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2014-10-23 (Thu)
前回の記事で、ルリイトトンボを代表に立てて、均翅亜目(ダムゼル・フライ)を不均翅亜目(ドラゴン・フライ)と比較し、前者を貴婦人、後者を武闘派(むしろ武人といったほうが対比になりますね)と形容しました。

ドラゴン・フライ、とくにギンヤンマは、私のブログの論調では男の子の憧れということにしておきました。

それでは、ダムゼル・フライは女の子の憧れになっているでしょうか?
少なくとも、ペンダントやブローチといったアクセサリーでトンボをモチーフにしたものは、翅が根元ですぼまって、腹は細く、途中で横にカーブしているなど、ダムゼル・フライを思わせるものが多いように、私は感じています。

さて、下の写真はエゾイトトンボ♂*。3年前の7月中旬に北海道の釧路湿原周辺の池で撮影したものです。

エゾイトトンボ♂
 ↑クリックで拡大します。

前回のルリイトトンボによく似ていますね。
エゾイトトンボは、♂の腹部各節後半の黒紋がルリイトトンボよりも前後に長いこと、尾部下付属器がルリイトトンボのように牛の角状に長くとがっていないころなどで、ルリイトトンボと区別できます。
エゾイトトンボと同属で、北海道では同所的に分布することが多いキタイトトンボとの区別点については、後者の記事で触れておきました。

さて、同じ池の上空をドラゴン・フライが飛び回っている、その下側にダムゼル・フライの世界が広がっています。
もちろん、上空と下界に境界はありませんから、運の悪いダムゼル・フライはドラゴン・フライの餌食になることもあります。

しかし、基本的にトンボの社会は、この下界での同種個体間の社会関係であり、トンボの成虫は同種間の利害の中で利益を最大化するように振舞っています。

すなわち、「貴婦人」と呼ばれようが、どう思われようが、イトトンボたちも同種の社会の中で、戦うべきときは戦い、求愛すべきときは求愛して、虫の生涯の中で最大の勝負(いかに自分の子孫を残すか)に賭けた毎日を送っています。

エゾイトトンボ♂は、池の岸辺でとくに一定の空間を防衛するでもなく、とまったり、飛び進んだり、戻ったりしながら、目の前に♀を見つけたら、連結し、交尾し、そして産卵へと♀をリードしながら、自らに課した任務を遂行していきます。
♂同士で出会った場合、若干の干渉はありますが、深追いはせずにすれ違うことが多いことから、シオカラトンボコシアキトンボなどとは異なり、縄ばりのない社会を形成しています。

このように全力で任務についていると、おなかも空きますし、一服したくなるのはトンボたちも、私たちヒトも同様です。

上の写真をよく見ると、このイトトンボの頭の先に淡褐色のゴミのようなものが写っていますね。
これは、このシーンのほんの1,2分前に、このトンボが飛び立って、口にくわえて捕まえた小さな昆虫です。

トンボの口は左右に開く大アゴと小アゴ、上下に挟む上唇と下唇の4パーツからできていますが、これらのパーツを器用に動かし、餌となった小虫をムシャムシャと噛み砕き、肉汁や体表(クチクラといます)の小さな破片を飲み込みます**。

トンボは、池や川から離れた野山や道端では、休息や餌とりに専念しますが、上で見たように、池や川での婚活中にも機会があれば栄養補給をするというわけです。

どこか、背広を肩に、自販機の前で栄養ドリンクを飲みほしているサラリーマンにも似た、リフレッシュした雰囲気が見てとれませんか?

注:
*エゾイトトンボの学名は、Coenagrion lanceolatum。種小名の接頭辞lance(o)-は槍を、接尾後のlatumはfero(携える)の過去分詞latumを意味していると解釈できます。このトンボの腹部第2節背面のスペード型の黒紋を槍に見立てて命名したもののようです(latumの解釈を除いては、浜田・井上著『日本産トンボ大図鑑」[講談社1985]に既出)。
エゾイトトンボの分布域は、東シベリア、朝鮮半島、中国東北、サハリン、日本(北海道、東北、北信越)であり、エゾイトトンボ属Coenagrion全体がそうですが、北方系の種です。

**飲み込まれた有機物は、ほぼまっすぐに尾の先まで貫通している消化管の中を後方へ送られる中で、消化され、トンボのエネルギー源になっていきます。
もちろんん、消化吸収されない物質は、体内からの排泄物とともに、肛門から糞として落とされます。


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