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2019-02-03 (Sun)
関東平野の1月。北東の乾いた季節風が強く吹くと、空気がいくらかでも澄みわたり、さいたま市からでも場所を選べば関東の山並をずらりと見渡すことができます。

本シリーズ「さいたま市境、羽根倉橋から見た関東の山々」では、昨年1月7日(快晴の日)の午前11時過ぎに さいたま市西端の荒川にかかる羽根倉橋から眺望・撮影することができた山々を紹介しています。

4回目の今回記事では、草津白根山浅間山、そしてその間に見える山々を、望遠クロ―ズアップ写真を添えて紹介してゆきます。

目 次
◆雪雲のベールを脱いだ草津白根山
◆草津白根山の火山活動
◆四阿山とその前景の笹塒山、浅間隠山、鼻曲山
 1)笹塒山、浅間隠山、鼻曲山
 2)四阿山
◆噴煙くゆらす浅間山
◆浅間山の活動歴
◆浅間山・白根山一帯の地史
◆山座同定のテクニック
◆次回予告
◆引用文献
◆ハッシュタグ

雪雲のベールを脱いだ草津白根山

前回記事の最後でご紹介した榛名山からカメラレンズを西寄りにずらすと、榛名山の裾野の向こうに横たわる、その名の通り、真白に化粧した草津白根山が写り込みます(写真1)。

草津白根山
写真1 草津白根山(本白根山、白根山)(写真はクリックで拡大します)
 
草津白根山日本百名山)は、単に白根山と呼ばれることもありますが、白根山は群馬県内にもう一つあることから(別名、日光白根山こちらの過去記事参照)、相互の混乱を避けるために隣接地を表わす接頭語が追加されたものでしょう。

もうひとつ、混乱しやすいのは、草津白根山には白根山(2160m)と本白根山(2171m)という二つの主要ピークがあり、最高標高は本白根山であることです(Googleマップの航空写真モード(3D表示)で見た草津白根山の画像参照:外部リンク)。

ですので、単に白根山といった場合には本白根山を含むのか含まないのかという曖昧さが残ります。

というわけで、白根山(2160m)と本白根山を包括する全体を草津白根山と定義すれば、混乱は少なくなります(以下、この用法を採用)。

写真1では、雪雲が、草津白根山の二つの主要ピークのうちの白根山の山頂を隠していますが、本白根山のピークはそれを免れています。

草津白根山は、山頂付近から中腹にかけて大規模なスキー場が、山麓部には草津温泉等もあり、一大観光地になっています。

18歳まで利根・沼田地方に住んでいた私にとっては、国鉄上越線や国道17号線沿いにスキー場も温泉地も豊富にあったことから、草津方面に出かけるまでもありませんでした。

図らずも、故郷群馬を離れて52年後の昨年、150km離れた さいたま市から望むことで、関東の山座の西の大関*たる草津白根山と初対面が実現しました。

(*注:東の大関日光白根山(群馬・栃木県境)です。いずれも筆者の独断によるもの。こちらの過去記事参照)


草津白根山の火山活動

草津白根山は、60万年前以降、火山活動をしている複成火山(地質調査総合センター 2016)かつ成層火山(西来ほか 2014a)で、2018年(1月23日)の噴火(本白根山の鏡池周辺)では、近くのスキーゲレンデにいた1人が亡くなり、11人が負傷したと報じられています(新聞記事;外部リンク)。

噴火は写真1を撮影した16日後に起きたことになりますが、撮影や現像の際には思いもよらなかった出来事でした。
 
以下はネット上の文献からまとめた、草津白根山の活動の歴史です。

◇草津白根火山の基盤を成すのは、新第三紀の火山岩類(宇都ほか 1983)。
◇草津白根山火山の形成は、大きく3つの噴火期に分けられる(早川 1983)。
◇第一噴火期は50~60万年前、第二噴火期はそれに引き続いて、そして第三噴火期は16000年前から現在まで(寺田  2018) 。
◇第二噴火期と第三噴火期の間には、10万年以上の休止期があったらしい(早川・由井 1989)。
◇第三噴火期に、湯釜噴火口を有する白根火砕丘、逢ノ峰火砕丘および本白根火砕丘が形成された(寺田  2018) 。
◇最新のマグマ噴火は1500年前に起きている(寺田  2018) 。
◇白根火砕丘は1882年から噴火を繰り返している(寺田  2018) 。
◇本白根火砕丘の2018年の噴火は歴史記録上初めてのもの(寺田  2018)。

荒牧(1993)は、草津白根山に加えて、今回記事で扱う浅間山、鼻曲山、四阿山ほか、この一帯の火山群の地史について、わかりやすくまとめています(この後の「浅間山」の項で紹介)。


四阿山とその前景の笹塒山、浅間隠山鼻曲山

草津白根山の西寄りの方向には、笹塒山、浅間隠山、鼻曲山が低いながらもゴツゴツした山並を作り出していて、鼻曲山の背後には真白に化粧した四阿山(あずまやさん)の、つんと尖ったピークが顔を出しています(写真2)。

鼻曲山、浅間隠山 
写真2 四阿山、笹塒山、浅間隠山鼻曲山


1)笹塒山、浅間隠山鼻曲山

鼻曲山(はなまがりやま;1655 m)は長野県(軽井沢町)と群馬県(高崎市と長野原町)の境界点にあり、高崎市周辺を潤す烏川の源流部を抱いています。

鼻曲山から北の浅間隠山(あさまかくしやま;1757m;日本二百名山)、さらに笹塒山(1402m ;ささとややま)を経てその東へとつらなる稜線は、烏川(からすがわ)水系と吾妻川水系との分水嶺となっています。

写真2では確認できませんが、浅間隠山付近で分岐して北に延びる稜線は、菅峰(かんぽう;1473m)へと連なります。

北東群馬(利根沼田地方)育ちの私は、これらの地味な山々とは全く縁がありませんでしたが、今回の記事作成に際してその成因などを調べてみたところ、いずれの山も赤城山や榛名山の先輩にあたる、より古い火山であることがわかり、興味を覚えました。

以下、これらの山々の活動歴を取り上げます。

◇鼻曲山は、約100万年前~60万年前に活動した成層火山(西来ほか 2014a)。
◇浅間隠山は、約140万年前に活動した貫入岩(西来ほか 2014a)。
◇菅峰火山は 、菅峰 、浅 間 隠山、笹塒山などの独立主峰からなり、著く浸食され 壮年期地形を呈する (中村 2005)。
◇菅峰火山の活動は、溶岩流の年代測定データから、前期更新世(中村 2005)。
◇笹塒山南方の川浦に分布する溶岩のカリウム・アルゴン年代値は、97万年±5万年前(金子ほか 1989)。
◇浅間隠山のカリウム・アルゴン年代値は、142万年±16万年前(群馬県地質図作成委員会   1999 )。


2)四阿山

四阿山(2354m;日本百名山)は、約90万年前~30万年前(約30万年前に最新のプリニー式噴火)の成層火山,溶岩ドーム(西来ほか 2014a)です。

四阿山は、浅間山同様、群馬・長野県境の2000m級の火山ということもあって、私も聞いたことのある山名です。

しかし、「これが四阿山」という形で向かい合ったのは、2017年3月にアップしたブログ記事(こちら)で、さいたま市から望遠撮影したその山の姿を題材にした時が初めてでした。

昨年、信州で自然探訪ドライブをした際には、浅間山とともに四阿山をも近くから眺めることができています(いずれブログにアップする予定です)。

西来ほか(2014b)は、カリウム-アルゴン法による年代測定結果等に基づき、四阿火山の形成史を以下のようにまとめています。

四阿火山の山頂部には、浦倉山根子岳と連なる稜線を縁とする、環状の崩壊地形*が発達する(太田・片田 1955はカルデラとしていた)。
◇四阿火山は、以下の三つの火山体に分けられる。
・「初期火山体」:四阿山から茨木山、的岩山にかけて;開析が進んでいる
・「根子岳火山体」:傾斜は緩やか
・「浦倉山火山体」:傾斜は緩やか
◇「初期火山体」は約80~55万年前に活動
◇「根子岳火山体」は70~65万年前に活動
◇「浦倉山火山体」は50~45万年前に活動
◇山頂部の環状の崩壊地形は、初期火山帯と根子岳火山体の形成後の約55~50万年前の間に形成された。

(*注:この外部リンク画像は、その崩壊地形をGoogleマップの航空写真モード(3D表示)で見たもの)


噴煙くゆらす浅間山

四阿山の更に西寄りの方向には、浅間山とそれを取り囲むピーク(前掛山、黒斑山、剣ヶ峰)を望むことができます(写真3)。

四阿山~浅間山 
写真3 浅間山、前掛山、黒斑山、剣ヶ峰

浅間山(あさまやま;2568m)は日本百名山の一つ。
約13万年から活動している複成火山(成層火山;西来ほか 2014a)で、溶岩流および小型楯状火山、溶岩ドームから成り、最新噴火は2015年(地質調査総合センター 2016)。

浅間山は、私が群馬県に住んでいた1948年~1966年の間だけでも、11回噴火しています(東京大学地震研究所 2019 アクセス)。

私が子どもの頃、一度だけですが、浅間山上空から西風に煽られて飛んできた火山灰が、自宅の庭の草や木の葉の上に うっすらと積もったことを覚えています。

ネット検索の結果、1958年11月10日の噴火で沼田地方にもに降灰があったという記録(群馬県2019 アクセス)がヒットしたので、おそらくこの噴火だったと思われます。私が小学5年生の時でした。

私は、中学校のバス旅行で浅間山の溶岩が一大景観を作り出している「鬼押出し」(群馬県嬬恋村)に行き、1783年(天明3年)の噴火で流出した溶岩の大きな塊の間を歩いたことを覚えています。

その後も、妻の実家への帰省等で碓氷峠を越えて佐久平を通過するたびに、車窓から浅間山の雄大な山容に出会うことが、愉しみの一つとなっていました。


浅間山の活動歴

早川(1995) によれば、浅間火山*は、黒斑山仏岩**前掛山からなる三重式火山だそうです。

(*注:この外部リンク画像は、その崩壊地形をGoogleマップの航空写真モード〔3D表示〕で見たもの)
(**注:仏岩はリンク画像の右下〔浅間山の南東斜面〕の大きな窪みの縁にそそり立つ大きな岩壁の最上部)


以下は、早川(1995) から抜粋した、浅間火山の活動歴です。

1) 黒斑期(約4万~2万2000年前)
◇今から2万3000年前、黒斑山の山体が東へ大きく崩壊し、高速で流れ下る土砂からなる岩なだれを起こした。
◇黒斑山には、東に開いた馬蹄形カルデラが残された。馬蹄形カルデラを修復すると均整のとれた円錐形火山体が復元できる。

2) 仏岩期 (2万2000~1万5000年前)
◇仏岩は弥陀ケ城岩ともよばれ前掛山になかば覆われる形で、その東南東2kmに位置する溶岩。
◇仏岩は黒斑山の崩壊後まもなく噴火をはじめ、1000~2000年おきに大規模な軽石噴火を繰り返した。
◇1万5000年前に起こった噴火は浅間火山の形成史上最大規模の噴火だった。

3) 前掛期(1万5000年前~現在)
◇平原火砕流の噴火直後に火山錐の形成をはじめ、1000年くらいで現在の高度(2568m)にほぼ達したらしい。
◇最近の大噴火は1783年に起こった天明噴火が有名である。
◇この噴火では、プリニー式噴煙柱から軽石を降らせつつ、吾妻火砕流・鬼押出し溶岩かんぼら流・鎌原岩なだれが発生した。
◇前掛山は400m×400mの火口を頂上にもち、現在も成長中である。
◇山頂火口を囲む小丘は釜山とよばれる。
◇その外側にある前掛山の両肩は、1108年 噴火の火口の大きさ(1300m×1000m)を示している。


浅間山~白根山一帯の地史

以下、浅間山から四阿山、白根山にかけての火山地域の地史について、荒牧(1993)から抜粋しておきます。

◇浅間火山周辺はフォッサ・マグナの東の縁付近に位置する。
◇この地域は日本列島の新第三紀火山活動が活発に行われた地帯の一部であり、浅間火山の地下には、あまり深くない所に、中新世~鮮新世の火山物質に富む厚い地層があると考えられる。
◇この地域では、おそらく中新世前期に海進が始まり、砕屑岩類と共に多量の火山性物質が堆積した。
◇鮮新世に入ると、この地域は徐々に陸化し、湖成層を含めた陸成層の堆積が主となってくる。
◇同時に火山活動が盛んになり、その大きな中心は現在の烏帽子火山西部から佐久盆地東方山地を経て、妙義・霧積地域にかけてであった。
◇第四紀に入って、烏帽子・浅間・高度山・鼻曲草津白根四阿・志賀をはじめ多くの火山が生じた。


山座同定のテクニック:
このシリーズ記事で採用している山座同定のテクニックについては、シリーズ初回記事に詳しく紹介してありますのでご参照ください。


次回予告:
次回記事では、両神山・武甲山・雲取山ほかの関東山地の山々を、望遠クローズアップ写真を添えて紹介します。


引用文献:

荒牧重雄(1993)浅間火山地質図.地質調査所.
https://www.gsj.jp/data/VOLC/PDF/GSJ_MAP_VOLC_06_1993_D.pdf

地質調査総合センター(2016)日本の火山.
https://gbank.gsj.jp/volcano/index.htm
https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/volcano_list.html#E

群馬県(2019 アクセス)浅間山噴火の歴史(昭和~平成).
https://www.pref.gunma.jp/contents/000247493.pdf

群馬県地質図作成委員会(1999)群馬県 10万分の1地図解説書.内外地図,114p.(中村〔2005〕から間接引用)

早川 由紀夫 (1983)草津白根火山の地質。地質学雑誌89巻9号 p. 511-525.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/89/9/89_9_511/_pdf/-char/ja

早川由紀夫・由井将雄 (1989) 草津白根火山の噴火史.第四紀研究,28,1-17.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaqua1957/28/1/28_1_1/_pdf/-char/ja

早川 由紀夫(1995) 浅間火山の地質見学案内.地学雑誌 104 巻 4 号 p. 561-571.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/104/4/104_4_561/_pdf

金子隆之・清水 智・板谷徹丸(1989)K-Ar年代から見た信越高原地域の火山活動.岩鉱 ,84 : 211−225 .(中村〔2005〕から間接引用)

中村庄八(2005)群馬県吾妻川流域に分布する浸食された火山の内部と基盤構造.地球科学 59 巻 1 号 p. 5-24.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/agcjchikyukagaku/59/1/59_KJ00004410128/_pdf/-char/ja

西来邦章・伊藤順一・上野龍之・内藤一樹・塚本 斉(2014a)第四紀噴火・貫入活動データベース:データ一覧.産業技術総合研究所 深部地質環境研究コア.
https://gbank.gsj.jp/quatigneous/index_qvir_datalist.php

西来 邦章・竹下 欣宏・田辺 智隆・松本 哲一(2014b) 中部日本,四阿火山のK-Ar年代:四阿火山の火山活動史の再検討.地質学雑誌120 巻 3 号 p. 89-103.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/120/3/120_2014.0004/_pdf/-char/ja

太田良平・片田正夫 (1955)5万分の1地質図幅「須坂」および同説明書.地質調査所. (西来ほか〔2014b〕から間接引用)

寺田暁彦(2018) 水蒸気噴火発生場としての草津白根火山.地質学雑誌 124 巻 4 号 p. 251-270.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/124/4/124_2017.0060/_pdf/-char/ja

東京大学地震研究所(2019 アクセス)浅間火山のページ:浅間火山の噴火記録(日本活火山総覧〔第2版〕気象庁編より).
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/VOLCANOES/asama/asama_kiroku/index.htm

宇都浩三・早川由紀夫・荒牧重雄・小坂丈予(1983) 草津白根火山地質図(解説面) 1983 - 地質調査所.
https://www.gsj.jp/data/VOLC/PDF/GSJ_MAP_VOLC_03_1983_D.pdf

ウィキペディア:(各山についての一般的な知識について参照した)。
https://ja.wikipedia.org


ハッシュタグ:
#羽根倉橋から見える山 #さいたま市から見える山 #荒川から見える山 #埼玉県から見える山 #関東の山々 #関東の山並 #群馬の山 #関東の火山 


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