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2017-08-27 (Sun)
前回前々回記事に続き、今年の7月上旬、関東地方から北~北東方面に脱出した先にある、自然度の高い浅い沼一帯のトンボ観察からのエピソードをご紹介します。

この沼の上流側には小規模なミズゴケ湿原が成立していて、独特のトンボ相が成立しています(前回記事)。

そのミズゴケ湿原を通り過ぎた先にある、沼の上流端部に向うところから、今回の記事がスタートします。

ミズゴケ湿原を通り過ぎるとすぐに小規模な河畔林になっており、その林内の木漏れ日のあたるスゲ類の葉にオゼイトトンボ Coenagrion terue (Asahina, 1949) ♂がとまっているのを見つけ、撮影しました。

更に少し進むと、沼の上流端(湿原になっている)に流入する小河川(細流)を横切ることになります。
その細流沿いに生い茂ったヨシの葉に、ニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869 無色透明翅型♂が木漏れ日を浴びながらとまっていました(写真1)。

ニホンカワトンボ♂、無色透明型 
写真1 ニホンカワトンボ Mnais costalis ♂、無色透明翅型 (写真はクリックで拡大します)

日本産のカワトンボ属 Mnais は2種、ニホンカワトンボアサヒナカワトンボ M. pruinosa Selys 1853に分類されていますが、形態が酷似していて、多くの場合、成虫標本の観察、ましてや生態写真だけからの種の同定には困難が伴います。DNAを抽出して解析すれば正確に同定できますが、研究機関の協力なしには行えません(過去記事「カワトンボ属:形態による種の同定は、核DNA塩基配列分析にひざまずく(以前の記事の訂正あり)」参照)。

それなのに、なぜ今回はニホンカワトンボと断定できたのかといえば、その理由は簡単で、今回の調査地域にはアサヒナカワトンボは分布していないことになっているからです。

さて、今回の観察記録に戻ります。

この細流を渡ったところの少し先に行くと見ることができる湿原の最上流端は、本来湿原だったと思われますが、私が訪れた時にはやや乾燥感のある草原の様相を呈していました。

それでも、写真2のように、大きな浅い水たまりがあることから、それなりに地下水位も高いのかもしれません。

湿原の上流端の景観 
写真2 沼の最上流端の湿性草原の水たまり

その浅い水たまりのほとりの幼木の尖端の立った枝の先近くに、シオヤトンボ Orthetrum japonicum (Uhler, 1858) ♂がとまっていました(写真3)。

シオヤトンボ♂ 
写真3 シオヤトンボ Orthetrum japonicum 

シオヤトンボについては、過去記事「シオヤトンボ:男たちの厚化粧」に♂の白粉による装いとその意味について、交尾中の写真も添えて記述していますので、ご一読ください。

この水たまりと向かい合う林縁に接した草むらの頭花にアキアカネ Sympetrum frequens (Selys, 1883) ♂が水平にとまっていました。

見ていると、その♂も前回記事のアキアカネ1♂のように、軽いオベリスク姿勢をとりました(写真4)。

アキアカネ♂
写真4 アキアカネ Sympetrum frequens ♂

少し視線を巡らせると、別のアキアカネ♂が、傾いたスゲ類の尖端の穂に、ほぼ水平にとまっているました(写真5)。

アキアカネ未熟♂ 
写真5 アキアカネ S. frequens 未熟♂

更にもう1頭のアキアカネ♂が、半日陰の草の葉の上にこちら向きにとまっていました(写真6)。

アキアカネ♂ 
写真6 アキアカネ S. frequens ♂

このように、正面からの写真からでは、雌雄の判定は難しいのですが、腹部第4節の前方付近が、それより後方よりも細まっていること、尾部上付属器は♀の相同の体部である尾毛よりもずっと長いことに着目してなんとか判定してみました。

午前10時10時26分。ほかにトンボの姿はないので、直前まで観察していたミズゴケ湿原に戻ることにしました。

そのミズゴケ湿原でのトンボ観察は前回記事に書いたとおりです。

昼食後の12時29分に、この浅い水たまりのある沼(湿原)の最上流端の草原を再訪してみました。

この時最初に出会ったトンボは、半日陰の笹の葉にとまるアキアカネでした(写真には正面向きで腹部が写っていないため、性別判定不能)。

シオヤトンボを撮影した水たまりに着くと、そこには私がこの日の昼食休憩後に初対面したばかりのトンボが1頭とまっていました。
その初対面のトンボについては、次回記事で詳しく報告する予定です。

そのトンボをさまざまな角度から撮影したあと、ミズゴケ湿原に向いました。

その途中の、湿原に流入する小河川(細流)沿いに生えた背の高い笹の葉に、今度はニホンカワトンボの♀が木漏れ日を浴びながらとまっていました(写真7)。

ニホンカワトンボ♀ 
写真7 ニホンカワトンボ Mnais costalis ♀

後半身を水平よりも40度ほど挙上して、いつでも飛び立てるような態勢で、斜め下前方を凝視しています。
小さな虫通りかかれば飛びかかって、捕獲する態勢です。

今回、ニホンカワトンボの♂と♀を観察・撮影することができました。

ただし、同時に見つかってもおかしくないはずのニホンカワトンボの橙色翅型♂(画像はこちら過去記事より])は今回見られませんでした。

その理由として、この細流が非常に小規模で、その上、橙色翅型♂がなわばり占有場所として好む少し開放的な(つまり上空の大半を樹枝で覆われることのない)水流の部分が無かったことが考えられます。

それにしても、カワトンボ類が移動可能な流域で考えれば橙色翅型♂はいるはずですから、今回はたまたま目にとまらなかっただけというのが真相に近いだろうと思います。

ニホンカワトンボの形態について具体的に取り上げたものとして、以下の過去記事があります。

※ただし、この過去記事で扱われているニホンカワトンボは、同属のアサヒナカワトンボと広域的に同所分布している地域内の個体群であるため、アサヒナカワトンボとの形態的差異が拡大する「形質置換」を起こしているケースですので、今回撮影したニホンカワトンボとは、体サイズ、橙色翅♂と無色透明翅型♂の比率、♀の翅の色などで大きな違いが出ています。

今回の記事は、過去記事ピックアップを交えたニホンカワトンボの話題に終始した感がありますが、次回は私を感激された初対面の種との出会いを取り上げる予定です(今回のタイトルに「脇役」を付したのは、この理由からです。御免なさい→ニホンカワトンボさん、シオヤトンボさん、アキアカネさん)。


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