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2016-08-15 (Mon)
日本には、均翅亜目7科、ムカシトンボ亜目1科、不均翅亜目9科の、計17科のトンボが分布しています(過去記事「トンボ目の系統樹」。

下の図はその系統樹です(生方、作図:根拠については上掲の過去記事参照)。

トンボ目の系統樹(日本産の科に限定)
日本産トンボ目の科の系統樹(生方、作図;再掲)  (クリックで拡大します)

トンボ目の系統分類において、ムカシトンボ亜目を不均翅亜目に含める見解もありますが(尾園ほか著『日本のトンボ』など)、World List of Odonataでは伝統的な見解同様、ムカシトンボ亜目を独立させています。

日本産の不均翅亜目(ムカシトンボ科を含まない)の中で、最も早く系統分岐した現存の科はヤンマ科であることがDNA分析からも裏付けられています(その運動能力、視覚機能の高さからは意外ですが、形態的には均翅亜目同様の産卵管を「遺産」として保有していることから納得できます)。

その次に分岐したのがムカシヤンマ科*で、日本にはムカシヤンマTanypteryx pryeri (Selys, 1889)ただ1種が分布しています。

オリンピックには種目別に日本代表が出場できますから、ムカシヤンマは代表当確といえるかもしれません。

(*この科の学名の由来や世界的に著名な種については過去記事で紹介してあります。)

私は、1970年以来、トンボの研究に携わっていますが、最近まで北海道に居住していたこともあり、ムカシヤンマ科の生きた姿を観る機会がありませんでした。

今春から県内、県外にトンボ観察・撮影を目的に遠征を繰り返すようになった動機の一つは、日本産の科の中でまだ見たことがない極く少数の科の一つであるムカシヤンマ科を、つまりムカシヤンマを、この眼でつぶさに観察し、機会があれば撮影をしたいということでした(この動機に関連した過去記事参照)。

今年5月中旬、岐阜県の丘陵地帯への遠征に際して、幸運なことにムカシヤンマの♂をしばしの間、観察・撮影することができました。

前回記事でご紹介したタベサナエTrigomphus citimus (Needham, 1931)との出会いのシーンに引き続いての出来事でした。

タベサナエがいた細流の土手の上を歩いていると、眼の前を伸び伸びと飛ぶ大型のトンボがいました。
少し飛んでは、木の幹などに懸垂*するかたちでとまります。

(*浜田・井上『日本産トンボ大図鑑』によれば、石や植物の上に水平にとまることも多いようです)。

一度は私のズボンにとまり、「おいおい、それでは撮影できないだろう!」と思わず苦笑い。

下の写真は、そのような場面中、樹皮に懸垂してとまるムカシヤンマ♂で、シチュエーションがわかるように、大きめにトリミングしたものです。

ムカシヤンマ♂(1)160513
ムカシヤンマTanypteryx pryeri ♂、その1 (クリックで拡大)

同じ個体を少しずつ角度や焦点距離を替えて写した写真のうちのもう1枚が下記の写真です。

ムカシヤンマ♂(2)160513
ムカシヤンマTanypteryx pryeri ♂、その2 (クリックで拡大)

やはりトリミングしてはいますが、一回り大きく写り、角度も尾部上付属器が見えやすい位置からになっています。

その尾部上付属器ですが、上下に扁平なぺタル(葉あるいは花弁)状を呈していて、この科の学名Petaluridae(ギリシャ語のpetalon葉+ourá尾の合成語)通りの特徴を備えています。

ムカシヤンマは一見して大型のサナエトンボ科の種のように見えますが、以下の点で簡単に区別できます。

・翅の縁紋がとても長く、中間部が膨らむことがない(科の特徴)。
・複眼が褐色系で、サナエトンボ科のように緑色系とならない。
・翅胸前面の色が黒色系に縁どられた広範囲の褐色系で、サナエトンボ科のように黒色系の中に黄色系の小斑紋が配置されるのとは異なる。

飛び方もゆったりと曲線を描き、どこか人懐こい(より正確には警戒心が弱い)振舞いをしていて、親しみが湧きます。

下の写真も同じ個体ですが、別の木の幹にとまり替えたところを真横から写したものです。

ムカシヤンマ♂(3)160513
ムカシヤンマTanypteryx pryeri 別♂ (クリックで拡大)

これもトリミングしていて、ピントも甘いのですが、翅胸側面の黒色条や黄色斑の形がよくわかり、図鑑との絵合わせの際に本種であることの確信を与えてくれました。

次回記事も引き続き、岐阜遠征記として、主役も交代します。
お楽しみに。

「生きている化石、ムカシヤンマ科」シリーズの次回記事はまた日を改めてということにいたします。

引用文献:
浜田 康・井上 清 (1985) 日本産トンボ大図鑑。講談社。
尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012 )日本のトンボ。 文一総合出版。

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