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2017-07-22 (Sat)
今年6月前半の県外に脚を延ばしての取材旅行先で、各種のトンボとともにコオニヤンマSieboldius albardae Selys, 1886と出会うことができました(写真1)。

コオニヤンマ♂ 
写真1 コオニヤンマSieboldius albardae ♂ (写真はクリックで拡大します)。

丘陵地の小川沿いに歩いていた私の眼の前のコンクリート擁壁の上端縁に、1頭の大型トンボがとまりました。

シャッタ―をばバシャバシャ押しながら近づくと、飛び立って、少し先の鉄製の土管の上端にとまりました(写真2)。

コオニヤンマ♂(2)
写真2 コオニヤンマSieboldius albardae ♂(同一個体)

オニヤンマを連想させるしっかりした黒い腹部に黄色い帯状斑紋、胸部とくらべて異様に小さい頭部、前・中脚とくらべてこれまた異様に長い後脚。

このアンバランスな小頭・長脚は、コオニヤンマのユニークな特徴です。

コオニヤンマとは、私が北海道に住んでいた際に出会ったことがありますので、初対面ではありませんが、デジタル一眼に収めることができ、パソコン画面でじっくり対面するためのよい機会となりました。

今シーズン、フェイスブックで誰かがコオニヤンマの写真をアップしたときに、ある方が「格好いいです♡」とコメントしたことがありました。

私は「え~?」と一瞬驚きましたが、人間界のファッションモデルに当てはめるなら、小頭・長脚はまさに「グッド・ルッキング」のベースになているな、と妙に納得したものです。

それはさておき、なぜこんなアンバランスな体形をしているのでしょう?

まずは同じ属の別の種が同様の形をしているのかが気になります。

同属の種の成虫の外形をGoogleで画像検索してみました。
以下がその結果です。

小頭・長脚派:
   コオニヤンマSieboldius albardae Selys, 1886
  検索不要
   Sieboldius alexanderi (Chao, 1955)
         by Bergman
   Sieboldius deflexus (Chao, 1955)
         by Keven_Lin

中頭・長脚派:
   Sieboldius japponicus Selys, 1854
         by Naturalis Biodiversity Center (dry specimen)
         by Dragonchaser

中頭・短脚派:
   Sieboldius nigricolor (Fraser, 1924)
         By Dennis Farrell  
         By Faz

所属不明(現在のところ):
   Sieboldius gigas (Martin, 1904)
   Sieboldius herculeus Needham, 1930
   Sieboldius maai Chao, 1990

以上のように、小頭・長脚派が少なくとも3種あり、主流派のように見えます。

その一方で、Sieboldius nigricolor のように、中頭・短脚派の同属種もいるのは驚きです。

また、「中間派」のSieboldius japponicus が中頭・長脚派であることから脚が短くなる前に頭が少し大きくなる傾向があるのかもしれません。

なぜこういう書き方をしたかと言えば、コオニヤンマ属Sieboldius とともにコオニヤンマ亜科Hageniinaeを構成するHagenius brevistylus Selys, 1854は、明らかに小頭・長脚派に属するからです(下記外部リンク参照)。

Greg Lasley: Hagenius brevistylus

つまり、現行のSieboldiusHageniusの分類が正しい(つまりそれぞれが単系統、より正確には完系統)ということを前提とすれば、SieboldiusHageniusの共通祖先は小頭・長脚派だったと推定されます(小頭長脚祖先形質説)。

ただし、SieboldiusHageniusの共通祖先は中頭・短脚派で、小頭・長脚派はそれぞれの属へと分化していく道筋の中で「平行進化」した(小頭長脚平行進化説)という可能性もゼロではありません。

とはいえ、このようなアンバランスな体形への進化がそう頻繁に起こるとは考えにくいので、私は今のところ、小頭長脚祖先形質説を支持しています。 

この二つの説の名称は私が今回の記事作成中に勝手につけたものですが、すでに他の方が同様の議論をしていいて、結論じみたものも提出されているかもしれません。
もしご存知の方がおられましたら、コメント欄等でご教示ください。

さて、小頭長脚には何らかの適応度を高める要素があるのでしょうか?

一つ考えられるのは、成虫が石、枝、葉などにとまった時に、後半身を重力に逆らって支えるために、長くて丈夫な後脚を備えるに至ったのかもしれません。

とりわけ、腹部に卵がいっぱい詰まった♀と交尾し、交尾態(リング状)のまま物にとまる際は、♂が2頭分の体重をささえることになり、とりわけ後脚に重い負担がかかるはずです。

ただし、これは他の大型トンボにもあてはまることなので、なぜコオニヤンマ類に限ってそうなのか、という疑問は残ります。

胸部とくらべて相対的に小さい頭部が進化した理由はなんでしょうか?

他の方がフェイスブックにアップしたコオニヤンマの写真へのコメント欄でも、本種が結構獰猛で自分より大型のヤンマ類を捕食した例などが紹介されていました。

この「猛虫」ぶりを見ると、視覚能力、脳での瞬間判断能力なども決して他の「中頭」、「大頭」のトンボのそれに引けをとらないように思われます。

ということは、コオニヤンマ亜科の系統進化の過程で、これらのハンターとしての感覚・情報処理能力を損なうことなく、複眼サイズを含む頭部の小型化を「達成」し、低コスト化(同化した栄養を体内の他の部位に振り向けることができる)も同時に手にいれたということが考えられます。

このように考えると、今までコオニヤンマのアンバランスな体形を見下すかのように見ていたことを、恥じなければいけないかもしれません。

ここでコオニヤンマの幼虫虫の形態についてご紹介し、若干検討してみましょう。。

本種の幼は、サナエトンボ科の中でも風変りで、腹部はコインのように扁平で丸く、脚(とくに後脚)は長くて丈夫です(Hagenius brevistylusの場合も同様)。

私も北海道東部の遠浅の砂礫底をもつ清冽な湖で本種の幼虫を水面上から直接視認し、更に網ですくって確認したことがありますが、写真の手持ちがないため、下記の外部リンク先の幼虫写真をご紹介しておきます。

外部リンク:
 Kazuya Hiramatsu:コオニヤンマ:コオニヤンマ幼虫(ヤゴ)

幼虫のこの、コインのような腹部を支えるには、確かに、このように大きくてガッチリした脚が必要と思われます。

こう考えると、成虫の長い後脚は幼虫の立派な後脚を持ち越しているという可能性が浮上します。

同じコオニヤンマ亜科に属するHagenius brevistylus の幼虫も同様の形態をしています(下記外部リンク参照)。
Jasonさんのサイトの写真からは、コインのように薄い腹部であることもよくわかります。

外部リンク:
  Tom Murray: Dragonhunter naiad - Hagenius brevistylus 

  Jason Neuswanger: Hagenius brevistylus Dragonfly Nymph Pictures


ここまで見てきたように、コオニヤンマは、妙に私の興味をそそるトンボの一つです。

これからも1ファンとして追い続けてみようと思います。


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