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2019-12-05 (Thu)
11月30日、東京の国立科学博物館上野本館で開催された「第35回国際生物学賞記念シンポジウム」(写真1)に参加し、受賞者のナオミ・エレン・ピアス(Naomi E. Pierce )博士の講演「Insect relationships」をはじめ、ピアス博士とゆかりのある、アメリカ、ドイツ、シンガポールからの7人、日本からの3人による世界トップクラスの研究についての講演を拝聴してきました(前回記事で既報)。

今回シリーズ記事第2報として、当日の講演の3番目からの3題についての内容紹介と感想を記します(当日配布されたシンポジウム予稿集を参考にしています)。

国際生物学賞記念シンポジウム、プログラムと資料
写真1 国際生物学賞記念シンポジウム、プログラムと資料(前回記事から再掲) (写真はクリックすると拡大します)


社会的共生の収斂進化

3番目の講演は、Joseph Parker博士による "Convergent evolution of a social symbiosis"(社会的共生の収斂進化)で、以下のような内容でした。

ハネカクシ科 Staphylinidae は動物界の中でもっとも種数の多い科であるが、この甲虫の注目すべき特徴は、自由生活をする種から、アリのコロニーに行動的に同化しうる高度に社会的な種までの進化が、複数の系統で独立に生じていること。

◆ハネカクシ科の遺伝的・実験的扱い易さを活かして、この複雑な行動進化の背後に横たわる分子的、神経科学的現象を照らし出すことで、この収斂進化のベールをはぐ。

 パワーポイントで提示された動画では、アリに仲間であると認識させる化学物質が分泌されるかされないかで、アリの反応が真逆であったのが、私にとって印象的でした。

当該アリ集団の仲間の臭いを出せれば、体形や体長がそのアリと大きく異なっている甲虫でもそのアリ集団の仲間として扱われていました。

また、ハネカクシ科の系統のあちこちの枝でアリとの共生が収斂進化的に生じていることには、驚きを禁じえませんでした。


ゲノムインプリンティングとシロアリの真社会性の起源

次の講演は、松浦健二博士による "Genomic imprinting and the origin of termite eusociality"(ゲノムインプリンティングとシロアリの真社会性の起源)で、以下のような内容でした。

シロアリのカースト表現型の決定において親の表現型が影響する原因は、従来、遺伝的(DNAの継承)に継承されていると考えられてきたが、松浦博士らは最近、それは遺伝的継承によるものではなく、ゲノムインプリンティングによるものであることを明らかにした。

ヤマトシロアリ Reticulitermes speratus では、女王と王のそれぞれからの特異的なエピジェネティックマークが次世代の性的発達(つまりカースト)に対して拮抗的に影響している(つまりゲノムインプリンティングが機能している)。なお、女王は二次女王を単為生殖により別途生産し、自らの遺伝子を拡大再生産している。

◆系統に広範ないろいろな種において、この方式のカースト決定が行われており、真社会性の起源において重要な役割をはたしている。

私の感想は、ゲノムインプリンティングという概念の存在と、それが社会性昆虫のカースト決定にかかわっていることへの新鮮な驚きでした。

松浦博士と私とは初対面でしたが、私の恩師である坂上昭一博士(ハナバチの比較社会学者、故人)の業績にも見識を持っておられることから、この日の夕刻のレセプションでしばし懇談する機会をもつことができました。

ゲノムプリンティングの解説参考文献1にあります。

※坂上昭一博士に関連する過去記事一覧はこちらです。


昆虫と微生物の共生関係の多様性と進化

その次の講演は、深津武馬博士による "Diversity and evolution of insect-microbe symbiotic associations"(昆虫と微生物の共生関係の多様性と進化)で、以下のような内容でした。

◆生物の体の中には多様な微生物が宿っていることから、生物体も一つの生態系をなしているといえる。

◆宿主と共生者はその空間距離の近さから極度に親密な相互作用、相互依存を作り上げている。

◆その結果、しばしば、適応的機能をもつ新規な生物学的特性も出現する。

◆宿主と共生者はほとんど分離不可能な生物学的実在物にまで統合される。

◆たとえば、共生細菌スピロプラズマに感染したショウジョウバエは子孫がすべてメスになってしまう(「雄殺し」:母性遺伝する共生細菌による利己的な生殖操作)(この部分は参考文献2から引用)。

産業技術総合研究所の深津博士が率いる生物共生進化機構研究グループが、適応進化によって成立している各種生物の分子レベルのワクワクするような機能を解明し、成果を公表していることは、同グループ研究員の二橋亮博士によるトンボを材料とした研究(たとえば、こちらこちらのブログ記事)を通して、私も知っていましたが、今回は、同グループの最新の成果を総覧する機会となりました。

深津博士と私とは、2017年3月に東京農工大で開かれた「正木進三先生を偲ぶ会」終了後の懇親会で短時間ながら懇談して以来で、今回のレセプションでは、やはり研究者である奥様、探求心旺盛なお子さんとも楽しい会話のひと時をもつことができました。

※正木進三先生の人物像についてはこちらの記事に書いています。

シンポジウムの続きは次回記事で報告します。お楽しみに。


参考文献:
1)国立遺伝学研究所(2019アクセス)遺伝学電子博物館:ゲノムインプリンティング
2)産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ(2019)研究紹介。


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