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2014-10-21 (Tue)
トンボの♂にとって、「交尾したら、その♀とはバイバイし、また別の♀の尻を追いかける」というのは、永久の理想かもしれません*。

オオシオカラトンボの産卵警護の記事でも、ギンヤンマアキアカネの連結産卵の記事でもお話したとおり、♂はなかなかそうはいかず、交尾した後は、その♀に付き添います。

すでにお話したように、他の♂に言い寄られないうちに少しでも多くの卵をうませようという魂胆からです。交尾直後の♀は♂にとって自分の精子で受精した卵を産む確率が非常に高いからです。
他の♂と交尾してしまうと、自分の精子は他の♂の交尾器(ペニス)によって、その♀の交尾嚢や受精嚢から掻き出されるか、奥へ押し込まれるかするので、そうはさせまいと他の♂から♀をガードするというわけです。

キタイトトンボの産卵
 ↑クリックで拡大します。

上の写真**のキタイトトンボ***の♂も、イトトンボ科の大多数の種と同様に、連結産卵をします。

♂は、池で♀を見つけると連結し、草にとまった状態で交尾します。
交尾を解いた後、カップルは連結(タンデム:直列の状態)で水面上を飛び回り、産卵できそうな植物を見つけると、それにとまります。
とまったらすぐに、♀は腹部を上げ下げして、腹端で植物表面を探り****、産卵できそうなら産卵し、そうでない場合は翅をばたつかせたりして♂に移動を促します。

上の写真の♂は、♀が腰を落ち着けて産卵をしている際のものです。
このとき、♀には足場があるのに♂には足場がない場合は、♂は写真のように♀と連結したまま、体を直立させ、じっとこらえる姿勢*****をとります。

腹部の各節の背筋と腹筋(正確には、それぞれに縦走筋)をすべて収縮させないと、筋肉のゆるんだところで体が重力によって下側に曲がりますから、力が入ります。
普段から「筋トレ」をしていないとできないのではないでしょうか!

トンボの世界からも、「男はつらいよ!」という声が聞こえてきそうです。

注:
*この理想を実現して、ハーレムのように数匹の♀と次々に交尾し、まとめて警護するトンボの種があります。これについては、近いうちに記事にしたいと思います。

**北海道の釧路湿原周辺の湿地の池で、7年前の6月中旬に撮影しました。

***キタイトトンボの学名はCoenagrion ecornutumですが、属名の語幹のagrion は開けた野外に住むものという意味で、。接頭辞のcoen(o)-は共通の、普通の、を意味します。本種は、ロシア、北朝鮮、日本(北海道のみ)に分布します。北海道では、よく同種のエゾイトトンボと同じところでも見つかりますが、本種のほうがやや小型で細身、そして胸が黄緑がかっているのがパッと見での区別点です。

****産卵する際に植物組織の中に差し込む産卵管の位置は、体の後端近く、そして腹側(背側でなく)にありますから、トンボの視野がいくら広いからといっても、ほぼ死角に入り、産もうとしている♀自身からはほとんど見えていないでしょう。
したがって、産卵管が産卵に適した材質の丁度よい位置に押し当てられているかどうかは、触覚がたよりです。
トンボの産卵器の記事で説明したように、産卵弁側片の先端には尖突起があります。その突起の先には感覚毛も生えていて******、そこにあたっている植物体の表面の硬さや組織全体の弾力性、そして凹凸などを感じ取るに違いありません。

*****この♂の姿勢を「歩哨姿勢」といい、♂のための足場のない場所のほかに、他のペアで込み合って足場がとれない産卵場所で産卵できるなどの利点があります(コーベット著『トンボ博物学』、29頁参照)。
中には、歩哨姿勢をとっている最中に、何者かに胸から上を食いちぎられて即死してしまう♂もあります。それでも♂の尾部付属器はガッチリと♀の胸をつかんだままで、♀は夫の死に気づかずに産卵を続けることすらあります。

******Matushkina N. A., Lambret P.H. (2011) Ovipositor morphology and egg laying behaviour in the dragonfly Lestes macrostigma (Zygoptera: Lestidae). International Journal of Odonatology. 14: 69–82


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