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2015-01-26 (Mon)
ハナダカトンボ科の1種Heliocypha perforataの「卵胎生」については、5回連続の記事で語りつくしましたが、Dayananda氏が撮影しネット上で公開している下記ビデオを見ている内に、トンボが示した、ある動作に新鮮な驚きを感ましたので、書いておきたいと思います。

卵胎生的豆娘?三斑犀蟌Heliocypha perforata,蜻蜓目的第一例
http://www.guokr.com/post/657428/focus/0124320743/

それは何かといいますと、一連の産卵行動の中で、適切な産み付け場所を「触診」のように探る際の、雌の腹端の動きです。

私は、今まで、イトトンボ類♀の腹の先端に左右1対で突き出ている突起(尾毛)にどのような機能があるのか考える機会がありませんでした。

しかし、この動画を見ると、この尾毛がピクピクと動き、産卵基質(朽木)の表面を検知器のように触診しているではありませんか。

これに加えて、産卵弁側片*(産卵管としての機能上の本体である産卵弁腹片*と産卵弁内片*を収納する鞘の機能をもつ)の先端の尖突起も同様の触診をしています(これについては、このブログの以前の記事**にも書きましたが、概念的な知識にすぎませんでした)。

更に、腹部末端の2節(第9節、第10節)を巧みに動かして、産卵基質上を軽くたたいたりなぞったりする動きをつくりだし、触診場所を流れるように選定しています。
まるで葉の上にたかっている芋虫が、頭部を少しもたげては葉の表面に顔を近づけて触角・小顎髭・下唇髭などを接触させ、表面の硬さや肌理を探っているかのようです。

また、このトンボの腹端の2つの節の体表の殻(クチクラ)は、これまで私が思っていたよりも、しなやかで、その点でも芋虫を連想させました。

ハナダカトンボ科のこの♀の腹端は、現代科学を応用した超先端の触診器具並のスマートな動作性能を持っているといえないでしょうか?

ハナダカトンボ科の別の種ではトンボの♀が生涯に産む卵の数は約600***と推定されています。
トンボ目の中で決して大きい数ではありません。

雌が不適切な場所に卵を産みつけるなら、貴重な子孫を1回につき400分の1ずつ失っていくことになります。
したがって、産卵基質のうちの適切な部位(硬すぎない、柔らかすぎない、乾きすぎない、薄すぎない、しっかりしている[流出したりしない]、など)を、触感で見極めることは母親にとって大切な仕事になります。

Heliocypha perforataの、そしておそらく均翅亜目全体の、産卵基質触診行動とそれを支える外部形態、筋肉・神経系、脳内コマンド体系は、大量の不適格産卵の淘汰の中で、より高性能な触診行動が生き残ることで進化したに違いありません。

注:

*均翅亜目の♀の腹端にある産卵器の構造を再掲しておきます。(詳細についてはは以前の この記事を参照してください)

均翅亜目の産卵管(Tillyard 1917)
 drawn by R. J. Tillyard, R. J. (1917)

図のキャプションの訳【補訳】:Synlestes weyersi Selys ♀【ミナミアオイトトンボ科】の産卵器【広義の産卵管】。ap:前方突起【産卵弁腹片】;mp: 中央突起【産卵弁内片】; st: 尖突起;v: 産卵弁【産卵弁側片】。原図。キチン質のプレパラート。

** 当ブログの過去記事「トンボの産卵器の構造:植物組織内産卵用

***Orr, A.G. (2009): Reproductive behaviour of Libellago semiopaca on a Bornean rainforest stream (Odonata: Chlorocyphidae). International Journal of Odonatology, 12: 157-180.


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