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2018-04-20 (Fri)
本シリーズの前回記事(こちら)では、交尾相手を求めるホソミイトトンボ Aciagrion migratum (Selys, 1876)の♂たちの行動について取り上げました。

今回の第2報では、最初から最後まで継続観察することができた、ホソミイトトンボの交尾について詳しく報告します。

※ ホソミイトトンボの交尾については一昨年、別の生息地で断片的に観察していて、その際、♂が翅を少し開いたままにしていることに着目してブログ記事(こちら)にしています。

前回記事で単独♂の体清掃行動を取り上げましたが、その行動の観察を終えた2分後、少し離れたところの草に、連結した♂・♀のカップルがぶら下がっていました。

これから交尾をしてくれることを期待してカメラを構えると、動きがありました(写真1)(11時20分42秒)。

ホソミイトトンボ、交尾直前1 
写真1 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(1)(写真はクリックで拡大)

♂が少し腹をカーブさせて、♀の体をリフトし始めていて、♀はそれに呼応するかのように、自分の腹部を大きく曲げて、腹先を前上方に挙げようとしています。

カップルは連結したまま飛び立ち、少し移動して別の草(スギナ)にとまり替えました(11時20分54秒)。

カップルは再び交尾を試み、一度は外見上交尾リングが形成されました(交尾器がうまく結合されていない仮リングと思われます)(11時21分10秒)。

この仮リングはすぐに分離しましたが、カップルはまたも交尾を試みます(写真2)(11時21分12秒)。

ホソミイトトンボ、交尾直前2 
写真2 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(2)

♂は、写真1の瞬間よりも高く♀を吊り上げ、♀は腹部第3節と4節の間を強く折り曲げ、腹先を前ぐっと上に挙げています。

♂は更に強く腹を曲げて♀を吊り上げて、交尾リング形成を狙います(写真3)(11時21分14秒)。

ホソミイトトンボ、交尾直前3 
写真3 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(3)

そのすぐ後に、2回目の仮リング形成がありました(写真4)(11時21分14秒)。

ホソミイトトンボの交尾直前、2回目の仮リング 
写真4 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(4)

ただし、写真4の仮リングは、♀の腹端(したがって生殖口も)の右側面が、♂の腹基部の左側面に軽く接している状態ですので、的が外れています。残念ながら。

そこへ他の単独♂が画面左方向から接近してきました(写真5)(11時21分16秒)。

ホソミイトトンボの交尾直前、2回目の仮リングが離れる 
写真5 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(5)

そのせいでしょうか、仮リングが少し分離してしまいました。

カップルは、これに懲りずに交尾の試みを再開し、3回目の仮リングが形成されました(写真6)(11時21分20秒)。

ホソミイトトンボの交尾直前、3回目の仮リング 
写真6 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(6)

その仮リングもまた分離してしまいました(写真7)(11時21分22秒)。

ホソミイトトンボの交尾直前、3回目の仮リングが離れる 
写真7 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(7)

♂が疲れたのか、♀を吊り上げていた腹の筋肉をいったん少し緩めました(写真8)(11時21分26秒)。

ホソミイトトンボの交尾直前、3回目の仮リングの直後 
写真8 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(8)

♂・♀とも、気を取り直したのでしょう、また仮リングを成立させました(写真9)(11時21分30秒)。

ホソミイトトンボの交尾成功直前 
写真9 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(9)

この仮リングでも、♀の腹端は♂の腹基部の側面に接しています。

その後の♀による腹部押し当て位置の「調整」が功を奏して、ようやく交尾リングが成立しました(写真10)(11時21分44秒)。

ホソミイトトンボの交尾成功直後 
写真10 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾試行(10)

この交尾リングは順調に持続し、その間も♂は翅を半開きにしたままですが、♀の翅はとじられています。

※交尾中のホソミイトトンボ♂の翅の半開きの意味については、こちらの過去記事で若干の考察を加えています。

写真10の時点以降も観察を継続しました。
その間、単独♂の接近と通過などもありました。

交尾中のトンボ、とりわけ均翅亜目では、♂が腹基部をリズミカルに上下させる動きを見せることが多いことが知られています。

そろそろそのリズミカルな動きが見られるのではないかとの期待のもと、この交尾中のカップルの様子を動画に収めました(動画1:Youtubeにアップロードしたファイルにリンク)(11時24分40秒~25分04秒)。


わずかな腹の動きはありますが、リズミカルな動きは録画中には確認できませんでした。

それとは別に、動画の最後のほうでは、左から風が吹いて、とまっていたスギナもホソミイトトンボ♂の腹部から後が♀の体ともどもあおられている様子が見て取れます。

写真11も同様に風が吹いて、このカップルがあおられています(写真11)(11時25分22秒)。

ホソミイトトンボの交尾中、風にあおられる 
写真11 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾

写真11では、たまたま、単独♂が右から接近していましたが、とくに掴みかかるでもなく通り過ぎました。

ここで再びカメラを動画モードに切り替えて撮影したところ、録画開始直後に突然交尾が分離して、連結姿勢でぶらさがる形になりました(動画2:Youtubeにアップロードしたファイルにリンク)(11時31分41秒~31分46秒)。

写真12は、その、ぶらさがった状態のままの連結ペアです(11時32分18秒)。

ホソミイトトンボの交尾中断 
写真12 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾中断

これで交尾は終わりかと思って見ていると、なんと再度交尾しようと、♂・♀とも腹を曲げ始めました(写真13)(11時32分20秒)。

ホソミイトトンボの交尾中断後の動作 
写真13 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾中断後の動作

そして、割合スムースに再度交尾リングが成立しました(11時32分32秒)。

写真14は交尾リング再成立から1分48秒後のカップルです。

ホソミイトトンボの再交尾 
写真14 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の再交尾(1)

ここにきて、ようやく♂は腹基部のリズミカルな動きを見せてくれました。

写真15写真14の42秒後のカップルです。

ホソミイトトンボの再交尾中の動作1 
写真15 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の再交尾(2)

写真14写真15を見比べると、腹基部のリズミカルな動きを作り出すように、♂の腹部第3節が大きく背腹方向(上下方向)に動いていることがわかります。

このリズミカルな動きのテンポ(繰り返しの頻度)は、測ってはいませんが、1~2秒に1回程度のものです。

※ このリズミカルな♂の腰の動きは、♂の副交尾器(ペニス)の♀の生殖器(膣)の中でのピストン様運動をもたらし、それにより、♀の膣の最奥部にある交尾嚢、さらにはそれに付随する受精嚢の中にある、以前の交尾で注入された他の♂の精子をペニスの先端の鈎状構造を利かして掻き出す機能(精子置換)を持ちます(詳しくは、こちらの過去記事を参照)(更に詳しくは、Corbet 1999の日本語版[椿ほか監訳、2007]を参照)。

約20分間にわたり連続観察の対象になっていたこのカップルは、突然、交尾リングを解き(11時39分38秒)、すぐに飛び立って連結態のまま、すぐ近くの水辺へと飛んでいきました。

写真16は、水辺の枯草にとまったそのカップルです(11時40分48秒)。

ホソミイトトンボの交尾後の連結1 
写真16 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾後連結

♀は一応産卵姿勢をとっていますが、「こんなに乾いて硬いところに産みたくないヨ」という声が聞こえてきそうです。

案の定、♀の産卵器はツルリと滑ってこの枯草の茎からそれてしまいました(写真17)(11時40分50秒)。

ホソミイトトンボの交尾後の連結2 
写真17 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum の交尾後連結(2)

このカップルが適切な産卵基質にたどりつくのを見届けないまま、私は11時42分にこのカップルの観察を打ち切りました。

その打ち切り前の最後のショットには、前回記事で紹介した「単独♂のこのカップルの♂の腹部への一時的掴みかかり」というアクシデントがありました(写真18)(11時42分)。

ホソミイトトンボ単独♂が連結♂に一瞬つかみかかる 
写真18 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 単独♂が連結♂に一瞬つかみかかる(再掲) (この写真のみ、クリック拡大なし)

このあと、11時49分からは、同じ水辺でホソミイトトンボの(おそらく別カップルによる)産卵行動を観察・撮影することができました。

それについては、次回記事でご紹介します。


引用文献:

Corbet, P.S. (コーベット, P.S. )(1999著)、椿宜高・生方秀紀・上田哲行・東和敬、監訳(2007)『トンボ博物学―行動と生態の多様性ー』。海游舎。


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