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2017-08-14 (Mon)
トンボ仲間の夏目英隆さんと御一緒した、昨年7月上旬の他県へのトンボ・トリップの成果報告は、前回記事の「コバネアオイトトンボとの出会い」でスタートしました。

2回目の今回は、最初の立ち寄り地、農地に囲まれた溜め池群およびその周辺の湿生草原で撮影したトンボの続報として、2種の均翅亜目トンボを取り上げます。 

前回記事の主役であるコバネイトトンボを撮影した湿生草原の周りを歩き回ってトンボを探すと、いくつかの種のトンボが活動していました。

それらの中に、ヨシ類の茎にとまるアジアイトトンボIschnura asiatica (Brauer, 1865) の未熟♀の姿がありました(写真1、2)。

アジアイトトンボ♀(1) 
写真1 アジアイトトンボ Ischnura asiatica、未熟♀ (写真はクリックで拡大)

アジアイトトンボ♀(2)
写真2 アジアイトトンボ Ischnura asiatica、別の未熟♀

写真1写真2の個体は互いに別個体ですが、体前方に傾いた茎に、よく似た角度をとってとまっています。

実は、私がこれらがアジアイトトンボであると確信したのは帰宅後パソコン画面と図鑑類を見比べてからのことです。

といいますのも、同属のアオモンイトトンボ Ischnura senegalensis (Rambur, 1842) の異色型未熟♀もアジアイトトンボ♀と同様の色彩パターンを示すからです。

各種図鑑類の記述を参考にした結果、以下の諸点から今回撮影した個体がいずれもアジアイトトンボ♀に該当すると判断することができました。

アジアイトトンボ♀:
・前胸背板の黒条がM字形(アオモンイトトンボ異色型♀では糸巻き形)。 
・翅胸前面の黒条が上端付近で細まる(アオモン異色型♀では細まらない)。
・腹部第1節背面が黒い(アオモン異色型♀ではオレンジ色)。
・腹部第2節背面の黒条は連続する(アオモン異色型♀では後半のみ)。 
・腹部全体がオレンジになる傾向(アオモン異色型♀では腹部前端だけがオレンジ)。 

アジアイトトンボは、私の前住地である北海道東部では幻に近い存在でした。
本種と身近に付き合うようになったのは、私が埼玉県に転居してからのことです。

本種については、以下のとおり、過去記事の中ですでに取り上げていますが、未熟個体の撮影は今回が初めてとなりました。

アジアイトトンボの過去記事:

さて、話を戻します。

この溜め池群の周りでは、均翅亜目のトンボとして、他にモノサシトンボ Pseudocopera annulata (Selys, 1863) ♀も撮影できました(写真3

モノサシトンボ♀
写真3 モノサシトトンボPseudocopera annulata  

モノサシトンボは、過去記事「トンボ王国訪問記(1):多彩なトンボ達に迎えられ 」でも取り上げていますが、その記事の中ではバックダンサー的な取り扱いでしかありませんでした。

今回も脇役に甘んじていますが、なかなか品格のあるトンボですので、いずれじっくり主役の座を務めてもらうつもりです。


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2017-07-25 (Tue)
今年6月前半の東海地方への取材旅行で、グンバイトンボPlatycnemis foliacea Selys, 1886を観察・撮影する機会がありました。

昨年6月の四国での本種との初対面で果たせなかった、交尾や産卵についても観察・撮影できましたが、それについては次回記事で扱うことにし、今回は単独♂の観察を通して気付いたことを取り上げます。

それは、
・斑紋パターンの場所間比較
・「軍配」の「汚れ」
・採食
についてです。

このうち、採食以外は、撮影したトンボの画像を自宅のパソコンで拡大し、じっくり観察した結果、その存在が判明したものです。

最初に、今回、東海地方の生息地(A地点とします)で撮影したグンバイトンボ♂3個体の静止写真を掲げます(写真1,2a,2b,3a,3b)。

グンバイトンボ♂、東海 
写真1 グンバイトンボPlatycnemis foliacea ♂、東海A地点 (写真はクリックで拡大)

グンバイトンボ♂、東海(3)
写真2a グンバイトンボPlatycnemis foliacea 別の♂、東海A地点

グンバイトンボ♂、東海(3)、拡大
写真2b グンバイトンボPlatycnemis foliacea ♂、東海A地点(写真2aの拡大)

グンバイトンボ♂、東海(2)
写真3a グンバイトンボPlatycnemis foliacea さらに別の♂、東海A地点

グンバイトンボ♂、東海(2)拡大
写真3b グンバイトンボPlatycnemis foliacea ♂、東海A地点写真3aの拡大)

なぜ、似たような写真を3点掲げたかというと、四国の同種個体と比較して、写真でわかる範囲の形態差がみられた場合に、それが地域差(つまり地理的変異)を代表しているのか、それとも個体群内の個体変異の幅が大きいための相違に過ぎないのかを、ファースト・アプローチとして判定するためです。

次に、東海地方(A地点)の本種と比較するために、昨年四国(B地点とします)で撮影した同種♂の写真を、以前の記事「グンバイトンボの軍配は何のため?」から1♂を再掲(写真4a,b)し、加えて、同じ機会に撮影した別の♂の写真を掲げます(写真5)。

グンバイトンボ♂
 写真4a グンバイトンボPlatycnemis foliacea ♂。四国B地点、2016年6月。(再掲)

グンバイトンボ♂体前部拡大 
 写真4b グンバイトンボPlatycnemis foliacea ♂。四国B地点、2016年6月。(再掲)

グンバイトンボ♂、四国(2) 
 写真5 グンバイトンボPlatycnemis foliacea 別♂。四国B地点、2016年6月。

最初に写真1(東海A地点)と写真4a(四国B地点)をざっと見比べた際には、形態も斑紋パターンもよく似ていて、「さすが同種。何千年、何万年もの長い間、離れ離れの場所で世代を紡いでいても、形態をコントロールするゲノムというのは変わらないものだな~」と、まずは感心しました。

しかし、「でも、何かわずかな違いはあるのではないかな?」と疑って、それらの写真をあらためてじっくりと見比べたところ、次のように、いくつか違いが見つかりました。

1)「軍配」(中脚、後脚の脛節が扁平に拡張したもの)の中軸の基部付近は、四国B地点の♂では、はっきりと黒い(写真4、5; 未掲載の写真IMG_5638も同様)のに対し、東海A地点では基軸全体に白い(写真1)あるいは基部近くのごく短い部分だけが黒い(写真2、)。
ちなみに、脚の体軸寄り(内側)の面の軍配の軸は東海A地点でも基部付近は黒い(写真2b)。

2)東海A地点では、翅胸前面の上端に左右方向の黄斑がある(写真1、2、)。
四国B地点の♂には、そのような黄斑はない(写真4、、未掲載の写真IMG_5638、IMG_5731)。

3)東海A地点では、翅胸の肩黒条の上端近くの中の黄斑が連続したL字形をなす(写真1)か、あるいはその黄斑が途切れる(写真2、)。
それに対して、四国B地点では黄色が途中で途切れて分断され、横方向に黄班が延長しないため、L字形にもならない(写真4、5、未掲載の写真IMG_5638、5731)。

4)四国B地点では、腹部第2節側面の黄色斑部分の中の黒班がはっきり出ている(写真4、5、未掲載の写真IMG_5638、5731
一方、東海A地点の写真1の♂では薄いが、写真2,3の♂では、もう少し濃く、四国B地点とそれほど差がはっきりしなくなる。

5)東海A地点の写真1、2の♂は、相対的に翅が長く、それぞれ腹部第6節の70%、90%程度に達する。ただし、写真3では60%とやや短い。
それに対して、四国B地点の写真4、未掲載の写真IMG_5638の2♂では50%と短い。ただし、四国B地点の写真5、未掲載の写真IMG_5731の2♂は80%と長い。
ということで、相対的な翅の長さの平均値は東海Aのほうが高い可能性はあるが、個体群内での翅の相対的な長さの変動範囲は大幅に重なっていることがわかる。

以上をまとめると、東海A地点のグンバイトンボ♂は、四国B地点のそれにくらべて、指摘した部位の黒班の縮小傾向あるいは薄れ傾向、言い換えれば黄斑の拡大傾向を示し、その変異幅にギャップがありそうに思われます。

ただし、(4)の腹部第2節側面の黄色斑部分の中の黒班の濃さには連続的な変異が認められ、この点についての両地点間の変異幅は連続すると考えられます。
また、(5)で、東海A地点の♂では翅の相対的な長さが四国B地点よりも若干長い傾向がありますが変動幅が明らかに重なていますので大きな相違とはいえないようです。

以上は、わずか1地点のたった1日の観察に基づき、ほんの数個体同士を比較しただけなものですので、今後、両地区の幅広い地域で多数(注*)の個体を観察するならば、それぞれの変異幅の重なりは当然、より大きくなりますし、ギャップがあるように見えた部位についても重なってくることは十分考えられます。

その一方で平均値の地理的差異が統計的に有意であることは、より検出されやすくもなるでしょう。

ところで、このような地理的変異が認められる場合、それは何を意味するでしょうか?

それは、生物の進化において主要な経路をなすところの、「地理的種分化」のプロセスの1断面を垣間見ることを意味するといえるでしょう。

この話をすると長くなりますので、今回はこのへんで。

最後に、今回かかげた写真から読み取れる、生態的な知見を簡単にチェックしておきます。

写真2bをご覧ください。
4枚の「軍配」のうち3枚がそれぞれ部分的に、褐色に着色しています。

これは遺伝子が作った色ではなく、皆さんもお気づきと思いますが、外的な原因による汚れですね。
ただ、軍配はグンバイトンボ♂にとって大切な「看板」ですので、♂同士で互いに相手を追い払おうとしたときに、相手にバカにされそうですね(笑)。
そういう意味で、若干ドジを踏んだ個体といえるかもしれません。

次に、写真3bをご覧ください。
口に何か咥えています。
もちろん餌です。
小さな昆虫を口器の中で器用に回しながら食べつくしていく途中のシーンです(つまり、採食)。

♂の♀への求愛、♂同士の威嚇しあいが行われている修羅場のすぐ近くでのシーンです。
腹が減っては戦ができぬ、といったところでしょうか。

人間で言えば、サラリーマンが外勤途中でコンビニで栄養ドリンクを購入してグーッと飲むシーンを想起してしまいます。

ご苦労様です。


注*:
以前はこのような形態の地理的変異の研究のために、大量の標本採集が行われていましたが、そのような大量採取はいかに科学的研究が目的であるとしても、個体群の存続基盤を損ねるおそれがあるので、可能な限り標本の持ち帰りは自制し、写真撮影のみによる調査、あるいは採取したとしても計測または撮影後、現地で再放逐することが望ましいと考えます(大量に生息する普通種の場合を除く)。


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2017-06-28 (Wed)
私の個人フェイスブックの「友達」のうちトンボ写真を手掛けている方のタイムラインや、トンボ関連の「グループ」のタイムラインには、時たま「おやっ」と思う形態や色彩のトンボが紹介されることがあります。

そこに付記されたトンボの種名で画像検索すると、同じ種の個体がさまざまな角度から撮られた写真が閲覧できることが多々あります。
それはトンボ好きの者にとって一つの「花園」状態です。

今回は、それらのトンボの一つ、Oxythemis phoenicosceles Ris, 1910(トンボ科)をとりあげます。

本種はWikipedia英語版(2017.6.28.アクセス):
によれば、ウガンダからガンビアまでの西部・中部アフリカに分布する1属1種で、熱帯から亜熱帯までの湿った低地林や淡水湿原に生息します。

前置きはこのくらいにして、このOxythemis phoenicosceles♂の画像(外部リンク:Oxythemis phoenicosceles photo by KD Dijkstra)(2017.6.28.アクセス):
をご覧ください。

私の友人、アフリカのトンボ分類の権威であるKD Dijkstraさんがリベリアで2011年2月に撮影された♂の個体です。

素晴らしい写りです。

この♂個体の中脚、後脚の腿節には、赤い幅広いバンドがあります。

このトンボを初めて見たトンボのベテラン観察者の方は普通の脚の黒いトンボが赤いイトトンボをつかまえて食べているところと最初誤認したとのことです。
ベテランでも間違うほどの意外性のあるデザインのトンボです。

いつもは脚注に回している学名の由来を、今回はここで本文に挿入することにします。

学名の由来:
属名の Oxythemis はoxy と themis の合成語で、oxy-はギリシャ語のoxysからで、鋭い、尖った、酸の意味を持ち、themisはギリシャ神話のテミス(法・正義の女神)を指し、トンボ(特にトンボ科)の属名の語幹によく使われます。
種小名のうちの phoenico- はギリシャ語 Φοίνικας (phoenix) フェニックスを意味する接頭語で、不死鳥(火の鳥)を意味します。sceles はギリシャ語のσκέλος に由来し、脚を意味します。つまり、種小名の意味はフェニックスの脚となります。
脚の一部(腿節)はたしかに不死鳥からイメージされる炎のように赤いですね。

それでは♀はどうでしょうか
下にリンクした2枚の写真をご覧ください。

Nicolas Mézièreさんの写真その1(ガボン、2011年、外部リンク)(2017.6.28.アクセス):

Nicolas Mézièreさんの写真その2 (ガボン、2011年、外部リンク)(2017.6.28.アクセス):

♂とちがって、♀の脚は赤くならないようです。

ということは、♂だけが脚、それも中脚と後脚の腿節に非常に目立つ赤い帯をもつということになり、日本では見られないタイプの性的二型を示しているようなのです。

となると、このブログの前回記事ならびに前回記事にリンクした過去記事がテーマにしている、♂が着飾って繁殖成功を手に入れる、性選択(性淘汰)の典型的な事例に該当している可能性が大きいようです。

ところで、本種の英名は、Pepperpants(唐辛子ズボン)だそうです。
  出典:The IUCN Red List of Threatened Species: Oxythemis phoenicosceles

性淘汰のために脚に赤い衣服を着用しているのですから、唐辛子ではちょっと物足りないですね。
いっそのこと、炎のパンツ、それも勝負パンツとたとえたほうがピッタリくるのではないでしょうか?!
もちろん、パンツはズボンの意味です(誤解のなきよう、笑い)。

今後、アフリカに長期滞在してこのトンボの行動とその適応上の利益を研究する人が現れるでしょうから、この赤い脚が勝負パンツと呼んでよいものなのかどうなのか、その結果がいずれ聞こえてくるでしょう。
今からが楽しみです。

「あんたが行ったらどうなの?」ですって?
先立つ物と体力が全然足りないですから(笑)。。。


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2017-06-21 (Wed)
ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea Rambur, 1842 は日本最小のトンボとして名を馳せています。

イギリスのアマチュアトンボ研究家、Jill Silsbyさんは著書"Dragonflies of the world" (2001, CSIRO Publishing)の中で、ハッチョウトンボの名も挙げつつ、中国に産するNannophyopsis clara (Needham, 1930)画像、外部リンク)を世界最小としています。

しかし、Nannophyopsis clara の腹長が15mm(同書、162頁)であるのに対し、ハッチョウトンボの腹長は9~14mm(尾園ほか、「日本のトンボ」)と、より小さいのです。

したがって、ハッチョウトンボは(私の調べた範囲では)世界最小のトンボとなります。

私がハッチョウトンボと初めて会ったのは、1993年に大阪で開かれた国際トンボ学シンポジウムのエクスカーションで大勢の参加者とともに滋賀県の湿原を訪れた時です。

その小ささと、色彩や行動の可憐さには世界各地からの参加者もうっとりしていたことを今でも昨日のことのように憶えています。

私はトンボに目覚めた時から長い間北海道に住んでいましたので、次の機会は2011年に小田原で開催される予定だった国際トンボ学会議*のエクスカーション候補地探しの一環として、枝重夫博士のご案内で長野県内の湿原で再会したのが最後となっていました。

今回(2017年6月)、ハッチョウトンボの生息地を訪れ、念願の生態写真撮影を実現することができました。

まずは、真紅に装った成熟♂の正面写真をご覧ください(写真1)。

ハッチョウトンボ成熟♂ 
写真1 ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea ♂、成熟個体。(写真はクリックで拡大)

水面上に斜め上方に突き出した枯れた草の折れた茎にとまっているところです。
6本の脚でしっかり体を支え、真っ直ぐ伸ばした体の後方を少し持ち上げています。

いつもこのような格好をしているわけではなく、水平、あるいは体の後方を少し下げたとまり方もしていました。

ハッチョウトンボの♂は交尾のための なわばり を占有することが知られています。
今回も、ときどき、とまっている場所からとびたち、直径1メートル程度の範囲の水面上を見回るように飛び、またとまる行動や、他の♂と追い合いをするのが見られました。

ただし、観察時間が短かったこともあるかもしれませんが、交尾・産卵はもとより、なわばりへの♀の飛来すら観察できませんでした。

♀は開放水面から少し奥まったところにある、スゲやミズゴケからなる湿原植生のところの草にとまっているのが見つかりました(写真2)。

ハッチョウトンボ♀
写真2 ハッチョウトンボ ♀。

♀は、♂よりも腹部がやや太く、腹部背面の斑紋パターンが白と茶が交代する帯状となるので、簡単に区別することができます。

上の写真の♀は、たまたま腹部を上方に曲げているタイミングでの撮影でした。
このあと、もっと強く曲げていました。
トンボの♀も「筋トレ」をするのでしょうか(笑)?

さて、ハッチョウトンボはどのくらい小さいかを、直感的に理解していただこうと思い、カメラのレンズキャップ(直径約60ミリメートル)を左手で近づけながら、右手に持ったカメラで1頭の♂を撮影したのが写真3です。

ハッチョウトンボ♂とレンズキャップ
写真3 ハッチョウトンボ♂ とレンズキャップ。

10円、100円などの硬貨がポケットにあったら、それでもよかったのですが、金欠病のため持ち合わせがなく、レンズキャップの登場となりました。
このブログは稀に外国人も閲覧しているようですので、日本だけで通用する硬貨よりもレンズキャップのほうがかえってよかったかもしれません。

遅くなりましたが、♀のサイズも同様に比較しました(写真4)。

ハッチョウトンボ♀とレンズキャップ
写真4 ハッチョウトンボ♀ とレンズキャップ。


こちらは、背景にも別のハッチョウトンボが写っていますが、右手前のピントのあっているほうの個体とレンズキャップを比較してください。
「わかってる」ですって?
失礼しました。

付記:
ハッチョウトンボの和名の由来について、私の友人、小野知洋氏の論文の紹介のかたちで、以前、このブログの記事にしました。「ハッチョウトンボの文献記録が安永・天明年間まで遡ることに」。ご一読ください。


*注:国際トンボ学会議(関連記事:外部リンク、湘南むし日記より)は、東日本大震災に伴う原発事故の影響で1年延期され、2012年に小田原で開催されました。ちなみに、私は実行委員会の事務局長として委員長以下の委員諸氏とともに準備・運営に奔走しました。


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2017-04-09 (Sun)
前回の記事「世界のグンバイトンボ類、軍配サイズ番付」で公表した「世界のグンバイトンボ類、軍配サイズ番付」では、ラオス産のグンバイトンボ属の種、Platycnemis phasmovolans Hämäläinen, 2003(図1、2;再掲)が見事、東の正横綱の地位を確保しました。

Platycnemis phasmovolans _ photo taken by Dr Matti Hamalainen 
図1.Platycnemis phasmovolans, photo taken by Dr. Matti Hämäläinen. 
   (Platycnemis phasmovolans♂の標本写真。Dr. Matti Hämäläinen提供)
  (写真はクリックで拡大します)

Platycnemis phasmovolans, teneral male _ photo taken by Dr Matti Hamalainen
図2.Platycnemis phasmovolans teneral male, photo taken by Dr. Matti Hämäläinen.
  (Platycnemis phasmovolans未熟♂の貴重な生態写真(Dr. Matti Hämäläinen提供)。 


そこで、今回は、この種を新種として記載した、Matti Hämäläinen博士が、このトンボと出会ったときの生き生きとした印象をその記載論文(Hämäläinen, 2003)からご紹介します。

「横井博士の助けを借りて、私は2002年の4月末、ベトナム国境付近の2,3の小川を訪れることができた。」

Platycnemis属のこの新しい種と私の最初の出会いは、私のこの訪問中のもっともスリリングなものであった。」

「小川の薄暗いブッシュの中で、私はとてもゆっくりとダンスをしながら近づいてくる白い団扇の一群を目にした。」

「はじめは、このゴーストのようなものが何なのか分らなかったが、その後、近ずいたことで、それがとてつもなく幅広い脛節をもつイトトンボだと分かった。」

「横井博士は2001年5月に、すでにこれと同じ種の若干の標本を同じ小川から得ていた。」

「彼は、この魅惑的な昆虫―空飛ぶゴースト―を私が記載することを承諾してくれた。心より感謝する。」

「この種の脛節は、Platycnemis phyllopoda Djakonov, 1926, グンバイトンボP. foliacea Selys, 1886 およびマダガスカルのP. alatipes McLachlan, 1870のそれよりも、比率上ずっと幅広い。」

この論文を書いた時点で、Hämäläinen博士はPlatycnemis phasmovolansの軍配サイズを横綱級と認定していたことになります。

前回記事で、私が網羅的に同属種(他属へ移行した種を含む)の軍配サイズを調べ、リンク付きで紹介しましたが、これを読まれたHämäläinen博士から、
「あなたが列挙したリンクによりいくつかの興味深い写真、たとえばP. alatipesを見られるのは楽しい」、
という言葉を頂きました。

Hämäläinen博士の著作からは、私も学ぶところが多く、これからも交流させていただくつもりです。

Platycnemis phasmovolansの写真の当ブログへの掲載を許可されたHämäläinen博士にあらためてお礼申し上げます。


種の学名の語源(Hämäläinen, 2003)
「Phasma(ギリシャ語の「ゴースト」)+volans(ラテン語の「飛行」)。」
「極端に幅広い白い羽のような脛節をもつ♂がゆっくり飛行している際のゴーストのような印象から。」


引用文献:
Hämäläinen, Matti (2003): Platycnemis phasmovolans sp. nov.—an extaordinary damselfly from Laos with notes on its East Asian congeners (Odonata: Platycnemididae). TOMBO, Matsumoto, 46 (1/4): 1-7. 


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