09≪ 2017/10 ≫11
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
2016-02-15 (Mon)
これまでに記載された、トンボ目(Odonata)に属するすべての種のリストが閲覧できるサイトがあります。

World Odonata List (世界のトンボ目のリスト)
Compiled by Martin Schorr and Dennis Paulson
http://www.pugetsound.edu/academics/academic-resources/slater-museum/biodiversity-resources/dragonflies/world-odonata-list2/

まさに圧巻です。

世界のトンボ全種、約6000種が科までは分類順に配列され、科の中では属・種のそれぞれがアルファベット順に配列されています。

そのため、ブラウザーでスクロールダウンするだけで、トンボの系統進化にともなう分岐と多様化が手にとるようにわかります(ただし、現存種についてだけですが)。

たとえば、どの科が属の数が多いかとか、どの属が種の数が多いとか。。
そして、種が多い属は地史的時間の中で比較的最近現れ、新しい生活様式で多様な環境に進出したものかもしれません。
一方、1科が1属からなり、種の数も数えるほどのものは数億年前の生き残りがかろうじて残されているのかもしれません。
そんな、生物進化のロマンを掻き立ててくれます。

科より上の亜目の取り扱いはどうなっているでしょうか?

20世紀末までは、現存のトンボ目は大きく、均翅亜目、ムカシトンボ亜目、不均翅亜目の3つの亜目に分類されていましたが、その後、現存のムカシトンボ科を不均翅亜目の中の一系統に含め、その結果ムカシトンボ亜目を認めない分類体系が優位に立つようになりました。ムカシトンボ科の数少ない分布国の一つである日本でも、それを受け入れて2亜目にしている本も出ています(尾園・川島・二橋『日本のトンボ』文一総合出版、2012年)。

ごく最近、分子系統解析と形態解析とを総合して検討した上でムカシトンボ亜目を復活させる動きも出ています。
これら、亜目の取り扱いの最近における変遷については、以前の私の記事「トンボ目の系統樹」:
http://dranathis.blog.fc2.com/blog-entry-:46.html
に出典も添えて少し詳しく触れています。

今回ご紹介する世界トンボリストでも、ムカシトンボ亜目を独立させた3亜目のシステムを採用しています。
ただし、このリストの著者もムカシトンボ科を不均翅亜目に属させる分類体系の存在に言及しています。

次に、種より下のレベルの取り扱いです。

日本のトンボの図鑑では従来、亜種も種同様に並べてそれぞれ別の和名をつけて取り上げてきました。
しかし、これにはいくつか問題があります。

和名だけ並べたリストを見た素人は、それらすべてが種であると誤解します。
しかし、亜種はあくまでも亜種であり、一つの種の内部の地理的変異(それも形態的に区別可能なもの)に対して種同様に分類群の位置を与えたものにすぎません。

種と種の区別は相互に生殖隔離があるかどうかで峻別できますが、亜種と亜種の区別は恣意的な面があります。
したがって、亜種に種と比肩するような資格を与えるのは混乱のもとであるという考えが成り立ちます。

日本でも分類学者の間で亜種に和名をつけるのをやめようという動きが出ており、その場合、亜種に対しては種○○のどこどこ亜種(例:モイワサナエの西日本亜種)という標記を採用しています。

前述の尾園ほかの『日本のトンボ』は亜種に和名を与えない立場を日本で初めて採用した図鑑であり、英断であると評価できます。

今回紹介している世界のトンボ目リストでは、亜種は種と同様には扱わず、種のシノニム(同物異名)同様の扱いとしています。

少し長くなりました。

話を終える前に、このリストが作成される過程で、下記の労作が大いに参考にされたことを付記しておきたいと思います。

津田 滋(2000) 『世界のトンボ分布目録』 2000、、自刊。

また、今回紹介しているリストは頻繁に新しい知識により更新されており、最近ではアフリカからの60種の新種が一気に追加されたことが特記されます。

協力者の数も多く、そのリストの中には『日本のトンボ』の共著者の一人である二橋亮氏の名前も見えます。

このように地道に作成・維持されているリストは多くのトンボ研究者・愛好家のまさにプラットフォームになるものであり、Schorr、Paulson両氏はもちろん、協力者の方々の努力を称賛してやみません。


ブログランキング(↓):両方ともクリックで応援してください。



にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
にほんブログ村

| トンボ:系統と分類 | COM(0) | | TB(-) |
コメント







管理者にだけ表示を許可する