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2014-10-17 (Fri)
トンボの生態写真は真横の少し斜め上からの角度からのものが好まれます*。

というのも、頭のてっぺんから尻尾の先までしっかりピントが合い、体の各部のプロポーションが一目瞭然となり、種の形態的特徴が見分けやすいからです。
そして、できれば頭が左方向、尾が右方向になるように、写真をそろえるたほうが、互いに比較しやすいのでベターです**。

そのようなわけで、このブログのこれまでの生態写真入りの記事は、それぞれの種が初出ということもあり、横向きトンボのオンパレードでした。

これまでのこのブログに目をとおしてこられた方の目には、今日のこの写真(シオカラトンボ♂***)は、その意味でちょっと新鮮に映るのではないでしょうか。

シオカラトンボ ♂、正面
 ↑クリックで拡大します。

いつもの、さいたま市の園地の池の、コンクリート製擁壁の天面(こういう場所を本種は好みます)にとまって、こちらをじっと見ています(8月30日撮影)。
というよりも、私が岸沿いに回り込んで、このシオカラトンボが真正面に見える位置に移動し、そこからカメラの望遠ズームレンズを向けたというのが実際のところです。

トンボを見慣れたはずの私ですが、正直にいって、このトンボの顔(とくに目の表情)に、今流行りの「ゆるキャラ」たち、あるいは仮面ライダーを思い起こさせるような、ユーモラスな愛らしささを感じました。

なにが、そう感じさせるのでしょうか**** 。
ヘルメット兼用の、青くて丸い大きななゴーグル越しに大きな黒目をのぞかせたところ。
口から顎を覆う白くて大きくしっかりしたマスク。
ゴーグルやマスクの輪郭は、漫画のキャラクターのように、黒線で縁どられています。
こんなところでしょうか。

さて、その一方で、シオカラトンボの頭、胸、脚をよく見ると、一変して、いかつい逞しさを兼ね備えていることに気づきます。

ゴーグルの頬のあたりには、ちょっと怖そうにダルマの髭のような隈取り。
マスクのすぐ上には、リベットで留めつけたような、黒光りのした額飾り。
いからせた背も、ヨロイの胴のように鈍く光ります。
そして、腕を覆う籠手(こて)に相当する部分には、触ればバリバリいいそうな棘が列生しています。

仮面ライダーの原作者が、トンボやバッタの顔をモデルにした気持ちがよくわかります。
というのも、トンボの前半身は、正面の敵と丁々発止と渡り合うのに、なんの不足もない、立派な鎧兜(よろいかぶと)を装っているといえるからです。

日本の兜は、それでも顔の一部が露出していますので、ハードな部材で完全におおわれたトンボの顔・頭は西洋中世の騎士のかぶるヘルメットにより近いといえるでしょう。

このように、トンボの体を、武装したサムライや西洋の騎士に例えることができるのも、昆虫の中でトンボは他の昆虫を襲うどう猛な肉食者であり、種内個体間でも縄ばり争いで正面衝突も辞さないほどの「武闘派」だからといえるでしょう。
鎧の完成度では、カブトムシやクワガタムシには叶いませんが、トンボも、このようなところが、昔ならチャンバラごっこ(死語?)、今なら電子ゲームのストリートファイターに血を沸かす男の子達の、あこがれの1つになった理由なのではないでしょうか。

それに対して、ひ弱く、人の手でつかめば潰れてしまうような、カゲロウやユスリカたちは、平和主義者、非暴力無抵抗主義の生き方をしているのかもしれません。
そういう生き方をしているにもかかわらず、数億年の時を経て現代にまで生き続けてくることができた、これらの虫たちの存在は、戦争や暴力で物事を解決しようとする今の人類に、何かを教えてくれるかもしれません。

注:
*あくまでも、たった1枚の写真でその種を代表させる場合のことです(標本的写真)。多数提示できる場合は、さまざまな角度からさまざまな焦点距離で、トンボが示すいろいろな姿勢・動作を写したほうが全体として表現を豊にすることができます(言わずもがなですが)。

**しかし、実際は右向きにとまった写真しか撮れないことも多く、真横の位置を撮れない場合もままあります。

***シオカラトンボについては9月15日の記事に基本的なことを書いておきました。

****この文章以下10行分の文章は文芸的表現であり、解剖学的事実とは異なります。実際は、「ゴーグル」全体が複眼で、黒目のように見えるのは、複眼の中の微細構造によって屈折した反射光が、観察する角度によってそのように見えるためです。マスクの下半分はトンボの口そのもの(上唇と大顎)ですし、上半分は前額という板です。また、マスクの上の黒い部分を「額飾り」と表現しましたが、それは頭盾とよばれる板で、そこには1対の小さな触角と三つの単眼があります。頭盾を三角形に見立てると、底角の位置に触角(柄の部分が写っています)が、その三角形に内接する逆三角形の各頂点の位置に、単眼(反射光でを発しているビーズ状の膨らみ)があります。これらの各パーツの機能については、後日機会をとらえてもう少し詳しく述べたいと思います。


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