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2017-06-23 (Fri)
前回記事では、ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea Rambur, 1842 とのじっくりした対面の印象と、その「小ささ」に注目しました。

今年6月のハッチョウトンボの生息地探訪では、交尾・産卵は見られませんでしたが、真紅に身を染めた個体から灰褐色の迷彩色をまとった個体まで、バラエティーに富んだ個体を観察・撮影することができました。

これらの色彩の違いは、大部分、性別と羽化後の成熟度合いに依存します。

以下、撮影した写真を、♀、♂ごとに、成熟度合いの順になるように配列して、色彩変化の様子を見ていきたいと思います。

まずは♀です。

撮影した中で、一番初々しいというか、頼りない状態だったのがこの♀個体です(写真1)

ハッチョウトンボ♂成熟過程(1) 
写真1 ハッチョウトンボ Nannophya pygmaea、未熟♀。(写真はクリックで拡大)

十分成熟した個体が水平に近いかたちでとまるのに対し、この個体は体をぶら下げるかたちで草の葉にとまっています。

複眼の色も、褐色味はありますが、乳白色に濁っています。
また、翅もまだ柔らかそうに見え、翅脈の黒化が始まっておらず、薄い褐色です。
これらのことから、この個体は、羽化後、まだ日が浅いことが伺えます。

これ以外にも、翅基部の黄色斑はまだはっきりしないですし、腹部の褐色斑紋の色彩に鮮やかさがみられません。

下の写真2の水平にとまった♀は、写真1の♀よりも羽化後の時間経過が長いように見えます。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(1)
写真2 ハッチョウトンボ、未熟

なぜなら、翅脈が黒くなっていますし、翅基部にまだ若干薄いながらも黄色斑が現れているからです。
更に、腹部の褐色斑紋がより明るく鮮やかな色になっているのも進展といえるでしょう。

ですが、複眼背面にはまだ乳白色の濁りが強く残っていますので、成熟まではまだまだといった感じです。

下の写真3の♀は、翅基部の黄色斑がかなり強く現れてきています。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(2) 
写真3 ハッチョウトンボ、未熟

そして、複眼背面の乳白色の濁りも若干弱まり、内部の茶系の色が少し透けて見えるようになっています。

下の写真4の♀では、複眼の乳白色の濁りがほとんど消え、茶系の色が目立ってきています。

ハッチョウトンボ♀成熟過程(3) 
写真4 ハッチョウトンボ、成熟途上♀

翅基部の黄色斑の部分の翅脈の色が茶色になっています。
ただし、成熟♂のその部分のように赤くはなっていません。

下の写真5の♀(前回記事から再掲)では、複眼の乳白色が払拭され、明るい茶色となっています。

ハッチョウトンボ♀
写真5 ハッチョウトンボ、ほぼ成熟(?)♀(再掲)

さて、今回の現地調査では、これ以上成熟が進んだように見えた♀を撮影できていません。
Googleで「ハッチョウトンボ」&「交尾」or「産卵」で画像検索したところ、複眼や腹部背面の茶褐色がもう少し濃くなった印象を与える成熟♀をいくつか確認できました。

ですので、写真5の♀も、もう1、2日したら成熟♂が待っている水辺へと「デビュー」するのかもしれません。

♀については、このくらいにして、次は♂です。

下の写真6の個体が、今回撮影した中で一番未熟な♂と、私が判断したものです。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(2)
写真6 ハッチョウトンボ、未熟♂
 
というのも、この個体の複眼には乳白色の濁りが残存し、腹部背面はくすんだ暗褐色を呈していて、赤化が進んでいないからです。
ただし、翅基部の黄褐色班ははっきり現れていますし、翅脈は黒化しています。
これらのことから、写真6の♂は、写真3の♀と同レベルまで進行しているといえます。

下の写真7の♂では、複眼の乳白色の濁りは消え、複眼背面の茶色の赤色味も強まりつつあります。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(3)
写真7 ハッチョウトンボ、成熟途上

腹部の赤化も少し始まっているようですが、まだはっきりしません。

下の写真8の♂は、水面に突き出す枯草にとまって、なわばり占有をしています。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(5)
写真8 ハッチョウトンボ、成熟 ♂

複眼背面、胸部、腹部とも真紅に染まっています。
♀への言い寄り、そしてライバル♂への対抗のために、ドレスアップしているといえるでしょう。

人間社会でドレスアップといえば、普通、女性が行う行為ですが、トンボの世界では鳥の世界と同様に、♂たちのためにあります(例外はありますが)。

私の以前の記事でも、以下のとおり、このトンボの社会学事象をとりあげています。
今回、写真8よりももっと赤化が進行した♂も見られました(写真9)。

ハッチョウトンボ♂成熟過程(4)
写真9 ハッチョウトンボ、成熟

写真8の♂では、腹部第2,3節背面にも赤化しきっていない部分がありますが、こちらの♂では完全に赤化しています。

また、写真8の♂では、翅の基部に近いところ(黄斑のある部分)の翅脈はやや赤化しているだけなのに対し、こちらの♂では完全に赤化しています。

このように、♂が♀にくらべて色彩あるいは形態が顕著に目立つタイプの性的二型を示すケースは、
(1)♀がそのような♂を「好む」ことにより、世代が進むごとにより顕著な方向に形質が進化するプロセス、あるいは
(2)♂同士がライバル間の争いで形態の顕著さを誇示しあい、より顕著なほうが♀と交尾する権利を獲得することで、その方向に進化するプロセス
のいずれかによって出現してと考えられます。

私がハッチョウトンボの♂だったとしたら、相手の色の赤さに参りそうになっても頑張らなくてはと思うでしょう。
一方私がハッチョウトンボの♀だったとしたら、より赤いほうの♂を選ぶだろうと思います。

でも実際のところ、どうなのでしょうか?
♀は♂を選んでいるでしょうか?
あるいは、♂同士の なわばり争いで、腹部背面の鮮やかさを誇示しあっているでしょうか?

今後、観察の機会があったら、そのへんを注意しながら観察してみようと思います。


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