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2015-01-22 (Thu)
前々回前回の記事の続きです。

Dayananda & Kitching (2014)* が、自分たちが報告したハナダカトンボ科のHeliocypha perforataの単独雌による、前幼虫の産み付けという驚嘆すべき行動について考察した内容からの紹介です(青文字部分)。

◆昆虫の胎生は三つの形をとる(Gullan & Cranston 2010**):
◇胎盤様の構造から卵が栄養を受け取る(アブラムシ(アリマキ)類、ハサミムシ目の一部、チャタテムシ目の一部、コウモリヤドリバエ科( Polyctenidae))
◇卵は雌の体内で孵化し、雌の生殖管の中で腺に由来する構造物を食する(シラミバエ科(Hippoboscidae))。
◇幼虫は親個体の血液中に孵化し、その栄養で大きく育ち老熟幼虫として(タマバエ科では親を食い尽くして)母体外に現れる(ネジレバネ目、タマバエ科(Cecidomyiidae))

◆昆虫の卵胎生では、卵の状態で母体中に維持され、産卵直前または産卵と同時に幼虫が孵化する(コウチュウ目、ハエ目、アザミウマ目、それぞれの一部)。

トンボの場合、栄養を供給する特殊な構造を欠くので、胎生は該当しない。
したがって、卵胎生のいずれかである。

ここでトンボ目の卵の受精は、産卵直前に未授精卵が交尾嚢を通り抜けるときに生ずることを押えた上で考えると、今回の観察結果は、以下の二つのケースのいずれかに起因するだろう。
1)交尾嚢で受精した卵が雌の体内に残存し産み付けられる前に孵化直前まで発生が進む。
2)単為生殖で、つまり受精なしに、卵が(雌の生殖管の中で)発生を開始し、孵化直前まで進む。

以上の諸形式のうち、単為生殖は、アゾレス諸島のIschnura hastataで実際知られているが、Heliocypha perforataでは次の理由で該当しない。雄が存在していること。雌が卵を産む際には雄の縄ばりの中の産卵基質にアクセスしなければならないこと。


Dayananda & Kitching (2014)の考察はまだ続きますが、残りは次回以降の記事で紹介します。

前回の記事で、動物界全体を見渡した胎生から卵胎生までの間の諸タイプを紹介しましたが、今回記事のものと照らし合わせると、Ischnura hastataは、Ovolarviparity(卵幼虫生【仮訳】)に相当するようです。

また、(一部のタマバエ科昆虫のように)親を内部から食い尽くして母体外に現れるケースは、Histotrophic viviparity(組織栄養性胎生【仮訳】)の高じたもので(兄弟食どころか)「母体食」という、究極の親不孝な生まれ方で、恐るべき進化のいたずらです。
しかし、これも子が母を裏切って母を殺すわけではなく、遺伝子の利己性の原理に忠実に、そのような生まれ方(英語では「生まれる」を、(母親が)産むという動詞の受動態で表現しますが、自分から母親の皮膚を破って出てくる生まれ方は能動態です)を発現する遺伝子(群)が、母親に産み落とされて受動的に生を享けるしかたを発現する遺伝子(群)よりも、適応度が高かったということの中で進化したもの考えられます。
したがって、このように生まれ出る子供たちは母親殺しの罪を背負う必要はないことになります。
あくまでも一部のタマバエ科昆虫の話ですが、進化は平和のもとで暮らしている人々から見てしばしば残酷です。

注:
*Dayananda, H. G. S. K. & Kitching, R. L. 2014: Ovo-viviparity in the Odonata? The case of Heliocypha perforata (Zygoptera: Chlorocyphidae) . International Journal of Odonatology, 17: 181-185.

**Gullan, P.J. & Cranston, P.S. 2010: The Insects: An Outline of Entomology, 5th Edition. Wiley-Blackwell, Oxford.


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