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2014-10-11 (Sat)
前回の記事「アジアイトトンボの産卵(2)」で、トンボの産卵動作に関連して、「腹部各節の神経球」について言及しました。

文章だけでは、イメージがあまり湧かないと思いますので、今回もTillyardの名著*から図を引用して追加説明したいと思います。

Dragonfly nervous system by Tillyard 1917
トンボの神経系 (Dragonfly nervous system drawn by Tillyard, 1917)*

上左の図は、トンボの神経系の全体図です。
上がトンボの体の前方、すなわち頭部、下が腹の先(尾)となる図の配置です。
図の右のスケールと数字は腹節とその区切りを示しています。

図左の上端中央のbrは脳です。
脳から左右にキノコのように膨れ出ているのが視神経葉です。
視神経葉は、トンボの大きな複眼の神経情報を処理するだけあって大きいですね。
Sogは食道下神経球です。ここから環食道連合と呼ばれる神経の束が食道(咽喉)の両側を迂回して食道上の脳につながっています。

昆虫をはじめ、節足動物(甲殻類やクモ類も含む)の中枢神経は人間など脊椎動物とは逆に、消化管の(背中側でなく)腹側を通っています。

以下、胸部の三つの体節ごとの神経球(tg1~tg3)、腹部の各体節の神経球(ag1~ag8)が体の長軸に沿った神経索によって連結しています。
胸部は脚と翅の運動を担っている場所ですので、その神経球も大き目です。

第1腹節には神経球がなく、その神経球は不思議なことに胸部のほうに取り込まれています。
トンボの第一腹節は他の腹節にくらべて短く、とくにこれといった器官もありませんので、飛翔や歩行に忙しい胸部の筋肉のために助っ人にされたのかもしれません。

前回や前々回の記事で取り上げた、産卵器の複雑な動作を担う腹部第8節の神経球(第9,10節の神経球も併合)も、少し大き目です。
上右の図は、その部分を拡大したものです。
n7,n8は腹部第7節、8節の筋肉等への神経線維です。rnは生殖器官につながる神経線維です。

この図から、神経球と神経球をつなぐ神経索は2本(複線)になっていることがわかります。

節足動物が属する無脊椎動物の一大系統(前口動物)の中で、より下等なプラナリア(参考画像:外部サイト)などでは、はっきりと左右に分かれて縦走する神経系がみられます。
このように、昆虫に至る系統の神経系は複線が基本です。

しかし、ハエ(参考画像:外部サイト)などでは左右の神経が癒着し、さらには神経球の位置が体節から独立しています。

太古の、体の前・中・後がほぼ同じような形をしていた動物から、ハエのように体の各部の分化・特殊化が進み、敏感かつ俊敏な動きをする動物へと進化する中で、神経系もそれに歩調を合わせるように形態や機能をより高度なものへと変えてきたというわけです。

トンボは、昆虫の中では体節間の機能分化がまだそれほど進んでおらず、そのため、神経系も比較的わかりやすいといえます。

注:
*Tillyard, R. J. (1917) The biology of dragonflies (Odonata or Paraneuroptera). Cambridge University Press. (N.B.: Copy right has been expirated.)


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