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2018-08-25 (Sat)
今年6月上旬に県外遠征し、河川中流に沿った緑地の水路でアオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869 を、その近くの人工池でシオカラトンボ Orthetrum albistylum (Selys, 1848) ほかのトンボを観察したので、簡単に報告します。

目 次
 ◆アオハダトンボ
 ◆アオハダトンボが見られた水路
 ◆水路に近接する人工池のトンボ
 ◆シオカラトンボ
 ◆引用文献
 ◆耳より情報!(『トンボ博物学』特価頒布)


アオハダトンボ

やや増水した感のある、川幅2m程度の人工水路(川底は土砂で、岸辺から土手にかけてイネ科草本が繁茂している:写真7)で、アオハダトンボの♂♀の成虫が観察できました(写真1~6)(午後2時過ぎ)。

写真1は、岸辺から水面に突き出したイネ科草本の穂にとまり、水面方向を凝視するアオハダトンボ♂です。
 
アオハダトンボ♂ 
写真1 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♂ (写真はクリックで拡大します)

そこにとまったまま、盛んに翅を開閉していました(写真2)。
 
アオハダトンボ♂ 
写真2 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♂ (同一個体)

写真3は同じ個体(左後脚の腿節に白いゴミがついていることで確認可能)を、写真2の54秒前に写したもので、すぐ近くの別種のイネ科草本の穂にとまっています。

写真2写真3を比べると、とくに右後翅の表面の反射光の色彩に違いが出ていることがわかります。

すなわち、写真2ではその部分の反射光が緑色がかっているのに対し、写真3では前翅同様に藍色がかっています。

アオハダトンボ♂ 
写真3 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♂(同一個体)

このように、見る角度(撮影する角度)によって異なる色彩に見えるのは、この色彩が翅の表面の色素そのものの色ではなく、翅の表面下構造の中に太陽光が入り込み、そして反射するプロセスで光が相互に干渉することによって生ずる、「構造色」であることによると言われています。

構造色は、一部の蝶の鱗粉や甲虫の鞘翅でもよく知られている現象で、自然観察者・撮影者にとって楽しみの一つでもあります。 

この一帯の岸に沿って数メートルの範囲内には、他にも2,3個体の同種♂が滞在していて、時おり、♂同士のなわばり争い(追い合い)も見られました。

写真4は、その一帯にあらわれたアオハダトンボ♀です。

アオハダトンボ♀ 
写真4 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♀

♀は、♂にくらべて、なんとも地味な色彩をしていますが、翅の先端近くにある真白な偽縁紋があるのが、可愛らしいですし、実際に同種♂に対するセックスアピールにもなっているようです。

というのも、この白い偽縁紋を人為的に黒く塗りつぶすと、同種♂は目印を失うために、連結・交尾がうまくいかなくなるとの、野外実験結果が知られているからです(杉村ほか 1999)。

♀が現れたことを察知した♂は、がぜん、求愛モードに切り替えることになります。

今回も、実際に、イネ科草本の葉にとまっている1頭の♀の前で、1頭の♂が♀の方を向きながら水面に浮き、腹端部を背方に強く曲げて、翅を左右に開く、人からみてもたいへんアトラクティブな、求愛誇示行動をとるのが観察されました。

残念ながらカメラを向ける前にこの誇示行動は終わり、♂は水面上の飛行に戻りました。

写真5、6は、やってきた♀とそれを見守る♂です。

両者同時にピントの合った写真が撮れなかったため、片方ずつピントの合った2枚のセットとなってしまいました。

アオハダトンボ♀とガード♂ 
写真5 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♀とそれを見守る♂

アオハダトンボ♀をガードする♂ 
写真6 アオハダトンボ Calopteryx japonica ♀を見守る♂ (写真5と同一カップル)

この水路での観察が短時間だったために、この♂と♀がすでに交尾を済ませた配偶者同士なのか、それともこれから交尾しようとしているのかは、確認できませんでした。

今後機会があったら、記録をとりながら、じっくりと観察したいと思っています。


アオハダトンボが見られた水路

写真7アオハダトンボが見られた水路です。

アオハダトンボが見られた水路 
写真7 アオハダトンボが見られた水路

岸辺にはイネ科草本が密生していますが、大部分は水草というより、土手に繁茂した牧草系の植物の根元が水に覆われたり、茎の先端半分ほどが水面上に倒れかかったもののようです。


水路に近接する人工池のトンボ

この水路を含む一帯では午後1時42分から約40分間の観察を行いました。

水路から数メートルないし数十メートル離れたところにある、ヨシ類に囲まれた浅い人工池(複数)では、シオカラトンボ (多数の♂♀)、ハラビロトンボ  Lyriothemis pachygastra (Selys, 1878) ♂オビトンボ型)、アジアイトトンボ Ischnura asiatica (Brauer, 1865) (交尾)、アオイトトンボ Lestes sponsa (Hansemann, 1823) ♂(未熟)が観察されました。


シオカラトンボ

写真8は池と池の間の草地にいたシオカラトンボ ♀です。

シオカラトンボ♀ 
写真8 シオカラトンボ♀

写真8の個体は、前脚2本を複眼の後に格納し、中脚・後脚で枯草の細枝にすがるようにとまっています。

中脚は爪をかけてぶらさがりのグリップ、後脚は踵をおしあてて体がこれ以上垂下しないようにささえているように見えます。

ハラビロトンボのオビトンボ型♀の写真は是非撮りたかったのですが、カメラを準備している間に抽水植物の背後に消えていきました。


引用文献:

杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司 (1999) 原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑。北海道大学図書刊行会。



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