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2016-08-22 (Mon)
今年5月中旬、岐阜県の丘陵地帯でのトンボ探訪では、アオサナエNihonogomphus viridis Oguma, 1926を見ることもできました。

前回記事でご紹介したハラビロトンボを観察した後、シオヤトンボ、タベサナエ(いずれも数回前の記事で紹介済み)など2・3種のトンボの観察・撮影を挟み、オープンな環境の中を流れる小川でアオサナエを見つけました(写真1)。

アオサナエ♂(3)160513
写真1.アオサナエNihonogomphus viridis

少し大きな岩のてっぺんにとまり、4,50センチメートル下の水面付近をじっと睨みつけるような姿勢をとっています。

以前の記事にも書いたように、数年前まで北海道に住んでいた私は2、3種を除いてサナエトンボ科の種を直接観察する機会があまりありませんでした。

その私の眼には、大型で黒地に緑がかった黄色斑紋が浮き立つ、このアオサナエの姿(写真2)はとても新鮮に映りました。

アオサナエ♂(2)160513
写真2.アオサナエNihonogomphus viridis

この日は陽射しが強かったので、この♂は太陽に向かって腹部挙上姿勢をとり、体温のオーバーヒートを避ける、いわゆるオベリスク姿勢*をとっているようにも見えました。

(*オベリスク姿勢につては過去記事:「炎天の猛暑日、チョウトンボの対処法」、「アキアカネ♂」、「リスアカネ♂」に他種の例を写真付きで紹介しています。)

しかしながら、上にも述べたように、数十センチメートル下の水面上に現れる同種♂・♀を発見し、飛び立って対処するためには、この角度で見下ろすことが必要であることに気付きました。

写真3をご覧下さい。
この個体が頭部を背面方向(上方)に向けて、少し窮屈な姿勢をとっています。
少しユーモラスですね。思わず笑ってしまいそうです。

アオサナエ♂(1)160513
写真3.アオサナエNihonogomphus viridis

どうやら、斜め上方から見おろすようにこのトンボを撮影していた私が気になって、こちらの様子を伺っているようです。

このトンボの腹部挙上の角度は写真2のよりも写真3のほうが少し低くなっていることが、石の表面にできた影の先端の位置で判定できるますので、腹部挙上して頭部が下がるため、頭部と岩の表面の接触をさけるために頭部を持ち上げたのではなさそうです。

話は変わりますが、私がアオサナエで気にいった点がほかにもあります。

それは、腹部先端近くが棍棒のように左右に拡がっていることと、尾部上付属器が大きく、またその先が直角に曲がっていて、左右の上付属器と組んできれいな長方形を形作るところです。

腹部先端近くが棍棒のように先太りなるのはサナエトンボ科の種にしばしば見られる特徴で、英語でこの科のトンボがclubtail dragonfliesと呼ばれる由縁です。

♂同士の比較において、アオサナエは、メガネサナエ属3種(オオサカサナエStylurus annulatus (Djakonov, 1926)、メガネサナエS. oculatus (Asahina, 1949)、ナゴヤサナエS. nagoyanus Asahina, 1951)を別格として、ミヤマサナエAnisogomphus maacki (Selys, 1872)に続く立派さの棍棒型の腹部を持っているといえます。

さて、アオサナエの学名のうち、属名Nihonogomphusは、Nihono「日本の」+gomphus「ノブ状の先を持つ棒、ヘラ(サナエトンボの基本的属名」を意味します。種小名のviridisは、「緑」を意味します。

アオサナエの場合、アオといっても、ブルーではなく、グリーン。道路の信号のアオと一緒です。
ついでに言えば、アオイトトンボのアオもグリーンです。
そんなわけで、日本の場合ブルーのイトトンボを見て「アオイトトンボだ」と口に出すと、ブザーがなりかねません(笑)。
「ルリイトトンボだ」といえば、正解になる確率があります。

話を戻します。Nihonogomphusは、後に北海道帝国大学の教授となる小熊 捍(おぐま まもる、1886年8月24日 - 1971年9月10日)が1926年アオサナエの新種記載をする際に新属・新種として扱い、属の記載も行ったものです。

90年後の現在でも独立属として認められていますので(World List of Odonata)、その後細胞学・遺伝学の分野で大きな業績を上げ、国立遺伝学研究所長まで務めたこの学者の昆虫分類学者としての眼力も鋭かったことになります。

ちなみに、私が北大理学部で動物学を専攻した際の教授陣の中には、理学部創立時に農学部から移動した小熊教授のもとで助教授を務められ、薫陶を受けられた定年直前牧野佐二郎先生もおられ、元気なお声での講義を聞かせていただきました。

「小熊捍」と入力してネット検索すると、Wikipediaのほかに、「旧小熊邸」の写真がヒットしました(下の写真)。

旧小熊邸-Wikimedia
旧小熊邸(出典:禁樹なずな - https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/14/Lloyd%27s_Coffee_Former_Oguma%27s_House.JPG/800px-Lloyd%27s_Coffee_Former_Oguma%27s_House.JPG

旧小熊邸は、移築されたものですが、帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの弟子であった田上義也が1929年(昭和4年)に設計したとされ(Wikipedia:「小熊捍」)、大きな5角形の欄間窓や暖炉もあると思われる集合煙突、屋根の意匠、豪雪地帯に対応した基礎回りなどが印象的です。

今度札幌に行く機会があったら、この邸宅の内外をじっくりと見てみたいものです。

最後はちょっと横道に反れてしまいました。

次回も引き続き、トンボ探訪記からの紹介記事となります。


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