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2014-10-18 (Sat)
9月21日に、さいたま市の樹林のある園地の大き目の池で撮影したものです。

オオヤマトンボ ♂
 ↑クリックで拡大します。

あまり写りはよくないのですが、「トンボ目の系統樹」の記事から外部リンクしている写真を、1枚でも多く自前のものに替えたいこともあり、とりあげました。

オオヤマトンボ*は、黒地に黄色い横縞模様のあるトンボですが、胸部の地色は金属光沢のある緑色となっています。複眼は内部からギラギラした緑色を反射させていて、美しいです。

本種の♂は、ギンヤンマ♂と同じように、大き目の池の岸沿いに、池をほぼ全周する形で飛び続け、♀を見つけたら交尾を試みる「飛行屋:フライヤー」です。

前回の記事のシオカラトンボの♂のように、岸にとまっていて(静止屋:パーチャー)、♂が来たら追い払い、♀が来たら交尾するという「省エネ」タイプの婚活行動ではありません。

したがって、飛行屋(フライヤー)の婚活行動はエネルギーは使いますから、池に滞在している時間は相対的に短くなります。
そのかわり、♀を探索する範囲が広くなりますから、(♀の出現確率が池のどこでも均等で、♀の滞在時間がある程度長ければ)単位時間あたりの♀に出会う確率は高くなります**。

私が若いころ研究したカラカネトンボもオオヤマトンボと同じタイプ(飛行屋型)の縄ばり行動を示しますが、占有範囲はぐっと狭くなります。ただし、カラカネトンボは池の同種♂個体数がうんと少ないときはオオヤマトンボと同じように広い範囲を往復します。
このへんの詳細は論文としては公表していますが***、このブログでも、近いうちにご紹介していきたいと思います。

さて、大きい池を、たとえば時計回りに何度も回りながら、そこを自分の縄ばりのつもりでパトロール飛行しているオオヤマトンボですが、その池のほぼ対岸あたりを同じ時計回りでパトロール飛行している別の♂がいたとしたらどうなるでしょう?

池に来たばかりの♂は、別の先着個体がすでに縄ばりを確立していて、その先住個体に追い立てをくらうことになりますが、池を2周、3周して他の個体に出会わなければ、「ここは俺の縄ばりだ」と意識するようになり、別の個体を見つけたら、「俺のなわばりから出ていけ」と突進していくでしょう。

池の反対岸にそって2匹が同方向にパトロールを続けたら、意図せずして2匹は同じ縄張りを時間差で共有していることになります。

私が長く住んでいた北海道にはオオヤマトンボは稀なため、私自身は、実際にそういう状況を見たことはありませんが、本州の方のトンボの本にはそのような例が述べられています。

しかし、そこに別の♂がやってきたりすると、♂同士の追い合いが発生し、時間差共有していたはずの♂同士が出くわす状況も出てくるでしょう。その場合はどちらも強気で自分のなわばりを守ろうとするでしょうから、追い合いの時間も長引き、攻撃(突進)の技も荒々しいものになるのではと思います。

あるいは、オオヤマトンボは縄ばりをもたずに、真の意味で他の♂とその婚活グラウンドを共有しているのかもしれません。

どれが正解なのか、あるいはもっと別の婚活社会となっているのか、それを明らかにするためには、私がカラカネトンボでそうしたように、トンボの翅に個体識別のマークをつけて、行動の連続観察を積み重ねることから始める必要があるでしょう。

注:
*オオヤマトンボ(Epophthalmia elegans)はヤマトンボ科に属します。エゾトンボ科とともに、トンボ科と近縁です。したがって、トンボ目の進化系統の中では比較的新しい時代に現れたグループの一員です。学名のうち、属名には「眼球が突出した」という意味があるようですが、私にはピンときません。種小名はそのものずばりで、「エレガントな」です。
ヤマトンボ科は池上空でのライバルであるヤンマ科よりも色彩が地味で、そこが逆にマニアにはたまらないという面があるようです。いわば、いぶし銀の魅力ということなのでしょう。

**Ubukata, H. (1986). A model of mate searching and territorial behaviour for “flier” type dragonflies. Journal of Ethology, 4(2), 105-112.

***Ubukata、H.(1975); Life history and behavior of a corduliid dragonfly, Cordulia aenia amurensis Selys. II. Reproductive period with special reference to territoriality. J. Fac. Sci. Hokkaido Univ. Ser. 6, Zool., 19 (1975), pp. 812–833


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