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2018-08-06 (Mon)
今年6月上旬に栃木県の農村部の溜池群を訪れ、トラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883) (初対面)ほか数種類のトンボを観察することができました。

今回は、その第2報として、トラフトンボの なわばり争いをレポートします(シリーズ記事一覧はこちら)。

今回の観察地の特徴については、前回記事をご参照ください。

目 次
 ◆トンボの なわばり争い行動
 ◆トンボのパトロール飛行
 ◆トラフトンボのパトロール飛行
 ◆なわばり争い行動が見られた水辺
 ◆追い合い行動、発生
 ◆攻撃行動のまとめ
 ◆謝辞
 ◆耳より情報!(『トンボ博物学』特価頒布)


トンボの なわばり争い行動

トンボの なわばり争い行動は、繁殖場所(交尾・産卵場所)で、♂が♀との出会いの場所をめぐって行うもので、通常は、先にその場所を占めていた♂が、後からやってくるライバル♂を排除しようと、攻撃(突進、威嚇など)することから始まります。

今回、溜池の岸沿いをパトロールするトラフトンボの♂が、同種♂と激しく空中戦を繰り広げるという、典型的な なわばり争い行動を観察・撮影しました。


トンボのパトロール飛行

パトロール飛行 patrol flight とは、なわばり内をなわばり占有者が巡回したり往復飛行したりしながら侵入♂の監視と交尾相手となる♀の探索を行うもので、私の場合、なわばりをもたず、広い(防衛されていない)範囲を探索する行動をも含めてこう呼んでいます。


トラフトンボのパトロール飛行

今回撮影した、トラフトンボのパトロール飛行の様子を、前回記事から再掲しておきます(写真1、2)。

トラフトンボのパトロール飛行中の姿勢・動作の特徴については、前回記事をご参照ください。

トラフトンボ♂のパトロール 
写真1 トラフトンボ Epitheca marginata ♂のパトロール (前回記事から再掲)(写真はクリックで拡大します)

トラフトンボ♂、パトロール 
写真2(a & b)トラフトンボ Epitheca marginata ♂、パトロール(それぞれ別個体)(前回記事から再掲)


なわばり争い行動が見られた水辺

トラフトンボ♂同士の なわばり争い行動(追い合い行動)が見られたのは、写真1のトンボを撮影した池(前回記事の写真1)に隣接する、後背地が林地になっている池の一角です(写真3)。

トラフトンボの見られた溜池(別の池) 
写真3 トラフトンボの なわばり争いが見られた溜池の一角(前回記事の写真1とは別の池)


追い合い行動、発生

私が、林地内の踏み分け道をたどり、この池のこのコーナーに着いてしばらくたった時、岸に近い池面上で、トラフトンボ♂同士の水平な追い合いや、螺旋状の相互追尾飛行が生起し、しばらく続きました(観察初日、14時直前の7分間)。

70回シャッターを押して撮れたものの中から、以下に4点をかかげます(写真4a~d)。

いずれも現像段階で大幅にトリミングし、シャープネスをアップさせたものです。

トラフトンボ♂、なわばり争い 
写真4(a~d) トラフトンボ Epitheca marginata ♂同士のなわばり争い(同一個体セット;時系列順)

以下、写真4a~dのそれぞれについて、画像から見てとれることを列挙してみます。

写真4a:
・右上の♂は、画面左上奥方向を向いた水平の姿勢をとっています。
・右上の♂は、よく見ると、後脚を2本とも下に伸ばしています。これは、相手が物理的にぶつかってきたら、それを脚でガードしようという態勢なのかもしれません。
・左下の♂は腹面をこちらに向けて垂直上昇飛行の態勢をとっています。
・左下の♂のこの態勢になる前に、相手の下方をくぐるような飛行をして相手にプレッシャーをかけた直後に、翅でブレーキをかけつつ急上昇に移ったのだろうと想像されます。

写真4b:
・両♂の位置関係から、上下に進路をずらた上での、互いの突進飛行が交差している瞬間に見えます。
・上の♂は、後脚・中脚を下に半伸ばしして、相手の衝突があった場合にガードしようとしているように見えます。
・下の♂は、頭部・胸部に対して腹部は背方に挙上気味なので、斜め上方から相手の下方に潜り込むように突進し、交差直後は斜め前方へ上昇しようとしているように見えます。
・下の♂は、体が右に少し傾いているので、右にカーブしつつの上昇を選択しているようです。
・下の♂は脚を伸ばしていません。相手は背方にいますので、伸ばしてもガードには使えないからでしょう。

写真4c:
・2頭の♂が、あわや衝突、と思うくらいの距離で接近戦をしています。
・ただし、真正面でぶつかり合おうとはしておらず、微妙に高度をずらし、互いの進路は斜めに交差しています。
・上の♂は、脚を構えて、相手がおかしな行動をしてきたら、つかみかかろうとしているかのようです。
・下の♂も、やはり脚をすべて開いて、相手と取っ組み合いをする用意ができているようです。これだけ接近すると、下側の♂の脚も相手の体、少なくとも脚先には触れることができるので、脚を構えておく意味があるといえます。
・下の♂の体が少し右に傾いているのは、右にカーブするように飛んで、相手から少し遠ざかる方向に擦れ違おうとしているのだろうと思います。


写真4d
・両♂が、互いに進路が直行するように、ただし、高度に差を設けて、擦れ違っている瞬間です。
・上の♂は大幅に、下の♂はわずかに脚を伸ばして広げ、どちらも相手の衝突や掴みかかりに備えているかのようです。
・dの下の♂の翅がよく見えます。これだけ接近戦を繰り返しているにもかかわらず、翅に損傷がありません。


攻撃行動のまとめ

以上、4カットについて、詳細に姿勢や動作をチェックしてみました。

いずれにも共通することとして、♂同士の追い合い行動において、互いに物理的衝突や接触を避けるように、互いの高度を微妙にずらした上で交差している点です。

もう一つ。接近戦の場合、特に上方の♂は、脚を伸ばして構え、相手の物理的接触に備えている点も共通しています。高度差がほとんどない場合は、下方の♂も脚を構えていたのも興味深いです。

以上のことから、♂同士は、互いに大きな傷を負わないように、非常に賢いルールのもと闘っていることがわかります。

交尾のためのなわばりを守るためとはいえ、自分の子孫を残さないまま、闘いに傷ついて婚活戦線から脱落してしまっては、何のために1年も2年も水中で必死に餌を摂り、天敵をやりすごしてここまで生き抜いてきたのか、その意義を失うことになります。

そういうことのないよう、トンボの世界でも、ルールのもとで潔い闘いをしているに違いありません。

もちろん、人間のようにルールを学習している(教えられている)のではなく、遺伝子に組み込まれた行動プログラム自身がそのようなルールを内包していると解釈されます。


次回は、トラフトンボの交尾行動についてレポートします。


謝 辞
現地をご案内くださった月井栄三郎さんに、心よりの感謝の意を表します。



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