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2015-02-07 (Sat)
前回の記事で、小笠原諸島の固有種のひとつ、ハナダカトンボが本島である父島、母島で絶滅し、ごく少数の属島で細々と血脈をつないでいることをお話しました。

その個体群絶滅の元凶であるとされているのが、グリーンアノールAnolis carolinensis(下の写真)です。
写真の個体は褐色味が強く出ていますが、カメレオンのように自在に体色を替えることができ、名前のとおりに緑色のものもよく観察されるそうです。

グリーンアノール

 ↑クリックで拡大します。
グリーンアノール。2009年6月上旬に父島の山頂部で撮影。

小笠原諸島を調査や写真取材でよく訪れておられる写真家の尾園暁さんのブログ「湘南虫日記」には、グリーンアノールがウスバキトンボPantala flavescensを捕食している写真が掲載されています(下記URL)。
http://blog.livedoor.jp/photombo/archives/2010-10.html

ウスバキトンボは固有種ではなく、熱帯を中心に世界中広く分布し、風に乗って大洋を横切って長距離移動をする、有名なトンボです。
私の以前の記事でもウスバキトンボについて写真つきで紹介してありました。

そういうことですので、父島では固有種のトンボは絶滅状態ですが、海を渡って分布を広げる種であるウスバキトンボやハネビロトンボ類は、グリーンアノールの捕食や他の原因による打撃があっても個体数は補充されます。

しかし、ハナダカトンボやオガサワラトンボといった固有種は簡単に海を渡ることができません。だからこそ、島の固有種として進化できたのです。ガラパゴス諸島のフィンチ(ヒワの仲間)たちのように。

ですから、すばしこく枝をつたい、抜け目なく昆虫を捕まえてはムシャムシャ食べるグリーンアノールのような、外来種の固有種へのインパクトは、しばしば取り返しのつかない結果を引き起こします。
  
さて、小笠原には在来種のオガサワラトカゲCryptoblepharus boutonii(下の写真)もいます。

オガサワラトカゲ
 ↑クリックで拡大します。
在来種、オガサワラトカゲ。2009年6月上旬に父島の山地で撮影。

こちらのほうは固有種ではありませんが(マスカリン諸島出身)、海洋民族の小舟に紛れ込んでたどりついたのでしょうか、以前から分布していて、在来種として扱われています。

オガサワラトカゲは、グリーンアノールのように木の枝や葉にまで登って昆虫を素早くキャッチする能力は持っていないため、固有種のトンボたちも共存することができていました。

それに対して、グリーンアノールは戦後の連合軍統治下でアメリカ兵がペットとしてアメリカ本土から小笠原に持ち込んだものが逃げ出して野生化し、それが増殖したものといわれています。

招かれざる客ならぬ、招かれた敵として、グリーンアノールは小笠原の固有種・在来種の存立にとっての強い逆風になっています。

グリーンアノールは以前は日本(本土)のペットショップでも売られていて、家庭で飼育している様子がブログなどでも散見されますが、現在は環境省により特定外来生物に指定され、輸入、飼育、譲渡、放逐が原則として禁止されています。

私自身、数日間の小笠原諸島での調査旅行でグリーンアノールの姿は見ても、捕食している瞬間には立ち会うことができませんでしたが、前回記事にも登場された苅部治紀さんはこのトカゲの島の昆虫への打撃の強さを以前から指摘し、その対策の必要性を訴えてこられ、またご自身でも様々な対策に奔走しておられます。

次回以降の記事で、それらの対策の一端についてご紹介したいと思います。


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