い(参考画像d[157頁左下図][外部リンク]。) → ヒメアメンボ属Gerris  ヒメアメンボGerris lacustris (Miyamoto, 1958)ほか

2b。腹部末端(第7腹板側板の後側角部)が棘状(参考画像c[外部リンク])。触角第1節が第2+3節以上(参考画像d[157頁左下図][外部リンク]) → アメンボ属Aquarius → 


3a。大型19-26mmで脚が特に長い。中脚、後脚は非常に細長い(参考画像e[外部リンク])。 → オオアメンボAquarius elongatus (Uhler,1896) 

3b。中型11-16mmで脚が非常に細長いことはない。 → ナミアメンボ(アメンボ)Aquarius paludum (Motsclsky, 1866)


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

参考文献
宮本正一、1961:日本昆虫分類図説 第1集第3部 半翅目・アメンボ科。北隆館。

☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆

参考画像
参考画像a:
源五郎:水辺の生き物彩々「ヒメセスジアメンボ」

参考画像b: 
Naturalism notebook:自然観察雑記帳「ナミアメンボ」

参考画像c:
シバラボ:アメンボ研究室「ヒメアメンボ」。

参考画像d:
中谷憲一:日本産陸水生アメンボ科成虫の絵解き検索。環動昆第12巻 第 4号‘ 155-161 (2001) 。

参考画像e:
シバラボ:アメンボ研究室「オオアメンボ」。


※追記(1月8日):1月7日の直近のアメダスポイントのデータで、最低気温は-3℃、アメンボ観察時点の気温は5℃、最高気温は8℃でした

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2016-12-17 (Sat)
今年の10月中旬の午前中、秋らしい爽やかな天気*のもと、カメラをぶら下げて自宅近くの公園に出掛けました。
 (*直近のアメダス観測所の気温17℃、北の風、風速2~3m、日照時間40~70%)

今回は、いつものようなトンボではなく、マダラスズ Dianemobius nigrofasciatus (Matsumura, 1904) の撮影が目的でした。

というのも、最近の過去記事「北海道の真冬に鳴くコオロギ:マダラスズの不思議」および「Ground crickets singing in winter: 熱孤島のマダラスズ」でマダラスズの生活史の調査研究や成果論文の紹介をしましたが、マダラスズの生態写真が手元にないため、ブログにもフェイスブックにもその姿をアップロードできなかったためです。

自宅のすぐ近くの空き地でもマダラスズの鳴き声は聞こえるのですが、数が少ないのと、勝手に入り込んで撮影するわけにもいきませんので、比較的広い芝地のあるこの公園に狙いを定めたというわけです。

公園の芝地に近づくと、私を歓迎するかのように、ジーッ、ジーッと、あちこちから鳴き声が沸き上がります。
しかし、なかなか姿が見えません。

うつむき姿勢で芝の上を歩き回ると、いました、いました。
ただし、すばしこく歩き回り、なかなかカメラにとらえることができません。

そんな中、ようやくなんとか写ってくれたのがこの個体です(下の写真)。

マダラスズ♂(1)161014 
マダラスズ♂、生方秀紀撮影。(クリックで拡大)

マダラスズは、よく似たカワラスズ Dianemobius furumagiensis (Ohmachi & Furukawa, 1929) からは、小顎鬚(白い)の先端が黒いことで区別されるとのこと(参考:自然観察雑記帳)。

帰宅後、上の写真を拡大したところその通りだったので、マダラスズであると確認できました。

さて、もう少しピントのあった写真を撮れないかなと、更に芝の上を歩き回っていると、草むらに上向きのアサガオの花のような形のクモの巣網の外側をよじ登ろうとしているマダラスズの若齢♂を見つけました(下の写真)。

マダラスズの冒険1 

なんと、クモの巣網そのものの外面に脚の爪をかけてよじ登ろうとしています。

そして、前方左をチラリと見ると(下の写真)・・・

マダラスズの冒険2 

今度は体を右に向けると、クモの巣網の外面をまるでスパイダーマンのように楽々と、這い進んでいきます(下の写真)。

マダラスズの冒険3

どんどん歩いて、私から見て巣網の向こう側に回り込むところまで、あっという間です(下の写真)。

マダラスズの冒険4

このまま巣網の上を歩き続けると、この巣網の主のクモの餌食になりかねません。
大丈夫でしょうか?
私の心配をよそに、無事に巣網の向こう側の草陰へと消えていきました(下の写真)。

マダラスズの冒険5

こうして、マダラスズ君の大冒険は観客をハラハラさせながら、1幕を下ろしました。

さて、この巣網の持ち主のクモは、どれほど怖いいでたちをしているでしょうか?

そーっと、覗き込むと、そのクモが巣網の中央部の筒状の部分からお尻(正確には腹部)をはみ出させながら、いそいそと動いていました(下の写真)。

クサグモ161014 
コクサグモ Allagelena opulenta 

クモ関連ウェブサイト上の画像から判断して、このクモがタナグモ科のコクサグモに似ていることがわかりました。

フェイスブックの昆虫写真関連グループに、マダラスズと一緒にこのクモの写真をアップしたところ、同じタナグモ科のクサグモ Agelena silvatica Oliger, 1983 のように見えるとのコメントがありました。

頭かくして尻隠さず状態の写真でしたので、クモに詳しい方でも種名を断言するのは難しいようです。

今回、ブログの記事にするにあたって、クモの専門家であり、『クモの巣と網の不思議―多様な網とクモの面白い生活』(夢工房より増補復刻版)の編著者である、池田博明氏に、もう一枚の写真を添えて教えを請うたところ、「おそらくコクサグモAllagelena opulenta (L.Koch, 1878) である」とのご教示をいただくことができました。

出現時期、造網習性、腹端部の色彩、個体数などの諸点でコクサグモと判断されていました。

次回、クモの写真を撮るときは、なるべく全身の各所にピントが合った組み写真にすることにします。
トンボを撮るときは既にその方針でいましたが。

次回記事は久しぶりにトンボを取り上げる予定です。


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2016-10-10 (Mon)
An article on the life cycle of the Ground crickets singing in winter and its evolution has been published. I am among the co-authors of the article.

私も共同研究に参加した、北海道東部の噴気孔原に生息するマダラスズDianemobius nigrofasciatus (Matsumura) の生活史とその起源についての論文が、日本昆虫学会の会誌「Entomological Science」の最新号に掲載されました。

北海道阿寒町の噴気孔原とそこに棲むマダラスズ
A fumarolic field ('bokke ') where Dianemobius nigrofasciatus calls also in winter. (Click!)
冬も鳴くマダラスズの生息地の一つ、北海道阿寒町の噴気孔原(ボッケ)。(クリックで拡大)
成虫♂の標本写真は相馬昌之氏撮影、景観写真は生方秀紀撮影。


The summary and the bibliographic information of the article follow:

以下にその要約を書誌情報とともにご紹介します。


 
Ground crickets singing in volcanic warm “islets” in snowy winter: Their seasonal life cycles, photoperiodic responses and origin

雪の冬の火山性の温暖な「小島」で鳴くコオロギ―その季節的生活環、光周反応および起源
by 著者
Sinzo Masaki,Masayuki Soma,Hidenori Ubukata,Haruo Katakura,Rie Ichihashi,Zhuqing He,Nobuaki Ichijô,Norio Kobayashi, Makio Takeda 正木 進三、相馬 昌之、生方 秀紀、片倉 晴雄、市橋 里絵、何 祝清、一條 信明、小林 憲生、竹田 真木生



Abstract 要 約
    The ground cricket 
Dianemobius nigrofasciatus overwinters as an egg in Japan, being univoltine in Hokkaido and northern Honshu and bivoltine farther south.

マダラスズDianemobius nigrofasciatusは、北海道と本州北部では年一化、更に南では二化で、日本では卵越冬する。
     In Hokkaido, however, this cricket is heard singing in winter in several fumarolic fields covered with moss and grasses locally known as “bokke”.  しかし、北海道では、現地では「ボッケ」という名で知られている、コケや草本で覆われたいくつかの噴気孔原で、マダラスズが冬期に鳴いているのを聞く。
     In such warm “islets” the adult density was high in early summer and again in autumn, indicating that the cricket is bivoltine in contrast to the univoltine life cycle outside the bokke habitats in Hokkaido.  そのような暖かい「小島」で成虫の密度は、初夏と、そして再度秋に高かった。このことは、マダラスズが、北海道のボッケ以外の生息地で一化の生活環をもつのとは対照的に、二化性であることを示す。
     Eggs laid by females collected at regular intervals from a bokke habitat showed a clear seasonal cycle of diapause incidence.   一つのボッケ生息地から定期採集された雌が産んだ卵は、休眠率の明確な季節サイクルを示した。
     At 26°C, the bokke 
strains produced non-diapause eggs under long days and diapause eggs under short days as in the southern bivoltine populations, although the critical day-length was longer than in the south.
 
 26°Cにおいて、ボッケ由来集団は長日の下では非休眠卵を、短日の下では南の二化集団と同様に休眠卵を産んだ。ただし、臨界日長は南の集団に比べて長かった。
     Several strains derived from non-bokke habitats in Hokkaido and northern Honshu produced high percentages of diapause eggs under long days as well as short days as expected for the univoltine life cycle.  北海道と本州北部における非ボッケの生息地に由来するいくつかの集団は、一化の生活環から予想された通り、短日下はもとより、長日下でも、高比率で休眠卵を産んだ。


    Winter adults singing inbokke habitats could be either survivors of the autumn generation or individuals derived from eggs laid in autumn and then matured in response to the high soil temperature. ボッケの生息地で冬鳴いている成虫は秋の世代の生き残り、あるいは秋に産卵された卵に由来し、高い地温の影響で成熟した個体のいずれの可能性もある。
     In the laboratory, the proportion of egg diapause in short days was decreased by selection only for several generations.  実験室内では、短日の時期の卵休眠率は、わずか数世代の人為選択によって減少した。
     Phylogenetic trees of bokke and non-bokke populations, based on both the nucleotide sequence of the mitochondrialCOI gene and four allozyme loci, suggest that bokke
populations have not been isolated from non-bokke populations for an evolutionarily significant time.
ボッケ集団と非ボッケ集団の系統樹(ミトコンドリアCOI遺伝子のヌクレオチド配列および4つのアロザイム遺伝子座のそれぞれに基づいて作成された)は、ボッケ集団は進化的に意味のある期間にわたって、非ボッケ集団から隔離されていなかったことを示唆する。

Published in:

掲載誌
Entomological Science, Vol. 19, Issue 4,
October 2016, Pages 416–431.
エントモロジカル・サイエンス、
19巻4号、2016年、416-431頁  
DOI: 10.1111/ens.12199DOI: 10.1111/ens.12199

以上。
※論文タイトルおよび要旨の日本語表記は私による仮訳です。

A PDF of this article will be sent upon request to those researchers who want to read.
E-mail to: info.idnh [at] gmail.com

★この論文を引用または参考のために通読したい研究者(プロ、アマ、院生、学生を含む)の方には私宛にメール(氏名、所属、希望内容明記)を頂ければpdf形式の別刷を添付にてお送りいたします。
メール宛先:info.idnh★gmail.com (★をアットマークに置き換え)



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