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2017-06-21 (Wed)
ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea Rambur, 1842 は日本最小のトンボとして名を馳せています。

イギリスのアマチュアトンボ研究家、Jill Silsbyさんは著書"Dragonflies of the world" (2001, CSIRO Publishing)の中で、ハッチョウトンボの名も挙げつつ、中国に産するNannophyopsis clara (Needham, 1930)画像、外部リンク)を世界最小としています。

しかし、Nannophyopsis clara の腹長が15mm(同書、162頁)であるのに対し、ハッチョウトンボの腹長は9~14mm(尾園ほか、「日本のトンボ」)と、より小さいのです。

したがって、ハッチョウトンボは(私の調べた範囲では)世界最小のトンボとなります。

私がハッチョウトンボと初めて会ったのは、1993年に大阪で開かれた国際トンボ学シンポジウムのエクスカーションで大勢の参加者とともに滋賀県の湿原を訪れた時です。

その小ささと、色彩や行動の可憐さには世界各地からの参加者もうっとりしていたことを今でも昨日のことのように憶えています。

私はトンボに目覚めた時から長い間北海道に住んでいましたので、次の機会は2011年に小田原で開催される予定だった国際トンボ学会議*のエクスカーション候補地探しの一環として、枝重夫博士のご案内で長野県内の湿原で再会したのが最後となっていました。

今回(2017年6月)、ハッチョウトンボの生息地を訪れ、念願の生態写真撮影を実現することができました。

まずは、真紅に装った成熟♂の正面写真をご覧ください(写真1)。

ハッチョウトンボ成熟♂ 
写真1 ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea ♂、成熟個体。(写真はクリックで拡大)

水面上に斜め上方に突き出した枯れた草の折れた茎にとまっているところです。
6本の脚でしっかり体を支え、真っ直ぐ伸ばした体の後方を少し持ち上げています。

いつもこのような格好をしているわけではなく、水平、あるいは体の後方を少し下げたとまり方もしていました。

ハッチョウトンボの♂は交尾のための なわばり を占有することが知られています。
今回も、ときどき、とまっている場所からとびたち、直径1メートル程度の範囲の水面上を見回るように飛び、またとまる行動や、他の♂と追い合いをするのが見られました。

ただし、観察時間が短かったこともあるかもしれませんが、交尾・産卵はもとより、なわばりへの♀の飛来すら観察できませんでした。

♀は開放水面から少し奥まったところにある、スゲやミズゴケからなる湿原植生のところの草にとまっているのが見つかりました(写真2)。

ハッチョウトンボ♀
写真2 ハッチョウトンボ ♀。

♀は、♂よりも腹部がやや太く、腹部背面の斑紋パターンが白と茶が交代する帯状となるので、簡単に区別することができます。

上の写真の♀は、たまたま腹部を上方に曲げているタイミングでの撮影でした。
このあと、もっと強く曲げていました。
トンボの♀も「筋トレ」をするのでしょうか(笑)?

さて、ハッチョウトンボはどのくらい小さいかを、直感的に理解していただこうと思い、カメラのレンズキャップ(直径約60ミリメートル)を左手で近づけながら、右手に持ったカメラで1頭の♂を撮影したのが写真3です。

ハッチョウトンボ♂とレンズキャップ
写真3 ハッチョウトンボ♂ とレンズキャップ。

10円、100円などの硬貨がポケットにあったら、それでもよかったのですが、金欠病のため持ち合わせがなく、レンズキャップの登場となりました。
このブログは稀に外国人も閲覧しているようですので、日本だけで通用する硬貨よりもレンズキャップのほうがかえってよかったかもしれません。

遅くなりましたが、♀のサイズも同様に比較しました(写真4)。

ハッチョウトンボ♀とレンズキャップ
写真4 ハッチョウトンボ♀ とレンズキャップ。


こちらは、背景にも別のハッチョウトンボが写っていますが、右手前のピントのあっているほうの個体とレンズキャップを比較してください。
「わかってる」ですって?
失礼しました。

付記:
ハッチョウトンボの和名の由来について、私の友人、小野知洋氏の論文の紹介のかたちで、以前、このブログの記事にしました。「ハッチョウトンボの文献記録が安永・天明年間まで遡ることに」。ご一読ください。


*注:国際トンボ学会議(関連記事:外部リンク、湘南むし日記より)は、東日本大震災に伴う原発事故の影響で1年延期され、2012年に小田原で開催されました。ちなみに、私は実行委員会の事務局長として委員長以下の委員諸氏とともに準備・運営に奔走しました。


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