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2017-08-21 (Mon)
夏目英隆さんに同行しての、昨年7月上旬の他県へのトンボ・トリップの最終調査地、丘陵地を刻む河川の中流部で観察したトンボのうち、カワトンボ属(現、元)3種オナガサナエは前回までの2つの記事で紹介しました。

その同じ場所で、コヤマトンボ Macromia amphigena Selys, 1871 のを観察・撮影することができました(写真1、3)。

コヤマトンボ、♂ 
写真1 コヤマトンボ Macromia amphigena ♂ (写真はクリックで拡大します)

観察者である私は、胴付長靴(ウェーダー)を着用し、川の中央部に仁王立ちし、通りかかるヤマトンボ科 Macromiidae の成虫が眼の前を通りすぎるたびにシャッターを数回押して、なんとか画面にそのトンボの姿を収めようと試みました。

しかし、午後3時半をまたぐ7分間に、約180回シャッターを切ったのですが、どれもこれもブレたり、ピンボケだったりと、空振りの山を築く結果となりました。

上の写真1は、それらピンボケ写真の中で、証拠写真としてなら使えそうということで残った最後の1枚です。

トリミングしていますが、これ以上のトリミングをして拡大表示するとお目汚しになる、ギリギリのものです。

それでもなんとか、画面で拡大することで、腹部第3節の黄色斑紋の特徴で同属他種と区別できました。

下の写真2も、上記の180コマのうちの1コマですが、同様に水面上の低いところをヤマトンボ科の1種の成虫♂がパトロールしていることを説明するのに使えるアングルで撮れています(トリミング後)。

コヤマトンボ属、♂
写真2 コヤマトンボ属の1種 Macromia sp. 

ただし、写真2の個体がコヤマトンボと言い切るに足る特徴が判然としませんので、安全のため、キャプションはコヤマトンボ属の1種 Macromia sp.の♂としておきました。

下の写真3は、この川でトンボの生態の調査研究を続けておられる夏目さんが、これらパトロール中のコヤマトンボ♂をネットインされたものを、私が撮影させてもらったものです。

コヤマトンボ♂、記録用写真 
写真3 コヤマトンボ Macromia amphigena ♂、記録用写真

手持ちされた状態で撮影された写真3は、前後翅の翅脈はもちろん、頭部や胸部の体毛まで識別可能な写りになっていますので、以下のようなコヤマトンボの特徴(参考:尾園ほか、2012)を確認することが可能です。

・尾部上付属器の先端が外側に弱く湾曲する(オオヤマトンボEpophthalmia elegans [Brauer, 1865]では先端が内向きになる)。
・腹部第3節の黄色斑紋は黒斑によって斜めに切断されることはない(キイロヤマトンボMacromia daimoji Okumura, 1949との区別点)。
・腹部第10節背面が背方(上方)に突出しない(オオヤマトンボでは突出する)。<ただし今回の写真ではこの区別は若干不明瞭>

以上のように、今回の観察では種まで判別できたヤマトンボ科の種は、コヤマトンボのみでしたが、繰りかえし観察者の足元付近を通過してパトロールしていた個体の中に、別種のキイロヤマトンボが含まれていなかったとは言い切れません。

いないことの証明は難しいですが、いたことの証明のためには撮影技術を格段に向上させるか、一時的にネットインして手持ち撮影した後リリースするかが必要となります。

なぜリリースかといえば、希少種の場合は、よほどの研究目的がない限り、標本にして持ち帰ることは差し控えるべきという考えを私はもっているからです。

後者は若干安易な感じがしますので、ふだんから少しずつ撮影技術を向上させるように努力したいところです。

さて、ヤマトンボ科♂のパトロール中の姿を収めるために、写真1、2を含む180コマの撮影をしたポイントをおさめた景観写真を、下の、写真4に掲げます。

コヤマトンボが観察された河川中流部 
写真4 コヤマトンボが観察された河川中流部

写真4から、浅い砂礫底が拡がったこの清冽な河川中流部は、コヤマトンボ属を含む各種河川性トンボの楽園となっていることが伺われます。

さて、このトンボ・トリップのシリーズ報告最終回の記事でしんがりに控えているのは、この河川中流部で観察されたトンボ科3種です(写真5~7)。

ノシメトンボ♂ 
写真5 ノシメトンボ Sympetrum infuscatum (Selys, 1883) ♀ (再掲)

上の真5ノシメトンボ Sympetrum infuscatum は、今回のシリーズ記事のうちの「ノシメトンボ:ハンディキャップもなんのその」で、準主役級の役どころですでに登場済みです。

ノシメトンボは、脇役としてですが、過去記事「トンボ王国訪問記(2):ヒメサナエと小さな虫たち」にも登場しています。

シオカラトンボ♂
写真6 シオカラトンボ Orthetrum albistylum (Selys, 1848) ♂

上の写真6シオカラトンボ Orthetrum albistylum は、川岸の砂地の上に倒れた枯れた竹の茎にとまっているところですが、白粉がほとんど吹いておらず、まだほとんど成熟が進んでいないことがわかります。

シオカラトンボはどこにでもいる普通種ですので、当ブログではわき役になりがちですが、それでも以下の記事ではしっかり主役も務めています。

ウスバキトンボ♀ 
写真7 ウスバキトンボ Pantala flavescens (Fabricius, 1798) ♀

上の写真7ウスバキトンボ Pantala flavescens は、川岸の背の高い草の葉柄の付け根にぶら下がるようにとまっているところです。

ウスバキトンボは今回のトンボ・トリップで溜め池群でも観察・撮影され、過去記事「トンボらの生命はぐくむ稲の里:アキアカネ、etc.」に登場済みです。


謝辞:
今回のトンボ・トリップの一連の記事を終えるにあたり、現地へのご案内、観察されたトンボについての知見のご教示を下さった夏目さんに、この場を借りて感謝いたします。


引用文献: 
尾園暁、川島逸郎・二橋亮(2012) 『日本のトンボ』 文一総合出版。


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