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2016-05-09 (Mon)
前回記事に書いたミヤマカワトンボと川で再会した5月7日、近くのため池ではホソミイトトンボAciagrion migratum
との劇的な出会いがありました。

このため池は、小さな川の源流部を農業目的でせきとめられたものですが、周囲を林で囲まれ、上流に汚染源がないことから、私のお気に入りの観察場所の一つです。といっても、今回で2回目ですが。

前回(4月6日)にはこの池でオツネントンボを今年初のトンボとして撮影し、このブログの記事にしています。

そのオツネントンボがいたのとまったく同じ位置のヨシの株間を、青味の強い、超スリムなイトトンボが雌雄連結で飛んでいるのを見つけました。

すぐに身構えてカメラを構えたのはご想像の通りです。
枯れヨシにとまった♂が♀に「ここでどう?」と産卵場所としての具合を尋ねているかのようなシチュエーションも見られました(下の写真)。

ホソミイトトンボ連結、遠景160507

その前後に撮影した遠景写真から、トリミングしたものが下の写真です。

ホソミイトトンボ連結160507
(クリックで拡大します)

私とは初対面でしたが、そのスリムさからすぐにホソミイトトンボに違いないとの確信をいだきました。

とくに♂(写真の右側)は、他のイトトンボを見慣れた私の眼にはとてもスリムに映ります。

この池ではほかのトンボも観察し、面白いことを発見したのですが、それは次回記事に回すことにし、当日回った別のため池へと話をジャンプいたします。

別のため池は一回り大きく、釣り人も多くきていました。
やはり、周囲を林に囲まれていて上流に汚染源がない点共通しています。
ただ、残念なことに池の集水域が狭い割に水体が大きいこと、釣り用の魚種が放流されていると考えられることから水の透明度が低く、水草も少ないのが艶消しです。

こちらの池でも、ホソミイトトンボを岸のすぐ近くから見ることができました。

釣り人が岸にセットしたままになっている釣り台(小さな桟橋)に降りると、単独♂を水面に近い目線で撮影することができました(下の写真)。

ホソミイトトンボ♂160507

腹が細長いだけではなく、胸も華奢なことがわかります。
そして体長に対する脚の長さの比率の小さいこと!
なのに、イトトンボでは短足というのはスタイルのよさに影響していないですね。

さて、数メートル横には産卵中の♂♀タンデム(連結)ペアも1,2組いましたが、釣り台は先客(釣り人)が利用中のため撮影は断念。
池の周りを廻りながらトンボ探訪を続けることにしました。

ここでも他に2種のトンボを見つけましたが、それについたは後日記事にしたいと思います。

ホソミイトトンボは、オツネントンボ、ホソミオツネントンボ(いずれもアオイトトンボ科)と並んで日本ではだだ3種だけの成虫越冬をするトンボです。
このブログで何度も記事にとりあげているオツネントンボはヨーロッパからロシアを経て日本にまで分布する北方系の種ですが、ホソミイトトンボは中国・朝鮮・台湾に分布し、属全体で見ると東南アジアから中東・アフリカ・オーストラリアまで拡がる南方系です。

ですからオツネントンボが日本列島で北九州・四国を南限とし、それより北に分布しているのに対し、ホソミイトトンボは新潟・福島を北限としてそれより南に分布しています。

オツネントンボは越冬の際に、枯草や枯れ木などからなるシェルターの中で厳しい冬をやり過ごすのに対し、ホソミイトトンボは吹きさらしの草木にとまった状態で冬を過ごすといわれています(私もいずれ自分の眼で観察するつもりです)。
それでも、風があたらない南斜面の地上からそう高くないところにとまり、冬でも暖かいときは活動して小さな虫を食べることもあるそうです。

哺乳類ではベルクマンの法則というものがあります。
これは、同じ種でも北方に行くほど体のサイズが大きくなる一般的な傾向を指しますが、体のサイズが大きいほど体の容積に対する表面積の比率が小さくなり、冬季に外気に熱を奪われる率を下げることができるからと説明されています。

私は、このトンボを見たとき、なぜホソミイトトンボは越冬のために「フトミイトトンボ」という体型を選ばなかったのか(つまり進化によりそういう体型にならなかったのはなぜか)という疑問を持ちました。

しかし、冬も暖かくなれば活動するという知識に触れたことで、その疑問が氷解しました。
つまり、体を細くすることで、冬でも太陽熱や外気で体表を温められると体の芯まですぐ温まる、すなわち翅や脚を思い通りに動かす筋肉の活動が可能になるということに気づいたからです。

同じ越冬でも、オツネントンボは長く深い眠りに落ちる本当の冬眠で、ホソミイトトンボは寒いときだけ仮眠するだけの、実は冬も活動しているトンボといえるのではないでしょうか。
ですから、本当に冬が厳しい東北地方以北や、西日本でも高地には生息できないのでしょう。

オツネントンボとホソミイトトンボが共通しているところといえば、越冬中に枯草色のボディーカラーをしていることです。
オツネントンボも春先になると複眼背面をサファイアのようなブルーに変身させ、その目立つ色彩iを婚活に最大限利用します(過去記事参照)。

ホソミイトトンボは春の繁殖シーズンにはもっと大胆な変身を遂げ、鮮やかなブルーで体全体を彩ります。

ホソミイトトンボの婚活シーズンがオツネントンボのそれよりも遅れているとしたら、それは化粧と衣装のコーディネートにたっぷりと時間をかけているからではないでしょうか。


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