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2018-08-07 (Tue)
今年6月上旬に月井栄三郎さんのご案内のもと、栃木県の農村部の溜池群を訪れ、私とは初対面となるトラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883) を始め、数種類のトンボを観察することができました。

今回は、その第3報として、トラフトンボの交尾行動と幼虫の敵についてをレポートします(シリーズ記事一覧はこちら)。

今回の観察地の特徴については、シリーズ初回記事をご参照ください。

目 次
 ◆トラフトンボの交尾が見られた池
 ◆すわ、交尾発見
 ◆交尾という「仕事」
 ◆トンボを含む生物多様性を脅かす捕食者
 ◆謝辞


トラフトンボの交尾が見られた池

今回トラフトンボの交尾行動が観察されたのは、初回記事にも登場した写真1の池です。

トラフトンボなどが見られた溜池 
写真1 トラフトンボの交尾行動が見られた溜池。(初回記事から再掲)(写真はクリックで拡大します) 

写真2は、この池の岸沿いをパトロールするトラフトンボ♂です(初回記事から再掲)。

トラフトンボ♂のパトロール 
写真2 トラフトンボ Epitheca marginata ♂のパトロール(初回記事から再掲)

♂は、このパトロール飛行中に♀を発見すれば、交尾しようと急速にアプローチし、♂が近づいたら、追い払おうとします(前回記事参照)。


すわ、交尾発見

今回、その交尾行動を、1例だけですが、観察2日目に観察・撮影することができました。

写真1の池でトラフトンボ♂のパトロールを観察していたところ、池の中央部に近い沖合で1頭の♂が、1頭の♀を水面のすぐ上の空中で捕捉し、連結して天空に向って舞い上がりました(午前‏‎10時15分24秒)。

カップルはすぐに交尾態になり、岸の上空に向って斜め上方向に飛行を続けます。

10時15分30秒には、もう岸の立ち木の枝先の少し向こうまで飛び去りつつありました(写真3)。

トラフトンボの交尾飛行 
写真3 トラフトンボ Epitheca marginata の交尾飛行


交尾という「仕事」

この時のカップルをトリミングしたのが写真4bです。

トラフトンボの交尾飛行 
写真4a、b トラフトンボ Epitheca marginata の交尾飛行(写真3と同一カップル)(トリミング)

写真4bでは、カップルはすでに、観察者に半分背を向けるように、池の外部に向って飛び去りつつある態勢です。

写真4aは10時15分28秒時点のカップルで、写真4bより前の時点、まだ沼の上空を飛行中に、横斜め下から撮ったものです。

♂は腹部を強く挙上し、♀の体全体をリフトしています。

♀の方が一回り大きく見えています。

光線や角度のせいもあるでしょうが、牽引する♂が消費するエネルギーは相当なものではないでしょうか。

それに、「根性」もなければ、とてもやり遂げられない仕事でしょう。

この根性の本源は、「自らの子孫を残す」ことが、あらゆる生物個体に課せられた使命であるというところにあるように思います。

スポーツや仕事力が上達する基本の一つに「根性」があげられますが、これは何も人類の専売特許ではなく、太古の昔から生き物たちが持ち続けてきたものではないでしょうか。

このカップルは、この後、池の外の、おそらく樹の枝に交尾態でぶらさがり、ゆっくりと精子(精包)の授受を行い(たぶん、以前の♂が授けた精子の掻き出し=精子置換も行い)、その後は♂♀は分れて独身生活に戻ることになります。

それはさておき、交尾後の♀は、交尾直後か、それとも相当の時間を置いてかは分かりませんが、再び池(交尾した池とは限らないでしょう)を訪れ、卵を産むことになります。

残念ながら、今回の観察機会では、産卵中の♀や、産卵しようとする♀を観察することができませんでした。

これは、次の機会の楽しみに取っておくことにしました。


トンボを含む生物多様性を脅かす捕食者

ついでですが、トラフトンボ♂のパトロールが見られた別の池に、トラフトンボの幼虫にとって怖い存在である、捕食者の姿を見かけ、撮影しました(写真5)。

溜池のトラフトンボと鯉 
写真5 トラフトンボ♂がパトロールする溜池の大型魚* (画像調整後)

獰猛そうな大型魚*です。

写真の左上には、パトロール中のトラフトンボ♂がピンボケながら写っています。

こんな大きな魚*に襲われたら、トンボの卵も幼虫(ヤゴ)もひとたまりもありません。

ただし、救いは、大量の沈水植物の存在で、この水草に卵が付着し、また幼虫がしがみついていれ、ば、それはある程度の隠れ場となり、捕食される確率が下がると思われるところです。

いろいろな特定外来生物が池に放流されたり侵入してくると、このような水草さえも食い荒らされたり、生育が悪化するとなどの環境変化が進み、トンボにとって一層棲みにくい水域になっていくに違いありません。

在来生物主体の生物多様性をいつまでも維持していくためには、それらを損なう圧迫要因を一つ一つ明らかにし、その知識を広く共有し、土地管理者や利用者、更には一般市民にも知らしめていく活動や心がけが、一層求められると思います。

次回から2,3回の記事では、この溜池群で見られた他のトンボの種についてレポートします。

*追記:初出記事では「鯉」としていたものを「大型魚」に訂正しました。ご指摘いただいた飯田貢さんに感謝します[8月7日12時20分、記]。

謝 辞
現地をご案内くださった月井栄三郎さんに、心よりの感謝の意を表します。


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