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2018-08-22 (Wed)
今年6月上旬に栃木県の農村部の溜池群を訪れ、私とは初対面となるトラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883) を始め、数種類のトンボを観察することができました。

今回は、その溜池群のトンボについてのシリーズ記事第7報として、クロイトトンボ Paracercion calamorum (Ris, 1916) をとりあげます(シリーズ記事一覧はこちら)。

クロイトトンボはどこにでもいる普通種で、私のブログでも脇役で登場することが多いのですが、今回は若干ストーリー性のある姿を見せてくれましたので、他のトンボ種と1束として扱うのではなく、独演会として思う存分立ち回ってもらうことにしました。

目 次
 ◆未熟♀と成熟した♂型♀
 ◆成熟♂、突き出した棒にとまる
 ◆ジュンサイハムシ: クロイトトンボとのささいな種間競争
 ◆食い痕だらけの浮葉で産卵カップルはしばし黙考(?)
 ◆産卵カップル:少ない産卵場所を巡って軋轢も
 ◆謝辞


未熟♀と成熟した♂型♀

溜池群のうち、シリーズ初回記事で紹介した池の岸の草の葉に、1頭の♀成虫がとまっていました(写真1)(観察初日、午前11時47分)。

クロイトトンボ♀ 
写真1 クロイトトンボ Paracercion calamorum(写真はクリックで拡大します)

写真1の♀は、胸部を中心に、淡色部が紫がかった淡褐色をしていて、翅脈も先端よりの部分の黒化が弱く、灰白色であることから、羽化後日の浅い未熟な個体であることがわかります。

同じ日の午後1時19分に、シリーズ第2回記事の池の岸の草の葉に、写真1の♀とは色合いが随分違う♀がとまっていました(写真2)。

クロイトトンボ♀ 
写真2 クロイトトンボ Paracercion calamorum 

写真2の♀は、淡色部が青色で、脚の腿節、前胸背面、腹端部背面の一部にも白粉が吹いていて、写真3の♂の色彩パターンとかなり似ています。

クロイトトンボの♀は、多くの場合、このように青くはならず、淡色部が黄褐色の型のもの(写真5の♀がそれ)が普通のようです。

写真2のような色彩のクロイトトンボ♀は、♂色型の♀と呼ばれます。


成熟♂、突き出した棒にとまる

シリーズ第2回記事の池の水面から突き出す棒の先に、1頭の♂がとまっていました(写真3)(午後1時23分)。

クロイトトンボ♂ 
写真3 クロイトトンボ Paracercion calamorum

写真3の♂は、淡色部の青味も強く、胸部側面、頭部前後端、腹基部側面、脚の腿節に白粉が吹いていることから、成熟度が高いことがわかります。

ついでですが、この♂の左の足下に、なにか、オレンジ色と黒色の小昆虫のようなものが写っています(この小昆虫については、以下の文中で再度、言及します)。

写真4をご覧ください(シリーズ初回記事で紹介した池で撮影、11時55分)。

クロイトトンボ♂とジュンサイハムシ 
写真4 クロイトトンボ Paracercion calamorum ♂(別個体)とジュンサイハムシ

写真4では、別の単独♂がジュンサイの葉の縁にとまっています。

ちなみに、同じ葉の手前(写真4では下端中央右)に単独♀もとまっています(写真では頭部と胸部のみが写る)。


ジュンサイハムシ: クロイトトンボとのささいな種間競争

隣(写真4では中央)のジュンサイの葉には、少なくとも16頭の小昆虫(甲虫の成虫、幼虫)が乗っています。

両隣の葉は食い痕だらけに見えますので、これら16頭の小昆虫たちは、新鮮な食材を求めて、食い散らかした葉から、未消費の葉に歩行(匍匐)して移動したばかりのように見えます。
もっともこの甲虫の成虫は飛ぶこともできるはずですから、飛んできた可能性も否定できません。

この小甲虫は何者か確認するために、「じゅんさい」+「甲虫」でネット検索した結果、少なくとも成虫は、ジュンサイハムシ Galerucella nipponensis によく似ていることが判明しました。

※参考サイト:
Sharanchu:「ジュンサイハムシ」

更に検索した結果、幼虫もジュンサイハムシの幼虫に似ていることがわかりました。

※参考サイト:
柏の葉の野鳥 Homepage:「ジュンサイハムシ」

写真3の♂の足下の小昆虫も、ジュンサイハムシ成虫に似ています。

ジュンサイハムシも、いつでもジュンサイの葉にとまっているのではなく、時に、このような棒の先にとまって体を休めるのでしょうか。

よいジュンサイの葉を探し回っている途中で、なかなかよい葉がないために休んでいたのかもしれません。


食い痕だらけの浮葉で産卵カップルはしばし黙考(?)

写真5は、シリーズ第2回記事の池で、ジュンサイの葉にとまったクロイトトンボの連結カップルです(観察初日、午後1時19分)。

クロイトトンボ産卵 
写真5 クロイトトンボ Paracercion calamorum産卵

このクロイトトンボ・カップルがとまっているジュンサイの葉には少なくとも11頭のジュンサイハムシとおぼしき昆虫の成虫・幼虫が乗っていて、葉も無残な虫食い状態となっています。

そのために、♀は産卵管を突き立てるのに適した場所が見当たらず、当惑しているのかもしれません。

このジュンサイの葉の食害率の高さは、この池のジュンサイの生育密度の低さにも起因しているように思います。

もし、ジュンサイが十分繁茂していれば、ハムシの幼虫が簡単に葉から葉へと匍匐により移ることができるので、このように食い荒らす前に新しい葉を求めることができると思うからです。


産卵カップル:少ない産卵場所を巡って軋轢も

写真6(a~d)は、シリーズ第2回記事の池で写した、別の産卵カップル2組の連続写真です(観察初日、午後2時05分08秒から4秒間に撮影)。

クロイトトンボ産卵ペアと先客 
写真6(a~d) クロイトトンボ Paracercion calamorum 産卵カップルと先客

a)1枚のジュンサイの葉にクロイトトンボの連結カップルが静止しているところに、右上後方からもう1組の連結カップルがやってきました(午後2時05分08秒)。

b)後から来たカップルはそのまま葉にとまることなく、空中で向きを変えます(午後2時05分10秒)。

c)‏そして、後から来たカップルはなんと、先客カップルと立体交差するように、直角に重なる向きで葉に着地しました(午後2時05分10秒).

d)続けて、後から来たカップルの♀は、産卵動作を開始しました(午後2時05分12秒)。

しかし、落ち着かないためなのか、後から来たほうのカップルはすぐに飛び立ち、1枚隣のジュンサイの葉に止まり替え、そちらで産卵を開始しました(写真7)(午後2時05分20秒)。

クロイトトンボ産卵ペアと先客、続き 
写真7 クロイトトンボ Paracercion calamorum カップルと先客、続き

これで、どちらのカップルも、じっくりと産卵できそうです。

※過去記事の中にも、クロイトトンボの産卵カップル間の産卵基質をめぐる軋轢を取り上げたものがあります。

※このほかにも、単独ペアの産卵中におきた悲惨な出来事も記事にしています。


次回記事では、シリーズ最終回として、落穂拾いのようになりますが、残りの3種(モノサシトンボ、ホソミオツネントンボ、コサナエ)を取り上げます。


謝 辞
現地をご案内くださった月井栄三郎さんに、心よりの感謝の意を表します。


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