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2017-06-23 (Fri)
前回記事では、ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea Rambur, 1842 とのじっくりした対面の印象と、その「小ささ」に注目しました。

今年6月のハッチョウトンボの生息地探訪では、交尾・産卵は見られませんでしたが、真紅に身を染めた個体から灰褐色の迷彩色をまとった個体まで、バラエティーに富んだ個体を観察・撮影することができました。

これらの色彩の違いは、大部分、性別と羽化後の成熟度合いに依存します。

以下、撮影した写真を、♀、♂ごとに、成熟度合いの順になるように配列して、色彩変化の様子を見ていきたいと思います。

まずは♀です。

撮影した中で、一番初々しいというか、頼りない状態だったのがこの♀個体です(写真1)

ハッチョウトンボ♂成熟過程(1) 
写真1 ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea、未熟♀。(写真はクリックで拡大)

十分成熟した個体が水平に近いかたちでとまるのに対し、この個体は体をぶら下げるかたちで草の葉にとまっています。

複眼の色も、褐色味はありますが、乳白色に濁っています。
また、翅もまだ柔らかそうに見え、翅脈の黒化が始まっておらず、薄い褐色です。
これらのことから、この個体は、羽化後、まだ日が浅いことが伺えます。

これ以外にも、翅基部の黄色斑はまだはっきりしないですし、腹部の褐色斑紋の色彩に鮮やかさがみられません。

下の写真2の水平にとまった♀は、写真1の♀よりも羽化後の時間経過が長いように見えます。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(1)
写真2 ハッチョウトンボ、未熟

なぜなら、翅脈が黒くなっていますし、翅基部にまだ若干薄いながらも黄色斑が現れているからです。
更に、腹部の褐色斑紋がより明るく鮮やかな色になっているのも進展といえるでしょう。

ですが、複眼背面にはまだ乳白色の濁りが強く残っていますので、成熟まではまだまだといった感じです。

下の写真3の♀は、翅基部の黄色斑がかなり強く現れてきています。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(2) 
写真3 ハッチョウトンボ、未熟

そして、複眼背面の乳白色の濁りも若干弱まり、内部の茶系の色が少し透けて見えるようになっています。

下の写真4の♀では、複眼の乳白色の濁りがほとんど消え、茶系の色が目立ってきています。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(3) 
写真4 ハッチョウトンボ、成熟途上♀

翅基部の黄色斑の部分の翅脈の色が茶色になっています。
ただし、成熟♂のその部分のように赤くはなっていません。

下の写真5の♀(前回記事から再掲)では、複眼の乳白色が払拭され、明るい茶色となっています。

ハッチョウトンボ♀
写真5 ハッチョウトンボ、ほぼ成熟(?)♀(再掲)

さて、今回の現地調査では、これ以上成熟が進んだように見えた♀を撮影できていません。
Googleで「ハッチョウトンボ」&「交尾」or「産卵」で画像検索したところ、複眼や腹部背面の茶褐色がもう少し濃くなった印象を与える成熟♀をいくつか確認できました。

ですので、写真5の♀も、もう1、2日したら成熟♂が待っている水辺へと「デビュー」するのかもしれません。

♀については、このくらいにして、次は♂です。

下の写真6の個体が、今回撮影した中で一番未熟な♂と、私が判断したものです。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(2)
写真6 ハッチョウトンボ、未熟♂
 
というのも、この個体の複眼には乳白色の濁りが残存し、腹部背面はくすんだ暗褐色を呈していて、赤化が進んでいないからです。
ただし、翅基部の黄褐色班ははっきり現れていますし、翅脈は黒化しています。
これらのことから、写真6の♂は、写真3の♀と同レベルまで進行しているといえます。

下の写真7の♂では、複眼の乳白色の濁りは消え、複眼背面の茶色の赤色味も強まりつつあります。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(3)
写真7 ハッチョウトンボ、成熟途上

腹部の赤化も少し始まっているようですが、まだはっきりしません。

下の写真8の♂は、水面に突き出す枯草にとまって、なわばり占有をしています。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(5)
写真8 ハッチョウトンボ、成熟 ♂

複眼背面、胸部、腹部とも真紅に染まっています。
♀への言い寄り、そしてライバル♂への対抗のために、ドレスアップしているといえるでしょう。

人間社会でドレスアップといえば、普通、女性が行う行為ですが、トンボの世界では鳥の世界と同様に、♂たちのためにあります(例外はありますが)。

私の以前の記事でも、以下のとおり、このトンボの社会学事象をとりあげています。
今回、写真8よりももっと赤化が進行した♂も見られました(写真9)。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(4)
写真9 ハッチョウトンボ、成熟

写真8の♂では、腹部第2,3節背面にも赤化しきっていない部分がありますが、こちらの♂では完全に赤化しています。

また、写真8の♂では、翅の基部に近いところ(黄斑のある部分)の翅脈はやや赤化しているだけなのに対し、こちらの♂では完全に赤化しています。

このように、♂が♀にくらべて色彩あるいは形態が顕著に目立つタイプの性的二型を示すケースは、
(1)♀がそのような♂を「好む」ことにより、世代が進むごとにより顕著な方向に形質が進化するプロセス、あるいは
(2)♂同士がライバル間の争いで形態の顕著さを誇示しあい、より顕著なほうが♀と交尾する権利を獲得することで、その方向に進化するプロセス
のいずれかによって出現してと考えられます。

私がハッチョウトンボの♂だったとしたら、相手の色の赤さに参りそうになっても頑張らなくてはと思うでしょう。
一方私がハッチョウトンボの♀だったとしたら、より赤いほうの♂を選ぶだろうと思います。

でも実際のところ、どうなのでしょうか?
♀は♂を選んでいるでしょうか?
あるいは、♂同士の なわばり争いで、腹部背面の鮮やかさを誇示しあっているでしょうか?

今後、観察の機会があったら、そのへんを注意しながら観察してみようと思います。


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2017-06-21 (Wed)
ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea Rambur, 1842 は日本最小のトンボとして名を馳せています。

イギリスのアマチュアトンボ研究家、Jill Silsbyさんは著書"Dragonflies of the world" (2001, CSIRO Publishing)の中で、ハッチョウトンボの名も挙げつつ、中国に産するNannophyopsis clara (Needham, 1930)画像、外部リンク)を世界最小としています。

しかし、Nannophyopsis clara の腹長が15mm(同書、162頁)であるのに対し、ハッチョウトンボの腹長は9~14mm(尾園ほか、「日本のトンボ」)と、より小さいのです。

したがって、ハッチョウトンボは(私の調べた範囲では)世界最小のトンボとなります。

私がハッチョウトンボと初めて会ったのは、1993年に大阪で開かれた国際トンボ学シンポジウムのエクスカーションで大勢の参加者とともに滋賀県の湿原を訪れた時です。

その小ささと、色彩や行動の可憐さには世界各地からの参加者もうっとりしていたことを今でも昨日のことのように憶えています。

私はトンボに目覚めた時から長い間北海道に住んでいましたので、次の機会は2011年に小田原で開催される予定だった国際トンボ学会議*のエクスカーション候補地探しの一環として、枝重夫博士のご案内で長野県内の湿原で再会したのが最後となっていました。

今回(2017年6月)、ハッチョウトンボの生息地を訪れ、念願の生態写真撮影を実現することができました。

まずは、真紅に装った成熟♂の正面写真をご覧ください(写真1)。

ハッチョウトンボ成熟♂ 
写真1 ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea ♂、成熟個体。(写真はクリックで拡大)

水面上に斜め上方に突き出した枯れた草の折れた茎にとまっているところです。
6本の脚でしっかり体を支え、真っ直ぐ伸ばした体の後方を少し持ち上げています。

いつもこのような格好をしているわけではなく、水平、あるいは体の後方を少し下げたとまり方もしていました。

ハッチョウトンボの♂は交尾のための なわばり を占有することが知られています。
今回も、ときどき、とまっている場所からとびたち、直径1メートル程度の範囲の水面上を見回るように飛び、またとまる行動や、他の♂と追い合いをするのが見られました。

ただし、観察時間が短かったこともあるかもしれませんが、交尾・産卵はもとより、なわばりへの♀の飛来すら観察できませんでした。

♀は開放水面から少し奥まったところにある、スゲやミズゴケからなる湿原植生のところの草にとまっているのが見つかりました(写真2)。

ハッチョウトンボ♀
写真2 ハッチョウトンボ ♀。

♀は、♂よりも腹部がやや太く、腹部背面の斑紋パターンが白と茶が交代する帯状となるので、簡単に区別することができます。

上の写真の♀は、たまたま腹部を上方に曲げているタイミングでの撮影でした。
このあと、もっと強く曲げていました。
トンボの♀も「筋トレ」をするのでしょうか(笑)?

さて、ハッチョウトンボはどのくらい小さいかを、直感的に理解していただこうと思い、カメラのレンズキャップ(直径約60ミリメートル)を左手で近づけながら、右手に持ったカメラで1頭の♂を撮影したのが写真3です。

ハッチョウトンボ♂とレンズキャップ
写真3 ハッチョウトンボ♂ とレンズキャップ。

10円、100円などの硬貨がポケットにあったら、それでもよかったのですが、金欠病のため持ち合わせがなく、レンズキャップの登場となりました。
このブログは稀に外国人も閲覧しているようですので、日本だけで通用する硬貨よりもレンズキャップのほうがかえってよかったかもしれません。

遅くなりましたが、♀のサイズも同様に比較しました(写真4)。

ハッチョウトンボ♀とレンズキャップ
写真4 ハッチョウトンボ♀ とレンズキャップ。


こちらは、背景にも別のハッチョウトンボが写っていますが、右手前のピントのあっているほうの個体とレンズキャップを比較してください。
「わかってる」ですって?
失礼しました。

付記:
ハッチョウトンボの和名の由来について、私の友人、小野知洋氏の論文の紹介のかたちで、以前、このブログの記事にしました。「ハッチョウトンボの文献記録が安永・天明年間まで遡ることに」。ご一読ください。


*注:国際トンボ学会議(関連記事:外部リンク、湘南むし日記より)は、東日本大震災に伴う原発事故の影響で1年延期され、2012年に小田原で開催されました。ちなみに、私は実行委員会の事務局長として委員長以下の委員諸氏とともに準備・運営に奔走しました。


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2017-06-19 (Mon)
前回記事では、木陰で薄暗い湿地上で♀を探索するサラサヤンマ Sarasaeschna pryeri (Martin, 1909) ♂との出会いをとりあげました。

同じ6月上旬、県外に脚を延ばしての取材旅行での立ち寄り地点で、陽光の中を飛び回るサラサヤンマ♂に遭遇し、観察・撮影することができましたので、写真を添えて紹介します。

現地で、正午を少し過ぎた頃、湿地のある沢沿いの廃林道上を低く飛ぶ小型ヤンマを発見しました(写真1~3)。

サラサヤンマ♂(明所、1) 
写真1 サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri ♂(1)。(写真はクリックで拡大します)

サラサヤンマ♂(明所、6)
写真2 サラサヤンマ♂(2)

サラサヤンマ♂(明所、2)
写真3 サラサヤンマ♂(3)

現地でも、体サイズ、外形、斑紋パターンなどからサラサヤンマと直感しましたが、帰宅後画像と図鑑を見比べて、同定に正確を期しました。

前回記事のサラサヤンマ♂のケースでは、うす暗い所を飛んでいましたので、ISO感度を最大の6400、5.6に設定した絞り優先オートにして撮影しましたが、今回は木陰のない所での飛行でしたので、ISO感度を1600、1600分の1秒に設定したシャッター速度優先オートにして撮影しました(オートの結果としての絞りは、写真1、3の場合、それぞれ10、14)。

やはり明るい所での撮影だけあって、薄暗い場所での場合とくらべてくっきりと写すことができました。
それでもまだピントは今ひとつですね(汗)。

苦し紛れとなりますが、写真3の一つ前のカット(写真4)は「尻切れトンボ」ながら、今回のベスト・ピント賞でしたのでアップロードしておきます。

サラサヤンマ♂(明所、3)
写真4 サラサヤンマ♂(4)

このサラサヤンマ♂は、地面から10cmくらいから1mくらいまでの、割合低い高度を曲線的に飛び、ときどきホバリングをはさんでいました。

また、写真5のように、道端の草や低木の枝葉と地面との間を覗き込むようにホバリングする行動も繰り返していたことから、摂食というよりも、交尾相手としての♀の探索が目的の飛行(探雌飛行)だったと考えられます。

サラサヤンマ♂(明所、5)
写真5 サラサヤンマ♂(5)

もし摂食が目的であれば、飛び回っている小昆虫を探すのですから、より広くより高い範囲を飛び回ればよいわけですが、今回のこの♂は低いところ、それも廃林道上の同じ場所(道に沿って2,30mくらいの範囲内)にこだわって飛んでいたからです。

それにしても、前回記事の同種♂にくらべて、なぜこんなに明るい場所で、そして水面も湿った泥もない地面のすぐ上で♀探しをするのでしょうか?

写真1に写っている地面に、落葉や土砂のほかにコケのような植物があることが、そのヒントになりそうです。
今年の本州の6月上旬は空梅雨で渇水気味となっていましたので、この場所はしっかり乾いていますが、もしかすると梅雨で路面が湿っている時期には、サラサヤンマの♀が産卵場所を求めてこのあたりをうろうろしたり、産卵を試みることもあるのかもしれません。

この想像が妥当なものかどうかは、今後の自分自身による観察、あるいは他の方のブログ記事あるいは昆虫関係誌への報告によって検証したいところです。

さて、この後は、余談になります。

下の写真6は、同じ場所でこの♂が水平から少し上昇しかけたシーンです。

サラサヤンマ♂(明所、4)
写真6 サラサヤンマ(6)

ピントが甘いので本来は没にすべき写りでしたが、複眼の部分を拡大したところ、楽しくなってしまいました(写真7)。

サラサヤンマ♂(明所、4、部分拡大) 
写真7 サラサヤンマ♂(7)。(写真6の部分拡大)

そこにいたのは、トンボに変身したアンパンマンでした。


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2017-06-18 (Sun)
6月上旬の好天の日、耕作放棄された棚田をかかえる谷戸の最上部のため池にトンボ探しに行きました。
目的地に近づくにつれて、ヨシの群生にクズ(葛)のツルが巻き付くブッシュが行く手をはばむようになりました。手には軍手、頭には帽子とゴーグルを装い、一歩一歩進んで行きます。

一番奥の、池があった場所がヨシ原に埋め尽くされた猫の額のような湿草原で、その草原が谷斜面とぶつかる所は、泥に埋まった細い流れになっています(写真1)。

サラサヤンマ♂の♀探索行動がみられた湿地
写真1 サラサヤンマ♂の♀探索行動がみられた湿地 (写真はクリックで拡大します)

この湿地に足を踏み入れると、小型の黒っぽいヤンマが通りかかりました。

息を止めてカメラを用意している間も、このヤンマは泥面から30~50cmの高さをゆっくり飛行しながら、時々ホバリングしています。

それを高ISO、高速シャッターでがむしゃらに撮影した中のベストショットが写真2と写真3です。

サラサヤンマ♂(1) 
写真2 サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri ♂(1)(トリミング)

サラサヤンマ♂(2)
写真3 サラサヤンマ♂(2)(トリミング)

体サイズ、色調、ロケーションから判断してサラサヤンマ Sarasaeschna pryeri (Martin, 1909) の♂に違いないとその場で判断しました。
帰宅後、図鑑で正解だったことが確認できました。

サラサヤンマとは私が北海道在住時に観察した経験がありますが、その頃は銀塩フィルムの一眼レフの時代で、このような空振り山積みの撮影をすることは考えもしませんでした。

写真2,3とも、トリミングしていますが、ストロボ発光も画像調整もしていないものです。

♂は、このように湿地上の低いところを飛び回りながら、明らかに♀、とくに産卵中の♀を探しているに違いありません。

そして、思いのほか、頻繁に、その飛び回り範囲内の草や木の垂直に近い茎や幹・枝にとまります(写真4)。
その高さは泥面から30~50cmでした。

サラサヤンマ♂(3)
写真4 サラサヤンマ♂(3)(トリミングなし)

写真4と、その直前にクローズアップして撮影した写真5は、いずれも内蔵ストロボを発光させたもので、その分、色調が鮮やかに写っています。

サラサヤンマ♂(4)
写真5 サラサヤンマ♂(4)(大幅トリミング)

写真5のオリジナル画像では複眼を構成する個眼がおりなす網目をとらえることができます。
私としては上出来な写りとなりました。

ついでながら、この個体、複眼に凹み傷がありますね。
しかし複眼の背面部の小さい傷ですので、♀や♂を認識したり追尾する上では問題なさそうです。

探索飛翔の間のとまった回数は、午後2時半の観察開始から3時15分の観察切り上げまでの45分間に丁度10回でした。
とまるたびにシャッターを押しましたので、回数は正確です(笑)。

薄暗い中での飛翔個体の撮影が主体でしたので、この間のシャッターを押した回数は170回となりました。

ストロボ発光で静止個体の写真撮影成功に味を占めて、飛翔個体もストロボでねらいましたが、そのうちこの個体がどこかへ行ってしまったので、ベストショットはなんと「葉隠れ」を彷彿とさせる写真6となってしまいました。

サラサヤンマ♂(5)
写真6 サラサヤンマ♂(5)(トリミング)

写真6は作品としては不合格ですが、サラサヤンマの生態を知る上では、なかなかの舞台づくりになっているといえるでしょう。
つまり、ヨシが疎生している薄暗い湿地の低いところを縫うように飛ぶ本種♂の習性を見てとることができるというわけです。

最後は言い訳じみてしまいました。

冒頭のタイトルを「出会いの場での振舞い(前編)」とした理由は、もちろん、このような場所で見事♂が♀を見つけて交尾に成功するところまで見届けたら「後編」をブログにアップするつもりがあるからです。

この湿地もいずれ乾燥化して生息不適になりそうな予感があり、いつ後編が書けるかのあてはありませんが、今後の楽しみの一つとしておきます。


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2017-06-17 (Sat)
6月上旬の好天の日の昼過ぎに、山間部のダム湖にトンボの様子を見にいきました。

すり鉢状に深いダムですが、渇水のため、水位が下がり、上流側では本来湖底である部分の土砂が広い範囲で露出していました。

そのせいかどうかわかりませんが、湖の水面上や岸辺にはトンボの姿ありませんでした。

それでも、ダムに流入する渓流を少し遡ると、アサヒナカワトンボミヤマカワトンボのそれぞれ1♀が、渓流沿いの木の葉にとまっていました。

湖畔の駐車場に回ると、駐車場と湖の間に根を張った広葉樹の樹冠の下部の広々とした空間を、コシアキトンボ Pseudothemis zonata (Burmeister, 1839) の未熟な♂が自在な曲線を描きながら飛び回っていました(写真1,2,3)。(写真はクリックで拡大します)

コシアキトンボ未熟♂摂食飛翔(1) 
写真 コシアキトンボ Pseudothemis zonata の未熟な♂(1)(写真はクリックで拡大します)

なかなかピントのあう写真が撮れませんでしたので、トンボそのものよりも、トンボが飛んでいる場所の雰囲気がわかる写真ということでご紹介することにしました。

とはいえ、トンボの様子についても一言書きたくなります。

一般に、池の水面で なわばりパトロールをするコシアキトンボ♂を撮る場合は、斜め上方か、せいぜい横からになりますが、今回の写真1は、コシアキトンボを少し下方から撮ったかたちになりました。

撮影のアングルが、木の根元よりも一段高くなった駐車場からであったためです。
そのため、腰の黄色い帯が腹側(下側)でもしっかりつながって、まさに帯状になっていることがわかります。

今回、真横からの写真も撮れました(写真2)。

コシアキトンボ未熟♂摂食飛翔(2)
写真2 コシアキトンボの未熟な♂(2)

写真2では、胸部・腹部の淡色斑紋の黄色味が強いという、未熟♂の特徴が見えています。

一方、成熟した♂では腹部の淡色斑紋は白色になり、胸部側面の淡色斑紋も少し黒ずんできます(参照:当ブログの過去記事)。

♀は♂に比べて黄色味が成熟しても残りますので(参照:当ブログの過去記事)、その点、観察者にとっても、同種のトンボにとっても、腰の帯びの色調は成熟個体の場合の性別の判定に使えるはずです。

全身を右に少し傾けた状態のシーンも撮れました(写真3)。

コシアキトンボ未熟♂摂食飛翔(3)
写真3 コシアキトンボの未熟な♂(3)

どなたでもお分かりのとおり、このシーンは、このトンボが進行方向を右方向にターンしているところです。

人間が発明した飛行機の飛び方もこの飛行テクニックを採用していますね。

このテクニックは、水平飛行の場合に翅にぶつかる空気によって生じる揚力の一部を、体軸を傾けることによって生じる傾けた方向への圧力に換えることで、前進しようとする力と横向きに働く力を合成した方向に飛行体がターンしていくという、力学プロセスを利用しています。

トンボたちは、その祖先が登場した、今から約3憶年前以来、この力学プロセスを巧みに採用していたということになります。

このように、自在に上下左右に飛行方向を替えながら、このコシアキトンボはこの樹冠の下の空間を飛び回っていました。

あらためて説明するまでもなく、この一連の飛翔行動の役割は摂食飛翔です。

つまり適当なサイズの昆虫を見つけたら捕まえ、それを食べて、栄養にすることを目的とした行動。
生殖腺が成熟するまでのこの時期「前生殖期」のトンボは、異性には興味を示さず、食べることだけに専念します。

このように飛び回っていると、少しは疲れますね。
そう、彼らも休みます(写真4)。

コシアキトンボ未熟♂摂食飛翔(4)
写真4 コシアキトンボの未熟な♂(4)

写真4は、飛び回っていたのと同じ個体です。
私の観察中に、2,3度、このように、木の枝で「休憩」していました。

※今回の写真はすべてトリミングし、明暗、シャープネスを調整したものです。


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2017-06-15 (Thu)
6月上旬の好天の日の、比較的きれいな水が流れる河川中流部でのトンボの観察は、前回記事のミヤマカワトンボに続いて、今回もカワトンボ科の種が主役を務めます。

午前10時半をまわった頃、私は川の堤防沿いの傍流部(写真1)の上流側から下流側へと歩を進めようとしていました。

カワトンボ科3種が同時に観察された傍流部 
写真1 カワトンボ科3種が同時に観察された傍流部 (写真はクリックで拡大します)

すると、水辺に生い茂るヨシの類の葉の上に、アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys, 1853* の無色翅型♂がひっそりととまっているのが目に入りました(写真2)。

アサヒナカワトンボ無色翅型♂
写真2 アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa 無色翅型♂

頭部、腹部に白粉が吹いて、十分成熟している様子がうかがえます。

この日、川の本流のほうではミヤマカワトンボとアオハダトンボは見られましたが、アサヒナカワトンボの姿はなく、この傍流に限って観察することができました。

この傍流沿いの少し下流方向には、アサヒナカワトンボ橙色翅型1♂もたたずんでいました(写真3)。

アサヒナカワトンボ橙色翅型♂
写真3 アサヒナカワトンボ橙色翅型♂

こちらの♂は、頭部・腹部はもとより、胸部にもびっしりと白粉が吹き、橙色翅型♂らしさを全開しています。

登場の順序が逆になりましたが、上記のアサヒナカワトンボ無色翅♂のいた場所と橙色翅♂のいた場所の中間には、アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869 の♀もとまっていました(写真4)。

アオハダトンボ♀
写真4 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♀

アオハダトンボ♀の全面黒褐色の翅は、アサヒナカワトンボの橙色の翅と比べると、落ち着きがあり、気品さえ感じさせます。

翅の白い偽縁紋(ぎえんもん)はアオハダトンボの♂にはないので、雌雄の区別は簡単です。
更には、よく似た種であるハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853) では♂・メスとも偽縁紋を欠くので種の判別も楽々です。
それに対して、アオハダトンボとハグロトンボの♂同士の判別は注意を要します。

この♀は、ときおり、翅をゆっくり開いてパタリと閉じる動作をしていました。
もしかすると、配偶者探しをしている同種♂に、「私はここよ!」とサインを送っているのかもしれません。
♂はどこから現れ、どこで見ているか、♀にはわかりませんから、♂が視界にはいらなくても、♂が来そうな場所では、このようなサインをときおり示すことは効果があるのではと思います。

さて、私が傍流を少し下流方向に歩くと、傍流の終端部付近の水辺の大石の上には、ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853 の1♂がとまっていました(写真5)。

ミヤマカワトンボ♂
写真5 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia 

このミヤマカワトンボ♂も、写真のように、時々翅を開いてはパタリと閉じる行動を示していました。
長い6本の脚でふんばって長大な体を支え、琥珀色の大きな翅を開閉するのですから、とても目立ちます。
おそらく♂同士のサインとして、「ここは私の なわばり だ。近寄るとろくなことはないぞ」といったような意図を発信しているものと思われます。
それと同時に他所から飛んできた♀に対しては、「あ、ここをなわばりに決めて頑張っている♂がいるんだ。。。」と判断する材料を与えることにもなっているでしょう。

行動の意図についての想像はこのくらいにしておきましょう。

結局、この日私は、この短い区間に、カワトンボ科3種が勢ぞろいしているのを目撃することができました。
まるで銀座通り。ちょっと狭いので裏銀座といったところでしょうか。

3種の中でた、アオハダトンボはなかなか見ることのできない種ですので、それにここで会えたことは、私にとってラッキーな一日となりました。

そんなカワトンボ銀座の路上で、脇役に甘んじていたのは、ヤマサナエ Asiagomphus melaenops (Selys, 1854) ♂(写真6)です。

ヤマサナエ♂
写真6 ヤマサナエ Asiagomphus melaenops 

このヤマサナエ♂は堤防側水辺のコンクリートの塊の上にとまり、カワトンボ達には我関せずとばかり、水面方向をじっと見つめていました。

この構えは、おそらく、♀が来たら交尾し、♂が来たら追い払うのでしょう。
この予想があたっているかどうかを含め、このトンボも、いずれじっくり継続観察してみたいと思っています。

ちなみに、ヤマサナエは河川本流に接する河原の石の上でもこの日、数個体確認できました。
どうやら、今が成虫の繁殖活動の最盛期なのでしょう。

ライバル種(?)のアオサナエ Nihonogomphus viridis Oguma, 1926 も♂1個体だけでしたが、本流側のヤマサナエと同じような場所で観察できました(写真7)。

アオサナエ♂
写真7 アオサナエ Nihonogomphus viridis 

アオサナエはわき役にするには惜しい、洒落た色合いをしていますが、このブログの以前の記事では一度主役として取り上げていますので、よろしければそちらをご覧ください。

最後に付け足し。
この日、コヤマトンボ Macromia amphigena Selys, 1871 の♂が本流の川面上をスピーディーにとびまわっていました。
撮った写真は、「オオヤマトンボではなくコヤマトンボだ」との判断には利用できましたが、ブログにアップできるレベルには程遠いものでした。

コヤマトンボのスピードと撮影テクニックの対決には完敗しましたが、力を付けていずれリベンジしたいと思っています。


*注:アサヒナカワトンボと、同属のニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869 は成虫の形態による区別は非常に困難ですが、当該観察地点はアサヒナカワトンボの単独分布地域に含まれていますので、それに従っています。より詳しいことに関しては、過去記事(こちら)を参照。


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2017-06-14 (Wed)
6月上旬の好天の日、午前9時過ぎに、比較的きれいな水が流れる河川中流部にカメラ持参で出かけました。

川面の上に岸のから突き出た竹の葉にとまるミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853 ♀が私を出迎えてくれました(写真1)。

ミヤマカワトンボ♀(1) 
写真1 ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia ♀(1) (写真はクリックで拡大します)

前脚、中脚の爪で葉の縁を左右からしっかりホールドし、後脚のうちの1本は、葉の表面に踏ん張り、後半身を水平より高く保つ、つっかえ棒の役割を果たしているように見えます。

写真的には、逆光気味であったため、このトンボの特徴であるベッコウ色の翅の風合いが幾分とらえられているように思います。

このモデルは、カメラマン(私)の激写にもたじろぐことなく、その場にじっととまっていてくれましたので、次に私は正面に回り込んで、この♀の表情をとらえてみましたた(写真2)。

ミヤマカワトンボ♀(2)
写真2 ミヤマカワトンボ♀(2)

目つきや口元のしぐさから、このトンボが笑っているように見えるのは私だけでしょうか?

硬く考えれば、トンボに「可笑しい」という感情があるとは思えませんし、百歩譲ってそのような感情があったとしても、その感情の表し方がヒトのように目を丸くし、歯を見せることにはならないでしょう。

とはいえ、このような偶然の一致を昆虫を始めとした生き物の中に見出すことも、私の自然観察・撮影の楽しみの一つとなっています。

写真3、川の対岸を少し下流側に歩いた先の石の上にとまるミヤマカワトンボ♀(別個体)です。

ミヤマカワトンボ♀(3)
写真3 ミヤマカワトンボ♀、別個体

この態度は、まるでナワバリを見渡して♀の到来や侵入♂を監視している♂個体のように見えます。

もちろん、♀はナワバリを占有しませんので、一時的にこのような場所をとまり場として利用したにすぎません。
一時的にせよ、なぜそこを利用したのでしょう?
単に移動中の休憩なのか、それとも♂のいそうな場所とみて♂の接近&求愛を待ち受けるためなのか、それとも小昆虫をとらえて餌にしようとしているのか、その判断をするには私の観察の経験が短過ぎるようです。

いずれ腰を落ち着けて、特定の種をじっくりと継続観察してみたいものです。

ミヤマカワトンボには昨年5月上旬に♂個体を観察したときの印象をブログに書いていますので、よろしければ御笑覧ください(こちら)。
その記事の末尾では、学名の由来についても触れています。


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2017-06-09 (Fri)
今年5月末の私の溜め池巡りでは、コサナエ、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボ、そしてクロスジギンヤンマが主役を務めました。

そんな中、このまま取り上げてもらえないと、ふてくされてしまうかもしれないトンボたちがいます。

それは、あまりにもどこにでもいるため、スクランブル交差点を渡る主人公の背景や前景を横切る群集を構成する人々同様、注目されない者たちです。

そう、クロイトトンボ Paracercion calamorum (Ris, 1916)シオカラトンボ Orthetrum albistylum (Selys, 1848) といった見慣れた普通種です。
本来、親友であり、一番大事にしなければいけない者たちかもしれません。

私のように住み始めて数年の土地で、新しいトンボとの出会いを求めて歩き回るものにとって、彼らは親友というよりも、その他大勢にならざるをえません。

しかし、将来、一通りのトンボたちと知り合いになった頃には、彼らとじっくり親友付き合いしたいものです。

前書きが長くなりました。

今回のため池回りで撮影した、脇役たちの写真を下に掲げておきます。

シオカラトンボ♂
シオカラトンボOrthetrum albistylum

このシオカラトンボは沈水植物が繁茂する溜め池の上流端の土砂の多い遠浅の岸の短い棒先にとまっていました。
近づくと飛び上がりますが、近くにとまります。
とまる際に向く方向は、水のある方向です。
♀がきたら交尾を挑み、他の♂が来たら追い払うのでしょう。

 クロイトトンボ♂
クロイトトンボParacercion calamorum ♂

クロイトトンボ♂は、ヒシの生育する溜め池のヒシの葉の上にとまっていました。
ときたま飛び上がり、水面上を低く飛び回ってまた同じような場所にとまります。
♀がいたら交尾しようという魂胆がうかがえます。

ショウジョウトンボ♂
ショウジョウトンボCrocothemis servilia ♂

ショウジョウトンボCrocothemis servilia (Drury, 1770)は全身真っ赤で目立ちますので、3年前の7月に私が市街地の池で最初に出会った際はしっかり主役を務めています(ブログ記事はこちら)。

同じ引き立て役の中でも、一番おしゃれなショウジョウトンボが登場したところで、今回の溜め池群関連記事の幕を下ろすことにします。


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2017-06-08 (Thu)
クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus Oguma, 1915 は同属のギンヤンマと並んで本州以南ではもっとも普通に見られるヤンマ科の種とされています。

私が本州に移住してデジタル一眼レフを首にかけて歩きまわるようになってから、ギンヤンマもクロスジギンヤンマも目撃する機会は多く、カメラを向けるのですが、♂たちはほとんどホバリングすることなく飛び回るものですからなかなか撮影に成功していませんでした。

そんな中で唯一見せられるレベルに撮れたギンヤンマ♂を3年前の9月にブログにアップしていますが(こちら)、これはホバリングした瞬間のものです。

私が5月末に里山の溜め池群を訪れた際も、沈水植物が豊富な比較的澄んでいる溜め池で、クロスジギンヤンマ1♂が水面上を勇壮に飛び回るのを観察することができました。

カメラを向けますが、全くホバリングしないでかなりの速度で飛び回っています。
ただし、高度は比較的安定し、岸にほび平行にほぼ一定速度で飛ぶ傾向があり、しかも目の前の同じ一帯を繰り返し通過します。

そこで、カメラのISO感度を3200と大きくとり、シャッター速度を1250分の1秒という最大速度に設定し、シャッター速度優先オートで、シャッターを押しまくりました。焦点距離はあらかじめこのあたりと狙いを定めた距離にしておき、そのあたりに近づいたときにファインダーをのぞくのではなく、自分の顔よりも低い位置にカメラを構えてレンズの先をヤンマの通る方向に向けて待ち構えました。

こうして350回シャッターを押した中からベストショットを選びだしたのが下の3枚の写真です。
いずれも多少のトリミングを加えています。

クロスジギンヤンマ♂(1)
クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus Oguma ♂(1)(写真はクリックで拡大)

 クロスジギンヤンマ♂(2)
クロスジギンヤンマ ♂ (2)

クロスジギンヤンマ♂(3)
クロスジギンヤンマ ♂(3)

このヤンマが観察された場所の写真を下に再掲しておきます。

沈水植物のある溜め池(2017年5月末)(1)
沈水植物の繁茂する浅い池(上流側を望む)

沈水植物のある溜め池(2017年5月末)(2)
同上の池(堤体部)。この水面上でクロスジギンヤンマ♂が観察された。

観察中、他の♂と追い合いをしてすぐにこの池に1♂が戻り同じように水面上のパトロールを続けたシーンが2,3回観察されましたので、おそらくナワバリとしてこの池のこの部分(堤体沿い、池の面積の数分の1程度)を防衛していたのでしょう。

さてさて、今回、なんとか人に見せられるような写真が撮れたのも、フェイスブック仲間のうちのトンボ写真のプロ・セミプロの皆さんによる、作品や撮り方の工夫談義から少しずつ学ばせていただいた成果かと思います。

まだまだ下手の横好きのレベルですが、少しずつでも進歩していければと思っています。

そうそう、観察を深めることも忘れずにいきたいです。


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2017-06-07 (Wed)
5月末の好天の日の午前、ヒシの生育する溜め池でホソミイトトンボ Aciagrion migratum (Selys, 1876)の交尾も観察・撮影できました(写真1)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(1) 
写真1 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(1)(写真はクリックで拡大)

前回までの記事でとりあげた、コサナエホソミオツネントンボも観察された同じ場所、同じ時間帯(午前9~11時)です。

溜め池の堤体の水辺の草の葉に交尾態でとまっているところを発見・撮影しました。
この角度からですと、♂、♀の両方に同時にピントがあいませんので、♀にピントを合わせたカットを写真2としてお示しします。

ホソミイトトンボ交尾5月末(2)
写真2 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(2)。写真1と同じペア。

交尾中、♂は翅を少し開いた状態で、♀はぴたっと閉じた状態となっています。

この時は、この場所での観察時間が短かったこともあり、交尾後の産卵のシーンを見ることはありませんでした。

去年、別のため池でホソミイトトンボの産卵活動中の写真を撮影し、このブログで紹介しました(こちら)。
ただし、そこでは話題は、
産卵そのものではなく、「なぜホソミイトトンボは越冬のために「フトミイトトンボ」という体型を選ばなかったのか?」という自分の疑問に自分で応えようとしたものです。

さて、話をもどします。
今回のこの池、少し歩くと他の池も2,3ありますので、カメラをぶら下げてそちらも見にいきました。
残念ながら、他の池にはトンボはきておらず、1つの池の周りの林内にカワトンボ(地理的位置からアサヒナカワトンボとされます)を1頭確認しただけでした。

そして、今回のこの池(ヒシの生育する溜め池)に戻ると、池の側面通路沿いの岸の草で、ホソミイトトンボの別ペアが交尾していました(写真3)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(3)
写真3 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(3)。写真1、2とは別ペア。

やはり、♂は翅を半分ほど開き、♀は閉じています。

私が撮影角度を変えるために回り込むと、このペアはちょっと飛んでとまり替えました(写真4)。

ホソミイトトンボ交尾5月末(4)
写真4 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾(4)。写真3と同じペア。

今度は♂の翅は少し閉じ気味ですが、それでも少し開いています。

今回、Googleで「ホソミイトトンボ 交尾」をキーワードに画像検索をしたところ、♂が翅を少し開いているものばかりでしたので、種、あるいは広域個体群のレベルでこの翅の仕草が固定している可能性が考えられました*。

イトトンボの♂が交尾中に翅を少し開いていることは、別に珍しいことではありませんが、前回記事で紹介したホソミオツネントンボの連結中の♂が翅を閉じていることが多かったのとは対照的でしたので、それにこだわった記述となりました。

翅を半開きにしている状態は、翅を閉じる筋と開く筋の両方を稼働させていることになりますので、それなりにエネルギーを消費するはずです。
半開きにしていることにはこのコストを支払う以上の利益(適応的価値)を得ているのではないでしょうか。

一つ考えられるのは、前回のホソミイトトンボの♂のように、他個体が接近してから翅を開いて警告するのもよいが、ホソミイトトンボのようにあらかじめ半開きにしておいて他個体に早々と警告信号を出し続ける、ということです。

この仮説を検証するには、翅を開かせないように手を加えた交尾ペアと、翅を半開きにしたまま固定した交尾ペアを同一条件に置き、そこに接近する他個体の行動上の反応のタイプの比率を統計的に比較するという方法が考えられます。


これで、この「ヒシの生育する溜め池」のトンボのネタは尽きました。

次回記事では車で移動した先の別のため池のトンボ、とりわけヤンマ科の個体をとりあげます。

*注:皆さんの中に、「いいや、こちらのホソミイトトンボ♂は交尾中ほとんど翅を閉じているよ」という方がおられましたら、コメント欄等でリアクションしていただけると有難いです。


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