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2017-08-10 (Thu)
今年6月前半の東海地方での、グンバイトンボ Platycnemis foliacea Selys, 1886 の観察の続きです。

前回記事で取り上げた交尾に引き続き、今回は産卵活動中の♂♀カップルの行動のうち、興味深い行動要素について、時系列順に取り上げます。

晴れた日の午前11時半、この日初めての産卵行動が観察されました。
私にとって、本種の産卵行動観察は初の機会になりますので、カメラを握る手に思わず力が入ります。

今回は、連結♂が直立する連結産卵の真上方向からの撮影となりましたので、♂♀の両者に同時にピントを合わせることができませんでしたが、仕方ありません。

言い訳はこのくらいにして、まずは♀にピントがあった写真から(写真1)。

グンバイトンボ産卵開始(1) 
写真1 グンバイトンボ Platycnemis foliacea 産卵開始(1)(写真はクリックで拡大)

♂も♀も翅をわずかに開いた状態です。
♀は産卵管を産卵基質(水に浸った古い枯れヨシの茎)につきたてています。

写真2は同じカップルで、♂の体前部にピントが合ったものです。

グンバイトンボ産卵開始(2) 
写真2 グンバイトンボ P. foliacea 産卵開始(2) 

♂は腹部を真っ直ぐに直立させ(ただし、この写真では、腹部第6,7節の間を若干腹方行に屈曲させていますが)、脚は完全に折りたたんで胸部腹面に密着させています。

均翅亜目トンボの連結産卵中の♂に特有のこの姿勢は「歩哨姿勢」(城門等で見張りをする兵士の立ち姿の意味)と呼ばれます。

写真3では、歩哨姿勢が若干くずれて♂は脚を少し延ばしています。

グンバイトンボ産卵、♂は歩哨姿勢
写真3 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵。♂は歩哨姿勢 

何かの拍子に、若干バランスを崩して、少し慌てたのかもしれません。

写真4は連結産卵中の♀の頭部、胸部付近のクローズアップです。

グンバイトンボ産卵、タンデム結合
写真4 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵。タンデム結合部拡大

♂の尾部付属器がしっかりと♀の前胸背板をホールドして、しっかりとタンデム(連結)の態勢を維持していることがわかります。

不均翅亜目やムカシトンボ亜目と違って、♀頭部への♂尾部付属器の連結ではありませんので、♀の頭部は♀の意思どおり自由自在に動かすことができますし、首が千切れる危険性も大幅に軽減されています。

以上は、同一カップルのほぼ同一地点での2分間前後の連続観察から拾い上げたシーンです。

以下は、4分ほど後からの、別カップルについての観察です。

写真5は、水面に倒れかかったヨシ類の葉にとまったカップルの♀が、その重みで水面下になった葉の表面に産卵動作をとっているところです。

グンバイトンボ、ヨシ類の葉への産卵動作 
写真5 グンバイトンボ Pfoliacea ヨシ類の葉への産卵動作

♀は産卵管を葉の表面に突き刺していますが、♀の腹部が第5~7節付近で(体前方から見て)反時計回り方向に捻じれています。

もしかすると、産卵管を突き刺したものの、葉の裏側に突き抜けたため、実質のあるところを求めて産卵管の先を捻じるように45度ほど回転させて、組織内(実際は葉を突き抜けた水中)を探ったのかもしれません。

というのも、写真5の1コマ前(2秒前)の写真(不掲載)では、♀の腹部は捻じれない状態で葉の表面に産卵管をつきたているからです。

もう一つ、「おやっ?」と思うのは、写真5の♀の腹部先端付近と水面との関係です。
水面が腹部先端付近の胴体に吸いつくように引き寄せられ、吊り上げられて富士山の裾野のような形に盛り上がっているように見えます。

水道水と爪楊枝で実験してみても、水はこのようにはっきりとは盛り上がりませんので、この葉の上の水に、何か粘性を生じさせる成分が含まれていたのかもしれません。

下の写真6は、産卵中の2カップルが向かい合って産卵しているところです。 

グンバイトンボ2ペア対面産卵
写真6 グンバイトンボ Pfoliacea 2カップルの対面産卵

ピントが今一つなのは、ファインダーを覗かずに、カメラを水面近くまで下ろし、山勘を頼りに方向や焦点距離を少しずつ変えながらバシャバシャとシャッターを押したうちの、よりマシな1枚だからです。

私がこんな写真を撮影していた前後の時期にフェイスブック上で、ある方がグンバイトンボの2カップルが歩哨姿勢の♂同士が左右対称に向い合うような位置取りで産卵していて、更に水面にもこのカップルが映っているという、素晴らしい作品を披露していました。

このようなローアングルでの撮影には、最低限アングルファインダーは必要だということを痛感させることとなった作品間の大きな落差でした。

下の、写真7は、産卵活動の合間に静止中の連結カップルに、別の連結カップルが左後方から接近した瞬間です。

グンバイトンボ産卵ペアに別ペア接近、歩哨♂が軍配誇示 
写真7 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵カップルに別カップル接近

静止中のカップルの♂は歩哨姿勢をとっていましたが、この瞬間、両後脚を左右に広げて、後方から接近する別カップルに対して軍配を誇示しているようにも見えます。

静止カップルの♂は4枚の翅も広げて振動させていて、その点は他の均翅亜目が示すことが多い警告行動と同様ですが、軍配を拡げて警告の効果をアップさせているのは、さすがグンバイトンボといったところです。

下の写真8は、接近カップルが通過し去った後の、静止カップルの様子です。 

グンバイトンボ産卵ペア、別ペア通り過ぎると軍配おろす
写真8 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵カップル、別カップル通過直後

♂が脚を折り曲げて、本来の歩哨姿勢に近い状態に戻りつつあることが見てとれます。

下の写真9では、産卵中のカップルに、別カップルがやはり左後方から接近しています。

グンバイトンボ産卵ペアに別ペア接近、先いた♂は翅ブルブル、接近♂は軍配誇示か
写真9 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵カップルに別カップル接近(事例2)

産卵カップルの♂は、翅を開いてブルブル振動させて警告していますが、脚はしっかり閉じています。

逆に接近中のカップルの♂が中脚・後脚をだらりと下げて軍配を誇示し「いやなら、どいて」と言うかのようにプレッシャーをかけているように見えます。

そういえば、この一帯では、産卵カップルが目立つ割には、適当な産卵スポットが不足していると言えなくもありません。

もし、産卵スポットが不足していたとしたなら、産卵カップル間で、産卵ポイントを巡って、一種の干渉型競争が起こりうる可能性が出てきます。

そして、このような「産卵場所を巡っての相互排斥行動にも軍配誇示が利用されことがある」という仮説を立てることができるでしょう。

下の写真10は、前述の接近カップルが通過して行く瞬間のカットです。

グンバイトンボ産卵ペア、別ペア通り過ぎるたが、軍配上げている
写真10 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵カップル、別カップル通過直後(事例2)

通過したカップルの♂の軍配はこの時点では「収納」されていますが、逆に産卵カップルの♂は後脚を若干延ばし、軍配を若干目立たせています。

下の写真11は、ほんの少し離れた場所で2つの連結カップルが、水面上に出ている枯れたヨシ類の茎に、向かい合うように静止しているところです。

グンバイトンボ、2ペア近接産卵中。 互いに緊張
写真11 グンバイトンボ Pfoliacea 2カップル近接産卵中。 互いに緊張

互いの♂が前に倒れ込めば、ぶつかり合い、絡み合う距離です。
そのためか、こちら向きの♂の左後脚が延び気味となるなど、若干の緊張感が漂っています。

まもなく、この2カップルのいるポイントにもう1カップルが左後方からやってきました(写真12)。

グンバイトンボ産卵。3ペア目がやってきた
写真12 グンバイトンボ Pfoliacea 産卵。3ペア目がやってきた

こちら向きの♂は、更に緊張して、両方の中・後脚を半延ばしして身構えています。

すぐに、この狭い産卵スポットの真ん中に、その第三のカップルが割り込むようにとまりました(写真13)。

グンバイトンボ産卵、3ペア目が割り込む
写真13 グンバイトンボ P foliacea 産卵、3ペア目が割り込む

これは窮屈です。

真ん中のカップルがこのまま、上から見て反時計回りに向きを変えようものなら、そのカップルの♀の腹部の先端が、あちら向きのカップルの♀の頭部、あるいは♂の腹部先端付近にぶつかりかねません。

これに嫌気がさしたのか、元からいた2カップルのうち、あちら向きだったカップルは飛び立って移動していきました。

残ったカップルもしばらくそこに留まりましたが、硬くて産卵に適さないのでしょう、両カップルとも相前後して移動していきました。

最後の1枚(写真14)は、産卵活動の間の静止中のカップルの♂が、眼の前に着き出した草の葉先につかまっているところです。

グンバイトンボ産卵、連結♂が草につかまる
写真14 グンバイトンボ P. foliacea産卵、連結♂が草につかまる

「歩哨姿勢も結構つらいぜ」といったところでしょうか。

もっとも、これほど格好のつかまり場所は滅多にありませんので、この後はまた頑張ってもらうしかありません。

この♀は、♂が葉につかまった状態の時にも産卵姿勢をとりました。
しかし、ご覧のとおり、この枯れ茎は硬くて産卵管が刺さりそうもありません。

まもなく、カップルはすぐ隣にある、水面上に倒れかかったヨシ類の葉にとまり替え、そこで産卵姿勢をとりました。

今回のグンバイトンボの産卵行動の観察記録(20分間)はここまでです。


産卵の際の♀の産卵器の挙動

均翅亜目のトンボの産卵の際の♀の産卵器の動きについては、文献を引用しながら、下記記事で紹介しましたので、あわせてご笑覧ください。


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