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2014-10-13 (Mon)
9月21日に、さいたま市西部の樹林のある園地の泥底の池で撮影したものです。

アキアカネの連結産卵
 ↑クリックで拡大します。

アキアカネの同じペアの一連の産卵動作を多数撮影したものの中から、3シーンを抜き出しています。
時系列通りで、最初(左)と最後(右)の時間差は2分以内です。

不均翅亜目(トンボ科、ヤンマ科、サナエトンボ科など)の産卵は基本的に単独♀によってなされますが、以前の記事でご紹介したギンヤンマ(ヤンマ科)や今回のアキアカネを含むアカネ属(トンボ科)の種では連結産卵をすることが多いです*。

ギンヤンマにくらべて、アキアカネは小型軽量ですので、タンデム(直列)連結での飛行も軽快そのものです。

もちろん、2匹つながったうちの前方が♂、後方が♀です。
また、このように産卵のために飛び回る前に、どこかで交尾は済ませています。

アキアカネの産卵は、泥底の浅い水の水面や泥面を、♀の腹部の先端(正確には産卵弁が備わっている腹部第8節後端を含む、8~10節の腹面)でたたいたときに成立します。この瞬間に、産卵弁と腹面の間の隙間に溜まった数個の卵(参考写真、外部リンク)が泥中または水底に遊離します。

左と中の写真で、♂の目線の角度に注目してください。
通常の飛行のように、水面と平行に前方を見ているのではなく、斜め下前方を見据え、プロペラ兼用の翼である翅を打ち振るためのエンジン(飛行筋)を内蔵する大きな胸部の前後軸の向きも、やや斜め下前方に傾いています。

このことから、アキアカネの連結産卵では、打水(以下、打泥も含む)の位置およびタイミングを♂が主導して決定し、♀はそのリズムにうまく合わせながら、打水の瞬間に腹先がうまく水面に届くように、自分の姿勢や打ち付け運動(翅の打ち方と腹の曲げ具合)を調節しているようです(右の写真)。

3枚の写真から、ペアの水平面での向きはマチマチであることがわかります。
しかし、打水している範囲は、水面で直径1・2メートル以内と、ほぼ同じ場所です。その少し上空を、ラテンダンスのように向きを変えながら打水しています。
ということは、アキアカネのこの♂個体が、この割合広い池の中で、ここが割合、産卵に適している場所であると判断して、たとえ数分間とはいえ、その場に留まって産卵を続けていたといえます。

なぜ、♂に産卵場所についての鑑識眼が備わっているのでしょうか?

それは、少しでも卵や幼虫の生存率を高くする条件(たとえば水の深さ、底の質、草の生え方、水流の有無についての一定の度合いや質)を見極めて♀に打水させる♂個体は、見極めの下手な♂個体よりも、多くの子孫を残せるはずだからです。
そして、産卵に好適な条件を見極める能力に少しでも遺伝子がかかわっている**ならば、このようにしてアキアカネ集団の中の♂による産卵場所識別力にかかわる遺伝子は増加していくことになります。

♀単独で産卵する種(たとえばアジアイトトンボ)では、♀におけるそのような鑑識能力が代々改善されていくことになります。

オオシオカラトンボの産卵と警護の記事でお話したように、縄ばりを持つ♂は、♀をより多く得るために、よい産卵場所を備えている水辺を識別することが大切です。
したがって、産卵場所を含む平面空間を縄ばりにしている種のトンボの♂も、よい産卵場所を識別する能力が、進化において身についていくはずです。

結局、アキアカネでもオオシオカラトンボでも、♂と♀とで好適な産卵場所を識別する能力はいっしょですので、その能力に関与している遺伝子(セット)は、ほぼ同じものでよいことになります。
そのような遺伝子が常染色体上にあれば、♂も♀も同じように両親から受け継ぐことになりますから、話はわかりやすいです。

一方、縄ばりを占有し、侵入した同種♂をその外側へ追い払う行動(縄ばり防衛行動)や、同種♀を追いかけて乗りかかり、連結し、交尾しようという行動は、♀は行いません。そのような遺伝子が常染色体***上にあるならば、♀もそれを細胞の中に持っているはずですが、性染色体上にある性決定遺伝子の作用で、♀ではその行動の発現が抑制されているものと考えられます。

最後は、産卵行動の話からは脱線してしまいましたが、トンボの行動を遺伝子が支配していること(若干の学習も関与していますが)、性によってその行動が発現したり、しなかったりすることがあること、そのいずれも、個体のもつ遺伝子の次世代への貢献を最大化することでは共通しているようだ、ということをお話した次第です。

注:
*均翅亜目(イトトンボ科、カワトンボ科など)は大部分の種で連結産卵をしますが、前々回記事(シリーズ)でご紹介したようにアジアイトトンボは例外的で、単独産卵をします。

**トンボの産卵行動の遺伝子を特定した研究はまだありませんが、たとえばショウジョウバエの交尾時間の長さに影響している遺伝子がある例をはじめ、多くの研究例があります。

***トンボの染色体もヒトの場合と同様に、常染色体と性染色体に区別され、性染色体の組み合わせでXXは♀に、XYは♂になります。


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