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2017-02-25 (Sat)
2015年5月、戦後の日本の生態学をリードした伊藤嘉昭(いとう よしあき)博士(以下、伊藤さん)が亡くなられた。

その半年後に名古屋で開かれた「偲ぶ会」には、伊藤さんの薫陶を受けつつ生態学の道を歩み、現在は定年退職前後まで齢を重ねた生態学者らが集い、それぞれが伊藤さんとの思い出を語り合った。

私(生方秀紀)もその会に参加し、なつかしい面々と再会し、また伊藤さんの数々のエピソードを、うなずきながら、ときには微笑みながら、登壇者から紹介されるままに楽しんだ。

この会を主宰した「伊藤嘉昭記念会」から、伊藤さんについての思い出話や伊藤さんの業績・人物についての評伝を出し合い、1冊の本にすることが提案された。

私も、大学院入学前後の若い時期に、伊藤さんの著書『比較生態学』から多大な影響を受けて、トンボ類の個体群動態と社会学の研究の道を進むことになった。

その足跡をたどりながら、伊藤さんの生物社会観にも言及した私の一文も、上述の本に掲載される運びとなった。
本のタイトルは、辻和希編著『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』(執筆者55名、海游舎発行、411頁+索引、2017年3月25日刊行予定、生態学会大会会場でも頒布)。
次回記事では著者割引、特別割引のご紹介を予定しているので、お見逃しのなきよう。。

以下は、この本に私が寄せた一文の、ほんの触りの部分である。
興味のある方には、この本を手に取り、めくって頂ければと思う。

1970年代後半は、「種の生物学」から「社会生物学」への、社会進化原理における革命的なパラダイム・シフトの大きな波を被りながら、私も自分自身を「改宗」させていくことになった。

伊藤さんは、個体群生態学の研究手法と実践においては優れて「近代的」なスタンスをとっておられたが、こと生物の生活の原理を突き詰めた場合には今西錦司流の「種の生物学」の立場を1970年代前半までは維持しておられたようである。

その伊藤さんが、E.O. Wilson(1975)の”Sociobiology”の出版をはじめとした、欧米における社会生物学(=行動生態学)の興隆・席捲を受けて、自らの立場を社会生物学のプラットフォームに大きくシフトされたのである。
この当時の伊藤さんの揺れ動く様子は、上記の本の中でお弟子さんたちから語られるものと思う。

伊藤さんは、それだけに終わらず、『社会生態学入門―動物の繁殖戦略と社会行動』(1982)の出版や、文部省科学研究費特定研究「生物の適応戦略と社会構造」(1983~1985)の推進などを通して、日本の生態学全体のパラダイム・シフトに大きく貢献された。

ちなみに、この特定研究には私もお誘いいただき、研究班員間のディスカッションなどを通して、私自身の研究を一層ブラッシュアップすることができた。

1986年に、この特定研究のしめくくりとなる、国際シンポジウムが、 J.L. Brown、W.D. Hamilton 、M.J. West-Eberhardの諸氏を含む海外の著名な研究者も招聘して、京都で開かれた。

伊藤さんの推薦もあり、日本側からのシンポジウム登壇者13名の一人として、私も選ばれた。精一杯準備し、緊張しながらも自分の研究成果のエッセンスを紹介したことを、昨日のことのように憶えている。

このシンポジウムの成果は、伊藤さんが中心となって成果図書、”Animal Societies: Theories and Facts” (Y.Ito, J.L. Brown & J. Kikkawa, eds., 1987)として刊行された。その中、に私の報告内容を推敲した論文”Mating system of the dragonfly Cordulia aenea amurensis Selys and a model of mate searching and territorial behaviour in Odonata”も掲載されている。

下の写真(シンポジウム登壇者の集合写真)では、伊藤さん、私の大学院での師匠である坂上昭一先生、そして前述の海外からの研究者らのオーラに圧倒されたかのような私の姿が写っている。

特定研究国際シンポ集合写真-s 
シンポジウム登壇者集合写真(クリックで拡大)
後列左から2番目:私(生方秀紀)、4:坂上昭一、5:伊藤嘉昭、6:J.L. Brown、8:W.D.Hamilton。前列左から3番目:長谷川眞理子、5:M.J. West-Eberhard、6:J.R. Krebs 、7:青木重幸。

次回記事では、『生態学者・伊藤嘉昭伝 もっとも基礎的なことがもっとも役に立つ』の全体的内容や執筆陣について取り上げる予定である。
お楽しみに。


外部リンク先リスト:
南方熊楠顕彰館:「悼 伊藤 嘉昭先生(第17回南方熊楠賞受賞・名古屋大学名誉教授)が逝去されました」.
http://www.minakata.org/cnts/news/index.cgi?v=f5l00&p=0

Wikipedia: E.O. Wilson.
https://en.wikipedia.org/wiki/E._O._Wilson

Wikipedia:伊藤嘉昭.
https://ja.wikipedia.org/wiki/伊藤 嘉昭

Wikipedia:今西錦司.
https://ja.wikipedia.org/wiki/今西錦司

WorldCat:Animal societies : theories and facts.
http://www.worldcat.org/title/animal-societies-theories-and-facts/oclc/17514035


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