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2018-03-15 (Thu)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征では、初対面の種を含む多くのトンボとの出会いがありました(関連記事はこちら)。

第五報の今回は、最初に訪れた生息地(溜池A:写真15)で観察された、ハネビロトンボ Tramea virginia (Rambur, 1842)ギンヤンマ Anax parthenope (Selys, 1839) をとりあげます。

どちらも、成熟♂が水面上を勇壮に飛び回る種ですので、見応えがあります。

それを裏返せば、くっきりとした写真を撮るのが困難で、初心者泣かせな種でもあります。

今回はISO感度5000、シャッター速度1/2000 sec、手動焦点でチャレンジしてみました。


ハネビロトンボ

11時25分、ハネビロトンボ♂が池の水面上をパトロールしはじめました。
それから30分間、私はカメラレンズをこのトンボに向け続けました。

なんとか見られる写真(写真1)が撮れたのは、約70回シャッターを押した後で、20分が経過していました。

ハネビロトンボ♂ 
写真1 ハネビロトンボ Tramea virginia (写真はクリックで拡大します)

高ISOでの撮影の上に、大幅にトリミングしていますので、ざらついた画になっています。

この♂は、沈水植物の花穂が突き出た水面上を、体を少し左に傾けながら飛んでいます。
そのため、しっかり折り畳んだ両後脚、左前翅下面が覗いています。

それにもかかわらず、頭部は左傾せず、トンボにとって左右が水平の視界を維持しているように見えます。

以下、時系列を乱さずに、写真をいつくかピックアップして掲げます。

写真2では、体が左右に傾いていませんので、前方に向って直進していることがわかります。

ハネビロトンボ♂ 
写真2 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ハネビロトンボの特徴である、幅が広がった後翅基部の赤褐色斑紋や、腹端部の黒斑を確認することができます。

写真3は、極度に体を右傾していて、急速に右ターンしようとしていることが伺えます。

ハネビロトンボ♂ 
写真3 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ピントが甘く、見えにくいのですが、頭部は水平位を保っています。

このように、飛行中ターンをする際に、頭部は水平位のままl胸部・腹部を回転方向に大きく傾ける動作は、ヤンマの類でよく見られる行動です。
同じ動作が、トンボ科のハネビロトンボで確認できるとは思っていませんでした。

写真4では、逆回りに水面上をパトロールしているギンヤンマ♂とすれ違っています。

ハネビロトンボ♂&ギンヤンマ♂ 
写真4 ハネビロトンボ Tramea virginia ♂ とギンヤンマ Anax parthenope 

どちらも、相手を意に介していないように見えます。

恋敵と誤認するには、色彩もサイズも大きく違いすぎるからでしょうか。

写真5では、体が前傾していますので、少し下向きに飛行しているのでしょう。

ハネビロトンボ♂ 
写真5 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

写真6は、斜め後ろからの姿です。

ハネビロトンボ♂ 
写真6 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

写真7では、かなり水面に近い低空を飛んでいます。

ハネビロトンボ♂ 
写真7 ハネビロトンボ Tramea virginia  同一個体

ライバル♂を遠ざけるとともに、交尾相手となる同種♀の姿を探すのが目的のこのパトロール飛行です。

浮揚植物や沈水植物の豊富な水面では期待感が高まり、より丁寧に水面を複眼でスキャンしているのかもしれません。

写真8では、高度を下げる飛行中に、右ターンをしようとしている様子が伺えます。

ハネビロトンボ♂ 
写真8 ハネビロトンボ Tramea virginia ♂ 同一個体

頭部が水平位であることも見てとれます。

写真1から写真8までいずれも同一個体、経過時間は7分間でした。

この♂は、この後、♀と出会うことなく、池から飛び去りました。


ギンヤンマ

ギンヤンマはどこにでもいる種ですので、カメラレンズで追い回すモチベーションは低かったのですが、それでも眼の前を通り過ぎると、半ば反射的にシャッターを押してしまいます。

午前10時を少し過ぎた頃、水面上を悠然とパトロールするギンヤンマ♂が目の前を通過しました。

たくさんシャッターを押した中で、最初にピントが会った写真は、なんと、真後ろからの姿となりました(写真9)

ギンヤンマ♂ 
写真9 ギンヤンマ Anax parthenope

前翅と後翅の振り上げの角度が大きく異なるのは、前後翅で位相をずらして羽ばたいているからです。

また、右前翅の後縁と右後翅の後縁に、強い歪みがあります。
おそらく、羽化直後の翅の柔らかい時期に、何か硬いものに接触したために損傷したのでしょう。


写真10は、1時間半ほど後に現れた、別個体のギンヤンマ♂です。

ギンヤンマ♂ 
写真10 ギンヤンマ Anax parthenope ♂ 別個体

おやおや、後足の脛節以下が垂れています。

この時だけ、脚を動かしていたのでしょうか?

写真11は、8分後に同一個体が、斜め前方からのよい角度でカメラに収まってくれたものです。

ギンヤンマ♂ 
写真11 ギンヤンマ Anax parthenope ♂ 写真10と同一個体

私のこれまでのギンヤンマ写真の中ではベストショットになりました。

写真11写真10のいずれの場合も、右後脚の脛節以下が垂れ下がっています。
したがって、この脚の仕草は一時的なものではなく、筋肉の損傷か何かの理由により折り畳むことができないことによるものかもしれません。

11時半には、ギンヤンマの連結産卵が見られました(写真12,13)。

ギンヤンマ連結産卵 
写真12 ギンヤンマ Anax parthenope ♂連結産卵

ギンヤンマ連結産卵 
写真13 ギンヤンマ  Anax parthenope 連結産卵。同一ペア

写真14は、産卵途中の連結ペアが場所移動をしているところです。

ギンヤンマ連結ペア 
写真14 ギンヤンマ  Anax parthenope 連結飛翔。

写真13の28分後の撮影ですから、別のペアかもしれません。

最後になりましたが、毎回掲載している生息地(溜池A)の写真を、今回も文末に掲げます(写真15)。

溜池その1 
写真15 最初の観察地(溜池A)(再掲)。

溜池Aのトンボ生息地としての特徴については、本シリーズ第一報で簡単に紹介しています。

本シリーズ、次回記事では、タイワンウチワヤンマを取り上げる予定です。


謝辞:
現地で案内して下さった飯田貢さん、高橋士朗さん、他の皆さんに謝意を表したいと思います。


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