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2016-08-14 (Sun)
好天に恵まれた5月の中旬、岐阜県の丘陵地帯まで遠征しトンボの姿を追い求めました。

同県内で前泊したこともあり、朝から水辺沿いを散策し、やってくるトンボを今や遅しと待ち構えました。

最初に現れたのはシオカラトンボ (Selys, 1848)♂です。

少し歩いた先の斜面では、シオヤトンボOrthetrum japonicum (Uhler, 1858)♂がカワゲラのような虫を口に加えて低木の枝にとまりました。

この2種のトンボは私とは旧知の間柄ですので、写真を撮ったら、また別のトンボはいないか歩を先に進めました。

まもなく、水辺近くのミズゴケの叢に小さなサナエトンボの♂がとまっているのに気づきました。

そーっと近づいて数回シャッターを押しました(写真1)。

タベサナエ♂(1)160513
写真1.タベサナエTrigomphus citimus ♂、その1。 (クリックで拡大)

上の写真をクリックして拡大ボタンを押してご笑覧ください。
にこやかに微笑んでいるように見えませんか?
長旅の疲れが少し残っていた私にとって、いやされる思いでした(といいたいところですが、帰宅してパソコン画面で拡大して気づいたのでした)

(なお、トンボ自身は餌がいたらとびかかろう、♀が来たら言い寄ろう、天敵が近づいたら飛び去ろうと、緊張しているはずですので、誤解のなきよう。)

さて、このトンボ、私が北海道在住中に沼の岸でよく見かけたコサナエTrigomphus melampus (Selys, 1869)に大きさも色形もよく似ています。
自宅に帰ってから撮影した画像と図鑑を見比べて、それがコサナエと同属のタベサナエTrigomphus citimus (Needham, 1931)であることがわかりました。

和名のタベサナエはこの種の幼虫を初めて採集し、成虫標本とともにトンボ学者であり学友である朝比奈正二郎博士に提供した田部正親氏に由来します(浜田・井上、1985)。

日本産亜種の学名(Trigomphus citimus tabei Asahina, 1949)にも田部氏の名前が刻まれています。
しかし、尾園・川島・二橋(2012)の「日本のトンボ」では亜種には和名を充てない方針をとっていて、私もその方針に賛成の立場から、タベサナエの和名とTrigomphus citimusを対応させる方式を今回採用しました。

World List of Odonata ではtabeiはシノニムにもリストされていません。)

さて、その場から少し歩くとまた別のタベサナエ♂がとまっていました(写真2)。

タベサナエ♂(3)160513
写真2.タベサナエTrigomphus citimus ♂、その2。 (クリックで拡大)

今度は、黒と白のマダラ模様の大きな石の表面にとまっていて、背景にうまく溶け込んでいます。
いつもこういう色の組合わせの岩や石の上にとまれば、捕食者に目立たなくなり、生存率の向上が望めます。
しかし、ものの本によれば、岸の植物の上などにもよくとまるようですので、とくに隠蔽的擬態をしているわけではないようです。

この写真(クリックで拡大!)では、尾部上付属器の背面が白く、カタカナのハの字状に開いている日本産本属♂の特徴の一つがよくあらわれています。

下の写真3は、2時間ほど後に、同じ細流の少し離れた地点の岩にとまっていた別のタベサナエですが、岩の色が少し白っぽく、その上逆光であるため、今度はトンボの姿が識別しやすくなっています。

タベサナエ♂(2)160513
写真3.タベサナエTrigomphus citimus ♂、その3。 (クリックで拡大)

この写真は、逆光で見にくいのですが、横から写す格好になっていますので、副交尾器の外形を確認することができます。
本種♂の副交尾器は横から見ると異様に大きいのが特徴で、これが種の同定の際に(標本採取なしに)写真画像だけで確信をもって結論を出す上でよい根拠となりました。

トンボの生態写真を撮る場合、「絵」になるように、複眼にピントを合わせることが多いですが、後に画像で種の同定をする際の助けとなるよう、胸部側面、腹基部(副交尾器)、腹端部(尾部付属器、産卵管)、翅脈(三角室、四角室、結節、縁紋)などにピントを合わせた写真を含めて撮るように心がけています。

引用文献:
浜田 康・井上 清 (1985) 日本産トンボ大図鑑。講談社。
尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012 )日本のトンボ。 文一総合出版。

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