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2016-08-21 (Sun)
今年5月中旬、岐阜県の丘陵地帯でのトンボ探訪では、ハラビロトンボLyriothemis pachygastra (Selys, 1878)を見ることもできました。

ハラビロトンボは、以前、私が住んでいた北海道では絶滅危惧種に指定されているほどに稀少な種であったこともあり、これまでの私にはあまりなじみのない種でした。

本州での出張調査時に、休耕田のような場所で見かけたことはありましたが、生態写真を撮る機会はありませんでした。

今回、アサヒナカワトンボを観察したその足で、少し離れた小さな池や小川のほとりを通った際に、そこに繁茂する抽水植物の葉にとまったり飛び立ったりしていた、ハラビロトンボの小ささと黒づくめのスタイルを目にした時には(写真1)、自分がおとぎの国に来たかのような錯覚に襲われました(ちょっと大げさ?)。

ハラビロトンボ♂(1)160513
写真1.ハラビロトンボLyriothemis pachygastra

名前が名前だけに、腹部は横幅が大きく*、平べったい形をしていて、どこか愛らしい雰囲気を醸し出しています。

(*ハラビロトンボの学名の種小名pachygastraのpachyは厚い、太いを、gastraは腹、胴、胃を意味しています。ついでに言えば、属名LyriothemisのLyrioは竪琴、themisはギリシア神話の法・掟の女神テミスを意味しています。)

また、小型(平均体長でシオカラトンボよりも1.5センチメートルほど小さい)であるだけに、翅の網目(翅脈)の横脈数が全般に少なく、シンプルになっています。

写真2は同じ個体(♂)を横から見たところですが、腹部の横幅の割には背腹の厚さがないことがわかります。

よく見ると脚は2対しか草に着けておらず、前肢は折り畳んで、頭部と翅胸部の間のすきまの位置に立てられています。

ものにとまる時はいつでもそうしているかといえば、そうではなく、写真1では前脚も下方(背腹でいえば腹側)に伸ばしていて、左前肢は草の葉に爪をたてています。

ハラビロトンボ♂(2)160513
写真2.ハラビロトンボLyriothemis pachygastra

写真3は、写真1,2のすぐ近くで撮った別の♂個体です。

ハラビロトンボ♂(3)160513
写真3.ハラビロトンボLyriothemis pachygastra

写真1,2の♂の腹部が黒っぽいのに対して、写真3の♂では腹部に成熟のシンボルとなる、青白い「白粉*」が吹いていることがわかります。

(*トンボの成熟に伴う「白粉」の成分とその生態学的意義については、このブログの「シオヤトンボ:男たちの厚化粧」と題した記事で簡単にご紹介しています。)

実は、写真1の♂のように「白粉」が吹く前のこの黒っぽい色の腹部も、この♂がすでにかなり成熟していることを示しています。

なぜかといえば、羽化後間もない未熟な♂の腹部、翅胸部は、黄褐色の地に黒い斑紋があるだけで、写真1の♂とは色彩的には似ても似つきません。

♀は成熟しても、未熟な♂同様、黄色系に黒斑というファッションのままです。
その点、シオカラトンボの♀の俗称である「ムギワラトンボ」とスタンスがよく似ています。

黄色に黒斑の♂、♀は今回は撮影できませんでしたので、後日、機会があればご紹介したいと思います。


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