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2018-10-19 (Fri)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征*の2日目は、地元の昆虫研究家、飯田貢さんらのご案内のもと、1日目とは方面の異なる地域の4カ所を順に訪れ、南国のトンボ、ベニトンボを含む多様な虫達との出会いを経験することができました。

(* この四国でのトンボ探訪記は、シリーズ物として、これまでに12編の記事にしています[記事一覧はこちら])。

第13報の今回は、この日第二の訪問地である沢地の林縁草地(写真2)で見た、マユタテアカネ Sympetrum eroticum (Selys, 1883) 写真1)、そしてアカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi (Distant, 1883) を取り上げます。

マユタテアカネ♂、林野にて 
写真1 マユタテアカネ Sympetrum eroticum ♂、林野にて(写真はクリックで拡大します)


目 次:
 ◆第二の訪問地:沢地の林縁草地
 ◆葉上にとまるマユタテアカネ
 ◆アカスジキンカメムシの1齢幼虫
 ◆アカスジキンカメムシの5齢幼虫
 ◆アカスジキンカメムシの後期齢幼虫の群れ
 ◆アカスジキンカメムシの成虫(参考画像)
 ◆謝 辞
 ◆引用文献


第二の訪問地:沢地の林縁草地

写真2は、2日目の第二の訪問地の景観です。

マユタテアカネ、ナツアカネのいた沢地の林縁草地 
写真2 沢地の林縁草地(第二の訪問地)

この訪問地は沢地の片斜面がやや平坦になった場所で、向い及び背後の斜面は鬱蒼とした樹林(主に広葉樹)になっていました。

観察ポイントは、その平坦地の一角で、セイタカアワダチソウなどの草や幼木が生い茂っているところ。

その林縁部の低木の枝葉や、草の葉先などに虫たちの姿を求めました。

この訪問地には、午前10時少し前に到着して、飯田さんら地元組のお三方と共に、観察を開始しました。

そこで、トンボよりも先に私の目に入った虫は、クモ類カメムシ類でした。

それらの虫たちは、北国での生活が長かった私にとって、新鮮かつ愉快なものでした。

このブログはトンボがメインですので、カメムシ類は今回記事の後半で取り上げ、クモ類は次回記事で扱うことにし、まずは、そこで観察されたトンボについて、ざっと紹介します。


葉上にとまるマユタテアカネ

最初に見つけて撮影したトンボは、マユタテアカネ♂です(写真3)。(時刻、10:16:44)

マユタテアカネ♂、林野にて 
写真3 マユタテアカネ Sympetrum eroticum ♂、林野にて

近くに池はありませんので、摂食と休息のためにこの沢地の林野に滞在しているものでしょう。

色彩からは十分成熟していますので、すでに生殖活動(交尾や連結産卵)を経験していると思われます。

写真1(下に再掲)も同じ個体です。(時刻、10:18:14)

マユタテアカネ♂、林野にて 
写真1(再掲) マユタテアカネ Sympetrum eroticum ♂、林野にて (同一個体)

顔面が少し見える方向に私が回り込んで撮影しましたので、マユタテアカネの名前のもとになった、太眉のように見える黒い二つの斑紋が確認できます。

写真1は、写真3の1分30秒後に撮影したものですが、いずれも両前脚を前に差し伸べたような姿勢をしています(理由不明)。

このほかにも、このマユタテアカネ♂のいた場所のすぐ近くで、もう1種、アカネ属のトンボ(たぶん、アキアカネかナツアカネの♂)を見かけましたが、種の判別に使える写真が得られませんでした。


アカスジキンカメムシの1齢幼虫

これらアカネ属のトンボを見つけるよりも前の10時04分過ぎのことです。

林縁の広葉樹低木の葉を1枚ずつめくって何かを探していた飯田さんが、「これ、面白いでしょう?」と小さく丸い虫達の群れを指さしました(写真4)。

アカスジキンカメムシ1齢幼虫
写真4 アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi 1齢幼虫

ハローウィーのパンプキン・ランタンのように、オレンジ色の顔に大きな黒褐色の口が開き、一つ眼に大きなゴーグルをかぶせたけたような、ユーモラスな模様をしています。

しかも、1ダースもの個体が集団をなしています。

想像もしていなかった奇抜なデザインの虫に眼が吸い付けられ、思考が一瞬止まる私。

飯田さん:「これ、アカスジキンカメムシの1齢幼虫です。」

飯田さんは、そのうちの一部の個体を、持参したプラスチックケースにそーっと収容しました。

自宅に連れて帰り、飼育しながら成長ぶりを観察するとのこと。


アカスジキンカメムシの5齢幼虫

私が別の木の枝の1枚の葉に目をやると、今度は白色と黒褐色で、大口を開けたようなパターンの、大きくて背面から見ると円い形のカメムシが1頭いました(写真5)。

アカスジキンカメムシ、5齢幼虫 
写真5 アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi 5齢幼虫

「これ、なんだろ?」と私がつぶやくと、飯田さんが「これがアカスジキンカメムシの5齢幼虫ですよ。」と教てくれました。

「え~?」と私。

同じ種の幼虫なのに脱皮して齢が変わっていくと、こんなにも模様や色彩が変わるとは!

トンボの幼虫(ヤゴ)の成長の一般的特性、を無意識に判断基準としていた私には、新鮮な驚きでした。

ちなみに、写真5を昆虫関連のSNSに投稿したところ、ある方から、ワハハと笑っている印象の虫である旨のコメントをいただきました。

コメントをもらう前の時点で、私は髷を結ったお相撲さんの顔を連想していたのですが、たしかに豪放磊落に笑う人の顔にも見えます。

ネット検索すると、「わははカメムシ」という愛称が、すでに複数のネットユーザーによって用いられていることも判明しました。

ただ、豪快に笑っている感がありますので、私が敢えてアカスジキンカメムシ5齢幼虫に愛称をつけるなら、「ガハハムシ」!

※ アカスジキンカメムシ5齢幼虫のこの特徴的な色彩パターンがどのように進化したかについては、新たな記事として次回以降取り上げる予定です。


アカスジキンカメムシの後期齢幼虫の群れ

話を、現地での観察イベントの続きのシーンに戻しましょう。

しばらく後、「こっちにもいますよ~!」と、同行の高橋賢悟さんの声が。

指さす先を見ると、それは低木の葉の裏に、地面方向に背面を向けてとりついた、アカスジキンカメムシの後期齢幼虫の幼虫の小さな群れでした(写真6)。

「年長組」ですね。

アカスジキンカメムシ 4齢 &5齢幼虫
写真6 アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi 4齢 &5齢幼虫

帰宅後、私がネット検索すると、このカメムシは背面の模様パターンの特徴や色彩で5つの幼虫齢が判別できる(例:青木繁伸さんのサイト)ことがわかりました。

それを参考にしてこの写真を見直すと、左手前の2頭は第5齢(終齢)、右奥の2頭は4齢であることがわかりました。


アカスジキンカメムシの成虫(参考画像)

※ アカスジキンカメムシの成虫は今回見られませんでしたが、Wikimedia Commonsから拝借したKIM Hyun-taeさん撮影による成虫画像を下に掲げます。

Poecilocoris-lewisi
拝借画像 アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi の成虫 (By Kim, Hyun-tae [CC BY-SA 4.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons)

アカスジキンカメムシは、5齢から脱皮して成虫になると、いかにもカメムシらしい体形へと変身を遂げ、しかも鮮やかな金属緑色の地色を、これも鮮やかな朱色の隈取りのような模様で飾っています。

蛹のステージを有しない、不完全変態昆虫(トンボも同様)であるにもかかわらず、初齢幼虫から終齢幼虫を経て成虫までの成長発達過程で、この鮮やかな変身ぶりを示すカメムシの仲間には、昆虫少年になりたての小学生と同じような素直な気持ちで、感嘆せざるをえません。

子どもの頃、カメムシの匂いが触った指について、陸生カメムシ類全体を遠ざけてしまった私ですが、そのような体験を経ないまま画像だけで親しんでいたならば、カメムシを研究対象にしていたかもしれません。


謝 辞
現地に案内して下さった上にカメムシについて解説された飯田貢さん、観察対象に注意を喚起してくれた高橋賢悟さん、山本桂子さんに謝意を表したいと思います。



Kim, Hyun-tae [CC BY-SA 4.0  (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons


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