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2016-03-01 (Tue)
日本のトンボで「生きている化石」というとムカシトンボEpiophlebia superstes写真:外部リンク)が真っ先に思い浮かびます。
   写真出典:http://tombon.com/ak-mukasito.html

確かに、ムカシトンボは、均翅亜目との共通祖先から不均翅亜目が進化する途上で不均翅亜目から別れた原始的グループであるムカシトンボ科Epiophlebiidae*を、ヒマラヤおよび中国に分布する三つの種とともに構成していますし、形態の特徴からも生きている化石と呼ばれるに十分な資格を持ち合わせています。

(*ちなみにムカシトンボ科をムカシトンボ亜目の唯一のメンバーとして扱う見解と、不均翅亜目に含める見解とが現在並立している状態にあります。→私の以前の記事「トンボ目の系統樹」を参照)

今回からシリーズで数回にわたってご紹介するムカシヤンマ科Petaluridaeも、「生きている化石」と呼ばれるにふさわしい、注目すべきグループです。

日本にもムカシヤンマ科に属する数少ない種のうちの1つである、ムカシヤンマTanypteryx pryeri(下の写真)が分布しています。

Tanypteryx_pryeri_from_wikimedia
 ムカシヤンマ♀ (写真出典:Wikimedia

ムカシヤンマの生態については、私も生息地を訪れて直接を観察する機会があると思いますので、いずれその経験も交えながら紹介できるかと思います。

それはそれとして、このシリーズではムカシヤンマ科全体についてとりあげます。

科の和名「ムカシヤンマ科」は、不均翅亜目(ムカシトンボ科を含めていない)の中ではもっとも古く系統が別れたグループと考えられたことからつけられています。

それに対して、科の学名Petaluridaeは、ギリシャ語のpetalon葉+ourá尾を合成したものです。
写真(外部リンク)Petalura giganteaの♂ですが、尾部上付属器が見事に葉のように広がっていることがわかります。
この形態的特徴がPetaluridae(科)とPetalura(属)の学名の由来になっているというわけです。
   Source: http://photos.rnr.id.au/2015/01/07/dragonfly_Petalura_gigantea_m_Aasgard150107-1993.jpg

この葉のような尾部上付属器と、その下部にある尾部下付属器とで雌の後頭部を挟んで連結し、更に交尾するわけで、挟まれたほうの雌は後頭部に違和感を感じないのでしょうか?
しかし、これは彼らから見て訳のわからない生き物が勝手に想像しているだけで、彼らにとっては当たり前のことなのでしょう。

ムカシヤンマ科の仲間には、チャンピオンがいます。

それは、「世界最大級のトンボ」という称号を持つ、Petalura ingentissima('テイオウムカシヤンマ';オーストラリア北東部固有種)で、翅を拡げた両端間の距離(翼幅)は雌で158~162mm*あります。

写真(外部リンク:Rosser Garrison Collection)の左中央が'テイオウムカシヤンマ'Petalura ingentissima 。その真上に、世界最小級のハッチョウトンボNannophya pygmaea(シンガボール産;日本にも産する)1♂が配置されていますので、このムカシヤンマの大きさを感じ取ることができるでしょう。
   Source: http://ucanr.edu/blogs/blogcore/postdetail.cfm?postnum=1904

(*ちなみに、日本最大のトンボ、オニヤンマAnotogaster sieboldii の成虫(雌)の最大翼幅142mm程度です;杉村光俊ほか[1999]『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』 [北大図書刊行会]の実物大写真を筆者が計測。図[外部リンク]のオニヤンマ雌からは翼幅137mmの計測値が得られます。)
   写真出典:http://net1010.net/2012/07/id_5390/

上で最大級という表現を用いた理由は、同じかそれより少し大きいトンボはが他にまだ存在するからです。
それらについては別の機会にご紹介したいと思います。

ここまでは現存種の話でしたが、時代を一気にさかのぼる約3億年前の古生代石炭紀には、翼幅65cmにもなる巨大なトンボ、メガネウラMeganeura spp. が湿地林の中を羽ばたいていたことが知られています(写真:外部リンク)。
   Source: http://www.surfacevision.com/meganeura-image.html

ただし、メガネウラは原トンボ目(げんとんぼもく)Protodonataに属します。
原トンボ目は、トンボ目Odonataと最も近い親戚にあたりますが、直系の祖先というわけではありません。
いずれにせよ、メガネウラは現代の大型トンボたちにとって、あこがれのアイコンであるといえるでしょう。

このシリーズ記事の次回では、ムカシヤンマ科内各属の系統分岐とその分岐時期について見ていきたいと思います。


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