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2017-08-28 (Mon)
3回シリーズで続いている、今年の7月上旬、関東地方から北~北東方面に脱出した先にある、自然度の高い浅い沼一帯のトンボ観察記もいよいよ大詰め、今回は私の憧れのトンボとの対面が実現した際のエピソードを中心に紹介します。

憧れのトンボ、それはアマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana Asahina, 1955 です(写真1)。

アマゴイルリトンボ♂(3) 
写真1 アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana(12時34分撮影) (写真はクリックで拡大します)

午前11時30分、早目の昼食休憩を済ませた私は、昼食前に観察した岸の対岸側の、日当たりのよい岸沿いにトンボの観察を再開しました。

最初に見つけたトンボはモノサシトンボ Pseudocopera annulata (Selys, 1863) ♂で、沼の水面から出たスゲ類の葉にとまっていました。

少し移動すると、今度は沼の水面から茎を突き出しているミツガシワの葉にもモノサシトンボ♂がとまっていました(写真2)。

モノサシトンボ♂、水辺にて 
写真2 モノサシトンボ Pseudocopera annulata 

いずれの♂も、明らかに、♀の到着を待ち受けている、すなわち婚活モードに入っている様子です。

翅および体表に汚れがないことから、まだ婚活シーズンが始まったばかりだということが伺えます。

11時36分、漏れ日があたる、ミツガシワ帯の草本の葉にとまるモノサシトンボ♀を発見しました(写真3)。

モノサシトンボ♀ 
写真3 モノサシトンボ Pseudocopera annulata 

♂とくらべて、特に体前半分の淡色部が♂のように青味がかった白ではなく、黄褐色がっかった白い色をしています(本種では、青味がかった白の♀も知られていますが)。

午前中にも羽化直後の個体を含め4頭のモノサシトンボを見つけて撮影しましたが、♂ばかりで、♀はここでは初物となりました。

次に、岸の丈の高い草の葉にとまるエゾイトトンボ Coenagrion lanceolatum (Selys, 1872)の♂(スペード形黒紋の個体)を撮り、少し歩を進めると、水面に浮かぶオゼコウホネ Nuphar pumilum var. ozeense の葉やヒルムシロ Potamogeton distinctus の葉にそれぞれとまるクロイトトンボ Paracercion calamorum (Ris, 1916) ♂を見つけました(写真4)。

クロイトトンボ♂ 
写真4 ヒルムシロ Potamogeton distinctus の葉にとまるクロイトトンボ Paracercion calamorum 

もちろん、いずれも、その葉の周囲を なわばり にし、♀の到着を待っているバリバリの♂です。

クロイトトンボは、この生息地では私の前に初登場です。

今度はエゾイトトンボ連結カップルミツガシワ Menyanthes trifoliata の茎にとまっています(11時41分)。

少し離れたミツガシワの葉の上にはエゾイトトンボの独身がとまっています(写真5)。

エゾイトトンボ♂ 
写真5 エゾイトトンボ Coenagrion lanceolatum 

こちらも、♀の登場を待ち受けているモードです。

別のミツガシワの葉にはモノサシトンボ♂もとまっています。

これはもう、婚活パーティ―状態です(笑)。

11時46分、エゾイトトンボの連結産卵が見られました(写真6)。

エゾイトトンボ、連結産卵 
写真6 エゾイトトンボ Coenagrion lanceolatum 連結産卵

オゼコウホネかなにかの浮揚植物の葉柄の組織内に、♀がいそいそと卵を産み付け、♂は直立して♀をガードしています(歩哨姿勢)。

11時51分、ミツガシワの茎にとまっているエゾイトトンボ連結カップルに、別のエゾイトトンボ♂が近づいたため、連結♂は翅をばたつかせて威嚇しています(写真7)。

エゾイトトンボ連結 
写真7 エゾイトトンボ Coenagrion lanceolatum 連結カップルに他♂が接近

下の写真8は同じエゾイトトンボ連結カップルですが、♀の全身がよく見えているのでここに掲げることにしました。

エゾイトトンボ連結(2) 
写真8 エゾイトトンボ Coenagrion lanceolatum連結、同一カップル

11時54分、ヒルムシロの葉の上にとまっているクロイトトンボ連結カップルを見つけ、撮影しました(写真9)。

クロイトトンボ連結 
写真9 クロイトトンボ Paracercion calamorum 連結カップル

写真9も、♀の全身が比較的明瞭に写っているので掲げています。

この後、モノサシトンボ♂3例、エゾイトトンボ♂1例を撮影しましたが、上に紹介した事例と同様の姿勢をとっていましたので詳細は省略します。

そんな中、ミツガシワの葉の縁にとまるトンボの羽化殻を見つけ、撮影しました(写真10

イトトンボ科羽化殻 
写真10 イトトンボ科の1種 Coenagrionidae, sp. の羽化殻

帰宅後、幼虫図鑑等で調べ、尾鰓の概形、体長に対する腹長の比率、尾鰓の途中に折れ目があるらしいことで、均翅亜目の他の科ではなくイトトンボ科に属する種の羽化殻であると判定しました。

12時05分、岸の木漏れ日の当たる、丈の高い草の幅広い葉の先端に、青味の強いモノサシトンボ科のトンボがとまっているのを見つけました(写真11)。

アマゴイルリトンボ♂ 
写真11 アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana 

アマゴイルリトンボ♂です。

カメラのファインダー越しに凝視しながら、「やったー!」と心の中で叫び声を上げていました。

今回の奥の蜻蛉道の旅の一番の目的を果たすことができた瞬間です。

ただし、初対面でしたので、帰宅後、パソコン画面で拡大画像と図鑑を見比べてアマゴイルリトンボに間違いないと確信するまでは、ぬか喜びの可能性もありえたのですが。

その後、この一帯で、柳の下のドジョウならぬ、2頭目のアマゴイルリトンボが見つからないか、眼を皿にして歩を進めたのですが、モノサシトンボ♂はいても、アマゴイルリイトトンボの姿はありませんでした。

ふと目を沼の水面にやると、宿願を果たした私を祝福するかのように、スイレン Nymphaea sp. の花が踊っていました(写真12)。[記事掲載時に「ヒツジグサ」としてい他のを訂正。2017.9.8.]

ヒツジグサ 
写真12 トンボの生息地に咲くスイレン Nymphaea sp. 

というわけで、目先を変えて、ハッチョウトンボのいるミズゴケ湿原へ向かうことにしました。

※その前に:昼時の日の当たる側の岸辺のトンボ成虫の構成には、午前中の日陰側の岸辺のそれと比べてクロイトトンボとルリモントンボの存在、オゼイトトンボの不在が指摘でき、♀を待ち受ける♂や連結や産卵中のカップルが見られるなど、生殖行動の活発化が見てとれます。

さて、この後の午後ののミズゴケ湿原で見たハッチョウトンボとアキアカネのオベリスク大会は、前々回の記事「奥の蜻蛉道(2):真夏のミズゴケ湿原のトンボ」に書いたとおりです。

そのミズゴケ湿原に向う通り道の横に、この沼の上流端の湿性草原の水たまりがありますので、そこに寄り道をしてみました。

すると、ますは藪の近くの草にとまるアキアカネが目に入りました(前回記事で既報)。

振り返るとその水たまりの近くの草の葉に、なんとアマゴイルリトンボ♂がとまっているではありませんか(写真13)。

アマゴイルリトンボ♂ 
写真13 アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana ♂ (撮影者の影響を受ける前の証拠写真)

これこそが、前回記事「奥の蜻蛉道(3):湿原上流端の脇役トンボたち」で登場を先延ばしされた「この日の昼食休憩後に初対面したばかりのトンボ」そのものです。

お待たせしました。

この日2度目のアマゴイルリトンボ♂ですので、写真写りを優先して、撮影会のカメラマン並みに様ざまな角度・距離からシャッターを押します。

アマゴイルリトンボは、このうざったいカメラマンを避けるかのように、何度かとまり替えました。

そのうちの1枚はこれ(写真14)です。

アマゴイルリトンボ♂(2) 
写真14 アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana 

そして最後の1枚(正確には最後から2枚目)がこれ(写真15)です(12時34分)。

アマゴイルリトンボ♂(3) 
写真15 アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana  (写真1の再掲)

というわけで、今回の記事の冒頭にはこの写真を使いました。

アマゴイルリトンボは見た感じはモノサシトンボと似ていますが、分類学上の属はグンバイトンボと同じグンバイトンボ属 Platycnemis に属しています。

グンバイトンボ属およびその近縁属の種には♂の中・後脚の脛節が軍配状に拡張しているものが多く知られており(過去記事「世界のグンバイトンボ類、軍配サイズ番付」参照)、その中でアマゴイルリトンボはもっとも軍配に縁がない部類に属しますので、私にとっても興味津々の種です。

この話題については、また後程の記事で取り上げたいと思っています。

この後、トンボ探訪を続けながら、この沼への流入河川(細流)(前回記事参照)とミズゴケ湿原(前々回記事)を通り、森林斜面の迫る岸(3回前の記事)を通って、愛車の待つ場所へと戻りました。

これをもって、当ブログの「奥の蜻蛉道篇」はいったん完結といたします。


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