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2018-12-26 (Wed)
2017年9月末から10月初めにかけての四国遠征*の2日目は、地元の昆虫研究家、飯田貢さんらのご案内のもと、4カ所を順に訪れ、南国のトンボ、ベニトンボを含む多様な虫達との出会いを経験することができました。

(* この四国でのトンボ探訪記は、シリーズ物として、これまでに21編の記事にしています[記事一覧はこちら])。

第22報の今回は、この日4番目(最後)の訪問地と、そこに行く途中の昼食休憩地で観察した、トンボ以外の昆虫たちを取り上げます。


目 次
◆エンマコオロギ
◆トノサマバッタ
◆カシワスカシバ 
◆オオカマキリ
◆次回記事予告
◆謝辞
◆引用文献


エンマコオロギ

まずは、4番目の訪問地で撮影した、エンマコオロギ Teleogryllus emmaです(写真1)。

エンマコオロギ♀ 
写真1 エンマコオロギ Teleogryllus emma ♀ (写真はクリックで拡大します)

前回記事のマユタテアカネを撮影した直後に、道端のちょっとした斜面をチョコチョコ歩くコオロギを発見しました。

私のカメラの接近に気づいたのか、枯れ草の隙間にしがみついて、少なくとも8秒間そのまま動かないでいました。

※ 同じコオロギ科に属するマダラスズについては、私も共著者の一人として論文(Masaki et al. 2017)を発表したことがあり、当ブログでも数回過去記事に登場していますが、和名にコオロギとつくものは今回が初登場となりました。

数枚写真を撮った後、渓流畔に下りて、ヤゴを漁る飯田さんの姿にレンズを向けたのを皮切りに、飯田さん採集のヤゴの観察・撮影に専念しました(こちらの過去記事参照)。

帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にし、写真1の個体をエンマコオロギの♀と同定しました。

※ 同定の参考にした主なサイト:
 昆虫エクスプローラ
:コオロギ・マツムシ図鑑
(11種類)
 http://www.insects.jp/konbuntykkoor.htm


トノサマバッタ

この日、第三の訪問地から第四の訪問地に車で移動の途中、飯田さんらに山村の風景に溶け込んだ蕎麦屋に案内され、こだわりの味の一膳を3人の仲間と一緒にしばし味わいました。

食後の麦茶をすすったあと店を出て、駐車した場所に戻る途中、同行の高橋賢悟さんが何かを見付けて立ち止まりました。

そして「跳ねないで~」といいながらカメラを向けています。

それは、舗装された路上にたたずむ、やや大き目のバッタでした(写真2)。

トノサマバッタ 
写真2 トノサマバッタ Locusta migratoria

「トノサマバッタですね~」と飯田さん。

帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にして検討した結果、やはりトノサマバッタ Locusta migratoriaであることがわかりました。

※ バッタといえば、私が大学教員をしていた時に、卒業研究でバッタ類(バッタ目[直翅目])の生態をテーマにしたいという学生がいて、調査方法や調査地の設定、標本の同定、データの分析方法などを私が指導したことがありました(山本・生方 2009)。ただし、そのデータにはトノサマバッタは含まれていません。

※ 写真2の個体の同定で参考にした主なサイト:
昆虫エクスプローラ:バッタ図鑑|トノサマバッタ亜科(9種類)
http://www.insects.jp/konbuntykbatta.htm

※ トノサマバッタ♂♀判別の参考サイト:
The Australian Government Department of Agriculture and Water Resources: About locusts.
http://www.agriculture.gov.au/pests-diseases-weeds/locusts/about/about_locusts


カシワスカシバ 

バッタの写真を撮っていると、同行の山本桂子さんから「ほらほら、これ見てー!」と声がかかりました。

振り返ると、道端の草の葉にスズメバチそっくりな虫(写真3)がとまっています。

カシワスカシバ♀ 
カシワスカシバ Scasiba rhynchioides

ほんとうにスズメバチによく似ています。

スズメバチと区別つかないように見えたのは最初だけで、近くでよく見ると、頭部・胸部がふさふさとした毛で覆われています。

私もその場で、蛾の仲間にスズメバチに擬態するのがいるという豆知識のはいった記憶の抽斗(ひきだし)が開きました。

「スズメバチそっくりだけれど、蛾の仲間でしょ、これ?」、と私。

「スカシバの1種ですね。」と飯田さん。

※ さすがに、昆虫観察者にポイントを押さえた観方をされたのでは、擬態者の化けの皮がはがれるというものです。

それでも、蛾類をメニューに加えている、鳥などの天敵の眼を欺くには十分でしょう。

循環論法になりますが、それだからこそこのような目立つ色彩をしながらも、敵だらけの生態系の中で生き長らえているというものでしょう。

探虫団が取り囲んだのを察知したのか、この虫は飛び立ち、路面に下りて、車道の車の下に入り込みました。

飯田さんは路面に腹ばいになって、車の下のこの虫をレンズで追いかけています(さすがセミプロ!)。

まもなくすると、飛び立ち、道端の丸太の断面にとまりました(写真3)。

これも、帰宅後、ネットでの画像や解説を参考にし、カシワスカシバ Scasiba rhynchioides の♀と同定しました。

※ 同定の参考にした主なサイト:
みんなで作る日本産蛾類図鑑:49.スカシバガ科 スカシバガ亜科 成虫縮小画像一覧
http://www.jpmoth.org/Sesiidae/Sesiinae/F0000Thumb.html


オオカマキリ

このスカシバの観察を終えて車に乗り込もうとする私達に、「僕もいるんだけど~」とつぶやいているかのように視線を送る昆虫がいました。

カマキリです。

オオカマキリ♂ 
オオカマキリ Tenodera sinensis 

「僕もいるんだけど~」は、「日本むしむし話」風の表現。

より生物学的に意味のある比喩に置き換えるなら、「僕に手をだすんじゃないだろうな?そしたら、ただじゃおかないぞ」とつぶやくかのような眼でこちらを睨んでる、といったところでしょう。

「何もしないよ~」となだめながら、カメラのオートフォーカスを合わせる私。

さて、カマキリといっても何種類もいます。

何カマキリでしょう?

写真を何枚か撮っておけば帰宅後のネット検索で種名はわかるだろうと、高を括っていたのですが、このカマキリの同定には、思いのほか難儀しました。

その概形からオオカマキリ Tenodera sinensis チョウセンカマキリ Tenodera angustipennis のいずれか、というところまでは割合早くわかったのですが(下記参考サイトA)、その後が微妙です。

胴体を手でつかんで持ち上げて、腹側を写しておけば、脚の基部の色から両種の区別は簡単につくことを知ったのですが、それは後の祭り。

そこでネット検索でヒットした、カマキリとチョウセンカマキリの見分け方(下記参考サイトB,C)を参考にして検討した結果、どうやらオオカマキリらしいという結論となりました。

前頭部中央濃色ラインは細く一様で、チョウセンカマキリのように中央部で太くなく、両側の濃色ラインに匹敵するほどでもない(下記参考サイトB)、というオオカマキリの特徴にほぼ一致しました。

また、頭楯・上唇中央の淡色ラインは広く、チョウセンカマキリのように頭楯部分で細くはならないという点(下記参考サイトB)、でもオオカマキリの特徴にほぼ一致しました。

「胸部」(前胸)の長さの、「胴部」(中胸以降、腹端と翅端の長い方)の長さに対する比率の平均は、♂の場合、オオカマキリで0.41、チョウセンカマキリで0.51なのだそうです(下記参考サイトC)。

今回撮影したカマキリでは、0.43と、オオカマキリに近い値となりました。

ただし、「胸部」(前胸)の前方が少し持ち上がっているために、上方から撮影したこの写真では、「胸部」(前胸)が相対的に短く写っている可能性が高く、実際の比率はもう少し高いかもしれません。

※ 同定の参考にした主なサイト(A)
昆虫エクスプローラ:カマキリ目(蟷螂目)[カマキリ図鑑](7種類)
http://www.insects.jp/konbunkama.htm

※ オオカマキリ vs. チョウセンカマキリの比較検討の参考サイト(B):
蝶鳥ウォッチング:類似☆ オオカマキリ × チョウセンカマキリ 比較図Ⅰver.1.1 
https://yoda1.exblog.jp/14108584/

※ オオカマキリ vs. チョウセンカマキリの比較検討の参考サイト(C):
蝶鳥ウォッチング:類似2☆ オオカマキリ×チョウセンカマキリ Ⅱ Ver.1.1
https://yoda1.exblog.jp/18729016/


次回記事予告

以上で、四国トンボ巡礼の現場での観察記録はすべて報告し終えました。

次回記事では、この四国トンボ巡礼中に観察された昆虫やクモのうち、擬態している種(カシワスカシバ、アカスジキンカメムシ、ヤマトシリアゲ、トリノフンダマシ)に再登場してもらい、擬態とは何かについて簡単にまとめてみたいと思います。


謝 辞

現地に案内して下さった飯田貢さん、楽しい昆虫観察を共有させて下さった山本桂子さん、高橋賢悟さんに謝意を表したいと思います。


引用文献

Sinzo Masaki, Masayuki Soma, Hidenori Ubukata, Haruo Katakura, Rie Ichihashi, Zhuqing He, Nobuaki Ichijo, Norio Kobayashi & Makio Takeda,(2017)Ground crickets singing in volcanic warm “islets” in snowy winter: Their seasonal life cycles, photoperiodic responses and origin.
Entomological Science, 19(4), 416-431.

山本冬人・生方秀紀(2009)釧路湿原周辺部における直翅目昆虫10種の環境選好性. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第41号: 97-104.
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/1133/1/kusiroron-41-08.pdf


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