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2014-09-06 (Sat)
今年6月に上尾市の少し大き目の池で撮影しました。

池の岸部の草の垂れた穂先にとまっていますが、いつでも飛び立てる状態であることは、後脚をしっかりと伸ばして体を鉛直面に対して40度ほど浮かせていることからもわかります。
 

コシアキトンボ♂ 

トンボ科の多くの種では、♂は水辺に小さな「縄ばり」(territory)をもち、そこに♀が入りこんだら交尾し、他の♂が入り込んだら飛びかかって追い払います。

コシアキトンボも典型的な縄ばり行動を示す種です。
自分の縄ばりの範囲を往復飛翔(これをパトロール飛翔といいます)する行動のほかに、縄張りの中で見通しのよい場所にとまって縄ばりの要所を監視する行動があり、この両行動を適宜組み合わせて縄ばりを防衛します。
写真は監視している状態の♂ということになります。

コシアキトンボという和名は、体の腰の部分(本種の場合、腹部全10節のうち、前から3~4番目の節)の部分が白い帯を巻いたようになっていることからつけられました。
学名(Pseudothemis zonata)の種小名も「帯のある」という意味です。

この白帯は、若い♂や♀ではクリーム色(淡黄色)ですが、十分成熟した♂は純白になります。
樹陰で薄暗い岸辺をパトロールする♂は、まるで白い物体が飛んでいるかのように見え、とても目立ちます。

この目立つ白帯は、鳥などの天敵には目立ってしまい、生存上不利と思われます。
それにもかかわらず白帯を保有しているということは、この白帯の保有は種内競争における繁殖成功のひとつのプロセスである性淘汰の結果だと考えられます。

クジャクの尾羽が壮麗なものに進化したのは雌雄淘汰の1つの例で、♀から見てより魅力的な♂を受け入れて♀が交尾し子を残すことが代々繰り返された結果とされます。

鹿の♂が立派な角を持つのは雄間淘汰の例で、より立派な角をもつ♂がライバル♂を退けることができ、その結果、より多くの♀と交尾して子孫を多く残すということが繰り返されて進化したと考えられています。

コシアキトンボの求愛・交尾行動を見ていても、♀が♂を選んでいるようには見えませんので、上の二つの性淘汰プロセスのうち、雄間淘汰のほうが作用して腰の白い帯が進化したと私は想像します。

それに対して、カワトンボ科のいくつかの種などでは♂が♀の前で求愛誇示行動をし、OKをもらってから交尾することが知られています(私も見ています)。この場合は雌雄淘汰が作用したにちがいありません。

コシアキトンボの♀同士は互いに退け合いませんので、♀の腰の帯に適応価(次世代の遺伝子頻度増加への貢献)があるとしたら、それは何でしょうか?

ひとつ考えられるのは「種識別」です。
この場合、同じ繁殖場所を利用する別種のトンボの♀との色彩の違いを強調して、その別種のトンボの♂による交尾狙いの行動を減らすということが考えられます。
この種間セクハラ行動はコシアキトンボ♀にとって産卵妨害、さらには種間交雑による卵の無駄をもたらしかねない、避けるにこしたことのない干渉です。

もう一つ考えられるのは、♀の腰帯それ自体に適応価がないというものです。
雄間淘汰により進化した形質が♀にも少し違った形で(帯の面積が小さくなり、色も白さが弱くコントラストが弱く)で発現しているだけのものという仮説です。
この仮説は、鳥などの天敵への目立ちやすさという不利を補う適応価を考えていませんので、最初から不利な仮説ですが、実験による仮説のテストの際の対立仮説の一つとして取り上げる価値はありそうです。

コシアキトンボの♀についてはまた稿を改めて触れたいと思います。


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