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2017-07-11 (Tue)
昨年6月18日、「四万十市トンボ自然公園」(別名「トンボ王国」)を初訪問し、園地内でわずか1時間そこそこで4科14種のトンボを観察・撮影することができました(前々回記事「トンボ王国訪問記(1):多彩なトンボ達に迎えられ」参照)。

それに続いて、同行の飯田貢さん、山本桂子さん(ともにアマチュア昆虫写真家)とともに、杉村光俊氏(トンボ王国に併設の「四万十川学遊館」の館長)のご案内のもと、園地外の貴重な生息地に移動し、シコクトゲオトンボRhipidolestes hiraoi Yamamoto, 1955カラスヤンマChlorogomphus brunneus Oguma, 1926(四国を含む本土産のものは以前は亜種和名ミナミヤンマが使われていた)、ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus (Matsumura in Oguma, 1926)などの観察・撮影を楽しみました(前回記事「トンボ王国訪問記(2):ヒメサナエと小さな虫たち」参照)。

今回の記事は、その翌日(6月19日)の四万十市トンボ自然公園」の園地内での2回目のトンボの観察・撮影の記録です。

この日は、あいにく雨が降ったりやんだりで、さすがに池の面を活発に飛び回るトンボの姿はありません。

池の岸に沿った園路をゆっくり歩みながら岸辺の草の茂みに目を凝らすと、いました。
チョウトンボRhyothemis fuliginosa Selys, 1883 ♂です(写真1)。

チョウトンボ♂ 
写真1 チョウトンボRhyothemis fuliginosa  ♂ (写真はクリックで拡大します)

じっととまって、雨が上がるのを待っているかのようです。

少し歩くと、今度はキイトトンボCeriagrion melanurum Selys, 1876の♂が草の葉裏につかまり、ほぼ鉛直にぶら下がっています(写真2)。

キイトトンボ♂未熟
写真2 キイトトンボCeriagrion melanurum 未熟♂

トレードマークの腹部の黄色はまだ薄く、翅胸背面も緑系が発色する前の薄い藤色と、まだ未熟な個体であることがわかります。

次に見つかったのはハラビロトンボLyriothemis pachygastra (Selys, 1878)♀です(写真3)。

ハラビトンボ♀
写真3 ハラビロトンボLyriothemis pachygastra ♀

こちらは全体に黒っぽさが出ていて、翅の汚れも見られることから成熟個体と判断できます。

雨が強くなってきました。
睡蓮が満開の水面がリズムを刻みます(写真4)。

雨のトンボ王国、睡蓮 
写真4 トンボ王国、園地内の睡蓮に雨は降る

私は雨よけのポンチョを着用していましたが、雨宿りのために、池の反対側の山斜面が迫っていて木が茂っているところに移動しました。

そこには、先客がいました。
ハグロトンボAtrocalopteryx atrata (Selys, 1853)♂です(写真5)。

ハグロトンボ♂、下から
写真5 ハグロトンボAtrocalopteryx atrata 

あまりよい写りではないのですが、腹面を斜め後ろ下方からという、ちょっと変わった角度から撮ることになり、ちょっと珍しいということで掲げることにしました。

少し移動すると、雨水の粒が先端から落ちそうになっている木の葉の先端にモノサシトンボ♂がぶら下がるようにとまっていました(写真省略)。
どこかしっとりとした雰囲気です。

更に少し移動すると、木の下草の葉にキイトトンボ♀のやはり未熟な個体がとまっていました(写真6)。

キイトトンボ♀未熟
写真6 キイトトンボCeriagrion melanurum 未熟♀

2,30分間、観察・撮影したところで、雨が強まり、私達は園地内にある東屋に走り込みました。

さすが梅雨シーズンです、簡単にはやみません。
雨と霧粒でかすむ園地を眺めながら、飯田さん、山本さんと私の3人でトンボ談義に花を咲かせました。

少し小降りになったところで、雨具をまとい、園地内を歩きましたが、これはといったトンボの姿はなく、かわりに地面を歩く大きなミミズを見つけただけでした。

その後も、雨は降り続けましたので、「四万十川学遊館」の開館を待って、入館しお昼前までの2,3時間に、館内の豊富なトンボを中心とした昆虫関連展示物や、アクアリウムで飼育されている多種多様な魚類などを見学しました。

館内の展示の様子やそれを見学した私の印象や感想については、後日このブログで紹介させていただく予定です。

結局、2日間にわたる園地内でのトンボ観察で私が撮影したトンボの種類数は、2日目のハグロトンボが加わったことで、5科15種という区切りのよい数に達しました。

この日の午後は、杉村館長にご教示をいただいたグンバイトンボの生息地を私達3人だけで向うことにしました。
館のスタッフにお礼の挨拶をした後、館の玄関での記念撮影もそこそこに、期待に胸を膨らませながら、車に乗り込みました。

そのグンバイトンボの生息地での同種の観察、撮影についてはすでに以前の記事「グンバイトンボの軍配は何のため?」に報告済みですので、ご笑覧ください。

今回の記事を終えるにあたり、現地への案内ならびにトンボ各種の生態についての解説をして下さった杉村館長、現地への移動等でお世話になった飯田さんに改めて感謝の意を表します。


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2017-07-06 (Thu)
                             【7月7日、一部修正】

昨年6月18日、「四万十市トンボ自然公園」(別名「トンボ王国」)での初日の観察を1時間そこそこで切り上げ、杉村光俊氏(トンボ王国に併設の「四万十川学遊館」の館長)のご案内のもと、飯田貢さん、山本桂子さん(ともにアマチュア昆虫写真家)と私はシコクトゲオトンボRhipidolestes hiraoi Yamamoto, 1955、カラスヤンマChlorogomphus brunneus Oguma, 1926(四国を含む本土産のものは以前は亜種和名ミナミヤンマが使われていた)が生息する谷の上流部に向いました。

午後3時過ぎ、私達は目的地に到着しました。
うっそうとした山林が迫る細い谷川と棚田に挟まれた農道上で、杉本館長のカラスヤンマの習性や出現時期の解説が始まりました。

例年であれば、その棚田の上空をカラスヤンマの1頭や2頭が横切ってもおかしくないポイント、時期でしたが、なかなか現れません。

前の年の大雨で谷の環境が変わったことや、飛翔活動に適した温度や湿度の条件が影響していると考えられるとの館長のお話でした。

トンボの飛翔活動に湿度が大きく関係しているということは、館長の他の場面での別の種のトンボの話でも出ていました。

気温や日照、そして風や雨などの気象条件については私も自分の研究で考察したことが幾度かありましたが、湿度については虚を突かれる思いがし、大変勉強になりました。

私達はその場から移動し、今度はシコクトゲオトンボが見られるポイントに案内していただきました。
山林の中に谷川の支流の源流部が入り込んだような場所に、一歩一歩踏み入れます。

いました。
シコクトゲオトンボです。

もちろん、館長はもとより、同行の飯田さん、山本さんも相前後して見つけ出しています。
館長の解説を聞き流しそうになりながら、夢中でカメラレンズを向け、シャッターを押します。

樹陰で薄暗い中に、これまたくすんだ色の小さなイトトンボ(正確には、イトトンボ科とはまったく別のヤマイトトンボ科)がひっそりと止まっているものですから、露出不足だったり、ピンボケだったりの写真しか撮れず、空振り三振でした。
これはリベンジしかありません(明日があるさ!)。

訪問者3名が一通り、撮影し終わったところで、館長に導かれてもう一カ所のカラスヤンマの活動がよく見られる場所に移動しました(写真1)。

ヒメサナエが見られた川、高知県 
写真1 カラスヤンマ、ヒメサナエ等の観察地点 (写真はクリックで拡大します)

そこは、谷というよりも、小さな川の中流部から上流部への移行ゾーンのような景観で、砂礫で埋まった砂防ダム上を清冽な瀬がサラサラと音をたてているところでした。

川と並走する砂利道の脇のイタドリのような植物の葉の上に小さなサナエトンボが止まっていました(写真2)。

ヒメサナエ♂、葉上、右から 
写真2 ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus 

ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus (Matsumura in Oguma, 1926)♂です。
その場で、杉村館長からすぐ「ヒメサナエ」についての解説が入りましたので、このトンボとは初対面の割にすぐ仲良しになった感じでした。

しばらくすると、私達の頭上をかすめるようにカラスヤンマが通りかかりました。
カメラを構える間もなく、スイーっと視界のかなたに消えてゆきます

その後も、時おり、「ほら来た、こっちからそっちだ・・」と館長の指示がとびます。
高いところを曲線的に自由に飛び回り、ホバリングも交えませんので、私のカメラは空振りどころか、スイングさえほとんどできませんでした(大型のトンボとだけわかる写真が1枚のみ)。

このリベンジは、私の腕が数段、いや十数段も上達しないかぎり、簡単には出来そうもありません。
翌年以降に持ち越しです。

カラスヤンマの撮影こそできませんでしたが、その生態の一端を館長の貴重な解説つきで直接見ることができたのが本種について今回の唯一の収穫でした。

そのよう私の意欲の不完全燃焼から救ってくれたのは、小さなトンボ達でした。

川面に降りると、川中の大石の上にも、2,3頭のヒメサナエ♂が飛んだりとまったりしていました(写真3)。

ヒメサナエ、石上、左から 
写真3 ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus 

そのうちの1頭にそっと近づき、正面から撮影したのが写真5です。

ヒメサナエ♂、正面 
写真4 ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus 

写真4を部分拡大したのが写真5です。

ヒメサナエ♂とメミズムシ
写真5 ヒメサナエ♂とメミズムシSinogomphus flavolimbatus and Ochterus sp.

大きい黒目をクリクリさせ、いたずらっぽく口を開いた幼児を連想させる顔です。

そして、右手前(トンボから見て左下)には小さな虫がいて、じっとこのヒメアカネを見つめているようです。

この小さな虫をさらに拡大したものが写真6です。

メミズムシ 
写真6 ミズギワゴミムシの仲間(7月7日、訂正)

前翅の基部寄りの部分が革質化していることからカメムシ目、カメムシ亜目に属する昆虫であろうというところまではこの拡大写真から判断できます。
それにしても、複眼がクリクリと大きく、カメムシ類としては異様な形をしています。

種はなんでしょうか?
手元の昆虫図鑑で調べても出ていません。
そこで、「大きい目」「カメムシ」でGoogle検索したところ、酷似画像(外部リンク*)を掲載したサイト(シロさんの「自然観察雑記帳」*)が見つかり、種名や和名の由来も添えられていました。

【以下、★印まで、7月7日に書き換えました】

「メミズムシ(眼水虫)。半翅目(カメムシ目)カメムシ亜目(異翅亜目)メミズムシ科。学名 Ochterus marginatus。」(出典:シロさん:「自然観察雑記帳」)

というわけで、ヒメサナエと睨めっこしていたのは、メミズムシOchterus marginatus (Latreille, 1804)か、その近縁種であると判断し、いったんこのブログ記事にそのむね記述しました。

しかし、それをご覧になった、昆虫全般にお詳しい伊藤智さんから「写真の半翅は、触覚が長いことから、ミズギワカメムシの仲間かと思います。」とのご指摘がありました。

たしかに触角の長さがメミズムシとは全然ちがっています。ミズギワカメムシも確かに眼が大きく、触角は短いです。ということでメミズムシと私が判定したのは早計でした。
ここにメミズムシではなくミズギワゴミムシの仲間に訂正いたします。
伊藤さんにこの場を借りて感謝します。 
 ★

前後して撮影した別のヒメサナエ♂の写真を拡大すると(写真7)、小さな虫をムシャムシャとむさぼっていました。

ヒメサナエ♂、小昆虫を捕食中 
写真7 ヒメサナエSinogomphus flavolimbatus 

食べられているほうの小さな昆虫は透明でシンプルな翅脈をもつことからメミズムシでないことは確かです。
翅も腹も柔らかそうで、ヒメサナエは器用に口器をコントロールして、見る見る平らげていきました。

川面に突き出す大石の上にはヒメサナエのほかに、シオヤトンボOrthetrum japonicum (Uhler, 1858)の♀もとまりました(写真8)。

シオヤトンボ♀、高知県 
写真8 シオヤトンボOrthetrum japonicum ♀

かなり老熟した印象の個体です。
こちらは、食事をしていませんね。
腹の先が濡れていませんので、産卵動作をした後の休息でもなさそうです。

私達が観察・撮影を切り上げ、川面から川沿いの砂利道に戻ったところに、人懐こいノシメトンボSympetrum infuscatum (Selys, 1883)♂がやってきて、同行の飯田さんの手のひらにとまり(写真9)、そしてその後、ストローハットにもとまりました。

ノシメトンボ♂、高知県 
写真9 ノシメトンボSympetrum infuscatum ♂ (シオヤトンボと誤記したのを訂正、7月7日)

こちらは、秋が繁殖シーズンということで、6月のこの頃はまだうら若く、翅も艶々(つやつや)しています。

このポイントで、館長に入っていただき記念写真を撮り合い、この日の(拡大)トンボ王国の探訪を締めくくりました。

今回の記事を終えるにあたり、現地への案内ならびにトンボ各種の生態についての解説をして下さった杉村館長、現地への移動等でお世話になった飯田さんに改めて感謝の意を表します。


*外部リンク出典:
シロ:「自然観察雑記帳」: > 動物 > 昆虫・半翅目(カメムシ目) >メミズムシ


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2017-07-03 (Mon)
「トンボの楽園」という言葉は時々耳にしますが、楽園中の楽園は、やはり高知県四万十市(旧中村市)にある「四万十市トンボ自然公園」(別名「トンボ王国」)でしょう。

「トンボ王国」は、公益社団法人「トンボと自然を考える会」が里山であった池田谷の水田や畑地等の一部(約6.8ha)を取得し、あるいは借り受け、トンボの保護区を整備し、管理運営している(出典:トンボと自然を考える会のWebSite)、世界的に見てもトンボ保護のためのナショナルトラストの先駆けです。

そしてこの「トンボ王国」を含む池田谷のトンボ類は2008年現在で76種に達していて、同規模面積でのトンボ記録種数日本一を誇るとのことです(出典:トンボと自然を考える会のWebSite)。

1993年に大阪市で開催された第12回国際トンボ学シンポジウムの参加者を対象としたポスト・シンポジウム・ツアーの訪問先にもなったことがあり、海外からの大勢のトンボ研究者・愛好家を含む参加者を、トンボと自然を考える会の実質的な代表者である杉村光俊氏以下、トンボ王国の「住民」たちが「おもてなし」し、喜ばれたと伺っています。

私も大阪のシンポジウムには参加したのですが、その直後に釧路で開催された「国際シンポジウムートンボの生息環境とその保護」の準備と運営にあたらなくてはいけなかったため、トンボ王国へのツアーには参加せずじまいでした。

昨年6月、23年振りに、私がトンボ王国を訪ねる機会が巡って来ました。

それは、昨年春、フェイスブック上で愛媛県在住のアクティブなアマチュア昆虫写真家の飯田貢さんと「友達」になり、私がトンボ王国への訪問を考えていることを伝えたところ、ぜひ一緒にということで、トントン拍子に旅行計画ができあがったのが発端です。

もちろん、トンボ王国の杉村氏(トンボ王国に併設の「四万十川学遊館」の館長)にも、メールで連絡をとり、対応して下さるとのご返事をいただくことができ、旅行の手配をスタートと相成りました。

6月18日の昼過ぎ、飯田さん、同じくFB仲間でアマチュア昆虫写真家の山本桂子さんのお二人に案内いただき、私はトンボ王国の園地に到着しました。

学遊館の事務室への到着の挨拶もそこそこに、私たちはカメラを首に掛けて園地内の遊歩道に歩み入りました(写真1)。

四万十市トンボ自然公園の様子 
写真1 四万十市トンボ自然公園の遊歩道から学遊館方面を望む (写真はクリックで拡大)

当日のアメダス気温は28℃台、日照時間は7~8割と、梅雨時にもかかわらず、格好のトンボ日和となりました(私、晴れ男です、笑)。

早速、池の岸の草の丸い葉にとまる真っ赤な衣装のベニイトトンボCeriagrion nipponicum Asahina, 1967♂がお出迎えです。

続いて、胸部、頭部前面、脚の腿節にビッシリ粉を吹いたコフキヒメイトトンボAgriocnemis femina (Brauer, 1868)♂の登場です(写真2)。

コフキヒメイトトンボ♂ 
写真2 コフキヒメイトトンボAgriocnemis femina

私にとっては、10年ほど前に沖縄本島で出会い、写真も撮っていますので、それ以来の再会です。

コフキヒメイトトンボは、本州ではかつて山口県で記録されていただけで、本土では九州中南部と四国南部に限定されています(尾園ほか、「日本のトンボ」)。

次に姿を見せたのは、セスジイトトンボParacercion hieroglyphicum (Brauer, 1865)♂です(写真3)。

セスジイトトンボ♂ 
写真3 セスジイトトンボParacercion hieroglyphicum

遊歩道の澄んだ水が流れる浅い側溝の水面に突き出した枯草の細い茎に水平にとまっていました。
同属種も多いクロイトトンボ属のトンボで、一見しての区別は難しいですが、拡大すると肩黒条に淡色の細条が走っているのが見えて判別できます。

セスジイトトンボは私がトンボの研究を始めたばかりのウン十年前に北海道東部の湖畔で未熟な1個体を採集し、朝比奈正二郎先生のもとにお送りして同定していただき、初めて活字の報告にした思い出の種です。
生態写真の撮影は今回が初めてとなりました。

お次に控えしは、サナエトンボです(写真4)。

キイロサナエ♂ 
写真4 キイロサナエAsiagomphus pryeri

池につきだしたイネ科植物の葉にとまっています。
よく見ると、右前脚の付け根に、オレンジ色のミズダニがとりついています。

撮影した写真を帰宅後、図鑑と照らし合わせた結果、このトンボはキイロサナエAsiagomphus pryeri (Selys, 1883)♂と判定できました。
サナエトンボ科が貧弱な北海道に長く住んでいた私

相前後して、セリ科と思われる小さな草の葉にとまっているキイロサナエ♂も撮影できました。

少し移動したところの水辺の草には、モノサシトンボPseudocopera annulata (Selys, 1863)♀もとまっていました(写真5)。

モノサシトンボ♀ 
写真5 モノサシトンボPseudocopera annulata

左右にグーンと伸びた頭部の複眼際の頭頂部の黒と薄緑色が作り出す斑紋が印象的です。

水辺に立っている細い草の葉にとまり、体はぶらさがるのではなく鉛直に対して70度くらいになるように6本の脚でしっかりと支えられています。

コウホネがビッシリ繁茂する池では、水面から数十センチメートルの高さを飛び回るチョウトンボRhyothemis fuliginosa Selys, 1883を目撃しました。
望遠レンズの焦点距離が足りず、トンボのスピードも速いことから、証拠写真を残すのがやっとでした。

別の池では、大型のスゲ類の垂直の茎に、ハラビロトンボLyriothemis pachygastra (Selys, 1878)♂が鉛直にぶらさがっていました。
写真から、体は黒化し、青白い粉もかなり吹いてることが見てとれ、ほぼ成熟している個体と判断できました。

少し移動すると、池の水辺の水面すれすれの倒れた枯草の茎に体を預けるように、イトトンボが水平にとまっていました(写真6)。

アオモンイトトンボ♂型♀ 
写真6 アオモンイトトンボIschnura senegalensis の♂型♀

帰宅後、図鑑やウエブ情報と照らし合わせて、アオモンイトトンボIschnura senegalensis (Rambur, 1842)♂型(同色型)♀と同定しました。

かなりの時間を要しましたが、謎解きと共通するものがあり、時間を自由に使える者にとっては愉しい時間でもありました。

同じアオモンイトトンボ♀でも多数派である異色型♀は、♂とは全く異なる色彩をしており、その理由とかその比率とかは、同属他種の同様の現象と併せて、現在も国内外の研究者の研究対象となっています。

アオモンイトトンボ属の♀の二型の維持機構については、いずれ異色型♀の写真と併せて、項を改めて取り上げたいと思います。

さて、トンボ王国の遊歩道に戻ります。

池の水面に浮いた草の葉には、ユーモラスな姿勢をとったキイトトンボCeriagrion melanurum Selys, 1876の連結カップルが産卵中でした(写真7)。

キイトトンボ連結産卵
写真7 産卵中のキイトトンボCeriagrion melanurum の連結カップル

この連結カップルの♀は、産卵中も静止中も翅を100度から120度くらいまで開いていました。
気になってGoogleで画像検索したところ、先頭からのざっと10例ほどの画像のいずれにおいても、♀は翅を開いていました。
どうもこれがキイトトンボの一つのスタイルのようです。

後述のように、今回観察・撮影した同属種であるベニイトトンボの連結産卵でも、♀は翅を開いていました。
Google画像検索でお、連結産卵中のベニイトトンボ♀は翅を開いている画像がほとんどでした。

ちなみに属の異なるクロイトトンボParacercion calamorum (Ris, 1916)の検索では、大部分の画像で、連結産卵中の♀の翅は閉じ気味でした。

さて、次です。

まだここで撮影していない種を求めて、池から池へと歩を進めると、折れたスゲの葉にとまる、しっかり白粉を吹いたハラビロトンボの成熟♂が見つかり、撮影しました。

少し移動すると、花の芽の先端にコフキトンボDeielia phaon (Selys, 1883)♀がとまっていました(写真8)。

コフキトンボ♀ 
写真8 コフキトンボDeielia phaon

なにか、ちょっと腰が引けているというか、不安定な姿勢です。
よく見ると腹部の先端から何か、はみ出しています。
どうやら、フンのようです。
道理で(?)、この姿勢。。

この個体は♀ですが、若干白粉を吹いています。
腹部が真っ白になる♂ほどではありませんが。。。

コフキトンボ♀には白粉を吹く♂型♀と、白粉を吹かず翅に茶褐色の斑紋を持つ「オビトンボ型」♀の2型の存在が知られています。
私も別の機会に埼玉県内でオビトンボ型♀を撮影していますので、いずれこの2型について紹介したいと思います。

さて、トンボ王国の遊歩道を歩むと、浮揚植物が少なく開放水面が拡がる、大き目な池の真ん中に突き出ている棒の先にウチワヤンマSinictinogomphus clavatus (Fabricius, 1775)の♂がとまっていました(証拠写真のみ)。

少し移動した池の岸のイネ科の頂端の葉に、変わった色彩のイトトンボがとまっています(写真9)。

コフキヒメイトトンボ♂ 
写真9 コフキヒメイトトンボAgriocnemis femina 

腹部先端のオレンジ色が印象的です。
これも、帰宅後、図鑑と照らした結果、コフキヒメイトトンボ♂の成熟途中の個体と判定できました。

その後、いずれも岸辺の枯草の茎にとまっている、チョウトンボ♂ショウジョウトンボCrocothemis servilia (Drury, 1770)♂シオカラトンボOrthetrum albistylum (Selys, 1848)♂が目にはいりました(証拠写真)。

そのうち、ショウジョウトンボとシオカラトンボは同じ茎にとまっていて、シオカラトンボがショウジョウトンボの後方にショウジョウトンボ3頭分の身長と同じ距離を置いて、同方向を向いていました。
どちらもなわばり個体なので、一方が飛び上がれば干渉する関係ですが、どちらの種の個体もこのとまり場所がよほど気にいっているようです。

少し移動すると、スイレンの葉の縁近くにクロイトトンボの♂がとまっていました。
クロイト君は、今回も脇役をしっかり務めてくれています。

別の大きめのスイレンの葉の上では、ベニイトトンボが交尾していました(写真10)。

ベニイトトンボ交尾 
写真10 ベニイトトンボCeriagrion nipponicum の交尾

♀の体の一部が隠れていて、作品としては不完全なのですが、当ブログでは交尾の写真を未収録でしたので、ここに掲げておきます。

この後、別のペアの連結産卵も複数みられました(写真11)。

ベニイトトンボ連結産卵 
写真11 ベニイトトンボCeriagrion nipponicum 連結産卵

今回記事のキイトトンボのところでも触れたように、連結産卵中のこのベニイトトンボ♀も翅を開いています。
♂はキイトトンボの♂と同様、「歩哨姿勢」(連結した♂が直立不動でいる状態)をとり、翅は閉じています。

他に何かいないかな、と見て歩くと、今度は岸の枯草の水平な茎に水平にとまっているハラビロトンボを見つけました(写真12)。

ハラビロトンボ♂未熟 
写真12 ハラビロトンボLyriothemis pachygastra ♂、未熟個体

帰宅して拡大すると、それは♂の未熟個体だということが分かりました。
腹部は黒化しておらず、ましてや白粉はまったく吹いておらず、一見しただけでは♀との区別が困難なほどです。

園地での続きです。
ほどなく、ちょっと雰囲気の違うハラビロトンボがいました(写真13)

ハラビロトンボ♀
写真13 ハラビロトンボLyriothemis pachygastra ♀、未熟個体

画像を拡大すると尾の先端の形態から♀であることが、複眼の色彩が薄いところから未熟個体であることがわかります。

その後、チョウトンボ♂を撮影したところで、園内の観察・撮影は切り上げて、この日のトンボ王国での材を終了しました。

たった1時間そこそこの取材で、4科14種のトンボを観察・撮影することができました。
中でも、キイロサナエと初めて対面することもできましたし、2,3のトンボの種の成熟にともなう体色変化の一端を垣間見ることができました。

この後、杉村館長のご案内を頂くかたちで、私達3人はトンボ王国外のトンボ生息地へ向いました。

さすが、杉村館長、私にとってすばらしい成果を得る機会を用意していただくことができました。
その成果については次回の記事で取り上げます。

今回の記事を終えるにあたり、貴重な観察の機会を与えられた杉村館長、トンボ王国への移動や現地情報の提供などでお世話になった飯田さん、山本さんに改めて感謝の意を表したいと思います。


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