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2019-12-10 (Tue)
11月30日、東京の国立科学博物館上野本館で開催された「第35回国際生物学賞記念シンポジウム」(写真1)に参加し、受賞者ナオミ・エレン・ピアスNaomi E. Pierce 博士写真2)の受賞講演をはじめ、ピアス博士とゆかりのある、アメリカ、ドイツ、シンガポールからの7人、日本からの3人による世界トップクラスの研究についての講演を拝聴してきました。

今回はシリーズ記事締めくくりの第5報として、メインゲストである、ナオミ・エレン・ピアス(Naomi E. Pierce )博士の受賞講演 "Insect relationships" (昆虫の諸関係)についての内容紹介と感想を記します(当日配布されたシンポジウム予稿集を参考にしています)。

国際生物学賞記念シンポジウム、プログラムと資料
写真1 国際生物学賞記念シンポジウム、プログラムと資料初回記事から再掲) (写真はクリックすると拡大します)

国際生物学賞受賞のNaomi Pierce教授
写真2 国際生物学賞受賞のNaomi Pierce博士(レセプション会場にて)(初回記事から再掲)


受賞講演:昆虫の諸関係

ピアス博士の講演は、およそ以下のような内容でした。

◆昆虫類が大きな成功を収めた理由の一つは、彼らが関係を築く能力である。

◆昆虫の共生は、新奇な連合が新しい生態的地位の開拓を通して多様化を促進することで、適応放散を可能にした。

◆特殊化した共生は、一緒に機能させるために彼らの対応する性能を整合させなければならない、パートナーの進化に制約を生じさせた。

◆昆虫の関係を3つの種類に分けて論じる。
 1)他の生き物との相互作用
 2)非生物的環境を媒介とした相互作用
 3)人類との相互作用

講演内容(項目)は以上です。

1)の、昆虫と他の生物との相互作用に関しては、今回の国際生物学賞受賞者紹介記事(日本学術振興会、2019)の中に以下のような発見例が紹介されています。
「アリはチョウから栄養源である蜜を得て、その報酬に寄生蜂などの天敵からチョウを守るが、この『助け合い』にはコストが伴い、たとえばチョウはアリに与える蜜をつくるため痩せてしまう。」
「このような背景から、相利共生は寄生に転じることもある。」
「ピアス博士はシジミチョウ幼虫を集団にすると、個々の個体が出す蜜を『節約する』ことを発見した。」
「さらに共生するアリの幼虫を食べてしまうゴマシジミのような寄生性が、相利共生から何度も派生したことを明らかにした。」
「最近では、蜜の『麻薬効果』でアリの脳のドーパミン量を操作し、アリを奴隷のような用心棒にしているシジミチョウも発見した。」

3)の、人類との相互作用に関しては、農薬のネオニコチノイドがマルハナバチの行動に種々の障害を引き起こすことや、世界各国からのハチミツに残留しているネオニコチノイド含量がその農薬の使用量と相関している事実が講演で紹介されていました。

分子系統解析された昆虫の系統樹に沿って、昆虫の行動や形質の進化を分子レベルで明らかにするだけでなく、現代世界で大きな解決すべき課題となっている地球環境の悪化に警鐘を鳴らす研究もしておられることに、私も心からの拍手を送り、他の聴衆とともに改めて受賞を祝福しました。


レセプションにて

この後のレセプション(写真2)では、私も個人的にピアス博士と歓談する機会があり、受賞祝福の言葉に続けて、私の恩師、坂上昭一博士のことをどう見ておられるか伺ってみました。

ピアス博士は、坂上先生のハチの社会行動の研究の重要性を前提に、「いろいろな言語(英語だけでなく、ドイツ語、ポルトガル語、フランス語、そして日本語:生方注)で論文を書いた人なので、読むのが大変」と笑顔で応じてくれました(もちろん、英語で)。

ピアス博士は、坂上先生や私も参加した文部省科学研究費特定研究「生物の適応戦略と社会構造」(1983~1985年)のしめくくりとなる、1986年に京都で開かれた国際シンポジウム(こちらの過去記事参照)にも参加し、活発に討議に参加しておられましたが(当時はポスドク研究員)、私と直接言葉を交わすのは今回が初めてとなりました。

そういえば、1986年の国際シンポジウムで兵隊アブラムシの研究発表をして注目を浴びた立正大学の青木重幸博士も今回のシンポジウムにゲスト参加しておられて、レセプションで旧交を温めることができました。


シンポジウム2日目は「ワンチーム」

今回のシンポジウムはの2日目(12月1日)には、辻和希博士による「Pierce教授の研究業績の紹介」に引き続いて、新進気鋭の若手を含む日本の9名の研究者による各種昆虫の生態や進化に関する最新の研究成果の講演*が行われました。

(残念ながら、私は、初日の講演・レセプションを終えて帰宅後、風邪の症状が悪化したため、2日目の参加をキャンセルせざるを得ませんでした。)

*それらの講師・演題一覧を含む、シンポジウム全体の案内文は、国立科学博物館の下記サイトで見ることができます。


最後になりましたが、素晴らしい講演をされた講師諸氏ならびにシンポジウムを主催した実行委員会に謝意を表したいと思います。


引用文献:
日本学術振興会(2019)国際生物学賞:国際生物学賞 歴代受賞者:第35回国際生物学賞 受賞者について:ナオミ・エレン・ピアス博士(Dr. Naomi Ellen Pierce)。


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