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2014-09-26 (Fri)
「なぜ、〔オオシオカラトンボの♂は〕仲間(同種)の個体に対して、喧嘩や追いかけっこをしてまで、♀の産卵を守ろうとするのでしょう?」

これは、一つ前の記事「オオシオカラトンボ 産卵と警護(2)」の最後のところで投げかけた質問です。

同じ大きさ、同じ体力の同種♂に対して、体を張って守るのですから、守ろうとする♂は時には怪我をするかもしれませんし、エネルギー(栄養)や時間も費やしてしまいます。

それにもかかわらず、そのような行動をとるということは、その個体にとって、そのコストを上回るベネフィット(利益)がなければなりません。

「自分の大切な伴侶を他者に奪われたくないからだ」というのは、一応もっともな理由に聞こえます。

人間の場合は、このように感情やモラルで説明するのが普通ですが、野生生物の世界の行動原理は、その行動を引き起こす遺伝子の集団中の頻度(割合)が次世代で増加する方向でなければなりません。

ここで、話を元に戻します。
もし、産卵場所の♀を♂が守らなかったとしたらどうなるでしょう?
後からその場所にやってきた♂は、たやすくその♀に乗りかかり、連結(尾つながり)するでしょう。そして、その格好のまま飛んで少し離れた(干渉されない)場所に移動し、そこで交尾するでしょう。(♀が連結や交尾の拒否ができればいのですが、本種の場合、できません)。

「でも、別の♂と交尾した後でも、その♀が最初の♂の子供(卵)を(も)産んでくれればいいのでは?」ですって?

私も昔はそう思っていたこともあります。

ところが驚くべきことに、どの♂も♀と交尾姿勢をとったらまず行うことは、♀の生殖口のすぐ奥にある交尾嚢(こうびのう)や受精嚢(じゅせいのう)の中に残存している、別の♂の精子の塊を、自分の交尾器で掻き出す、ということが分かったのです。今から40年近く前のことです。

何パーセントの精子を掻き出すのか、あるいは掻き出すのか奥へ押し込むのか、については種によって異なります。いずれにせよ、♂は自分と交尾した♀に、他の♂と交尾する前に、できるだけ沢山卵を産ませる行動をとることによって大きなベネフィットを得ることになります。その行動をとった♂の遺伝子が確実に次世代に残るからです。

そして、オオシオカラトンボの♂が交尾をした♀に「僕のこの産卵場所で是非産卵してください」といわんばかりに、交尾態勢を解く直前の♀に産卵場所を呈示することにも、意味があります。

その産卵場所は、その♂の縄ばり防衛範囲の中心にあるからです。♂は、産卵場所を含む、一回り広い空間を縄ばりとして識別し、その範囲内をパトロールしたり、あるいはその範囲全体をよく見渡せる場所にとまって監視したりして、(♀がいない時でも)防衛しています。ですので、縄ばり所有者がもつ「先住効果*」を、産卵場所防衛にも有効に発揮できるからです。

注:
*先住効果は、同じ大きさ、同じ体力の個体同士が争った場合でも、先にそこを占有していたほうの個体が争いで勝利(相手をその空間から遠ざける)する確率が有意に高くなることで、鳥類を含め、多くの縄ばり性を示す動物でその存在が知られています。


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