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2015-01-15 (Thu)
リュウキュウルリモントンボ*の連結産卵の写真です。

リュウキュウルリモントンボ 連結産卵
 ↑クリックで拡大します。

前回記事の本種♂同様、2010年の5月に沖縄本島北部の渓流で撮影しました。

左の写真は、連結産卵中のペアで、♂(青味の強いほう)は直立不動(といっても、腹部が若干「への字」に曲がっているのが、なんとも健気です)の姿勢(歩哨姿勢)をとって、少し前に自分と交尾したばかりの♀の産卵をガードしています。

この姿勢では、♂は尾部上付属器と尾部下付属器(合わせて4つの「指状」突起をもつ)によって、♀の前胸の背板をがっちり掴んで、その支えだけで、体全体が倒れないようにしています。
♂の尾部付属器をグリップさせる随意筋につながる運動神経では脳からの指令としてのインパルスが流れ続けていると思いたくなります。ちょうど、体操選手が鉄棒を握って逆立ちをしている時のように。

しかし、他のイトトンボで、♀の前胸背板に、胸から前方がちぎれて**どこかにいってしまった♂の腹部がガッチリとくっついたままのものが極く稀ですが見つかることがあります***。

この事実から推理すれば、脳からの指令なしに、尾部付属器は♀の前胸をグリップし続けることができる(場合がある)、という、ちょっと優れたトンボの適応が透けて見えます。
もちろん、グリップを解除する際は♂が脳から指令を発することになります。

右の写真は産卵中の♀のクローズアップです。
考えてみれが、♀は、自分とほぼ同じ体重の♂を自分の首根っこに載せたまま、せっせと卵を産まなければならない状況です。
♀が、かよわい6本の脚で2匹分の体重を支えているというのは、人間でいえば、お姫様だっこの逆(王子様だっこ?)に相当する、いやそれ以上のことですから、ちょっと信じられないほどです。

以前、キタイトトンボの同様の産卵行動を紹介するときに、私は「男はつらいよ」という比喩を使いましたが、ごめんなさい、「女はもっとつらいよ」というべきかもしれません。

アオイトトンボ♀の腹部第9節が樹皮に差し込む産卵管を動かす筋肉を収容しているために肥大化している(母さんの力こぶ)ように、リュウキュウルリモントンボのように、♂が歩哨姿勢をとるトンボの♀の脚の太さ(失礼!)は♂の脚の上を行っているかもしれません。

注:
*本種の形態、♀の二型、分布、系統、学名の由来などについては、前回記事を参照してください。

**ちぎれた原因は九分九厘、捕食者による捕食でしょう。いずれにせよ、ちぎれて半分になった♂は命を落とすことになりますが、♀の前胸は「貞操帯」(死語かな?)的機能(別の♂との交尾を機械的方式で阻止する機能)のある自分の後半身を固着させたままになりますから、生き残ったこの♀が今後産む卵は、ちぎれた♂の精子だけ(もしあれば、それよりも前に交尾した別の精子も)が使われますから、♂は自分の子孫を残すという目的を、見た感じとは比べるべくないほど大きく、達成することになるでしょう。

***私も大学院でトンボの研究を始めたばかりの年に、札幌市南郊の沼でイトトンボ(たしか、エゾイトトンボ)の同様の♀を採集したことがあります。採集した時点では、胸の前方背部からもう1本の腹部が「生えて」いる、つまり双頭ならぬ双腹の個体かと、驚きました。これは、その後、実体顕微鏡で仔細に観察することで、タンデム連結した♂の腹がちぎれて残っているだけだということで一件落着しました。


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