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2018-04-11 (Wed)
前々回記事「四国トンボ巡礼(8): タイワンウチワヤンマ、トラフトンボなどヤゴ3種」の中で、「タイワンウチワヤンマ幼虫に不思議な穴!」との見出しをつけ、タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax (Hagen in Selys, 1854)幼虫写真4)の腹端近くの腹節に大きな穴(写真6、7)があるが、どうやって開いた穴だろうかと問題提起をしました。


目 次
◆昆虫エキスパートの眼力は、「穴」を「コミズムシ類」へ、更に「マルミズムシ」へと進化させる
◆ヒメマルミズムシに似ているけれど
◆小さな虫だからといって侮るべからず
◆マルミズムシ類の、タイコウチ下目の中での系統的位置
◆引用ウェブ頁
◆謝辞


タイワンウチワヤンマ幼虫 
写真4(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫

タイワンウチワヤンマ幼虫の腹端部(穴が開いている) 
写真6(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(写真4の部分拡大)

タイワンウチワヤンマ幼虫の腹端部(穴が開いている) 
写真7(再掲) タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(別個体ではなく同一個体の部分拡大)


昆虫エキスパートの眼力は、「穴」を「コミズムシ類」へ、更に「マルミズムシ」へと進化させる

そのブログ記事をフェイスブックで告知したところ、その日のうちに、松山探虫団の飯田貢さんから、
「タイワンウチワヤンマの腹部の穴ですが、拡大してみるとコミズムシ類の頭部に見えますね。写真6では脚が見えています。」
とのコメントがありました。

飯田さんと私との間の、コメント欄でのその後のやりとりの要点を、以下に紹介します。

私:「何かが付着しているという線もブログ記事作成中に念頭にありましたが、写真5、写真7では穴の向こうにたも網の繊維が見えているようにも解釈できたのですが。写真6では、ヤゴの表皮(クチクラ)の穴の縁が修復によって丸く縁取りされているようにも見えます。」

飯田さん:「『穴の縁』がどの部分を指すのか分かりません。コミズムシの複眼に白い反射(キャッチ光)があるのは、球面体でヤゴの背中面より手前にあるからだと思います。そして撮影角度での光の移動からも立体物にしか見えません。」

私:「問題のタイワンウチワヤンマ幼虫(写真4写真6))で、穴の縁と思われるところ(コミズムシで隠れている斜め左下の部分にも)に、青い点線を引いてみました(写真A)。いかがでしょう?」

タイワンウチワヤンマ幼虫の穴?それとも 
写真A タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax 幼虫(写真6の部分拡大)

飯田さん:「私の眼には穴が開いてるようには見えません。ただ何度もみてるうちに複眼の形や色からマルミズムシではないかと思い始めました。水生植物が多い開けた池という生息環境も一致します。」

私:「青い点線に囲まれた卵円形(白っぽい)の部分(写真A、左)は飯田さんから見ると何になりますか?ミズムシの体部?、水滴?、それとも。。」

飯田さん:「マルミズムシの右側面に見えます、右斜め上を向いていて赤茶色委部分が複眼、左下側にオールのような後脚がみえています。」

私:「マルミズムシでしたか! 確かに下記リンクを見ると腹面は白くて丸いし、縁もそれらしいです。貴重なご指摘を有難うございました。

私:「マルミズムシで画像を検索してみました。ヒメマルミズムシ Paraplea indistinguenda(体長:1.5~1.8mm)が一番似ているでしょうか?」

私:「下のリンク(ヒメマルミズムシ Paraplea indistinguenda についての韓国語の解説記事)の上から7番目の写真と、私のブログのタイワンウチワヤンマ幼虫の『穴』を見比べると、見れば見るほど穴には見えなくなり、この小さなマルミズムシの眼と口器と脚が生き生きと浮き上がりました。

私「他にも、以下のようなヒメマルミズムシ関連リンクがありました。




フェイスブックでの飯田さんと私との間の、本件についてのコメントのやりとりは以上です。


ヒメマルミズムシに似ているけれど

その後、私の方で、改めてリンク1~5のマルミズムシ類の画像と、タイワンウチワヤンマに付着した小昆虫の像とを見比べてみたところ、以下のことが確認できました。

リンク2(ヒメマルミズムシ)の、横から見た個体で、右複眼、口器、頭部が乳白色であること、および後脚の形状が、写真6の付着小昆虫のそれらと一致する。

・ただし、写真6の小昆虫では、肩から後方の腹面、側面も柔らかそうな乳白色だが、リンク2(ヒメマルミズムシ)では硬化した茶褐色である。

・この違いの原因は、写真6の小昆虫では、このマルミズムシが捕食を受けて肉質部が露出しているためかもしれない。

リンク3(ヒメマルミズムシ)は、背面全体(翅の背面を含む)も灰白色であり、写真6、7の小昆虫と一致する。

リンク4(ヒメマルミズムシ)は背、面全体(翅の背面を含む)も灰白色であること、および体が非常に小さいことも、写真6、7の小昆虫と一致する。

以上のように、ヒメマルミズムシに似ていますので、それだと断定したいところですが、同属の別種マルミズムシ Paraplea japonica の特徴との、あるいは同じ科の別の種があったとしてその種の特徴との照合がほとんどできていませんので、ここでは、タイワンウチワヤンマに付着していた水生カメムシマルミズムシ属の1種 Paraplea sp.であった、とするに留めておきます。


小さな虫だからといって侮るべからず

マルミズムシは体長1.5~1.8mm、マルミズムシは体長2.3~2.6mmといずれも小さく(レッドデータブックとちぎのウエブサイト)、といずれも非常に小型で、ミズムシ科のミズムシHesperocorixa distanti(体長11mm前後)を見慣れた私にとって見破るのは至難の業といいたいところです。

今回の私の判定ミスからの教訓は、「先入観、思い込みによって、観察がゆがめられることが大いにある。」ということです。

この教訓は、「ある現象や出来事の原因を、自分がこだわっている何か一つの特定の考えだけに求めるのではなく、同じような現象や出来事を生じうる、あらゆる可能な原因をしらみつぶしするように調べ、事実や実験結果で検証する姿勢が大切である」という科学者の基本姿勢にも共通しているように思います。


マルミズムシ類の、タイコウチ下目の中での系統的位置

以上の結論が得られたところで、コミズムシ類マルミズムシ、更にミズムシは、水生カメムシ目の中でどのような系統的位置(=分岐分類における位置)を占めているのかが気になりましたので、ネット検索により調べてみました。


それによれば、マルミズムシ類ミズムシ科 Corixidae ではなくマルミズムシ科 Pleidae (下の写真)に属していました。

Plea minutissima photo by Didier Descouens 
マルミズムシ科Pleidaeに属する、Plea minutissima (再掲)(Photo by Didier Decouens; Source, Wikipedia)

マルミズムシ科は、タイコウチ科 Nepidae やコオイムシ科 Belostomatidae よりはミズムシ科に近縁(時代的により後に系統ば分岐した)ですが、マツモムシ科 Notonectidae により近縁であるという意外な系統関係があることを知りました。

それ以外に、扁平な、コバンムシ科 Naucoridae  やナベプタムシ科 Aphelocheiridae なども、ミズムシ科よりはマルミズムシ科に近縁とされているのも、意外性があります。


引用ウェブ頁:

源五郎:辺の生き物彩々
http://gengoroh.seesaa.net/article/379954673.html 【リンク1

ヒメマルミズムシ、韓国語WebPage 
https://m.blog.naver.com/PostView.nhn?blogId=nstdaily&logNo=150046483138&proxyReferer=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2F 【リンク2

イッケー:日本産淡水魚の世界へようこそ:ヒメマルミズムシ
http://www.geocities.jp/tansuigyo_ofi_kke/KonntyuuHimemarumizumusi.html【リンク3

魚部@西表島本おもろそう!:ヒメマルミズムシ(左・福岡県産)とホシマルミズムシ(右・沖縄県産)
https://twitter.com/gyoburou1998/status/911949503518740485 【リンク4

レッドデータブックとちぎ:ヒメマルミズムシ
http://www.pref.tochigi.lg.jp/shizen/sonota/rdb/detail/18/0154.html

uni2:淡路島の生き物たち3:池・川 昆虫(2)
 http://uni2008.web.fc2.com/htm/ike.kontyuu2.html 【リンク5


謝辞

タイワンウチワヤンマの表皮に見られた異質な部分はマルミズムシ類であるということをご指摘いただいた飯田貢さんに、謝意を表したいと思います。


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