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2018-04-04 (Wed)
夏日が予想された今日の昼前、快晴のもと、さいたま市内の公園2カ所を回りトンボ探しをしました(トンボ撮影時点でのアメダス気温は24℃前後(この日の最高気温は15~16時台に26℃越え)。

比較的広い園地内のいくつかの池を一通り巡り、終点にしていた真夏にはガマ属の植物が生い茂る浅い池(写真1)を半分回り、「まだトンボは出ていないか・・・」と半ばあきらめかけた時、足元から小さなイトトンボがフルフルと舞い上がりました。

アジアイトトンボを観察した公園の池 
写真1 今シーズン最初のトンボが観察された池(さいたま市の公園内)(写真はクリックで拡大します)

羽化してまだ日が浅いテネラル成虫独特の飛び方です。

見失うことなく、岸にほど近い枯草にとまるところを確認することができました。

カメラを構えそーっと近づきました。

そこにいたのは、私にはすっかりお馴染みの種となった、アジアイトトンボ Ischnura asiatica (Brauer, 1865) の♂です(写真2)。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真2 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂

上の写真が、焦点リングを微妙に動かしながら50回シャッターを押した中の、ベストショットです(ISO=640、1/200、f=13、FL=250mm)。

下の写真は、同じ個体を少し前方から撮ったものです(撮影時点はこちらが先)。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真3 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂、同一個体

黒い鼻の下に黒いチョビ髭の顔と、対面です。

おや、足もとに何か、小さな虫が・・・・。

拡大すると。。

アジアイトトンボ♂未熟個体とゾウムシ 
写真4 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂(同一個体)の足下のゾウムシ

どうやらゾウムシの一種のようです。

このトンボを、もっと接近して短焦点マクロで撮影しようと近づいたところ、飛び立って空高く舞い上がってしまいました。


成熟に伴う色彩変化(異なる時期間の比較)

さて、一見して未成熟な色彩や硬化度を見せていたこの個体ですが、成熟個体とどう違うのでしょうか?

トンボ図鑑やトンボ専門ブログには、成熟に伴う色彩変化が述べられていることが多いですが、この際、自分がこれまでに撮影した写真同士を比較して、その違いをこの眼で確かめたくなりました。

まずは、今回撮影したアジアイトトンボ♂(羽化後、日の浅い個体)の写真2を下に再掲します。

アジアイトトンボ♂未熟個体 
写真2 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂(再掲)さいたま市、4

比較対象は今回の個体に加えて、以下の2個体です。

(1)埼玉県上尾市で6月に撮影したアジアイトトンボ♂(ある程度成熟が進んだ個体)(写真5)(登場ブログ記事はこちら

アジアイトトンボ ♂
写真5 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂ (再掲) 上尾市、6月 

(2)関東北部で9月に撮影したアジアイトトンボ♂(かなり成熟が進んだ個体)(写真6)(登場ブログ記事はこちら

アジアイトトンボ♂
写真6 アジアイトトンボ Ischnura asiatica ♂ (再掲) 関東北部、9月

複眼の色彩:
複眼の背面は、さいたま市4月の個体では、乳濁した茶紫色;上尾市6月の個体では、透明感茶紫色;関東北部9月の個体では、焦げ茶色。

複眼の側面は、さいたま市4月の個体では、乳濁した紫;上尾市6月の個体では、やや透明な白っぽい薄紫;関東北部9月の個体では、薄い黄緑色。

胸部の色彩:
胸部淡色部の地色は、さいたま市4月の個体では、紫がかった水色;上尾市6月の個体では、薄い水色;関東北部9月の個体では、薄い黄緑色。

脚の腿節背面の黒斑は、さいたま市4月の個体では、まだ薄い;上尾市6月の個体では、はっきり黒化、ただし小斑(地理変異?);関東北部9月の個体では、はっきりとした黒色。

翅の色彩:
翅脈は、さいたま市4月の個体では、淡褐色;上尾市6月の個体では、黒色;関東北部9月の個体では、黒色、ただし前縁脈などは淡褐色。

縁紋は、さいたま市4月の個体では、灰色;上尾市6月の個体では、黒色だが周辺が少し灰色、ただし後翅の縁紋は灰色で中央が黒い;関東北部9月の個体では、黒色。

腹部の色彩:
腹部第9節背面は、さいたま市4月の個体では、灰色がっかった薄青紫;上尾市6月の個体では、ややくすんんだ薄紫味のある白色;関東北部9月の個体では、澄んだ水色。


成熟に伴う色彩変化のまとめ

以上の比較結果をまとめる前に、押さえておくことがあります。

アジアイトトンボは年に2化以上することが分かっていますので(尾園ほか、2012)、4月、6月、9月の出現順は、必ずしも羽化後の経過日数が短い順とは限りません。

また、同じ関東地方とはいえ、撮影場所が異なりますので、体色に関して地域変異が存在する可能性があります。

更に同じ撮影場所、つまり同一個体群内に、色彩の異なる遺伝子型が複数存在することがありえます。

実際、黄緑色が普通のアジアイトトンボ♂の中に、青色型も存在することが知られています(杉村ほか、1999)

カメラは同じカメラを用いましたが、撮影条件、現像条件、パソコン画面の性能の差などによっても、色彩は微妙に異なりえます。

さて、本論に戻ります。

複眼の色彩を見ると、どの種でも未成熟個体に見られる傾向である、乳濁感が4月→6月→9月の順に消失していきますので、この順に成熟度が進んでいることが強く示唆されます。

したがって、複眼背面の濃褐色、側面の黄緑色は、成熟が進むことによって発現してくるようです。

胸部淡色部の地色は、薄い水色だったものが、成熟が進むことによって薄い黄緑色へと変化するようです。

翅脈は、淡褐色だったものが、成熟が進むことによって黒色になっていきます(これは多くのトンボの種に共通)

縁紋は、灰色だったものが、成熟が進むことによって黒色になっていきます(これも多くのトンボの種に共通)

腹部第9節背面は、灰色がっかった薄青紫ったものが、成熟が進むことによって、澄んだ水色になっていくようです。

このことは、アジアイトトンボ♂が成熟すると、複眼側面や胸部側面が黄緑色になるのに対し、腹部第9節背面は澄んだ水色になるという、目立つ色をコーディネートさせる形で「変身」することがわかります。


引用文献

尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012) 『日本のトンボ』 文一総合出版。

杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司 (1999) 『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』。北海道大学図書刊行会。


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