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2017-03-20 (Mon)
私も分担執筆した下記の伝記本:

辻 和希 編(2017):
  海游舎。A5判・上製本・432頁。定価(本体4,600円+税)
  ISBN978-4-905930-10-5

がこのたび(2017年3月)刊行された。

生態学者・伊藤嘉昭伝 
生態学者・伊藤嘉昭伝。(写真はクリックで拡大)

3月14日から東京の早稲田大学早稲田キャンパスで開催された、日本生態学会大会会場内の書籍展示コーナー(海游舎ブース)での展示即売では評判を呼んでいという。

書籍展示開始早々に、海游舎の本間さんから著者献本をしていただき、学会セッションの合間にパラパラと本文をめくり、帰宅後は各執筆者の文章に吸い込まれるように読みふけった。

昼は学会でのポスターセッションと口頭発表セッション、それに自由集会への参加、帰宅してのこの伝記本の耽読という生活リズムが3日間続いた末に読了した。

以下、目次の順に、印象に残った寄稿文を中心に感想を述べたい。

「第一部 農研時代」では、農業技術研究所時代の伊藤嘉昭博士(私を含め、知り合いは「伊藤さん」と呼んでいた)の、基礎研究を重視した個体群生態学の研究姿勢、同僚・後輩とのチーム形成などが語られている。その中で冨山清升さんの一文は伊藤さんのあまり知られていない面に当時の仲間との写真も添えて触れていていて印象に残る。

「第二部 沖縄県時代」では沖縄でのウリミバエ根絶を指揮した伊藤さんを、そのチーム員が生き生きと回想している。 藤崎憲治さんの一文は異色で、伊藤さんのこの成功伝説に隠れた負の側面、その後あらわれている問題点とその解決の方向までも論じていて興味深い。

「第三部 名古屋以降」では、名古屋大学農学部に助教授として任用され、そこで害虫管理ではなく、進化生態学、行動生態学の研究・教育を優れた若手研究者(院生、助手)とともに進めた伊藤さんを、当時の弟子たちが描き出す。
ここはやはり、辻 和希さん、粕谷 英一さんの書いた部分を読むと、伊藤さんの教育者・研究者としての評価の骨格が浮かび上がる。

「第四部 著作活動」では、伊藤さんが文字通り大量に上梓した生態学関連の書籍が日本の生態学に与えた影響について語られる。松本忠夫さんは、伊藤さんの出したすべての本について評価する。嶋田正和さんは伊藤さんの社会進化に関するとらえ方の変遷を厳正に審査している。私の一文もこの第四部に収録されているが、北海道大学で私を含む当時の若い院生に「種の社会学」がどう浸透していて、その後どう脱ぎ捨てられていったかのケース・ヒストリ―の形をとった。

「第五部 比較生態学とその周辺」では、比較形態学者の鈴木邦雄さんの仕事に伊藤さんの『比較生態学』が大きく影響していたことが語られ、意外性がある。

「第六部 ハチ研究」では、山根 爽一さんらによってカリバチの社会進化についての伊藤さんの新説とその問題点が伊藤さんの人間像とともに語られる。

「第七部 伊藤さんの思想」では、岸由二さんの一文が読み応えがある。行動生態学の日本への導入の立役者の一人だった岸さんがいつしか生態学会に出てこなくなったのかの謎も解き明かされる。いや、一人の研究者の動向というよりも、日本の生態学全体の大きな歴史的な転換があったのがこの時代(1975年頃~1990年頃 )であり、それが生々しく描きだされたということなのだろう。

この本の分担執筆者55名の中には、編者の辻さんをはじめ、生態学理論の不完全さを克服し、新しい理論を提案するなど世界のトップレベルで活躍している生態学者が少なとも数名含まれている。

このような人材を育んだ「苗床」をしつらえ、拡げていったのが伊藤さんであることは、本書から読み取ることができる。

伊藤さんは、観察した事実を記載し、帰納法的に見出した傾向に解釈を加え、それを日本語「論文」として発表するのが普通だった時代(1980年前後以前)に、「論文の骨組みをつくってからデータをとれ」「英語で世界的に通用する雑誌に論文を毎年1本以上投稿せよ」「毎日1本論文を読め」と、若い研究者を叱咤・激励したという。

まさに、この本の帯カバーに大書されているとおり、「この1冊で日本の生態学史がわかる」。
「生態学史の『すべて』がわかる」としていないところに、謙虚さも漂う。

巻末には、引用文献、事項索引、人名索引も添えられている。

生態学とは何か?と考えている人、これから生態学をやりたい人、あるいは科学と政治思想とのかかわりの事例に興味ある人には必読の1冊であろうと思う。

ついでに、誤植の報告:
48頁、1行目 開開催 → 開催
169頁、9行目 話し → 話
403頁、26行目 J. → J. Ethol.


出版社直接購入案内の情報:
 → こちらをクリックし、その頁の最下段に注目。


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2017-02-26 (Sun)
生態学者伊藤嘉昭博士1930-2015)の業績と生涯を、弟子や共同研究者たち55人が、様々な観点から描き出した本、『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』が、3月25日に刊行されることになりました。

  伊藤本、表表紙、背表紙伊藤本、裏表紙
(上記画像はクリックで拡大します)

編者の辻和希さんならびに出版社の海游舎からの提供された資料を元に、その内容を簡単にご紹介します。

また、出版社直接購入についても最下段でご案内いたします。

書誌データ:
a)書名・頁数『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』411頁+索引
b)編者:辻和希
c)著者:石谷正宇、市岡孝朗、伊藤綾子、伊藤道夫、M.J.ウエスト-エバーハード、生方秀紀、大崎直太、太田英利、小野知洋、粕谷英一、R.ガダカール、岸 由二、金城邦夫、工藤起来、栗田博之、桑村哲生、小濱継雄、小山重郎、齊藤隆、齋藤哲夫、佐倉統、佐渡山安常、塩見正衞、志賀正和、嶋田正和、鈴木邦雄、竹田真木生、田中幸一、田中嘉成、辻和希、土田浩治、椿宜高、冨山清升、中筋房夫、中牟田潔、中村和雄、中村浩二、長谷川寿一、長谷川眞理子、濱口京子、N.ピアス、藤岡正博、藤崎憲治、藤田和幸、正木進三、松井正春、松沢哲郎、松本忠夫、宮竹貴久、村瀬 香、守屋成一、安田弘法、山根正気、山根爽一、与儀喜雄
d)発行予定日 2017年3月25日(生態学会初日の3/14日には刷り上がっています)
c)定価  4600円(税別)
 
編者による本書紹介:

「本書は生態学界の「革命児」伊藤嘉昭博士(1930-2015)の55人の証言による伝記である。この一冊で戦後日本の生態学の表裏の歴史が眺望できる科学史資料となっている。農林専門学校卒で「大学を出ていない」伊藤は、日本の生態学の近代化と国際化に貢献した戦後最大の立役者である。沢山の教科書を書き、沢山の国内外の研究者と交流し、沢山の弟子を育てた。その指導方針は「英語で国際誌に論文を書き続けよ」だった。今からみれば単純すぎるこの方針は、やがて進化生態学という「黒船」の襲来でパラダイム転換を果たし遅ればせながら国際的研究の表舞台に合流することになる、当時「鎖国状態」の日本の生態学界においては、ある種の「踏み絵」だったのだ。伊藤には活発な社会運動家としての一面もあった。農林省入省直後の1952年にメーデー事件の被告となり無罪が確定するまで17年間公職休職となるも、不屈の精神で名著『比較生態学』を書き上げた。農林省農業技術研究所、沖縄県農業試験場、名古屋大学、沖縄大学と50年にわたる研究生活のなかで、個体群生態学、脱農薬依存害虫防除、行動生態学、山原生物多様性保全と、近代化された生態学の新時代の研究潮流をつねに創り続けた。伊藤の研究テーマの変遷は戦後社会を映す鏡でもある。その背中は、激しく、明るく、楽しく、そして悲しい。研究者志望の若者よ。これが昭和の快男児の研究者人生だ。」


目次:


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         (以下、2017年7月22日、一部改訂しました)

出版社直接購入のご案内:

◎申し込み方法
下記メールフォーマットへ必要事項(★)をご記入のうえ、
お申込み先:海游舎・本間宛
  kaiyusha@cup.ocn.ne.jp
に,メールでお申し込み下さい。
折り返し,確認メールをお送りいたします。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++
件名:『もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』
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「購入を申し込みます」と記すとともに,下記の事項を
   kaiyusha [at] cup.ocn.ne.jp
 宛にメールでお知らせ下さい。
 1.注文書籍名:もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ
 2.代   金:定価4600円(+消費税)+送料
 2.注文冊数:★ 冊
 3.お  名  前:★
 4.送  り  先:(〒)★
 5.電話番号(必須,携帯可):★
 6. この情報を知ったサイト名:トンボ自然史研究所のHP 

請求書、振込用紙を同封して発送いたします。
商品到着後、10日以内にお振り込みをお願いいたします。

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2017-02-25 (Sat)
2015年5月、戦後の日本の生態学をリードした伊藤嘉昭(いとう よしあき)博士(以下、伊藤さん)が亡くなられた。

その半年後に名古屋で開かれた「偲ぶ会」には、伊藤さんの薫陶を受けつつ生態学の道を歩み、現在は定年退職前後まで齢を重ねた生態学者らが集い、それぞれが伊藤さんとの思い出を語り合った。

私(生方秀紀)もその会に参加し、なつかしい面々と再会し、また伊藤さんの数々のエピソードを、うなずきながら、ときには微笑みながら、登壇者から紹介されるままに楽しんだ。

この会を主宰した「伊藤嘉昭記念会」から、伊藤さんについての思い出話や伊藤さんの業績・人物についての評伝を出し合い、1冊の本にすることが提案された。

私も、大学院入学前後の若い時期に、伊藤さんの著書『比較生態学』から多大な影響を受けて、トンボ類の個体群動態と社会学の研究の道を進むことになった。

その足跡をたどりながら、伊藤さんの生物社会観にも言及した私の一文も、上述の本に掲載される運びとなった。
本のタイトルは、辻和希編著『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』(執筆者55名、海游舎発行、411頁+索引、2017年3月25日刊行予定、生態学会大会会場でも頒布)。
次回記事では著者割引、特別割引のご紹介を予定しているので、お見逃しのなきよう。。

以下は、この本に私が寄せた一文の、ほんの触りの部分である。
興味のある方には、この本を手に取り、めくって頂ければと思う。

1970年代後半は、「種の生物学」から「社会生物学」への、社会進化原理における革命的なパラダイム・シフトの大きな波を被りながら、私も自分自身を「改宗」させていくことになった。

伊藤さんは、個体群生態学の研究手法と実践においては優れて「近代的」なスタンスをとっておられたが、こと生物の生活の原理を突き詰めた場合には今西錦司流の「種の生物学」の立場を1970年代前半までは維持しておられたようである。

その伊藤さんが、E.O. Wilson(1975)の”Sociobiology”の出版をはじめとした、欧米における社会生物学(=行動生態学)の興隆・席捲を受けて、自らの立場を社会生物学のプラットフォームに大きくシフトされたのである。
この当時の伊藤さんの揺れ動く様子は、上記の本の中でお弟子さんたちから語られるものと思う。

伊藤さんは、それだけに終わらず、『社会生態学入門―動物の繁殖戦略と社会行動』(1982)の出版や、文部省科学研究費特定研究「生物の適応戦略と社会構造」(1983~1985)の推進などを通して、日本の生態学全体のパラダイム・シフトに大きく貢献された。

ちなみに、この特定研究には私もお誘いいただき、研究班員間のディスカッションなどを通して、私自身の研究を一層ブラッシュアップすることができた。

1986年に、この特定研究のしめくくりとなる、国際シンポジウムが、 J.L. Brown、W.D. Hamilton 、M.J. West-Eberhardの諸氏を含む海外の著名な研究者も招聘して、京都で開かれた。

伊藤さんの推薦もあり、日本側からのシンポジウム登壇者13名の一人として、私も選ばれた。精一杯準備し、緊張しながらも自分の研究成果のエッセンスを紹介したことを、昨日のことのように憶えている。

このシンポジウムの成果は、伊藤さんが中心となって成果図書、”Animal Societies: Theories and Facts” (Y.Ito, J.L. Brown & J. Kikkawa, eds., 1987)として刊行された。その中、に私の報告内容を推敲した論文”Mating system of the dragonfly Cordulia aenea amurensis Selys and a model of mate searching and territorial behaviour in Odonata”も掲載されている。

下の写真(シンポジウム登壇者の集合写真)では、伊藤さん、私の大学院での師匠である坂上昭一先生、そして前述の海外からの研究者らのオーラに圧倒されたかのような私の姿が写っている。

特定研究国際シンポ集合写真-s 
シンポジウム登壇者集合写真(クリックで拡大)
後列左から2番目:私(生方秀紀)、4:坂上昭一、5:伊藤嘉昭、6:J.L. Brown、8:W.D.Hamilton。前列左から3番目:長谷川眞理子、5:M.J. West-Eberhard、6:J.R. Krebs 、7:青木重幸。

次回記事では、『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』の全体的内容や執筆陣について取り上げる予定である。
お楽しみに。


外部リンク先リスト:
南方熊楠顕彰館:「悼 伊藤 嘉昭先生(第17回南方熊楠賞受賞・名古屋大学名誉教授)が逝去されました」.
http://www.minakata.org/cnts/news/index.cgi?v=f5l00&p=0

Wikipedia: E.O. Wilson.
https://en.wikipedia.org/wiki/E._O._Wilson

Wikipedia:伊藤嘉昭.
https://ja.wikipedia.org/wiki/伊藤 嘉昭

Wikipedia:今西錦司.
https://ja.wikipedia.org/wiki/今西錦司

WorldCat:Animal societies : theories and facts.
http://www.worldcat.org/title/animal-societies-theories-and-facts/oclc/17514035


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