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2018-04-26 (Thu)
本シリーズの過去2回の記事では、ホソミイトトンボ Aciagrion migratum (Selys, 1876)の単独♂の探雌行動(こちら)と、1カップルが見せてくれた交尾の一部始終(こちら)について報告しました。

今回の第3報では、ホソミイトトンボの産卵行動について報告します。


目 次
◆交尾直後の連結カップルの行動(再掲)
◆連結産卵をじっくり見る
◆ちょっとお邪魔します(?)
◆♀はなぜ腹を強く曲げる?
◆ちゃっかり翅先につかまる♂
◆連結産卵の動画
◆産卵中のちょっとした出来事
◆産卵場所の環境


交尾直後の連結カップルの行動(再掲)

前回記事で観察した交尾カップルは、精子置換と新たな精子注入がうまくいったのでしょう、突然、交尾リングを解き、すぐに飛び立って連結態のまま、すぐ近くの水辺へと飛んでいき、水辺の枯草にとまりました(再掲)(写真1)。

ホソミイトトンボの交尾後の連結1 
写真1 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum、交尾を終えて移動し、水辺にとまる。(再掲)(写真はクリックで拡大します)

♀は一応産卵姿勢をとっていますが、「こんなに乾いて硬いところに産みたくないヨ」という声が聞こえてきそうです(既報)。

案の定、♀の産卵器はツルリと滑ってこの枯草の茎からそれてしまいました(再掲)(写真2)。

ホソミイトトンボの交尾後の連結2 
写真2 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum交尾を終えて移動し、水辺にとまる。(再掲)

このカップルの観察はこの少し後で打ち切りましたが(既報)、その後、適切な産卵基質を見出して♂・♀が力を合わせて卵をその中に産み付けたはずです。


連結産卵をじっくり見る

前述の交尾直後カップルの行動観察を打ち切り、別のカップルでよいから実際に産卵しているホソミイトトンボはいないかと、水辺を見て歩きました。

11時49分には、その水辺で、本種の産卵行動を観察・撮影することができました。

交尾が観察されたカップルなのか、それとも別のカップルなのかは定かではありません。

2組のカップルの近接状態での産卵が見られましたので、その2組のうちの1組は交尾観察の対象となったカップルかもしれません。

以下、産卵行動中の様ざまな動きから、「これは」というシーンを抜き出してご紹介します。

写真3は、カップルが、水面に浮いた細い枯れ枝に密着して浮いている小さな枯葉に、産卵している(しようとしている)ところです。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真3 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

♂は、体を真っ直ぐに伸ばして直立し、バランスをとるためか、翅をわずかに震わせています。

この後、この小さな枯葉はカップルを乗せたまま、画面右方向に少し漂いますが、産卵は続いています(写真4)。

ホソミイトトンボ連結産卵
写真4 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

それでも、この小さく不安定な薄い葉への産卵は難儀だったのか、カップル(カップルAとします)は飛び立ちました(写真5)。

ホソミイトトンボ:産卵基質間を移動飛行中のペア 
写真5 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 産卵基質間を移動飛行中のカップル

カップルAは、今度は少し大き目な浮き枯れ枝(写真6の右)にとまり、そこで早速産卵を開始しました。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真6 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

すぐ隣(向って左)の浮き枯れ枝でも別カップル(カップルB)が産卵中です。


ちょっとお邪魔します(?)

10秒ほどすると、カップルBが飛び立ち、カップルA(右)に急接近しました(写真7)。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真7 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

カップルAも、たまらず飛び立ちました。

直後に、2カップルともまた同じ浮き枯れ枝にとまり(写真8)、後方のカップル(カップルB)から先に産卵を開始しました。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真8 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

少し前方に押しやられた形のカップルAも産卵を再開し、2組同時進行の産卵シーンとなりました(写真9)。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真9 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

カップルA(画面右側)の雌の腹部は極端に折り曲げられて、胸部の直下に近いところで産卵管を突き刺しています。


♀はなぜ腹を強く曲げる?

ここまで書いていて、ふと疑問が生じました。

なぜ、♀は腹端と胸元がちかづくまでに、こんなに強く腹を曲げる必要があるのでしょう?

(1)このように強く曲げたほうが、産卵管を硬い産卵基質に突き刺す力が強まるからでしょうか?。

バネも強く曲げることで、バネが真っ直ぐに戻ろうとする力がより強まりますので、少なくとも曲がる度合いにおいてはホソミイトトンボのケースも該当します。

ただし、トンボの場合は、バネが戻る力ではなく、前後の腹節の間にまたがって体軸方向に配置された縦走筋群を収縮させることで生じる力が腹端をはじき返す力を生むと考えらえます。

(2)あるいは、産卵基質が限られていて、多くの産卵カップルが狭い範囲に密集するために、カップル間の接触を避けるために産卵♀が腹を強く曲げるのでしょうか?

(3)はたまた、♀が腹を強く曲げたほうが、直立した配偶者♂のバランスをとりやすいのか?

以上(1)~(3)のどれが当たっているのか、それとも全部はずれなのかは、今後の注意深い観察で絞られていくのではと思います。


ちゃっかり翅先につかまる♂

話は換わりますが、写真9で、手前(右)のカップルの♂に注目すると、なんと雌の左前後翅の先端に脚を伸ばしてちゃっかり掴まっています。

それでバランスがとれているためなのでしょう、♂の翅のバタつきが写っていません。

それでは話が出来すぎ。もう1組のカップルの♂はつかまっていないのに、それでも翅に動きがありません。

それはともかく、このように♀の翅先に掴まることができるのも、腹を強く曲げた産卵♀が、頭部・胸部を人間の逆立ちの場合と同じくらい倒立させているからこそです。

今後も、このようなときに、♂が脚でよく掴まるのか(他種を含めて)注目したいと思います。

いったん、このカップルの行動から目を離し、他に何か変わった出来事はないかと、水辺を見まわすと、大量のオタマジャクシの塊が目に入り、撮影しました(写真16)。


連結産卵の動画

その後、同じ水辺の別の浮き枯れ枝に産卵中のホソミイトトンボのカップル(カップルA,Bとの異同は不明)に注目し、静止画に加えて、動画も撮影しました(11時53分)(動画1Youtubeにアップロードしたファイルにリンク)。

この動画から、以下のような行動の特性が読み取れます。

◆♀は産卵器のある腹部末端2節を産卵基質に押しあてながら、産卵管を突き刺すのに適した部位を探る。
◆♀は背中に♂を肩車のように乗せながら、脚を動かして胸部を前後に移動させ、腹端部の動きに連携させる。
◆♂は、そんな♀の必死の作業の助けになるように、自分の腹部の曲げ伸ばしを調節したり、翅を震わせて重心のバランスをとっているようにうかがえる。


産卵中のちょっとした出来事

この後も、ホソミイトトンボの連結産卵にカメラを向け続けました。
その中から5点、写真を掲げておきます(写真10~14)。

まずは、産卵基質として選択した浮き枯葉に着陸(着水)の直前のカップルです(11時54分)(写真10)。

ホソミイトトンボ:産卵基質に着陸(着水)の直前 
写真10 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 産卵基質に着陸(着水)の直前のカップル

その浮き枯葉で産卵を開始しました(写真11)。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真11 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

この♀も極端に腹部を曲げています。

今度は浮き枯れ枝に比べて産卵基質としてそれほど硬くなさそうですので、産卵管に力を入れるために強く曲げるという仮説には若干不利な事実を提示しています

柔らかい基質で腹を強く曲げてはいけないということにはなりませんので、この観察だけで仮説が棄却されることにはならないでしょう。

それに、この枯葉も樹皮ほどではなくとも、その表皮はまだまだ硬い部類に属するのかもしれません。

いずれにせよ、いずれかの仮説に確証を与えるためには、多くの対立仮説の上での観察の積み重ね、更には検証実験が必要となるでしょう。

それはともかく、話を戻すと、この浮き枯葉での産卵は長続きせず、カップルは飛び立ちました(写真12)。

ホソミイトトンボ:産卵基質を飛び立ったペア 
写真12 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 産卵基質を飛び立ったカップル

今度は、浮いた枯草の茎のようなものの先端にとまって産卵です(写真13)。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真13 ホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結産卵

そこにアメンボの交尾カップルが漕ぎ寄ったので、ホソミイトトンボのカップルは危険を避けるかのように飛び立ちました。

ホソミイトトンボ連結産卵 
写真14 アメンボの接近に飛び立つホソミイトトンボ Aciagrion migratum 連結カップル

このシーンをドラマの結末とするかのように、私のこの池でのホソミイトトンボの観察を打ち切りました(11時55分)。


産卵場所の環境

本種の成虫の雌雄の出会い、そして交尾や産卵の活動が見られた水辺の、水面や岸の草の状況を写真15として再掲しておきます。

ホソミイトトンボの交尾産卵が見られた溜池の水辺 
写真15 ホソミイトトンボ 成虫の活動が見られた水辺

前述のように、この堤体から手の届く距離に、大量のオタマジャクシが群れていました(写真16)。

トンボ産卵場所のオタマジャクシ 
写真16 ホソミイトトンボの産卵場所のオタマジャクシ

半透明のゼリー状の粒の塊の中には孵化していない黒い小さな幼生も見えていますので、カエルの卵塊にこの大量のオタマジャクシがまだ執着している状態であることが伺えます。

どの種類のカエルの幼生なのかは、現時点では確認できていません。

堤体のコーナー部分には大きな鯉の姿もありました(写真17)。

トンボ産卵場所の鯉 
写真17 ホソミイトトンボの産卵場所の鯉

ホソミイトトンボは産卵していますが(そして昨春にはホソミオツネントンボ Indolestes peregrinus (Ris, 1916)  の産卵[当該記事はこちら]も見られましたが)、これらトンボの孵化した幼虫が羽化して出るまでの間に、このような鯉や貪欲な外来動物の餌食になることから免れることができるのか、楽観は許されません。

次回記事では、越冬明けの1頭のホソミイトトンボへの応援メッセージを取り上げます。


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